税務・会計

新型コロナウイルスによる税の申告期限の延長と、会社の適切な対応

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、国税の申告・納税の期限が延長されています。個人の確定申告が、通常の期限である3月15日から延長されたことから「確定しない申告」などと報道され、話題になりました。

新型コロナウイルス禍の勢いはとどまるところを知らず、終息の見通しは立っていません。そのため、個人・法人の申告期限・納税期限もまた、相当柔軟な対応がとられています。

しかし一方で、新型コロナウイルスによって新たにもうけられた特例的な貸付制度を利用する場合には、売上などの数値が必要となることから、決算申告が必要となるケースがあります。この場合、貸付を受けられる要件を満たした申告内容とする必要があります。

今回は、新型コロナウイルスによる申告期限・納税期限の延長と、会社側(企業側)の適切な対応について、企業法務に詳しい弁護士が解説します。

新型コロナウイルスに関する状況は日々変化していますが、この解説は2020年4月20日時点の情報に基づいて記載しています。

「新型コロナウイルスと企業法務」まとめ

 解説協力税理士


岡本道雄税理士事務所
税理士 岡本道雄(おかもとみちお)

一橋大学経済学卒業。政府系金融機関にて法人営業を担当し、その後世界四大会計事務所の一角を占める税理士法人に税理士として勤務(その間6ヶ月大手証券会社に常駐)。平成30年4月四ツ谷駅の傍で税理士事務所を開業。

申告期限の延長

新型コロナウイルス感染症の蔓延を受けて、国税庁では、次のとおり、各種税金の申告期限の延長を発表しています。

このたびの申告期限の延長には、一定の期限まで一律に延長する「一律」の延長と、やむをえない理由のある場合にのみ期限を延長する「個別延長」の2種類があり、区別が必要です。

ただし、一律の延長であっても、すでに一律の延長をした期限までに申告・納税することが期待できない状況のため、さらに個別延長が認められています。また、個別延長については、事態の緊急性を考慮して、相当柔軟な取り扱いがされています。

個人の所得税(確定申告)

個人の所得税は、通例、1月1日から12月31日までの所得について翌年の2月16日から3月15日までの間に「確定申告」をおこなうこととされています。つまり、確定申告の期限は、通常であれば2020年3月15日でした。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、一括して2020年4月16日まで自動延長されました。

また、4月17日以降であっても、申告書などの作成または来署することが可能になった時点まで、個別延長が認められることとなりました。
    

個人の贈与税・消費税

個人から財産の贈与を受けた場合には、贈与税がかかります。贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額が、基礎控除額である110万円を超える場合には納税しなければなりません。

また、個人の課税売上高が1000万円を超えた場合には、翌々年度から消費税の納税義務が生じます。

個人の贈与税・消費税の申告期限についても、確定申告と同様、一律に2020年4月16日まで延長され、その後も個別延長が認められています。

個人の相続税

相続税は、相続した財産に対して課税される税金であるため、一律の期限はなく、一括した期限の延長はされていません。

ただし、相続税の申告をすることができないやむを得ない理由がある場合には、申告期限の個別延長をすることが認められています。具体的には、申告書などを作成・提出することが可能になった時点まで期限が延長されることとされています。
  

法人の法人税・消費税・源泉所得税

法人の支払う税金には、「法人税(国税・地方税)」「消費税」「源泉所得税」があります。いずれも、法人の決算月の終了日の翌日(課税事業年度の終了日の翌日)から2か月以内に決算書などを作成して、申告をする必要があります。

法人の場合には、決算月は各企業によって異なるため、一括した期限の延長はされていません。

申告などをすることのできないやむを得ない理由のある場合には、申告期限の個別延長が認められています。具体的には、法人の申告書などを作成・提出することが可能となった時点まで延長することができます。

納付期限の延長

申告をおこなった結果、課税要件を満たす場合には、納付期限までに納税をおこなう義務があります。

申告期限を一律の延長もしくは個別延長によって後ろ倒しした場合には、納付期限もまた後ろ倒しされることとなります。ただし、申告期限を個別延長した場合には、納付期限が「申告書等の提出日」とされていることに注意が必要です。

つまり、個別延長の手続きをとって申告期限を先延ばしにしたときは、申告書を提出する準備ができたら、申告書を提出するとともに、納税をおこなわなければなりません。

個別延長をするときの注意点

次に、個人の税金の申告が4月16日までにおこなえないときや、法人の税金の申告が本来の期限までにおこなえないときに、個別延長をするときの注意点について解説します。

新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、無理して申告期限に間に合わせようとして、「3密(密閉・密集・密接)」に行かざるを得なくなったり、体調を崩して免疫力を低下させてしまったりしては、元も子もありません。

個別延長をするときの注意点を正しく理解し、適切に利用していきましょう。

個別延長が認められるケース

「個別延長がどのような場合に認められるのか」という疑問については、文言上は「やむを得ない理由」となっていますが、新型コロナウイルス感染症による非常時であることから、幅広く認められています。

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、例えば、「新型コロナウイルスに感染してしまい、申告書類の作成ができない」という場合はもちろん、「在宅勤務としたため、申告書類の作成業務が遅延している」「顧問税理士が新型コロナウイルスに感染してしまい、業務が停止してしまった」などの場合があげられます。

国税庁の出すFAQには、次のような例が挙げられていますが、あくまでも具体例であり、これに限定されず幅広く認められる方向で考えられています。

○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、法人がその期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、申請していただくことにより期限の個別延長が認められます。

○ このやむを得ない理由については、例えば、法人の役員や従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したようなケースだけでなく、次のような方々がいることにより通常の業務体制が維持できないことや、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども該当することになります。

① 体調不良により外出を控えている方がいること
② 平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること
③ 感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
④ 感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

○ また、上記のような理由以外であっても、感染症の影響を受けて申告・納付期限までに申告・納付が困難な場合には、個別に申告・納付期限の延長が認められます。

○ 新型コロナウイルス感染症に感染した⽅はもとより、体調不良により外出を控えている⽅や、平⽇の在宅勤務を要請している⾃治体にお住まいの⽅、感染拡⼤により外出を控えている⽅など、新型コロナウイルス感染症の影響により、確定申告会場にお越しいただくことが困難な⽅や、申告書を作成することが困難な⽅については、個別に申告期限延⻑の取扱いをすることとしています。

特に、「平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること」という例が挙げられていますが、新型コロナウイルス禍の現状として、緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されました。

このことなどを考慮すれば、基本的には、ほぼすべての法人・個人が新型コロナウイルスによる自粛要請の影響を受けているといってよく、申告期限の個別延長を活用できると考えられます。

国税庁の出す3つのFAQに、より具体的な解説がありますので、参考にしてください。

個別延長後の申告期限・納付期限

申告期限の個別延長をすると、申告期限は、やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内の日となります。新型コロナウイルスの終息はまだ先行きが見えませんので、その点を考えると、「やむを得ない理由がやんだ日」がいつになるかは、現状ではまだ不明です。

申告期限の個別延長をした場合には、納付期限は「申告書の提出日」となります。つまり、申告と同時に納付することが必要となります。

個別延長の手続き・方法

個別延長をおこなう場合の手続き・方法は、申告書の余白に、個別延長を申請する旨を付記することで足りるものとされており、別途の申請賞などは不要です。

これは、個人の税金、法人の税金いずれも同様です。

貸付・融資を受ける事業者は、申告が必要

個人・法人いずれの税金にも「個別延長」が認められ、新型コロナウイルスの影響が全国的に拡大している現状を踏まえれば、当面の間は納税は猶予されていると考えることができます。

しかし一方で、だからといって納税をしなくてもよいわけではありません。むしろ、貸付・融資を受ける事業者にとっては、すみやかに申告をすることが有益です。

現在、新型コロナウイルスにより深刻な打撃を受け、経営状況の悪化している中小企業、小規模事業主などに向けて、多くの特例的な貸付制度がもうけられています。そして、これらの制度の利用には、「売上低下」などの一定の要件があります。そのため、決算書などを整備しなければなりません。

融資・貸付を受ける場合には審査を受けることとなりますが、「売上低下」が要件とはいえ、あまりに赤字が累積していると、生き残るのに十分な貸付を受けることができないおそれもあります。

新型コロナウイルスを機に新設された「新型コロナウイルス特別貸付」や、「セーフティネット保証4号・5号」などの貸付・融資を受けやすくするために、顧問税理士などのアドバイスにしたがって早めに決算申告をおこなう必要があります。

参 考
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「企業法務」は、弁護士にお任せください!

今回は、新型コロナウイルスの多大なる影響を受けて、税金の申告期限が延長されていることと、これに対する会社側(企業側)の適切な対応について弁護士が解説しました。

新型コロナウイルスの影響はとても大きく、申告・納税の準備ができない会社は、無理せず「個別延長」を積極的に活用するようにしましょう。しかし一方で、会社の存続のため、貸付制度・融資制度を活用したいときは、速やかに、審査の通りやすい内容で決算書を作成していく必要があります。

新型コロナウイルスを取り巻く税務に関する状況は、日々変化していき新しい情報も出ています。持続的な経営のため、新情報を収集するようにしてください。

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