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社会保険手続の電子申請義務化に伴う注意点【弁護士解説】

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2019年3月8日で、雇用保険、労働保険等の電子申請を義務化する厚生労働省令が公布されました。

具体的には、大法人等による雇用保険・労働保険等の一部届出・申請・申告書の電子申請が、2020年4月1日から義務化されます。

少し先のことだと思っている企業も多いですが、システム面だけではなく、労務管理にも影響する可能性があるため、事前に準備しておかなければ適切に対応することはできません。

そこで今回は、電子申請義務化の概要を紹介し、労務管理上の注意すべきポイント、注意点を弁護士が解説します。

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電子申請義務化とは?

2020年4月1日から施行される電子申請の義務化とはそもそもどのような制度なのでしょうか。

以下では、電子申請義務化の内容と、違反した場合の効果等について、弁護士が解説します。

2020年施行の電子申請とは、インターネットを利用して、申請・届出などの各種行政手続きをいつでも、どこからでも行える仕組みのことです。

つまり、これまで行政機関の窓口に出向いて紙媒体で行なっていた行政手続きが、自宅や会社などのパソコンを使って行うことができるようになります。行政手続上のコスト削減を図る目的から今回電子申請が義務化されることになりました。

電子申請が導入されることによって以下のようなメリットやデメリットが挙げられます。

メリット

  • 365日、24時間いつでも申請可能
  • チェック機能により事前の入力ミスを防止できる
  • 時間やコストの削減につながる

デメリット

  • 利用環境を整える必要がある
  • 電子証明書の取得が必要

なお、電子申請を行うためには、「e-Gov」に対応する電子証明書を取得する必要があります。

電子申請義務化のポイント

電子申請義務化の改正概要を簡単にまとめると、電子申請の義務化によって、資本金等が1億円を超える法人(大法人等)は、2020年4月から、雇用保険手続、社会保険手続を、紙ではなく電子申請で行う必要があります(雇用保険法施行規則第6条7項)。

ただし、例外として、電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められる場合で、かつ、電子情報処理組織を使用しないで当該申告書の提出を行うことができると認められる場合には、書面による提出が認められています(同項ただし書き)。

電子申請義務化の対象書類

この度の改正で、電子申請の対象となる主な手続書類は、次の通りです。

既に、税務申告について「e-tax」による電子申告が活用されていますが、人事労務面の手続についても電子申請が可能となるということです。

厚生年金、健康保険を合わせて「社会保険」、雇用保険、労災保険を合わせて「労働保険」ということがありますが、今回の改正で、社会保険、労働保険の一部について、電子申請手続が導入されることとなりました。

厚生年金保険関係

  • 被保険者賞与支払届
  • 被保険者報酬月額算定基礎届
  • 70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届
  • 厚生年金被保険者報酬月額変更届

健康保険関連

  • 被保険者賞与支払届
  • 被保険者報酬月額算定基礎届
  • 健康保険被保険者報酬月額変更届

雇用保険関連

  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者転勤届
  • 高年齢者雇用継続給付基本給付金の支給申請手続
  • 育児休業給付金の支給申請手続

労働保険料申告関連

  • 労働保険概算申告書
  • 増加概算申告書
  • 確定保険料申告書
  • 石綿法における一般拠出金申告書

電子申請義務化の対象企業

電子申請が義務化される企業の条件は、「大法人(資本金又は出資金の額が1億円超の法人等)、相互会社、投資法人、特定目的会社」(健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令)とされています。

基本計画の中でも「上記の義務化の要件に該当しない事業所についても、あわせて電子申請への移行を促すこととする」(「『行政手続きコスト』削減のための基本計画」)と明記されているため、今後対象となる企業範囲が拡大される可能性もあります。

そのため、義務化の対象ではない企業(中小企業など)の担当者も電子申請義務化について十分な知識を備えておくことをおすすめします。

違反の効果

電子申請の義務化に違反した場合の罰則はありません。

しかし、電子申請が義務とされている大法人等が、理由なく電子申請を行わない場合には、その申請自体が無効とされ、申請が受理されない可能性が高いです。

もっとも、「やむを得ない理由がある場合は次回以降の電子申請を促しつつ、紙での申請を受け付ける」とされ、経過措置として「平成32年(令和2年)4月1日以降開始される事業年度について順次適用」(『労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則及び厚生労働省関係石綿による 健康被害の救済に関する法律施行規則の一部を改正する省令(案)の概要』)と明記されていますので、一定の場合には申請が受理される可能性もあります。

したがって、電子申請しなければならないのが原則ですが、例外的にやむを得ない理由などがある場合には、従来通り、紙による申請が可能です。

電子申請義務化の施行日

電子申請義務化が導入される改正の施行日は、2020年4月1日です。

ただし、労働保険等の各申告書は、2020年4月1日以後に開始する事業年度にかかる申告書の提出について適用されます。したがって、会社の事業年度によって、電子申請が義務化される日は異なります。

電子申請義務化の対象となる企業としては早めの対応をし、電子申請が可能な状態にしておきましょう。

電子申請義務化で変わる労務管理上の注意点は?

電子申請の義務化は、単に社会保険、雇用保険の手続の変化だけにとどまりません。

特に、電子申請義務化の対象となる企業は、企業規模の大きい会社であることから、社会保険、雇用保険手続を社会保険労務士(社労士)に任せず自社内で行っている場合、自社内の働き方の変化にもつながります。

最後に、電子申請義務化に伴って、労務管理上注意すべきポイントについて、弁護士が解説します。

労働者数の調整、配置転換の検討

電子申請が義務化されたことによって、作業の効率化が図られることが予想されますが、それに伴い、労働者数の削減や配置を調整したりする必要性が高まることも同時に予想されます。

人事労務の担当者は、義務化によって、どの程度の効率化が図られるかといった点やそれに伴い労働者をどのように管理するのかといった点について施行前に他の部署とも連携した上で、きちんと把握しておくことが重要です。

従業員の能力・適正の再評価

上記の労奏者数の調整等にも関連しますが、従来の労働者が義務化に対応できる能力を十分備えているのか等についても検討が必要です。新しいシステムや制度が導入されることで少なからず、柔軟に対応できない労働者が現れることが予想できますので、再度人事評価を行い、適正な労務管理を行うことも重要です。

企業としては、電子化によって効率化を図りながらも、人数の調整や配置転換等によって適切に人事労務を行う必要性があります。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、電子申請の義務化の基本的な内容と労務管理上注意すべきポイントを中心に弁護士が解説しました。

電子申請の義務化に伴い、効率化が図れる半面、これまでの労務管理を見直す必要が高まることが予想されます。そのため、電子申請の義務化に備え、企業としてはシステム面を改善することに加えて、労働者の人員調整、能力・適正の再評価等を適切に行うことが重要です。

電子申請の義務化への対応を含め、人事労務でお困りの際はぜひ一度、人事労務に強い弁護士にご相談ください。

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