2017年5月17日、「外為法」が、参議院本会議を賛成多数で可決され、成立しました。
そこで、今回は、「外為法」の改正法について、企業法務を得意とする弁護士が解説します。
目次
1. 外為法とは?
「外為法」は、正式名称を「外国為替及び外国貿易法」といい、外国為替、外国貿易などの対外取引について、平和や安全の維持などを目的とした法律です。
略称は「ガイタメホウ」と読みます。
2. 2017年(平成29年)の「外為法」改正
今回、2017年(平成29年)5月17日に、「外為法」の改正案が可決に至りました。
2.1. 「外為法」2017年改正の内容
2017年5月17日に成立した、「外為法」の主な改正内容は、次の3点です。
- 大量破壊兵器などに転用できる技術、製品を海外流出させた場合の罰則を強化
- 輸出入規制に対する、行政制裁の強化
- 高度技術を有する日本企業に対する外国人投資家への投資規制
近年、アジア情勢をはじめ、平和や安全の維持が、ニュースでも頻繁に取り上げられていることはご存知のとおりです。
2.2. 「外為法」2017年改正の目的
2017年外為法が改正されることとなった目的は、先ほども解説しましたとおり、近年増加している、日本の安全保障を脅かすような海外取引の危険を防止することにあります。
罰則や行政指導など、制裁を強化することによって、危険な海外取引を未然に防ぐとともに、外国資本による投資を届出制として、コントロールすることが狙いです。
特に、外国資本による株式取得については、事前届出はもちろんのこと、事後的な「株式の売却命令」も可能となった厳しい規制です。
2.3. 「外為法」2017年改正法の施行日
2017年5月17年に可決された、外為法の改正法は、成立から1年以内に施行される予定です。
3. 予想される主な影響
今回の2017年外為法改正が、企業のビジネス、経営において重要な影響を与えるのは、特に次の2点です。
海外との取引をビジネスの中心としている会社はもちろんのこと、外国投資家による株式取得の問題は、会社の事業の内容にかかわらず、注意しておかなければなりません。
3.1. 海外輸出を事業とする会社への影響
海外との取引を行うことのある会社は、自社の製品、技術が、大量破壊兵器の開発に転用できるものではないかどうか、改めて検討が必要となります。
今までも禁止規定自体はあったものの、罰則が強化され、最大10億円もの罰金の可能性もあることから、念のため再確認しておきましょう。
3.2. 外国資本によるM&Aへの影響
安全保障、維持のため、外国資本によるM&Aへの影響は、次のとおりです。
- 外国投資家及び外国企業の子会社が、他の外国投資家から株式を取得するもののうち、国の安全を損なうおそれがある場合に事前届出の対象となります。
- 事前届出義務に違反した外国投資家及び外国企業の子会社に対しては、国の安全を損なうおそれがある場合には、株式の売却命令が可能となります。
非上場会社のM&Aも対象となるため、企業買収の当事者となるときは、外為法の事前届出の対象ではないか、事前に検討が必要となります。
4. まとめ
今回は、2017年5月17日に成立した、「外為法」の改正法について、弁護士が解説しました。
外為法の規制にかかるおそれのある会社は、事前に、企業法務を得意とする弁護士に法律相談ください。