ブログやホームページを作成するとき、写真や画像を使用した方が、人目を引きやすいことから、ブログやホームページに写真や画像、場合によっては動画を掲載したいと考えます。
しかし、ホームページ上で利用される素材には、それぞれ権利があります。特に、「著作権」には、慎重な注意が必要となります。
利用するコンテンツによって、また、その利用の態様によって、注意しておかなければならない「著作権」のポイントは異なることもあり、ケースバイケースで侵害する権利が異なることがあります。
ホームページなどで写真や画像を利用する場合、自分自身で作成、撮影したものでなければ、権利処理が必要となることの方が原則です。
具体的には、著作権を有する人から、権利の譲渡を受けるか、もしくは、ライセンス(利用許諾)を受ける必要があります。
今回は、ブログやホームページで画像や写真を利用する際、著作権で注意すべきポイントを、企業法務を得意とする弁護士が解説します。
1. 著作権処理の必要な写真・画像とは?
写真・画像には著作権があるのが原則です。
したがって、自分で作成、撮影した画像、写真でない限り、第三者の著作物を利用する場合には、著作権の処理が必要となるのが原則です。
例えば、ブログ内のアイキャッチとして写真や画像を用いる場合、ホームページ内のイラストとして用いる場合です。
著作権の権利処理とは、すなわち、次の2つのうちのいずれかの方法をとることをいいます。
- 著作権の譲渡を受けること
- 著作権の利用許諾を受けること
また、著作者には、財産権としての著作権以外に、「著作人格権」が発生しています。
「著作人格権」は、人格権の性質上、著作者に専属するものであることから、譲渡を受けることができません。
したがって、著作権の処理について、上記2つのいずれの方法をとるとしても、「著作人格権を行使しない。」いう、いわゆる「不行使特約」を締結する必要があることに注意が必要です。
2. 第三者の著作物が写り込んだ写真・画像の利用
ホームページやブログにおいて利用した写真や画像に、第三者の別の著作物が写り込んでいるケースがあります。
例えば、自社が撮影した写真をホームページにアップロードして掲載しようとしたら、別の人の描いた絵画が写ってしまっていたといった場合です。
意図して撮影したわけではなくたまたま映り込んでしまっていた場合や、後で処理しようとしてもその部分だけ削除することは難しいといった場合もあります。
2.1. 著作権の例外規定(写り込みのケース)
付随的に他人の著作物が入ってしまったような場合であっても、著作権の処理が必ず必要なのでしょうか?いいえ、そうではありません。
著作権法には、例外規定というものがあり、いわゆる「写り込み」のケースで、著作権侵害とはならない例外が存在するのです。
2.2. 写り込みが著作権侵害とならないための要件
写り込みのケースで、著作権の例外規定にあたり著作権侵害とならないための要件について解説します。
別の著作物が写り込んだ場合であっても著作権侵害にならないためには、著作権法30条の2において、次の5つの要件が定められています。
- 写真の撮影、録音または録画の方法により複製、翻案するものであること
- 写真の撮影等の対象としたものと写り込んだ著作物を分離することが困難であること
- 写り込んだ著作物が軽微な構成部分であること
- 写り込んだ著作物の種類や用途などから判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと
- 写真の撮影等の対象としたものの利用に伴って、写り込んだ著作物を利用すること
簡単にまとめると、「おまけ」「付随的な」というような利用態様で、著作権者に迷惑をかけなければよいということです。
2.3. 著作権侵害とならないケース
例えば、ホームページに写真をアップロードして掲載しようとしたところ、写真の片隅に他人の作成した絵画が写り込んでしまったというケースを考えてみましょう。
その絵画を除いても、撮影したい対象を撮影することができるのであれば、その絵画を除いた状態でもう一度撮影すればよいわけですが、どうしても撮り直しができなかったり、移動ができなかったりといった事情があるケースも少なくありません。
この場合、写り込んだ部分が、撮影した写真全体の中のごく一部であって、その写真の使用目的が、「実は写り込んだ絵画がメインであった。」というような悪質な使用目的でもなければ、著作権法の例外規定に基づき、著作権侵害にはならないと考えられます。
2.4. 著作権侵害となるケース
写り込みに関する著作権法の例外規定は、あくまでも、通常の著作物の制作過程において、他人の著作物が写り込んでしまうことが避けられないことから、この場合に著作権侵害とならないようにするためのものです。
そのため、意図的に他人の著作権を侵害しようとして写り込み行為を行う場合には、例外規定の適用はされないこととなります。
例えば、意図的に、他人の絵画を写し取ろうとして、または、鑑賞の対象と使用として、絵画を含めた写真を作成して利用するような場合、著作権侵害となるおそれがありますので注意が必要です。
3. フリー素材を利用する場合の注意点
では、「著作権フリー」とか、「フリー素材」と言われている写真や画像を利用すれば問題ないのではないか?と思う方が多いでしょう。基本的にはその方が著作権法上の問題は起きにくい場合が多いです。
ただ、一般に「フリー素材」といわれている写真や画像を利用する場合であっても、注意しなければならないポイントは多く存在します。
3.1. 本当にフリーかどうか確認する
フリー素材の中には、本当は著作権を第三者が有しているにもかかわらず、著作権者ではない人が、著作権フリーであるかのように装って配布しているものも多く存在します。
また、条件付きフリー素材といって、自由に無料で利用するためには、著作権者の定める条件を満たさなければならないものもあります。
特に、人物が写ったフリー素材の場合には、その人物の名誉権を守るため、禁止業種(アダルト関係などが一般的です。)が定められているケースもよくあります。
フリー素材であるからどのような利用をしてもよいのだと思って利用していると、思わぬ権利侵害を行っていることも少なくありません。
万が一、第三者が「フリー素材である。」と表示しているのを信じて利用していたとしても、真の著作権者から損害賠償請求、差止請求をされた場合、原則としては、真の著作権者に利用権を主張することはできません。
すなわち、「誰かがフリー素材と言っていたのを信じたので利用していた。」と主張しても、損害賠償や差止めが認められてしまうわけです。
なお、充分な調査を行ってもわからない場合や、信じてもやむを得ないという事情がある場合、例外的に、損害賠償や差止めを回避することができるケース、すなわち、著作権侵害とはならないケースもあり得ます。
3.2. 画像検索の罠
Googleなどの画像検索が発達し、フリー素材を画像検索でヒットさせることができるようになってきました。
しかし、「フリー素材」と検索してヒットした中には、利用許諾を得られるものもあれば、実際には著作権を第三者が保有しているものも含まれています。
したがって、必ず、元の記事を参照し、本当にフリー素材であるかを確認してから利用しなければなりません。
4. 著作権以外に注意しておかなければならない写真・画像の権利
これまで解説してきました著作権の他にも、ホームページやブログにおいて写真、画像を利用する際に注意しておかなければならない権利が多く存在しますので、著作権以外の権利についても簡単に解説しておきます。
著作権以外にも、第三者に権利のある被写体が写り込んでいた場合には、権利処理が必要な場合があります。
4.1. 商標権
撮影した写真の中に、他社の商標が含まれるというケースは多くあります。
例えば、繁華街の写真を撮影すれば、相当多数の商標が写り込んでしまうこととなるでしょう。そして、これは避けることができません。
「商標」というと堅苦しいですが、街角の企業広告の中にも、商標申請されているものが非常に多く含まれていますから、写真の中に商標が写り込む可能性の高さを十分理解していただけるのではないでしょうか。
商標権の場合、商標権侵害となるのは、「商標的使用」に限られるとされます。すなわち、自社の商品・役務を表示するものとして商標を用いない限り、第三者の商標侵害とはならないということです。
したがって、商標権の場合は、写真に写り込んだ商標をホームページなどに掲載するという目的であれば、商標権侵害の問題にはなりません。
4.2. 意匠権
意匠権とは、企業の製品のデザインなど、顧客吸引力のあるデザインが真似されないよう保護する権利をいいます。
意匠登録されている物が写真や画像に含まれていた場合、これをホームページに掲載する行為は、意匠権の侵害になるのでしょうか?いいえ、この程度であれば意匠権侵害の問題とはなりません。
意匠権とは、デザインを保護するための権利であることから、有体物である物品の範囲内での保護にとどまります。
いいかえると、意匠権で保護されるデザインと同じものを作り出さなければ、意匠権侵害とはならないということです。
したがって、意匠権の場合は、写真に写り込んだ意匠をホームページなどに掲載する行為は、意匠権侵害の問題にはなりません。
4.3. パブリシティ権
有名人が写っている写真を、ホームページなどに掲載する場合には、特に注意が必要な権利があります。それがパブリシティ権です。
つまり、有名人が写った写真を利用するためには、所属事務所などの撮影者が、著作権について承諾をすればそれでよいわけではなく、パブリシティ権の権利処理のため、写っている有名人の許可をとらないといけないというわけです。
ただし、判例において、パブシティ権が発生するのは、「もっぱら氏名、肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」に限定されています。
以下の3つのケースでは、パブリシティ権の侵害となるとされています。
- 氏名、肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
- 商品等の差別化を図る目的で指名、肖像等を商品等に付す場合
- 氏名、肖像等を商品等の広告として使用する場合
ただし、この3つのケースはあくまでも例示ですから、これに該当しなかったとしてもパブリシティ権の侵害となりえますので、注意が必要です。
5. まとめ
ホームページやブログの中で写真、画像を使用するときの、「著作権」のポイントを、弁護士が解説しました。
- 意図せず、第三者が著作権を有する物が写り込んでしまった写真を使用したい。
- ホームページやブログに掲載した写真が、著作権を侵害しているとの指摘を受けた。
- 自社が利用する写真が著作権を侵害していることに気付いた。
以上のようなお悩みをお持ちの経営者の方は、著作権について適切な理解をする必要があります。