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発信者情報開示で、投稿者を特定するための期間、スケジュールは?

SNSや掲示板など、インターネット上での誹謗中傷・名誉毀損などの被害に遭ったとき、発信者情報開示請求という手続きを通じて、匿名の投稿者を特定することが可能です。

しかし、実際に検討し始めた方の多くが不安に思うのが、「どれくらい時間がかかるのか」という点です。発信者情報開示請求は、ログの保存期間内に行う必要があるため、タイムリミットに間に合わないと、泣き寝入りになる危険もあります。

今回は、発信者情報開示請求にかかる期間を、ステップごとにわかりやすく解説すると共に、ログ保存の期限やタイムリミットについても解説します。

この解説のポイント
  • 発信者情報開示請求には、3ヶ月〜1年ほどの期間がかかる
  • 開示請求は段階的に進み、それぞれ数ヶ月の期間を要することが多い
  • ログ保存を早期に行うため、発見した直後に弁護士に相談すべき

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発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは、インターネット上で名誉毀損やプライバシー侵害などの違法な投稿を行った発信者を特定するため、プロバイダなどに情報開示を求める法的手続きです。この手続きにより、ネット上は匿名でも、法律に基づいて投稿者の個人情報を入手できます。

特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(情報流通プラットフォーム対処法)5条に基づく手続きで、「権利が侵害されたことが明らかであるとき」かつ「損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」に、開示請求できると定められています。

開示される可能性のある情報は、IPアドレスやタイムスタンプ、ログイン情報、契約者情報などがあり、例えば、次のサービスが対象になります。

  • SNS(X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube、TikTokなど)
  • 匿名掲示板(5ちゃんねる、爆サイ、ホスラブ、なんJなど)
  • ブログサイト(アメブロ、はてなブログ、noteなど)
  • WordPressなどで構築された個人サイト

つまり、「匿名なら安全」ということではなく、条件を満たせば身元の特定は可能です。

発信者情報開示請求によって特定する方法は、相当な期間がかかります。ログ保存期限内(一般に、3ヶ月〜6ヶ月)に解決するためにも、とにかくスピード重視で行動しなければなりません。ログが削除されると、発信者情報開示請求の方法でも特定が技術的に不能になってしまいます。

発信者情報開示請求にかかる期間

次に、発信者情報開示請求にかかる期間の目安を解説します。

発信者情報開示請求は、一度で完結する手続きではありません。証拠の収集から裁判所での判断に至るまで、いくつかのステップを踏む必要があり、各段階ごとに一定の期間がかかります。

STEP

証拠収集:数日〜数週間

まず、発信者情報開示請求を裁判所に認めてもらうための証拠が必要です。

問題の投稿のスクリーンショットを保存し、投稿日時やURL、発信者のIDなどを記録します。削除されたり変更されたりする可能性があるので、早めに対応してください。証拠が不十分だと請求が認められないこともあるので、確実に保存することが重要です。

STEP

仮処分の申立て:1ヶ月〜2ヶ月

発信者の特定のために、コンテンツプロバイダ(投稿のあるサイトの管理者など)に対し、IPアドレスやタイムスタンプなどの開示を求める仮処分を申し立てます。

任意の開示請求をする場合、発信者に対して7日以内に意見照会を行う必要がありますが、個人情報であることを理由に開示を拒否されるケースが多いため、法的手続きによって請求します。仮処分の手続きは、通常1ヶ月〜2ヶ月程度かかります。

並行して、一定期間ログを消去しないよう求めておくのも有効です。

STEP

訴訟提起:3ヶ月〜半年以上

仮処分で得られたIPアドレスやタイムスタンプなどのアクセス情報をもとに、プロバイダや通信事業者に対して発信者情報の開示を求める訴訟を提起します。

裁判所における審理の結果、開示の必要性が認められれば、契約者の氏名や住所などを入手することができます。訴訟の手続きは、通常3ヶ月〜半年以上かかることもあるので、余裕を持った見通しが必要です。

STEP

情報取得後の対応

発信者情報開示請求が終わったら、その後に、開示された氏名や住所に基づき、損害賠償請求や捜査機関(警察・検察など)への刑事告訴のステップに進みます。訴訟で損害賠償請求を進める場合は、更に数ヶ月〜1年程度の期間がかかります。

発信者情報開示請求のタイムリミットとログ保存期間

次に、発信者情報開示請求のタイムリミットがいつまでなのか、解説します。

発信者情報開示請求は、「時間との勝負」です。インターネット上のログは永久に残されているわけではなく、プロバイダなどが削除すれば、技術的に特定が不能になってしまうからです。

IPアドレスなどの接続記録の保存期間は、3ヶ月〜6ヶ月が目安とされています。

プロバイダごとに異なり、携帯電話会社などはログ削除が早い傾向にあります。保存期間はサービスによって異なるため、「まだ残っているはず」と思って先延ばしにすると、手遅れになる危険があります。

前章の通り、各手続きごとに時間がかかるし、準備もあるので、「6ヶ月経過するまでは大丈夫」と甘く見ず、発見したらすぐ弁護士に相談すべきです。

特に、ライブ配信やSNSのストーリー機能のようにすぐ削除されそうな投稿や、アカウント停止の可能性の高いケースでは、速やかに証拠を保全しなければなりません。

また、開示請求によって相手を特定した後に行う損害賠償請求には、時効があります。不法行為の時効は、「損害及び加害者を知った時から3年間(生命又は身体を害する不法行為は5年間」「不法行為の時から20年間」とされています(民法724条)。

弁護士に依頼する場合の期間と相談のタイミング

最後に、弁護士に発信者情報開示を相談する際のポイントを解説します。

発信者情報開示請求は、法律の専門知識が必要な上に、複数の手続きをスピーディーに進めなければなりません。そのため、弁護士に依頼するメリットは大きいです。

弁護士に相談するなら「できるだけ早く」が鉄則です。

前章の通り、3ヶ月程度でログを削除するプロバイダもあるので、「まだ大丈夫だろう」と放置していると、証拠が消え、開示が不能となる危険があります。相談を迷っていると間に合わないおそれもあります。投稿から3ヶ月までに仮処分を申し立てるためのタイムリミットは、証拠収集や準備も含め、投稿から2ヶ月以内には弁護士に相談すべきです。

ただ、これは「◯ヶ月以内なら大丈夫」というわけではありません。どのようなイレギュラーが生じるかわからないので、「気づいたらすぐ」に相談するのが、成功への近道です。

SNS投稿監視サービス」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、発信者情報開示請求にかかる期間について解説しました。

発信者情報開示請求は、インターネット上での権利侵害に立ち向かうための重要な手段ですが、手続きには一定の時間がかかる上に、ログの保存期間というタイムリミットも存在します。

開示請求は、段階を追って進めることとなり、任意の交渉で解決できる可能性はそれほど高くはありません。そして、仮処分や訴訟に至る場合、数ヶ月単位の期間を要するのが通常です。そのため、手遅れにならないためにも、問題ある投稿を発見したら、即座に行動を起こす必要があります。

適切な対策を講じるためにも、早めに弁護士に相談して対応することをお勧めします。

この解説のポイント
  • 発信者情報開示請求には、3ヶ月〜1年ほどの期間がかかる
  • 開示請求は段階的に進み、それぞれ数ヶ月の期間を要することが多い
  • ログ保存を早期に行うため、発見した直後に弁護士に相談すべき

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