インターネットを活用して収益を得る「ネット起業」は、初期投資が少ないため参入しやすく、その中でも、アフィリエイトをしている企業や個人は多いでしょう。
アフィリエイトには、自社で商品開発をしなくても、他社のサービスを紹介して収益を得られるメリットがあります。しかし、手軽な反面、法的なリスクを理解せずに参加する人は少なくありません。特に注意すべきは、宣伝した商材が違法だったとき、提供者(コンテンツホルダー)だけでなく、アフィリエイター自身も法的責任を負う可能性がある点です。
違法なアフィリエイトや、詐欺的な手法を用いると、被害者に損害賠償を請求されることがあり、責任の大きさによっては、アフィリエイトで得た収益を上回る損失を被ることもあります。
今回は、アフィリエイトが違法となるケースと、アフィリエイターの法的責任について、企業法務に強い弁護士が解説します。
- アフィリエイトで過大な収益を求めると、違法行為に走る危険がある
- 違法アフィリエイトの責任は、商材提供者だけでなくアフィリエイターも負う
- 単なる広告宣伝、紹介と甘く見ず、アフィリエイトのリーガルチェックが必要
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アフィリエイトとは
はじめに、アフィリエイトのビジネスモデルについて解説します。
アフィリエイトとは、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)と呼ばれる広告代理店を通じて、商材の提供者(コンテンツホルダー)と提携し、アフィリエイターが自身のSNSやブログ、人脈などを活用して商品・サービスを紹介、宣伝する仕組みです。
そして、その紹介を通じて購入や契約に結びついた場合に、成果報酬(アフィリエイト報酬)が支払われるというビジネスモデルです。
アフィリエイトは、インターネット環境と最低限の知識があれば、誰でも手軽に参入できる点が特徴で、ネットの普及と共に増加しています。海外投資、仮想通貨、FX、不動産、恋愛、ライフハックなど対象となる分野は多岐にわたります。
アフィリエイターとは
アフィリエイトで収益を得る人を、アフィリエイターと呼びます。
アフィリエイターを介して商材が購入された場合、商材提供者から、その収益の一部が販売手数料として支払われます。アフィリエイターには法人や企業も存在しますが、フリーランスや個人事業主も多く活動しています。参入障壁が低いため、本業として専念している人だけでなく、会社員や主婦の副業となっているケースもあります。
アフィリエイトのメリット
アフィリエイトの最大のメリットは、初期投資がほぼ必要ない点です。
大きな設備投資を必要とせず、自宅にいながらでも収益を得ることが可能なので、手軽にスタートできます。ノウハウを身につけ、効果的な運用ができれば、大きな収益を上げることも可能です。中には、スマートフォン1台で高収入を実現しているアフィリエイターも存在します。
また、匿名で活動できる点も、特に副業として始める会社員などにとっては大きな利点です。このような背景から、アフィリエイト市場への参入者は年々増加しています。
アフィリエイトのデメリット
一方で、アフィリエイトにはデメリットも存在します。特に重要なのが、「法的責任を負う可能性がある」という点です。高い収益を得られる反面、リスクも見逃せません。
販売促進の手段としてアフィリエイトを利用する商材提供者の中には、詐欺的な商材で不当に利益を上げる者もいます。違法な商材を拡散した結果、購入者からクレームを受けたり、損害賠償や返金を請求されたりするケースも少なくありません。
アフィリエイトは、適切に運用すれば大きな利益を得られるビジネスである一方、顧客からの問い合わせやクレーム対応に追われ、法的トラブルに発展するケースも多く報告されています。収益性だけでなく、法的なリスクをしっかりと理解し、慎重に取り組む姿勢が求められます。
違法なアフィリエイトの問題
次に、違法なアフィリエイトの問題点について、解説します。
「アフィリエイトは紹介に過ぎないので、商品やサービス自体の法的責任は負わない」と過信しているアフィリエイターもいます。しかし、ビジネスとして真剣に取り組むなら、この認識は非常に危ういと理解すべきです。
社会問題化する違法アフィリエイト
違法なアフィリエイトは、現在では社会問題として広く認識されています。中でも「情報商材詐欺」と呼ばれる手口は、過去にメディア報道され、大きな注目を集めました。
アフィリエイトでは、消費者の不安や期待を煽り、事実と異なる内容に基づいて高額な商材を販売しても高収益を得られます。その結果、過大な収益を狙いすぎると、消費者トラブルの温床となってしまうケースも少なくありません。
また、アフィリエイターが作成したブログ記事やレビューをきっかけに、名誉毀損や不当表示などを巡って訴訟となった事例も存在します。法律知識に基づく十分なリスク管理なくアフィリエイトを行うのは、大きな危険を伴うと自覚すべきです。
アフィリエイターへの監視の強化
違法アフィリエイトの増加を背景に、アフィリエイターへの監視や規制も厳格化しています。例えば、2012年11月1日に設立された日本アフィリエイト協議会は、悪質なアフィリエイターに対するブラックリストの作成を進め、官公庁や報道機関と連携して排除を始めました。
国民生活センターの統計によれば、「情報商材の購入に関する苦情」は2007年は3件であったものの、2009年に146件、2012年は150件と急増しています。これを受け、国民生活センターは、情報商材の詐欺被害に遭ったら、速やかに消費生活センターに相談するよう注意喚起しています。
アフィリエイターにも法的責任が及ぶ
これまで、アフィリエイト業界では「単なる紹介者であれば法的責任は生じない」と考える人もいました。しかし、現在では、そのような主張が通用しないケースも増えています。
商材が違法だとは知らなかった場合でも、アフィリエイターに過失があったと判断されれば、法的責任を問われるおそれがあります。故意かどうかを問わず、紹介者としての立場で一定の責任を負うという流れは、今後ますます強まると考えられます。
アフィリエイトを行う際は、紹介する商材の内容や販売方法について十分に確認し、法的リスクをしっかりと認識して行動することが不可欠です。
違法なアフィリエイトの「販売責任」について
次に、違法なアフィリエイトに関し、アフィリエイターが負う販売責任について解説します。
アフィリエイターは、「商品の宣伝を行うだけで、商品の内容に関する法的な責任は負わない」と考える人も少なくありません。しかし、違法なアフィリエイトによる消費者トラブルが社会問題化する中で、アフィリエイタも責任が問われる事例が増えています。
インターネットは完全な匿名ではない
アフィリエイトの多くは、インターネット上で行われますが、「ネットだから匿名性が守られている」という認識は誤りです。実際は、SNSや匿名掲示板など、ネット上の発信は、発信者情報開示請求の手続きにより、IPアドレスなどのアクセスログから発信者を特定できる可能性があります。
実際に、違法性が疑われるアフィリエイトサイトの開設者について、サーバー運営会社に対する情報の開示を命じた裁判例も存在します。開示されれば損害賠償請求に発展する可能性があるので、アフィリエイターといえど無責任ではいられません。
違法なアフィリエイトに加担すると損害賠償請求される
アフィリエイトによって紹介した商材に違法性があり、それによって購入者に損害が生じた場合、当然ながら商材提供者に責任が生じます。しかし、それだけではなく、アフィリエイターにも損害賠償責任が及ぶケースがある点に注意が必要です。
特に、商材の違法性を知りながら故意にアフィリエイトを行った場合、アフィリエイター自身にも重い法的責任が課されます。また、違法性を認識していなかったとしても、注意を怠っていると「過失」があると判断され、損害賠償責任を問われる可能性も否定できません。
宣伝文の内容に注意すべき
アフィリエイターが特に注意すべきなのは、商材提供者が用意する宣伝文の内容です。
商材提供者の中には、より多くの販売につなげるために、誇大表現、煽り文句を多用した派手な宣伝文をアフィリエイターにそのまま使用するよう指示しているケースもあります。チェックせずに使用すると、アフィリエイター自身が不当表示や虚偽広告の責任を問われるリスクがあります。特に、宣伝文の内容が虚偽である、商品やサービスの実態と異なると知りながら使用した場合は「故意」があり、法的責任がより重いものと評価されるでしょう。
なお、「商材提供者から指示された内容をそのまま使っただけ」という反論は、法的責任を免れる理由にはなりません。紹介者としての立場でも、内容の真偽や表現の適法性を判断する責任があると考えるべきだからです。
違法なアフィリエイトの「表現の責任」について
次に、違法なアフィリエイトの責任のうち、表現に関わる法的責任を解説します。
アフィリエイトでは様々な表現が用いられますが、違法の疑いがある商材ほど、消費者の購買意欲を強く刺激する、過激で誇張された表現を使用する傾向にあります。誤解を招く表現によって消費者からクレームが出ると、思わぬトラブルの火種となります。
誇大な表現
アフィリエイトで特に注意すべきなのが、「誇大な表現」です。
例えば、「他社の○○商品と比較して圧倒的な効果があります」といった断定的で過剰な表現は、裏付けのない限り、誇大広告と判断される可能性があります。
このような表現を使用する場合、客観的なデータや実験結果などの明確な根拠が必要です。根拠のない「第1位」「No.1」「日本一」などの順位付けや、「最安値」などの比較表現も問題視されやすく、不適切な広告とされるリスクがあります。また、商品の成分表示や効果効能について、実際の内容と異なる記載をしてはいけません。
特に、食品・化粧品・サプリメントなど、健康や身体に関わる商材は、消費者の安全を害する危険があり、薬機法などの関連法令に基づき、行政による厳格な監視と取り締まりが行われています。
虚偽の表示
次に注意すべき表現として、「虚偽の表示」が挙げられます。
事実に反する虚偽の情報を記載した場合には、法的責任が発生します。例えば、他のサイトで紹介されていた文章をコピーして使用し、その内容が事実に反していたり、虚偽の情報を含んでいたりする場合、損害賠償の対象となる可能性があります。
特に注意すべきなのは、ネット上に散見される「体験談」や「レビュー」です。体験談から、都合の悪い内容を削除し、良い部分だけを切り取って掲載する手法は、消費者に誤認を与えるおそれがあり、虚偽表示と判断される可能性があります。
アフィリエイトでは、「クリックさせたい」「購入につなげたい」という一心で、つい表現を誇張したり、事実を歪めたりしてしまいがちです。しかし、販売者やアフィリエイターの利益を優先するあまり、消費者に不利益を被らせれば、法的責任は免れません。
「口コミのやらせは法律違反?」の解説

著作権法律違反
アフィリエイトを適法に行うには、著作権に関する法律知識も不可欠です。
著作権とは、人の創造的な発想を保護する権利であり、著作権法により保護の対象や利用のルールが定められています。アフィリエイトでも、他人の文章や画像、動画、音楽などを無断で使用したり、コピー・改変したりする行為は、著作権法違反のおそれがあります。
著作権法10条は、著作物の例として以下のものを挙げています。
著作権法10条
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
著作権法(e-Gov法令検索)
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
特に、他サイトの記事をそのまま転載する、画像を出典を明示せず使用するといった行為は、知らないうちに違法行為となっていることがあります。
アフィリエイターとして活動する以上、他人の著作物を利用する際は必ず許可を取るべきです。たとえ収益目的でなくても、著作権を侵害すれば損害賠償や削除請求の対象となる可能性があるため、十分な注意が必要です。なお、引用の要件を満たせば著作権侵害にはなりませんが、その要件は厳格であり、出所を明示し、主従関係を明確にするといった条件を遵守しなければなりません。
犯罪となる違法なアフィリエイト
最後に、アフィリエイトが犯罪となるケースについて解説します。
アフィリエイトは収益を獲得する手段なのに、違法な手法を用いた結果、損害賠償請求によって利益を失っては元も子もありません。刑事責任が問われるということは、犯罪行為に該当するということで、最悪は、逮捕・送検され、刑事罰を科されて前科がつく可能性があります。
詐欺罪
アフィリエイトに関連する、最も典型的な刑事事件は「詐欺罪」です。
例えば、実際は使用していない商材について、「驚くほどの効果があった」と虚偽の体験談を記載し、消費者を誤認させて商品を購入させた場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
詐欺罪になると、刑法246条によって「10年以下の懲役」が科されます。虚偽の情報によって購入者が騙され、その結果としてアフィリエイターが報酬を得た場合には、詐欺の正犯、もしくは、幇助犯としての刑事責任を問われることもあります。
景品表示法違反
景品表示法は、消費者に対して実際よりも著しく優れていると誤認させる表示(優良誤認表示)、著しく有利であると誤解させる表示(有利誤認表示)を禁止します。違反した場合、行政から措置命令が出され、これに従わなかった場合「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます。
また、最近問題視されるステルスマーケティング(ステマ)についても、広告であることを隠して商品を宣伝する行為は、景品表示法違反となる可能性があります。アフィリエイトでは、誤認を与える形での宣伝は避けなければなりません。
不正競争防止法違反
不正競争防止法は、企業間の公正な競争を維持するための法律です。
アフィリエイト活動においても、公正な競争を阻害する不適切な方法でされた広告宣伝は、不正競争防止法違反のおそれがあります。例えば、比較サイトで根拠のない優劣を記載したり、競合他社の商品・サービスを不当に貶める内容を掲載したりと言った行為です。
これらの行為は、たとえ事実に基づいていなかったとしても、「第三者に誤認を与える内容」であれば、違反とされます。特に、意図的に競合を貶める表現を使用した場合は、悪質性が高いと判断され、刑事責任が重くなるおそれがあります。
まとめ

今回は、違法なアフィリエイトと、アフィリエイターの法的責任を解説しました。
アフィリエイトは、初期費用を抑えて収益を上げやすく、起業直後のビジネスモデルとして有効です。実際に、アフィリエイトを主力とするベンチャー企業やスタートアップも多く存在します。しかし、「紹介だけなら法的な責任はない」と誤解しやすい点は注意を要します。宣伝した商品やサービスが違法であった場合、アフィリエイター自身が法的責任を問われるリスクがあります。
アフィリエイターが自身の法的責任を自覚していないケースは少なくありません。特に個人事業主や小規模な会社だと、適法性を検討せずに始めてしまう例も多いですが、購入者からクレームを寄せられた段階では、既にトラブルは顕在化しており、迅速な対処が必須となります。
紹介した商材に関して法的な責任が問われることに不安を感じているアフィリエイターの方は、トラブルが深刻化する前に、弁護士へ相談するのがお勧めです。
- アフィリエイトで過大な収益を求めると、違法行為に走る危険がある
- 違法アフィリエイトの責任は、商材提供者だけでなくアフィリエイターも負う
- 単なる広告宣伝、紹介と甘く見ず、アフィリエイトのリーガルチェックが必要
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