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炎上トラブルの原因となった社員の、社内処分のポイント

インターネットやSNS上の投稿、従業員の不祥事等を原因として、悪評やクレーム、噂が広まり、炎のように炎上することを、「炎上トラブル」、「炎上騒ぎ」といいます。

炎上騒ぎの事後対応が一段落したら、次に検討すべきことが炎上トラブルの原因を作った社員の処分です。事前予防、社員教育が不十分で炎上トラブルになったことには、会社の責任ですが、問題行為を行った社員に悪意がある場合、その社員にも責任追及する必要があります。

今後、同様のトラブルが再発することを防止するためにも、「炎上」の原因を作る問題行為を行った社員に対して、厳しい処分が必要な場合もあります。また、他の社員への示しも必要です。

今回は、「炎上」トラブルの原因となる問題社員に対する、会社としての処分について、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士が解説します。

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「炎上」の際に検討すべき社内処分とは?

炎上トラブルが起こってしまったとき、その原因となった問題社員に対する社内処分としては、どのようなことが考えられるのでしょうか。

「炎上」を起こしてしまったということは、「会社の企業秩序を乱した。」ということを意味します。企業の秩序を乱す行為に対して、会社が社員に対して下す制裁が「懲戒処分」です。

懲戒処分には、一番厳しい「懲戒解雇」から、比較的軽い「譴責・戒告」まで様々な種類があります。一般的に、軽い懲戒処分から順に、次のような処分が一般的です。

  • 譴責
  • 戒告
  • 減給
  • 降格
  • 出勤停止
  • 諭旨解雇
  • 懲戒解雇

炎上行為の原因となった社員に対してどの程度の懲戒処分をすべきかは、問題行為の程度に応じて判断する必要があります。

問題行為の程度に対して、重すぎる懲戒処分を下した場合には、社会的相当性を欠くものとして、その懲戒処分自体が違法無効となるおそれがあるため、慎重な判断が求められます。

「炎上」を引き起こした社員に社内処分を下すときのポイント

では早速、「炎上」の問題を作ってしまった社員に対して、社内処分を下すときのポイントについて、弁護士が解説していきます。

社内処分を決めるときにも「事実の確認」が最重要です。

ただし、「事実の確認」は、炎上トラブルが起こった際に真っ先に行わなければならないことですから、原因となった社員の処分を決める段階では、既に十分に行われていなければなりません。

誤った事実関係をもとに懲戒処分、解雇等の社内処分を下してしまうと、その社員から労働審判や裁判で争われた際に、会社にとって不利な結論となるおそれがあります。

就業規則に基づいて処分する

炎上を起こした社員に対する社内処分を検討するにあたり、重要となるのが「就業規則」です。

就業規則が存在しなかったとしても、雇用される労働者が会社に不利益な行為をしてはならないのは当然です。そのため、労働者は、会社に対して誠実であり、会社の名誉を棄損してはなりません。

しかし、どのような行為がこの誠実義務に違反し、会社に損害を与えるのかについて、就業規則に明記し、従業員に対してあらかじめ周知徹底しておくべきです。

「懲戒処分」を行う会社の権利(懲戒権)は、労働契約(雇用契約)に当然付随するものではありません。そのため、就業規則、雇用契約書等にその処分理由、処分内容が記載され、労働契約(雇用契約)の内容になっていなければ、懲戒処分を行うことはできません。

SNSガイドラインを参照する

就業規則は、社内の一般的ルールを定めるものです。そのため、就業規則に定められている「懲戒理由」には、炎上トラブルを引き起こしたケースだけでなく、会社内で起こるあらゆる企業秩序違反が網羅されています。

就業規則に対し、インターネットトラブルやSNS上の問題行為について、よりわかりやすく社員に理解してもらうため、「SNSガイドライン」を作成して教育することがお勧めです。

SNSやインターネット上で、どのような行為をすることが違法となるのか、法律知識のない社員であっても具体的にイメージしやすいよう、わかりやすく記載してください。

社内でSNSガイドラインを作成し、教育を徹底している場合、懲戒処分、解雇等の社内処分を検討する際にも、「SNSガイドライン違反」の事実が社員の責任をより重く評価することとなります。

予防措置・再発防止措置を講じる

懲戒処分などの社内処分をするときには、会社が「炎上」などのネットトラブルを予防するために、どれほど努力していたのかも重要です。

会社が全く予防の努力をしなかった結果「炎上」が起こったのであれば、その「炎上」が起こった責任をすべて社員に押し付けて懲戒処分をすることは許されないからです。

懲戒処分が有効となるためには、「合理性」と「相当性」が必要とされていますが、会社が「炎上」を防ぐ対策を一切していないのに懲戒をすることは、「合理性」「相当性」がないともいえます。

「炎上」を引き起こした社員に損害賠償請求できる?

「炎上」トラブルが起きてしまった場合、会社に与える被害は非常に大きいと言わざるを得ません。会社が「炎上」によって受けるダメージは、次のようなものです。

  • 炎上騒ぎを鎮静化させるため、対応する社員の人件費がかかる。
  • 炎上騒ぎに対応する間、会社の業務がストップする。
  • 炎上の結果企業イメージが低下し、売上が低下する。

そこで、「炎上」で被った被害を、炎上の原因を作った問題社員に対して損害賠償請求することを考える経営者の方も多くいます。

しかし、「炎上」を起こした社員に損害賠償請求することは、会社に「弱いものいじめ」というイメージを付けないか、「二次災害」を起こさないか、慎重に検討してから行ってください。

損害賠償請求をするかどうかは、次の考慮要素を参考に検討します。

  • 炎上トラブルの原因となった問題行為の悪質性、動機、理由
  • 問題行為を行った回数、頻度
  • 問題行為を行った社員の責任の重さ、役職、地位
  • 会社が炎上トラブルの予防措置を徹底していたか(研修、教育、就業規則など)

会社が何らの予防措置も事前に講じていないにもかかわらず、「炎上」が起こった責任をすべて社員に押し付けるかのようなイメージがつくと、会社経営に更なる悪影響となります。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、炎上トラブルが不幸にして発生してしまい、会社が被害を被ったときに、問題行為を行った社員に対してどのような社内処分を下すべきかについて、弁護士が解説しました。

厳しく対処し、再発を防止するため、一定の処分が必要な場合が多いものの、ポイントを理解せず闇雲に処分すれば、逆に労働者から訴えられてしまうリスクもあります。

炎上トラブル、社内の労務管理にご不安がある経営者の方は、事前に、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士にご相談ください。

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