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建設業許可なしの下請けは違法!建設業許可なくできる工事はどこまで?

建設業は許認可ビジネスなので、建設会社は、建設業法に基づく「建設業許可」を取得する必要があります。特に、一定規模以上の工事を請け負うには、この許可が不可欠です。

建設業許可の目的は、主に顧客保護にあります。建設業は高度な専門知識と経験を要するため、一定の基準を満たす業者にのみ許可を与えることで、適正な業務遂行と高品質なサービス提供を担保する仕組みとなっています。行政が許可を与えることで、その企業が信頼に足る事業者であることを公的に証明する意味もあります。

また、建設業のビジネスでは、元請業者と下請業者の重層的な請負関係が形成されます。この場合、自社が許可を取得するだけでなく、取引先である下請業者についても適切に許可を取得しているか確認することが重要です。無許可の業者に発注すれば、自社の信用問題に発展し、最悪は、顧客の信頼を失う結果となりかねません。

今回は、建設業許可を持たない業者との違法取引を回避するため、注意すべきポイントについて、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 建設業許可は、施工品質を担保し、悪質な無許可業者から顧客を守るため
  • 一定規模以上の工事には、建設業許可の取得が必要となる
  • 建設業許可なしに工事を担当することは、たとえ下請けでも許されない

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なぜ建設業許可が必要なのか

建設業許可が求められる最大の理由は、発注者、つまり顧客の保護にあります。

発注者にとって最も重要な利益は、工事の施工品質の向上です。

建設会社が顧客から選ばれるには、施工品質の高さが何よりも重視されるといっても過言ではないでしょう。高品質な施工は顧客の信頼に繋がり、ひいては自社の良好な評判や、次の受注機会を得られるといった好循環を生み出します。

しかし、顧客となる発注者は、必ずしも建設業界の知識、経験が十分ではありません。

そのため、建設工事の品質や、施工会社の実力を、正確に判断するのは困難です。発注者が得られる情報にも限りがあり、契約前にその会社の施工能力を見極めるのは現実的ではありません。そこで、発注者が信頼できる業者を選べるようにするための制度として、建設業許可制度が設けられています。建設業法では、一定以上の規模の工事を行うには建設業許可の取得が義務付けられています。

このような趣旨からして、建設業許可を要する工事は、不都合があると顧客の損失の大きい、一定規模以上の工事を対象としています。

建設業許可なしの下請けは違法

自社が建設業許可を取得すべきかどうかは、請け負う工事の内容や規模によって決まります。

工事を元請け・下請けという重層的な請負関係で進める場合、自社だけが建設業許可を取得していれば良いというわけではありません。

下請業者が建設業許可を取得していなければ、工事全体の品質確保は難しく、結果として発注者の利益を損なうおそれがあります。そのため建設業法は、一定規模以上の建設工事について、許可のない業者に下請けを発注することを禁止しています。

建設業では「丸投げ」と呼ばれる無責任な外注は禁じられていますが、実際には多くの工事が下請けによって遂行されています。したがって、発注者にとっても、下請業者が適切な許可を取得しているかどうかが、重要な関心事となります。

一定規模を超える建設工事について、無許可の下請業者に発注してはなりません。

下請契約の締結後に、下請業者が無許可であることが判明した場合にも、直ちに契約を解除し、取引を中止すべきです。建設業法に違反して無許可業者に下請けを発注した場合、元請けとなった事業者にも、7日以上の営業停止処分の制裁が下されるおそれがあります。

したがって、リスクを回避するためには、自社だけでなく、取引先である下請業者についても、建設業許可の有無を事前に確認し、コンプライアンス意識を高く保つことが重要です。

例外については「建設業許可が不要な工事」参照。

建設業許可を必要とする工事とは

建設業許可について定める建設業法は、第1条の目的規定で、適正な施工の確保、発注者保護という趣旨を明示しています。

建設業法1条(目的)

この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

建設業法(e-Gov法令検索)

施工の品質向上には、発注者と施工者、元請業者と下請業者の間で、適切かつ公正な取引関係が築かれることが不可欠です。この基盤となるルールを定めるのが建設業法であり、その一環として、どのような工事に建設業許可が必要か(または不要か)についても規定しています。

建設業許可が必要な工事

顧客保護の観点から考えれば、建設会社にとって建設業許可を取得するに越したことはありません。一定の工事には許可不要ではあるものの、顧客の信頼を得る要素となるからです。

確かに建設業法では、「軽微な工事」のみを担う建設会社なら、建設業許可は必須ではありません。ただ、一般消費者には「建設業=許認可が必要な業種」という認識があり、無許可のまま建設工事を行い続けることは、たとえ違法でなくても、企業としての信用リスクがあります。

実際に、工事に不具合が生じたり、顧客からのクレームが発生したりした際に、許可を持たない業者であったことが問題視され、社会的批判や炎上に繋がる危険もあります。

企業の不祥事における適切な対応」の解説

建設業許可が不要な工事

建設業法では、一定の規模を超えない工事なら、建設業許可は不要とされています。このように許可を得なくても遂行できる建設工事を、建設業法では「軽微な工事」と定義します。

軽微な工事に該当する要件は、次の通りです。

工事の種類工事の規模
建築一式工事1,500万円未満の工事
又は
延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
その他の工事500万円未満の工事

建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとで建築物を建設する工事のことです。例えば、建築確認が必要となる新築工事などが典型例であり、一方で、リフォーム業者の行う内装工事などは建築一式工事に当たらず、その他の工事になります。

したがって、請負代金が500万円未満の工事のみを行うリフォーム業者であれば、建設業許可は法律上不要と考えられます。

建設業許可のない業者に対する制裁

建設業許可を受けないままに、軽微な工事以外の建設工事を請け負った場合には、厳しい制裁が科されることになります。処分の内容は、次のように定められています。

  • 3日以上の営業停止処分
  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法47条)
  • (法人の場合)1億円以下の罰金(建設業法53条)

このように、無許可で工事を請け負うことは、法的リスクが極めて高く、企業経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

したがって、顧客の信頼を勝ち取り、長期かつ安定的に建設会社を経営していくためには、建設業許可の取得は避けては通れない重要なステップといえるでしょう。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、建設業許可の重要性と、無許可の下請業者を使った責任について解説しました。

ビジネスにおいては、顧客からの信頼が何より重要であり、建設業においても例外ではありません。建設業許可は、この信頼を支える基盤であり、顧客保護の観点からも、建設業に従事する企業にとっては欠かせない制度です。

建設業許可の取得手続きは、行政書士などの専門家に依頼して円滑に進めることが可能です。

建設業を始める際には、起業当初の段階から法律面についての適切な配慮が求められます。許可の取得を含め、法令遵守の姿勢を明確に示すことが、企業の信頼性を高める第一歩となるでしょう。

この解説のポイント
  • 建設業許可は、施工品質を担保し、悪質な無許可業者から顧客を守るため
  • 一定規模以上の工事には、建設業許可の取得が必要となる
  • 建設業許可なしに工事を担当することは、たとえ下請けでも許されない

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