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会社は社員のSNSを監視できる?監視するための具体的な方法も解説

Facebook、Twitter、Instagramなど、SNSが流行し、社員のなかでもSNSを1つも利用していないという人は少ないのではないでしょうか。SNSは、個人の生活に根付いており、そのなかは個人情報やプライバシーが数多く詰まっています。会社としては、問題社員を出さないよう、社員個人のSNSを監視したいという希望もあるでしょう。

一方、SNSで拡散されて認知度が高まれば、企業の宣伝戦略としても有効。企業の公式アカウントを作成するのはもちろんですが、社員の個人アカウントでも広告宣伝に協力させようと考える会社も少なくありません。

しかし、社員によるSNSの利用は、リスクでもあります。不適切な利用があると、たとえ社員個人のSNS上の発信だとしても会社全体の信用に関わります。炎上すれば、企業イメージの低下や、業績の悪化につながるデメリットもあります。このような危険を防止しようと、会社がますます社員のSNSの監視を強め、プライベートへの過度な干渉となる危険もあります。

今回は、会社が社員個人のSNSアカウントを監視したり、利用を制限、禁止したりすることの法的な問題について、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 会社が社員のSNSを監視しなければ、不適切利用による信用低下のリスクがある
  • 業務上の必要性があり、合理的な範囲なら、SNSの利用を監視し、制限できる
  • SNSの全面禁止は違法の可能性があるが、許可制、届出制やルールの明確化が重要

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会社が社員のSNSを監視すべきケース

現代のインターネット社会において、企業経営においてSNSの力は無視できません。冒頭の解説のとおり、SNSを活用した広告戦略には大きなメリットがある一方で、リスクも内在しています。特に、飲食店や美容室など、BtoCのビジネスモデルでは、SNSの活用が重要な位置を占めます。

まず、SNSのリスクと、会社が社員のSNSを監視すべき2つのケースを解説します。

SNSの不適切利用の監視

1つ目が、社員のSNSの不適切利用を監視すべきケースです。

SNSを甘く見ると、意図していなくても、企業の営業秘密やノウハウ、顧客情報がうっかり漏洩してしまうことがあります。社員の投稿した不適切な動画や写真が、企業イメージを低下させることもあります。顧客や取引先に迷惑をかけるだけでなく、炎上すれば、ひいては、社会問題化してしまいます。

SNSの業務使用の監視

SNSは、BtoCのビジネスモデルでは、有効なマーケティング手段の1つです。そのメリットを最大限に引き出すには、社員に指示し、SNSを積極的に業務で活用させることとなりますが、その際、デメリットが拡大しないよう、監視は必須です。

ただ、社員の個人用のSNSアカウントは、私生活と混同してしまうリスクが高いです。このことは、社員の気の緩みを招いて不適切な利用を助長するだけでなく、情報の受け手からしても、社員個人の発信と誤解する危険があります。監視を強めれば、プライベートへの過度の干渉として違法になる危険もあります。

業務使用としSNSを活用するなら、業務用のアカウントを新たに開設し、公式アカウントとしてきちんと管理するのがお勧めです。少なくとも、社員の個人用SNSのIDやパスワードを預かったり、投稿などを指示したりするのは危険性が高いです。

会社は社員のSNSを監視できる?

会社が、社員のSNSを監視することは、個人のプライバシーへの不当な介入といわれるおそれがあります。公私混同は避けなければならず、業務とプライベートは、区別されるべき。したがって、会社によるSNSへの干渉は、限定的に考えなければなりません。

しかし、SNSが企業経営に与える影響は大きく、社員による不適切な利用は、会社にダメージを与えます。業務に支障が生じるおそれがある以上、社員のSNSをある程度は監視しなければなりません。このとき、SNSのリスクを減らすべく、どの程度の制限が可能なのかが問題となります。

会社が、社員に業務命令をする権利があるのは、業務にとって必要性のある範囲に限られます。逆に、業務に必要な、合理的な制限ならば、会社は社員の行動を制限するような命令ができるのです。

SNSの監視も、業務に必要で、かつ、合理的な制限なら、個人利用のSNSでも制限できるケースがあります。

例えば、次のようなSNSの利用を社員がしないよう、会社は監視しておくべきです。

  • 企業の営業秘密をSNS上に投稿しないよう監視する
  • 顧客情報など、個人情報をSNS上に投稿しないよう監視する
  • 会社と個人の意見が混同されかねない意見表明をしないよう監視する
  • 会社や社長の誹謗中傷をしないよう監視する
  • 企業イメージの低下につながる不適切な写真、動画を公開しないよう監視する

良識ある大人であれば当たり前のマナーだと思うことでも、時と場合によってはついうっかりしてしまうこともあります。バイトテロやバカッター問題などの報道は、後から見ればそのリスクは明らかですが、行った当時は、将来の予測ができていなかったのかもしれません。一見すると当然のことでも、社員全員にルールを周知徹底し、守るよう監視が必要です。

会社が社員のSNSを監視する方法

次に、会社が社員のSNSを監視するための、具体的な方法について解説します。

社内の監視体制を整備する

社員がSNSを不適切に利用すると、企業経営に与える影響が大きいことは、バイトテロ事件、バカッター問題などでもあきらかになっています。そのダメージを考慮すれば、社内に担当者を設置したり、外部の専門家に依頼したりなどして、対策を打たなければなりません。

企業がネット上の炎上を監視する方法は、次に解説します。

就業規則にルール化し、周知徹底する

社員によるSNSの利用に制限を加える場合でも、社員個人の行為について全て監視するのは不適切です。プライベートの過度な監視となり違法と評価されるおそれがあるのはもちろん、会社側にとっても過度な負担となっていまいます。そのため、一定のルールを設けて周知し、社員に自発的に守らせる努力が必要となります。

社員全体に遵守させるべきルールは、就業規則などの規程類に定めるのが通常です。就業規則にSNS利用に関する規定を置き、社員に周知しましょう。ベンチャー企業や飲食店など、社員のSNS利用が活発であろうと予想される業態なら、SNS利用規程やマニュアルなど、特別な定めを別に設けて、わかりやすく説明するのがお勧めです。

教育し、違反したら注意指導する

就業規則にルールを置くだけで満足せず、その運用もしっかり行う必要があります。規程類は、社員にわかる場所に設置して、周知を徹底するようにします。あわせて、SNS利用研修を行うなどして、「不適切な利用がどのようなものか」を理解させ、「ルールに違反した場合に制裁がある」と意識付けをします。

SNSの不適切利用は、若年の社員でも年配の社員でも起こす可能性があるので、油断せずに指導しなければなりません。

  • 若年の社員によるSNSの不適切利用のリスク
    SNSの利用に慣れているため、勤務先のデメリットを甘く見て、軽く考えてしまう
  • 年配の社員によるSNSの不適切利用のリスク
    SNSの知識がないため、公開範囲やリスクを知らずに利用してしまう

会社が監視すべき社員によるSNS利用のうち、その代表例は、著作権侵害や肖像権侵害、営業秘密の漏洩のような、明らかに法律に違反していて、業務上の支障の大きい行為です。しかし、これらの行為が違法であることはよく理解されており、実際に行う人は少ないかもしれません。

重要なのは、これら明らかに違法で禁止された行為だけでなく、必ずしも違法とは言い切れないが、すべきでない行為が、SNSの利用においては起こりうることを指導しなければなりません。

例えば、匿名掲示板を荒らしたり、特定の思想に偏った情報発信を行ったりといった行為は、明白に違法でなくても、炎上リスクがあり、慎むべきです。

会社は社員のSNSにどこまで干渉できる?

最後に、会社が社員のSNSを監視するとき、どこまで干渉できるのかを解説します。

前章で説明のとおり、干渉できる範囲は、企業側の業務上の必要性と、社員側のSNSを利用する権利の調整によって決まります。業種や業態、役職、社員の責任の程度によってケースバイケースですが、不適切な利用をされると企業経営への影響が大きいと考えられるほど、より厳しい利用制限を命じることができます。

SNSの利用禁止は違法の可能性が高い

会社の希望だけを考えれば、一切禁止としたいという会社もあるでしょうが、行き過ぎと言わざるを得ません。SNSはもはや、単なる遊びではなく、個人の情報発信や表現の場となっており、日常生活の一部となっています。完全な禁止は、私生活への過度な干渉としてパワハラとなるだけでなく、人権侵害と言われるおそれもあります。

監視が厳しすぎると、労働者からの慰謝料請求など、労使トラブルに発展する危険もあります。

SNSの利用を許可制、届出制にする

全面禁止が妥当でないとしても、社員のSNSによるリスクを減らすための方法を検討しなければなりません。全面禁止より緩やかに、企業の目的を達成する手段として、許可制、届出制を検討してください。

FacebookやTwitterなど、有名なSNSなら、既にアカウントを取得している社員も多いことでしょう。今から禁止すれば、アカウントを削除させることになりますが、現実的とはいえません。せめて会社が監視し続けられるよう、アカウントを会社に届けさせて、定期的に巡回し、不適切な情報発信がないかどうかチェックするのも効果的です。

許可制、届出制をうまく機能させるには、社員に正直に申告させるのが必須です。

そのためには、会社に知らせたとしても全面禁止にされたりプライベートに干渉されたりといった不都合がないことを明言し、社員にとってのデメリットを排除する説明をきちんとしておくのが不可欠です。

個人の情報発信だと明記させる

会社が監視すべきリスクとして、社員のSNSが、会社の公式見解であるかのように誤解され、炎上を招くケースが挙げられます。もちろん、不適切な情報発信、誤解を招く意見、反道徳的な写真や動画は、SNSに載せるべきではありません。しかし、社員個人にとっても、SNSで意見表明をするのは自由です。

このような混同を避けるには、情報発信の際には、個人の意見、考えであることを明らかにするよう指導するのが大切です。また、Facebookのように実名を前提としたSNSを利用する際には、勤務先として会社名を出すのを許可制とする方法も有効です。

社内でのSNS利用は禁止すべき

社内でのSNS利用が、社外に出すべきではない情報の漏洩につながるケースは、特に監視し、回避すべきリスクです。そのためには、社内でのSNSの利用を禁止するという方法が有効です。

会社には、自社の施設を管理し、秩序を維持する権利があります。これを法律用語で「施設管理権」と呼びます。施設管理権に基づけば、社員の人権といえど一定の制限を加えることができます。社内でのSNSの利用が、業務の支障となるケースが想定されるならば、社内でのSNSの利用を禁止するのに、一定の合理性があります。

当然ながら、労働契約を締結する社員は、業務時間中は職務に専念しなければなりません(職務専念義務)。そのため、会社の利用する業務用の端末からは、SNSにアクセスできないようブロックする方法も有効です。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、会社が、社員のSNSを監視してもよいのか、その違法性や対策などを中心に解説しました。

ネット社会の現代で、SNSは、重要な広告戦略の一環である一方で、リスクを拡大させることもあります。会社がこっそりチェックしているとは知らずにSNSを利用した社員にとって、監視されるとプライバシーが完全に透けてしまい不快な思いをすることもあるでしょう。プライベートへの過度な干渉は、パワハラと評価される危険もあります。

とはいえ、バイト社員によるSNSの不適切利用などが、よく報道され、世間を賑わせています。企業経営へのダメージの大きさを考慮すれば、社員のSNSを監視し、利用禁止とは言わないまでも、教育、指導をし、一定の利用のルールを遵守させる必要があります。

特に、退職者による誹謗中傷など、名誉を失墜させる言動が社内で解決できないなら、弁護士への相談がお勧めです。

この解説のポイント
  • 会社が社員のSNSを監視しなければ、不適切利用による信用低下のリスクがある
  • 業務上の必要性があり、合理的な範囲なら、SNSの利用を監視し、制限できる
  • SNSの全面禁止は違法の可能性があるが、許可制、届出制やルールの明確化が重要

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