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インターネット上の風評被害対策とは?事例と解決方法のまとめ

インターネットの普及により、誰もが気軽に情報を発信できる時代となりました。しかし、便利さの反面、事実と異なる情報や誹謗中傷がネット上に拡散される「風評被害」が跡を絶ちません。

風評被害が起こると、個人や企業の名誉・信用が毀損されてしまいます。

「匿名掲示板に心当たりのない悪評を書かれた」「検索結果で過去のトラブルが表示される」など、風評被害のトラブルは、企業の経営や個人の人生に直結する大きな問題です。

今回は、インターネット上の風評被害とその解決方法について、具体的な事例も交えて解説していきます。被害の拡大を未然に防ぐには、弁護士への相談がお勧めです。

この解説のポイント
  • インターネット上の風評被害の拡散を防ぐには、初動対応が鍵となる
  • 風評被害を発見したら、速やかに証拠を保存し、冷静な行動を心がける
  • インターネット上の風評被害に対し、法的手段で削除・開示・賠償を検討する

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インターネット上の風評被害とは

風評被害とは、事実と異なる噂や誤解により、社会的評価が損なわれることです。

特に、インターネット上の風評被害は、匿名性や拡散性が高いために、根拠のない悪評が一瞬で広がり、個人や企業に深刻な影響を与えます。インターネット上の風評被害は、目に見えづらいですが、確実に「信用」という無形の資産を食いつぶしていきます。

例えば、次のようなケースがあります。

  • 事実無根の投稿
    根拠のない内容や誤解に基づく書き込み(例:「ブラック企業だ」「あの人は反社らしい」など)は、真実でなくても「ありそうだ」と思わせる表現で拡散されます。これにより、事実と異なる情報でも、悪影響を及ぼします。
  • 誹謗中傷や名誉毀損
    個人や企業に対する中傷的な投稿は、名誉毀損罪や侮辱罪といった犯罪に該当する可能性があります。たとえ真実でも、表現の仕方によっては違法となります。
  • 企業に対する悪質なレビュー
    飲食店や宿泊施設、サービス業などでは、Googleマップや口コミサイトへの虚偽の低評価レビューが、営業に大打撃を与えます。競合他社や悪意のある第三者による投稿、カスタマーハラスメント(カスハラ)の例も存在します。
  • 検索結果に残る過去のネガティブ情報
    過去に報道されたニュースやトラブル、逮捕歴などは、解決済でも検索結果に長期間表示され続けることがあります。

インターネット上の風評被害は、「放置しておけば自然に収まる」と考えるのは危険です。むしろ、時間が経つほど拡散され、情報が固定され、被害は大きくなってしまいます。

掲示板、ブログ、口コミサイトに投稿された内容は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンにインデックスされ、検索結果に表示されます。X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSで情報が拡散されれば、もはや全部を消すのは困難です。このような悪質な情報は、例えば「会社名+評判」で検索して表示されるようになれば、顧客や取引先、求職者にも強いマイナス印象を与えます。

風評被害の対象となった個人や、企業の経営者は、精神的なストレスを抱え、うつ病などの精神疾患になってしまうケースもあります。

インターネット上の風評被害の具体例

次に、風評被害の具体的な事例について解説します。

いずれのケースも、ネット上の情報が現実社会に与える影響の大きさを物語っており、風評被害に気付いた時点で速やかに対処しなければ、被害が深刻化するおそれがあります。インターネット上の風評被害は、企業・個人問わず、様々な形で起こります。以下では、実際によく相談のあるケースについて、具体例で解説します。

企業が掲示板で中傷されて求人に影響

匿名掲示板で「社長がパワハラ」「残業代が出ない」などと繰り返し投稿された事例です。

そのような労働実態はないのに、この投稿を機に話題となり、検索エンジンでも「会社名+ブラック」といった関連ワードが表示されるようになりました。結果、求職者からの応募が大幅に減少し、翌年の採用活動に支障を来してしまいました。

企業は、匿名掲示板に対して誹謗中傷投稿の削除を依頼したものの、対応されず、最終的には弁護士を通じ、発信者情報開示請求と投稿削除の仮処分を申し立てました。

匿名掲示板の書き込みであっても、繰り返し同じ情報が投稿されると「本当なのではないか」と信じてしまう人も多いものです。企業の社会的評価を低下させる内容は、名誉毀損に該当する可能性もあるため、法的措置を講じることが可能です。

元従業員による悪質な嫌がらせ書き込み

退職後の元従業員が、自社のGoogleクチコミや求人サイトに虚偽の内容を含む低評価レビューを複数投稿したケースです。

「給与未払いがあった」「パワハラが横行している」といった記述は、実際とは異なるものでしたが、これらの投稿がGoogle検索結果で上位表示されるようになり、取引先からの問い合わせが増えるなど、企業の信用に影響を及ぼしていました。

内容からして投稿者が特定可能であったため、悪質な内容について名誉毀損に基づく損害賠償請求を視野に入れ、元従業員に警告書を送付しました。

退職者による内部情報の暴露は、よく風評被害の元となります。

確かに問題を抱えるブラック企業も存在し、それを外部に伝えることは表現の自由の一環でもあります。名誉毀損との関係でも、公益を目的とする情報発信として免責される可能性もあります。ただ、事実無根であったり嫌がらせの目的があったりするなら、違法なのは明らかです。

個人に対する誹謗中傷がSNSで拡散

ある個人が、SNS上で第三者からの誹謗中傷を受けました。

「詐欺師だ」「不倫している」といった虚偽の書き込みを、写真と実名付きで行われた結果、X(旧Twitter)で数百件リポストされ、検索結果にもその投稿が表示されるようになったため、本人は精神的に追い詰められ、社会生活に支障を来しました。

被害者は弁護士へ相談し、SNS運営会社への削除申請と同時に、投稿者の特定を目的とした発信者情報開示請求を行いました。

X(旧Twitter)などのSNSは、相互の交流を目的としているため特に拡散性が高く、その投稿に名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害といった問題があったとしても、炎上すると一気に広がって風評被害になります。このようなSNSを介して拡散されるケースは、特に迅速な対応が必要です。

インターネット上の風評被害を解決する方法

次に、風評被害を解決するための具体的な方法を解説します。

インターネット上の風評被害は、放置すると影響が拡大します。そのため、被害を最小限に抑えるための初動対応からはじめて、専門家への相談や法的措置まで、迅速に進めるべきです。

STEP

被害拡大を防ぐ初動対応

インターネット上の風評被害に気づいたら速やかにすべき初動対応は、以下の通りです。初期の対応の良し悪しが、その後の解決スピードに大きく影響します。

  • エゴサーチなど監視の実施
    インターネット上の風評被害に速やかに気づいて対処するため、ウェブ上の情報を監視し、早期発見することが欠かせません。
  • キャプチャの保存
    削除や変更が行われる前に、該当投稿のスクリーンショット(画面キャプチャ)を保存します。この際、投稿内容だけでなく、投稿日時、URLが画面全体に収まるようにすると、証拠としての価値が高まります。
  • 投稿元の特定
    発信者の名称、ID、IPアドレス、アカウント情報など、Web上で知れる情報があるなら、必ず保存してください。
  • 感情的な反応は避ける
    直接返信したり、感情的に反論したりすると、炎上が大きくなり、状況が悪化する危険があります。
STEP

弁護士への法律相談

風評被害に対し、法的な措置を講じるには、弁護士への相談が不可欠です。匿名掲示板やSNSなど、投稿者が特定できない場合、裁判手続きを要します。

弁護士なら、プラットフォームに対する削除申請だけでなく、仮処分や訴訟、そして損害賠償請求といった法的措置を講じることができます。既に相手が判明しているケースでも、弁護士名義で警告を送る方が、誠実に対応される可能性が高いでしょう。

なお、風評被害対策をする業者の中には、非弁行為(弁護士でない者が報酬を得て法理事務などを担う違法行為)をする悪徳業者もあります。技術的な対策(逆SEOなど)を得意とする業者がある一方で、削除請求や発信者情報開示請求、損害賠償請求といった対応は、弁護士にしか行えません。

STEP

投稿の削除依頼

悪質な投稿による影響を抑えるため、削除を依頼する必要があります。

各サービスやプラットフォームのガイドラインに従って削除請求を行うのが基本です。Googleの口コミ、X(旧Twitter)、Facebook、5ちゃんねるなど、主要なプラットフォームには削除依頼フォームや通報機能が備わっています。

ただ、任意に削除に応じてもらえないケースも多く、削除が拒否された場合は、裁判所に対し、投稿削除の仮処分を申し立てます。仮処分は緊急性がある場合に迅速に削除を実現できる手段です。

ネットの削除依頼の方法」の解説

STEP

発信者情報開示請求

投稿者が匿名であっても、発信者情報開示請求を行うことでIPアドレスや契約者情報を特定することが可能です。この手続きは、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づくものです。

発信者情報開示請求によって投稿者を特定できれば、名誉毀損などを理由とした損害賠償請求も可能です。

なお、この方法で投稿者を特定するには、プロバイダにアクセス情報が保存されている必要があり、その期間は3ヶ月〜6ヶ月程度が目安とされています。

風評被害を訴える方法」の解説

事前に行える風評被害の対策について

次に、企業や個人が日頃から取り組むべき風評被害の対策を解説します。

風評被害は、発生後の対応も重要ですが、それ以上に大切なのが、事前に予防することです。特にインターネット上の風評被害は、一度発生すると拡散が速く、未然にリスクを低減させておかないと、取り返しの付かない事態ともなりかねません。

ネガティブ投稿を監視するツールの導入

ネット上の風評被害は、ネガティブ投稿から始まるケースが多いです。

したがって、風評被害を抑止するには、ネット上でのネガティブ情報を早期に発見して対処するのが重要で、そのために風評リスクをモニタリングできるツールの導入が効果的です。例えば、Googleアラートで社名や氏名などを検索して通知設定をしておいたり、誹謗中傷を監視する業者のサービスを利用して掲示板やSNS、レビューサイトをチェックしてもらったりという対策が考えられます。

これにより、風評が「炎上」に発展する前段階で発見し、対処することができます。

SNS投稿監視サービス」の解説

危機管理マニュアルの整備

万が一、風評被害が発生した場合に備え、対応マニュアルを整備することも重要です。

緊急時の対応を事前に決めておくことは、組織のリスク管理の基本です。事前の備えにより、風評リスクをゼロにはできなくても、影響を最小限に抑えることは十分に可能です。マニュアルに含めておくべき項目は、例えば、次の通りです。

  • ネガティブ情報を検知した場合の連絡先
  • 各部署・担当者の役割分担
  • 弁護士などの専門家との連携方法
  • 公式サイトやPRでの発信方法
  • メディア対応時のマニュアル

インターネット上の風評被害では、初動対応の早さが被害拡大の防止に直結します。マニュアルを定期的に見直し、社内に浸透させれば、的確な初動対応を徹底することができます。

社員教育・SNSリテラシー研修

これからは、従業員一人ひとりの行動や意識が、企業の評価に影響する時代です。

例えば、アルバイト社員の不用意な言動が「バイトテロ」として炎上騒動に繋がったり、私的に利用していたSNS上の発言が原因でトラブルに発展したりするケースもあります。このような事態を防ぐため、社員を教育し、情報発信に関するリテラシーを身に着けさせる必要があります。

例えば、次のような内容について教育、研修をしましょう。

  • SNSの投稿がもたらすリスクの大きさ
  • 匿名アカウントでも責任を問われる可能性があること
  • 企業秘密の重要性
  • 内部情報を安易に共有してはならないという意識

企業としては、入社時研修や定期的な社内研修でこれらの内容を伝えておき、風評リスクを根本から減らすべきです。なお、社員教育のための研修や規程の整備なども、弁護士に依頼可能です。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、インターネット上の風評被害対策について解説しました。

インターネット上の風評被害は、企業や個人にとって大きなリスクとなります。事実無根の投稿や悪質なレビュー、SNSでの拡散、過去の報道記事の残存など、その事例は様々ですが、放置すれば被害が拡大し、深刻な影響を及ぼします。

重要なのは、被害に気づいた時点で、速やかに、冷静に対応することです。

初動で証拠を確保し、削除申請や発信者情報開示請求を行ってください。任意の協力が得られない場合は、弁護士の支援を受け、法的措置を講じることも検討すべきです。また、風評被害は「起きてから対応する」だけでなく、監視体制や危機管理マニュアルの整備などの予防策も重要です。

インターネットの情報は消えにくく、広がるスピードも速いからこそ、一人で抱え込まず、弁護士の力を借りながら速やかに対処するのが最善です。

この解説のポイント
  • インターネット上の風評被害の拡散を防ぐには、初動対応が鍵となる
  • 風評被害を発見したら、速やかに証拠を保存し、冷静な行動を心がける
  • インターネット上の風評被害に対し、法的手段で削除・開示・賠償を検討する

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