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風評の投稿者を特定してから、損害賠償請求までの全手順

風評や誹謗中傷の被害にあってしまったとき、「削除請求」だけでおさまらない場合には、投稿者を特定して損害賠償請求をする必要があります。

投稿をすることによって、慰謝料などの金銭的損失を与えて初めて、風評や誹謗中傷などのトラブルが解決するケースも少なくありません。

しかし、情報発信者を特定するためには、スピードが最優先であり、ログが削除されてからでは特定は困難です。具体的には「発信者情報開示」を弁護士に依頼いただきます。

今回は、発信者情報開示請求の方法で、風評、誹謗中傷の投稿者を特定した後、損害賠償請求をする全手順について、IT法務を得意とする弁護士が解説します。

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1. 投稿者の特定のため注意するポイント

風評被害や炎上騒ぎなど、ネットトラブルの解決の際に、投稿者を特定することは、IT法務を得意とする弁護士にとっても、非常に難しい業務です。

そのため、情報発信者の特定を行うことを検討するときには、慎重に、次のポイントに注意してください。

1.1. 期間が経ちすぎていないか

投稿者(情報発信者)を特定することを検討する際には、まず、投稿された記事、レス、コメントの、投稿日に注意してください。

投稿日から期間が経ちすぎている場合(記事が古すぎる場合)、既にプロバイダに通信ログが保存されていないことによって、投稿が物理的に不可能なケースがあります。

おおむね、インターネットサービスプロバイダの通信ログは、3か月~6か月程度で自動的に削除されるといわれています。

特に、ブログや2ちゃんねるのレスなど、投稿日が明確に表示されているケース以外の場合には、着手したとしても、物理的に投稿者の特定ができないケースが一定数あり、早急な着手が必要です。

1.2. 書込みはコピーされていないか

インターネット上の情報をコピーすることは、非常に簡単であり、非常に速いスピードで拡散していきます。

「削除請求」と同様、「発信者情報開示」による特定の場合にも、その対象となるURLごとに請求を行うこととなります。

そのため、ご相談いただいた対象となるサイトが、例えば2ちゃんねるのまとめサイトやコピーサイトなど、二次情報であった場合には、一次情報をたどらなければ、投稿者の特定ができないことになります。

発信者情報開示請求によって情報発信者を特定する前に、どこのサイトに書かれた情報が一次情報か、ネット上の情報を調査、分析する必要があります。

2. 特定した投稿者への損害賠償請求の方法

投稿者(情報発信者)が特定できたら、次に、特定できた投稿者に対して、損害賠償請求(慰謝料請求)を行います。

そこで、インターネット上の風評被害、誹謗中傷被害、名誉棄損などを理由とする、損害賠償請求の具体的な方法について、弁護士が解説します。

2.1. 任意交渉による損害賠償請求

まず、発信者情報開示請求によって投稿者(情報発信者)を特定するときには、「氏名」「住所」などの情報をプロバイダに求めます。

そこで、「氏名」と「住所」が判明したら、任意交渉(話し合い)による損害賠償請求(慰謝料請求)を試みます。

弁護士に依頼する場合には、弁護士名義の内容証明郵便によって、投稿者に対して、慰謝料の支払いを強く請求します。

2.2. 損害賠償請求訴訟

内容証明郵便からはじまる話合い(任意交渉)によっても、慰謝料の支払いがなされない場合には、訴訟提起に踏み切ることとなります。

発信者情報開示請求によって特定した「氏名」、「住所」をもとに、次に解説する算出方法で慰謝料金額を決め、訴訟によって請求します。

3. 請求すべき損害額(金額)は?

では、特定が成功した後に、情報発信者(投稿者)に対して、いくらの慰謝料が請求できるのでしょうか。また、慰謝料以外に、特定にかかった弁護士費用、裁判費用などを請求することができるのでしょうか。

損害賠償をする際に請求すべき損害額(金額)についてまとめてみました。

3.1. 慰謝料の相場

投稿者を特定できたとして、どれほどの慰謝料を獲得することができるのかが、「発信者情報開示」による特定を依頼する方の、一番の関心事でしょう。

しかし、結論からいうと、ご依頼をいただく方の満足がいくほどの金額を、慰謝料として獲得できるケースは少ないと言わざるを得ません。

というのも、「精神的損害」を補うための慰謝料は、目に見えない損害に対する金額であることから、裁判例において、高くても数十万~100万円程度の認容例が大多数だからです。

もちろん、営業利益について多額の損害を認め、1000万円以上の請求を認容したケースもないわけではないですが、一般化はできず、多額の慰謝料の回収を期待することはできません。

3.2. 発信者情報開示請求にかかった費用

慰謝料の他に、発信者情報開示請求による特定にかかった費用(弁護士費用や裁判費用)は、損害として請求できると考えます。

裁判例でも、特定にかかった弁護士費用をはじめとする調査費用の請求を認めた裁判例は多くあります。

通常の不法行為の場合には、弁護士費用は、「損害額の1割程度」とされることが通常ですが、調査にかかった弁護士費用は、実費全額を認めてもらえることが期待できます。

4. 回収困難なケースではないか

最後に、発信者情報開示請求によって特定に成功し、損害賠償請求(慰謝料請求)の訴訟もできたとしても、最終的に金銭の回収が困難でないかどうか、事前に検討しておく必要があります。

せっかく多くの弁護士費用をかけ、特定、慰謝料請求へと進んだとしても、金銭的に大きなマイナスを負っては、元も子もありません。

特に、任意交渉の過程で、特定した情報発信者が、明らかに資力がなく、裁判で勝訴したとしても、慰謝料を支払わせることが困難なケースでは、任意交渉(話し合い)で和解するか、訴訟にするかについて、慎重な検討が必要です。

5. まとめ

今回は、「発信者情報開示請求」の方法によって情報発信者(投稿者)の特定に成功した場合に、損害賠償請求をするための具体的な方法と、その金額の相場について、弁護士が解説しました。

「削除請求」だけでは止まらないような、しつこい風評トラブル、誹謗中傷や嫌がらせには、発信者を特定しての慰謝料請求が有効です。

インターネット上の風評被害や誹謗中傷にお悩みの会社経営者の方は、IT法務を得意とする弁護士に、お早目に法律相談ください。

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