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週休3日制を導入する会社が知るべき注意点6つと、就業規則の定め方

週休3日制を導入する会社が増加。ワークライフバランスが叫ばれ、働き方改革が提唱されるなか、週休3日制がにわかに脚光を浴びました。時間にとらわれない多様な働き方である週休3日制は、会社にとっても良い選択です。

しかし、週休3日制は、労働法の定めるルールではありません。そのため、週休3日制を導入するとき、会社ごとに、法律違反とならないよう、注意して制度設計しなければなりません。社内ルールを統一するには、就業規則に週休3日制について定める必要があり、その規定の仕方も理解してください。

一般に、フルタイムの正社員は週休2日制が多いもの。これに比べると週休3日制だと休日が多く、社員から「楽そう」という印象を抱かれる危険があります。新しい制度であるがゆえ、労働時間と休日のルールを適切に定めなければ制度の有効活用は困難であり、メリットを享受できません。

今回は、週休3日制を導入する企業の注意点、就業規則の定め方などを、導入した企業の事例も踏まえ、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 週休3日制は、実はメリットも多いが、最大限活かすには業務効率化との併用が必要
  • 週休3日制の導入は、重要な労働条件の変更なので、段階的に、慎重に進める
  • 週休3日制を社内のルールとするときは、就業規則に規定しなければならない

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週休3日制とは

週休3日制とは、1週間の休日が3日ある制度のこと。なかでも、選択的ではなく全ての期間に適用する制度を「完全週休3日制度」と言います。逆に労働日を数えて「週4日正社員制度」と呼ぶ例もあります。

労働基準法は「1週1日、もしくは4週4日」以上の休日を設けることをルールとします。このように法律で義務付けられた休日が「法定休日」です。社内の制度を決める際、法定休日を超えて休日を何日設けるかは、会社の判断に任されます(当然ながら労働時間が長くなる場合は、残業代の支払いを要する場合があります)。

正社員だと週休2日制の会社が多いですが、以下の理由で、週休3日制の導入例も増えています。

従来は、「長時間働く人が偉い」という価値観でした。

しかし、時代の流れに合わせ、労働者の権利意識は高まりました。個人が尊重される現代、ワークライフバランスを維持し、プライベートを充実させたい人も増えています。一方、少子高齢化により労働力人口が減少、人手不足を解消すべく多様な労働力の需要が高まっています。

以上の労使の変化により、人手不足を解消したい使用者と、多様な働き方をしたい労働者の需給がマッチしたのが、週休3日制が増える一因となっています。

多様な労働力の活用が進むと、「正社員」といえど一様ではなくなります。

雇用区分を、正規社員と非正規社員にわかりやすく二分するのでなく、その中間的な存在を活用する必要が生じます。そのなかで、時間、場所などの制約を緩やかにした多様な正社員区分を導入する企業も出てきました。時代の変化に合わせて、週休3日制が、多様な正社員活用の有効なオプションとなっているのです。

週休3日制のメリット・デメリット

次に、週休3日制について、使用者側のメリット・デメリットを解説します。週休3日制の導入が進んでいるのは、この制度に多くのメリットがあるからです。

メリットデメリット
労働時間の上限遵守
多様な労働力の活用
社会的評価の向上
同一労働同一賃金
業務量の減少
体制整備が必須

労働時間の上限を遵守できる

長時間労働させ、残業代を払わないのは労働基準法違反。働き方改革関連法によって労働基準法は改正され、労働時間の規制が強化されました。その結果、36協定に定める残業時間の上限を超えると労働基準法違反となります。違反があると、労働基準監督署に指導、是正勧告され、最悪は逮捕、送検され、刑事罰を科される危険もあります。

36協定の限度時間の規制は、次の通りです。

【36協定の限度時間】

  • 1ヶ月45時間
  • 1年360時間

※ 対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の場合、1か月42時間、1年320時間

【特別条項付きの36協定の限度時間】

  • 時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と法定休日労働の合計の2〜6ヶ月平均が月80時間以内
  • 時間外労働が年間720時間以内

※ 時間外労働が月45時間を超える月数は6ヶ月以内

以上の通り、労働時間の上限規制が厳格化し、正社員といえど長時間の残業を強制できなりました。従来の働き方では法違反のおそれあるとき、週休3日制を導入すれば労働時間を無理なく短縮できるメリットがあります。これにより、長時間労働による残業代、安全配慮義務違反、労災といった責任を回避できます。

多様な労働力を活用できる

人手不足を回避するには、多様な労働力の活用が必須。なかでも育児・介護で労働時間が制約される社員を、正社員として雇用すべき需要が高まっています。週休3日制は、その受け皿として期待されます。

育児介護休業法は、育休、産休や時短勤務などの保護を定めます。しかし、これらの制度はあくまで定型的で、個別の配慮に欠けます。幅広い労働力を活用するには、労使の状況に合わせた制度を別に定める必要があり、週休3日制は良い代案となります。

週休3日制は、5年を超えた契約社員が無期転換権を行使し、期間の定めのない社員になった場合に適用することで、その労働時間を制限する効果もあります。

人手不足の極致である、人手不足倒産の対策も参考にしてください。

企業の社会的評価が高まる

週休3日制を導入して、働きやすいホワイト企業であるとアピールすれば、社会的評価を高められるメリットがあります。会社の評判が上がれば、採用力が強化され、優秀な人材が集まります。

既存の社員の満足度も高まり、離職率の低下にも繋がります。企業の商品・サービスの評判も上がり、売上、利益も増加、給料を上げることができ、業務を遂行する社員も集まるというように好循環を達成できます。

同一労働同一賃金を守る

同一労働同一賃金は、非正規社員の保護を重視した考え方。同一の価値の労働力なら、非正規という理由のみでは労働条件に差を付けられません。逆に、同一の労働力でないという正当な理由があるなら、待遇差を設けることが可能です(待遇差を設ける理由は、必ずしも雇用形態にはよりません。たとえパートでも、正社員と同等以上の価値を生み出す場合の保護が、同一労働同一賃金だからです)。

週休3日制を導入すれば、労働時間が明らかに短いため、労働条件に差を設ける明確な理由付けとなります。

同一労働同一賃金について、次の解説をご覧ください。

業務量が減少する

週休3日制にすれば休日が増えます。その分、労働時間に一定の制約が生じるのは事実。このことは使用者側にとってデメリットにもなります。

社員を長時間働かせられないので、自然に考えれば、その分だけ業務量が減少するからです。

体制整備が必須となる

週休3日制の短い労働時間で、確実な成果につなげるには、業務効率化が必須です。確かに支払う人件費は減るものの、利益もその分減少しては意味なく、安易な導入はデメリットも大きいです。

休日をとる社員を尊重するため、業務の平準化は不可欠です。他の社員が仕事を代替する体制を整備するなど、組織全体の生産性を向上させるよう工夫せねばなりません。「週の休みが増えた分、残業も増加した」というのでは意味がありません。

週休3日制の導入企業の例

週休3日制を有効活用するには、先行して導入する企業の事例が参考になります。

佐川急便の事例

佐川急便は、セールスドライバーの一部を対象に、週休3日制を導入しました。

週休2日制の通常の社員は、1日8時間、1週40時間の労働を行う、法定労働時間通りとなっていました。これに対し、週休3日制では、1週の労働日が4日となる代わり、1日の労働時間を10時間とし、週の合計労働時間数は変わらない制度です。残業代は、月単位、年単位の変形労働時間制で算出します。

ファーストリテイリングの事例

ファーストリテイリングは、地域限定正社員を対象に、1日の労働時間を長くし、週の労働時間は変更しない週休3日制を採用しました。

日本IBMの事例

日本IBMは、全社員を対象に、短時間勤務制度を設けました。

育児・介護などの理由なく利用でき、①週3日勤務、②週4日勤務、③週5日勤務(労働時間はフルタイムの6割)、④週5日勤務(労働時間はフルタイムの8割)のいずれかから選択できる制度です。賃金は労働時間に比例して減額されるものの、成果報酬が多く設定されています。

Yahoo!の事例

Yahoo!では、育児、介護を行うなど、一定の理由のある社員に対し、月ごとに申請できる「えらべる勤務制度」を整備しました。

週休3日制を導入する手順

次に、週休3日制を導入する手順について解説します。

適用対象を決める

週休3日制を導入するにあたり、初めに決めるべきことが、どの労働者を適用対象とするかという点です。全労働者に導入する方法もあるものの、デメリットもあるので段階的に導入するのがお勧めです。適用対象の範囲を定めるには、次の事情を検討してください。

  • 全社的に週休3日制を導入するかどうか
  • 部署単位で適用するかどうか
  • 希望者のみに適用するか
  • 週休3日制に変更する際に、会社の承諾を要件とするか

適用対象とする労働者に、労働時間を短縮したい理由がある場合には、1週間の休日数とともに、何曜日を休日にするか、それ以外の日の労働時間を制限するかどうかも決めておく必要があります。

賃金と評価のルールを決める

週休3日制では、勤務日が減る分だけ給料を低くする例もあります。通常の正社員より低い賃金も、労働時間の差で説明できるので同一労働同一賃金に反しません。ただ、時間に比例して減額しなければならないわけではなく、週休3日制の導入を機に評価のルールを改めることもできます。例えば、労働時間でなく成果で評価するように変更する方法です。

各種手当(住宅手当、残業手当など)や賞与、退職金なども、正社員と異なった基準をとるのも可能です。異動させない、残業させないといった処遇を併用してもよいでしょう。

理由付けを明らかにし、不公平感の生じないよう設計すべきです。

既存の社員の処遇を変更する

制度を作り終えたら、既存の社員に週休3日制を適用し、処遇を変更します。既存の社員にも、正社員から非正規社員まで複数の雇用体系があるでしょう。週休3日制においても、それぞれの状況に合った対応が必要です。

正社員を週休3日制にするケース

正社員の労働時間が長い会社ほど、家庭の事情をきっかけに離職し、キャリアを途絶えさせる社員が少なくありません。恒常的な長時間労働は、健康と安全についてのリスクを内包します。他社との差別化、モチベーションの向上を目的として私生活を充実させれば、かえって生産性を向上させることができます。

正社員に週休3日制を導入する場合、待遇の縮小を考える必要があります。固定残業手当など、これまでの働き方を前提とした手当を減らすには、各社員の同意を取得するのがポイントです。

非正規社員を週休3日制にするケース

契約社員やアルバイトなどの非正規社員は、既に正社員より労働時間が短いケースも多いでしょう。子育て中の主婦をパート雇用する例のように、労働時間に制約のある労働力は、人手不足の解消に役立ちます。

定年後再雇用者を週休3日制とするケース

高齢者雇用安定法は、65歳までの継続雇用を義務化。義務の一環として、定年を60歳とし、65歳までの再雇用制度を設ける会社が多いです。定年後再雇用者の処遇には、同一労働同一賃金の遵守という悩ましい課題があります。

定年後に再雇用しても仕事や責任が変わらないとき、賃金を大幅に減額したいなら理由が必要。このとき、週休3日制とすれば、賃金減少の説明となると共に、プライベートの充実した定年後ライフを送ってもらえます。

新規採用者を週休3日制とする

週休3日制の導入後、新規採用する際には、入社時の説明に配慮を要します。使用者は、入社時に重要な労働条件を書面で説明しなければならない義務があります(労働基準法15条)。休日に関するルールも、説明すべき事項の1つです。週休3日制を導入する企業はまだ少数派なので、誤解を生まないよう丁寧に説明すべきです。

労働者が特に関心を持つのが休日に関するルール。入社時の説明と、実態が異なると、求人詐欺という批判を受け、ブラック企業のレッテルを貼られるおそれがあります。

週休3日制の就業規則の定め方

週休3日制を導入するとき、詳しいルールを就業規則に定め、社内に周知する必要があります。

社員に統一的に適用されるルールを定めるのが、就業規則。特に、休日・休暇についての規定は、就業規則の絶対的必要的記載事項であり、必ず定めなければなりません。週の休日が1日増えるのみでなく、賃金体系や評価基準、残業の有無といった他の様々な規定にも影響するため、注意を要します。

週休3日制を定める就業規則の例は、次の通りです。

【正社員からの転換を許可制にする規定例】

第XX条(正社員から短時間正社員への転換)
1. 次の各号のいずれかに該当する正社員は、短時間正社員(週休3日制の正社員)への転換を希望できる。転換を希望する場合、所定の書式により、希望日の3か月前までに会社に提出して社員区分の転換を申し込む。
① 育児・介護の必要性がある者
② ワークライフバランスの考慮により労働時間の短時間化を希望する者
③ その他、会社が短時間正社員への転換を必要と認める者
2. 会社は、前項の申込みをした社員に対して選考を行い、その結果を1か月以内に通知する。

【休日に関する規定例】

第XX条(休日)
1. 会社の休日は、次の通りとする。
① 土曜日・日曜日
② 国民の祝日
③ その他会社が指定する日
2. 前項に定める休日数は、年間119日(うるう年は120日)とする。ただし、短時間正社員(週休3日制)の休日は、年間156日(うるう年は157日)とし、会社が業務カレンダーによって予め指定する日を休日とする。

【社員定義に関する規定例】

第XX条(社員の定義)
本就業規則の適用される社員の定義は、次の通りとする。
① 正社員
……(略)……
② 短時間正社員(週休3日制)
期間の定めなく短時間正社員として雇用される者で、1週の休日を3日とすることを初め、労働時間について一定の制約を受ける社員のことをいう。
③ 契約社員
④ パート社員

週休3日制の注意点

最後に、週休3日制を導入するにあたり、注意すべき点を解説します。

週休3日制といっても実際には様々な種類があり、会社の実情に合わせた検討が必要。デメリットを最小限に抑え、メリットを最大限活用するため、会社側で決めておくべき注意点を理解してください。

残業を増やさない

週休3日制の社員は、労働時間を短くすることを希望しているでしょう。そのため、通常の社員に比べ、残業が減る傾向となるケースが多いもの。しかし、週休3日制にして休日を増やしても、業務量が変わらず、業務効率化の工夫がなされないと、逆に労働日の残業が増えてしまう危険があります。

週休3日制の導入にあたり、会社が意識して残業を減らす配慮をすべきです。

週休3日制の社員とそれ以外とで、残業命令に差を付けるのも有効です。結局忙しさに変わりがないのでは、週休3日制の意味は薄れてしまいます。

一時的な利用を許可する

家庭の状況によっては、週休3日制の一時的な利用を希望する社員もいるでしょう。

このような需要に合わせ、一時的な利用を許可するかどうか、制度設計の時点で検討しておかねばなりません。また、認める場合、その手続や利用期間の制限についてもルールを作っておきましょう。ただし、あまりに頻繁な変更を許すと、管理が煩雑になり、給与計算のミスや残業代の未払いに繋がりかねません。

副業のルールを作る

週休3日制だと、余暇が多くなります。ワークライフバランスの観点からプライベートを充実させるのが主目的なことが多いですが、一方で、余暇を活かして副業する社員もいます。副業にもメリット・デメリットがあり、必ずしも会社にとって良い点ばかりではありません。

したがって、週休3日制を導入するなら、あわせて、仕事が減った時間に副業を許すかどうか、副業のルールも決めておかなければなりません。

副業を解禁するときの注意点は、次の解説をご覧ください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、導入例の増えている週休3日制について、注意すべき法律知識を解説しました。

週休3日制は、使用者側にとって、労務管理がしづらくなったり、業務を円滑に進める支障になったりするなど、導入には高いハードルもあります。まして、週休3日制によって残業が長くなるなど、法違反を助長しては元も子もありません。メリットを最大限活かすには、休みを多くしてもなお、生産性向上、業務効率化に寄与する工夫が必要となります。

また、週休3日制の導入とあわせて、従来の正社員の労働実態についても、見直しが必要となる会社も多くあります。これを機に社内の働き方を改善し、就業規則を見直したい会社は、ぜひ一度弁護士に相談ください。

この解説のポイント
  • 週休3日制は、実はメリットも多いが、最大限活かすには業務効率化との併用が必要
  • 週休3日制の導入は、重要な労働条件の変更なので、段階的に、慎重に進める
  • 週休3日制を社内のルールとするときは、就業規則に規定しなければならない

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