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新規事業のリーガルチェックのポイントと、法律相談の進め方

新規事業を思いついたとき、実行に移す前に立ち止まって検討すべきなのが「事業の適法性」。ベンチャー、スタートアップの強みは、新規性の強い、魅力的なビジネスモデルを発見し、急成長できる点にあります。しかし、新規事業に他社が手を付けないのは、そのビジネスモデルが違法だからかもしれません。

新規事業のリーガルチェックをし、適法性を調査するプロセスを踏まなければ、リスクが大きいといえます。初期投資を終えてから事業の違法性に判明しても、投下した資金は返ってきません。まして、違法なビジネスを続ければ、後に大きな制裁を下され、社会的評価が低下した結果、企業の存続すら困難となるおそれがあります。

新規事業への挑戦を積極的に推奨する、ノーアクションレター制度、グレーゾーン解消制度、企業実証特例制度、規制のサンドボックス制度といった手続きが用意されており、リーガルチェックの一環として活用できます。

今回は、新規事業のリーガルチェックのポイントと、法律相談の進め方を、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 新規事業の成功確率を上げ、リスクや損失を軽減するには、リーガルチェックが不可欠
  • 新規事業のリーガルチェックは弁護士に依頼し、違法性、妥当性の両面から行う
  • 制度を活用し、新規事業のビジネスモデルを変更するなどして規制を回避できる

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新規事業のリーガルチェックの必要性

新規事業のリーガルチェックとは、新しく着手する事業、商品、サービスやビジネスモデルが、法律に違反していないか、また明白に違法でないとしてもビジネスを進めるのに不都合な点がないか、専門家の目線からチェックすることです。過去に他社が扱った前例のない、新規のサービス、ビジネスモデルこそ、リーガルチェックの必要性が高いです。

ベンチャー、スタートアップにとって、新規事業は大きな武器です。競合のいない事業でマーケットを作るのに成功すれば、売上は総取り。しかし、リーガルチェックが不十分だと、新規事業には大きなリスクがあります。

  • 新規事業を中止せざるを得なくなる
  • 投下したコストが損失となる
  • 違法性を解消するまでサービス提供を停止させられる
  • ビジネスモデルの変更を余儀なくされる
  • 行政処分、行政指導を受ける
  • 利用者とのトラブルが発生する
  • 顧客クレームへの対応を要する
  • 風評被害に遭う
  • 企業イメージが悪化し、既存事業に影響する
  • 企業価値が低下し、VCや投資家など株主から損害賠償請求される
  • 刑事罰を科される

以上のデメリットにより新規事業を失敗に終わらせないためにも、事業を開始する前にリーガルチェックをしなければなりません。違法性が明らかになってから対処したのでは後手に回り、損失の拡大は避けられません。

新規事業に資金を投下したいのに、その前にリーガルチェックを行うとすれば、相応の弁護士費用がかかります。とはいえ、事業をスタートさせてからリスクが顕在化し、進められなくなれば投下資本は回収できません。このような最悪の結末を避けられるなら、新規事業の検討段階で、一定の費用をかけてでも早めにリーガルチェックする必要性は理解できるでしょう。

ベンチャー企業の依頼すべき顧問弁護士について、次に解説します。

新規事業で、リーガルチェックすべきポイントは?

次に、新規事業で、リーガルチェックの際に押さえておくべきポイントを解説します。

新規事業の違法性

まず、法律に違反したビジネスが継続できないのは当然です。現時点で明白に違法な場合はもちろん、将来規制される可能性の高いビジネス、必要な許認可を取得するハードルの高いサービスもまた、違法性の観点からして手を出すのは慎重になるべきです。法規制の厳しい分野として、次の例があります。

  • BtoCサービス
    消費者保護の必要性が強いとされる、通信販売、マルチ商法、訪問販売などのサービスでは、特定商取引法、商取引法などの規制をチェックする必要がある。
  • 資金決済事業
    資金の決済に関わる事業は、適正化のため、資金決済法の規制のほか、金融庁の許認可を要する事業に該当し得る(資金移動業、第二種金融商品取引業、投資運用業など)。
  • ヘルスケア事業(美容、化粧品、サプリ、医療など)
    生命・健康に関わる事業は、安全性確保などの目的から規制が厳しく、薬機法、景品表示法のルールを守った広告宣伝かチェックする必要がある。
  • マッチングサービス
    仲介を規制する法律が多くあり、不動産なら宅地建物取引業法、投資なら金融商品取引法の規制に該当しないかチェックを要する。マッチングアプリなどアプリ上の仲介は、出会い系サイト規制法にも注意。

法律による規制の厳しいビジネスモデルでも、あきらめて撤退することは必須ではありません。リーガルチェックをした結果、許認可を適切に取得する、もしくは、規制に該当しないビジネスモデルに変更するといった方法により、適法に実行できるケースもあるからです。

違法性は、行政の監督や指導のほか、消費者からのクレームで発覚することもあります。

違法利用の可能性

新規事業そのものは適法でも、違法に利用される可能性が高い場合があります。このとき、提供するサービスが適法だとしても事業者が無責任であってはならず、容易に予想できた違法な利用はできるだけ排除する努力をすべきです。

リーガルチェックで注意すべき違法利用は、例えば次のケースです。

  • 匿名掲示板
    誹謗中傷、名誉毀損の場として利用されるのを防ぐ必要がある。
  • コミュニケーションやコミュニティを活用したアプリ
    男女の不適切な出会いの場として利用されるのを防ぐ必要がある。
  • 口コミサイト
    不当なステルスマーケティング、やらせ口コミを禁止する必要がある。

違法利用の可能性があるとしても、サービス自体が適法ならスタートはできます。ただ、違法利用が予想されているのに監視せず、防止の努力をしなければ、違法利用の結果について事業者が責任を負わされるおそれがあります。損害賠償請求や差止請求といった法的な責任だけでなく、そのサービスの評判が下がるといった不利益もあります。クレームを誘発しかねない事業は、企業全体のイメージにとってもマイナスとなります。

リーガルチェックで、違法利用の可能性が判明したら、適切な利用規約を整備するなどして対処できます。

新規事業のリーガルチェックの進め方

次に、新規事業のリーガルチェックの進め方、その方法について解説します。

ビジネスモデル、スキームを法的に分析する

新規事業をリーガルチェックするには、ビジネスモデルを法的に分析すべきです。思いつきのまま感覚的に検討するのでは十分なリーガルチェックといえず、法的リスクを見逃します。リーガルチェックの結果、法律構成を変更して規制を回避すべき場合も、当初の分析が十分でないとスキームをどう変更すべきか理解できません。

法的問題点、リスクを抽出する

法的な分析の結果、法的な問題点、リスクを抽出し、リスト化します。

問題点はそれぞれ、優先度を付けて、分類します。優先度は、緊急性と、影響の大きさ(重要度)との双方を考慮することによって決めると良いでしょう。新規事業の根幹に関わるような緊急かつ重大な問題から対処するようにします。それぞれの法的問題点ごとに、代替案や変更案、リスクの軽減策を検討していく必要があります。

規制当局に問い合わせる

まず、リーガルチェックで抽出された問題点が、簡単な疑問や不安など、質問して解決に至ると予想されるなら、規制当局への問い合わせから始めます。

なお、問い合わせ前に、十分な事前調査をすべきです。法律や政令・省令だけでなく、通達やガイドライン、パブリックコメント、法改正の経緯などの資料もよく精査するようにしてください。また、弁護士に依頼し、判例や裁判例の調査、学術書や論文のリサーチなども怠ってはなりません。

新規事業のリーガルチェックできる制度を活用する

新規事業のリーガルチェックに活用できる制度を解説します。法規制に抵触する可能性があるまま放置してはいけません。自社の判断のみで進むのは危険で、以下の制度を利用してリスクを軽減すべきです。

  • ノーアクションレター制度
    ノーアクションレター制度は、法令適用事前確認手続と呼ばれ、新規事業に関する具体的な行為が法令に抵触するか、事前に初夏の行政機関に確認する制度。行政機関による回答は公表される。
  • グレーゾーン解消制度
    新規事業が、法規制に抵触するか判断できないとき、具体的な事業計画に即し、規制法令の適用の有無について監督官庁の確認を得られる制度。新規事業に安心して挑戦できるよう、産業競争力強化法で創設された。
  • 新事業特例制度
    法律の規制に違反する新規事業について、安全性の確保などの一定の要件を満たす場合に、企業単位で、規制の特例を認めてもらう制度。同じく産業競争力強化法で導入され、企業実証特例制度から名称変更された。
  • 規制のサンドボックス制度
    新しいビジネスモデル、革新性の高い技術などについて、法規制が障害となって実現できないとき、事業者が国の認定を受けて実証を行う制度。実証により得られたデータは、規制の見直しの参考とされる。2018年6月施行の生産性向上特別阻止法により導入された。

ただし、いずれの制度も、行政任せにできるわけではありません。違反する可能性のある点を具体的に特定したり、申請書類を入念に準備したりする必要は事業者側にあり、有効活用には弁護士のサポートが必須です。

法規制を免れようとするだけでなく、ルールメイキングも重要視されます。

ルールメイキングとは、その領域の規制を改め、緩和するよう働きかける活動のこと。AIやIoTのように新規事業の革新性、社会的な価値を訴えるべき分野で、その重要性が高まっています。新しい分野ほど、法規制は追い付いておらず、ビジネスの現場にいる事業者が、積極的にルールメイキングに関与すべきです。

新規事業のリーガルチェックの注意点

次に、新規事業のリーガルチェックの注意点を解説します。

弁護士の継続的なサポートを受ける

前例の少ない新規事業ほど、そのリーガルチェックには、法律知識や裁判例が必要なのは当然。それだけでなく、類似の例から規制の可能性を推測する「経験」が必要です。したがって、専門家の関与は必須といってよいでしょう。社内リソースが不測していたり、知識、経験が足りなかったりするときでも、リーガルチェックせずに進めるのは大きなリスクです。

新規事業のリーガルチェックを弁護士に任せるのには、次のメリットがあります。

  • 新規事業の違法性、不適切性を回避できる
  • 新規事業の成功のスピードを上げられる
  • リーガルチェックを内製化するコストを減らせる
  • 新規事業の成功の確率を上げられる

新規事業の企画・検討段階から、実行と改善に至るまで、継続的なサポートが重要で、そのためには顧問弁護士の関与が適切です。顧問弁護士なら、企業の他の事業も包括して、総合的なアドバイスを受けられます。プロジェクトの立ち上げ段階でリーガルチェックをするのみでは、十分とはいえません。当初の予定通りに進行できる事業は少なく、サービスそのものや社会の反応など、変化に応じて適時に対処する必要があるからです。

新規事業のリーガルチェックの相談は、最新の法規制、裁判例に精通した弁護士が適切です。

新規事業の企画・検討段階でリーガルチェックする

リーガルチェックを効果的に実施するには、新規事業の企画・検討段階、すなわち、スタート地点で行うべきです。事業が実際にスタートすれば大幅な変更は難しくなります。違法性があって進められなくなると、初期投資が無駄になります。

プロジェクトの開始前ならば、リーガルチェックによって把握した問題点、法的リスクを、ビジネスモデルを変更することで回避したり、リスクによる影響度合いを判断するためにスモールスタートを試したりといった対策が可能です。

事業開始まで時間的余裕を持つ

新規事業のリーガルチェックは、弁護士が資料を精査せねばならず、一定の時間を要します。新規性の高いビジネス、サービスほど、前例も少なく、適用される可能性のある法律や裁判例を全て当たる必要があります。

前章で解説した制度を利用するにも時間がかかります。回答期限の決まった制度も、その期間内には確たる回答が出ず、延期される運用も少なくありません。また、いずれの制度も事前相談を要します。新規事業を計画通りにスタートさせるため、開始日まで時間的な余裕を持ってリーガルチェックを開始しなければなりません。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、新規事業のリーガルチェックの流れやポイントについて解説しました。

新規性が高く、魅力的なビジネスこそ、ベンチャー企業の強み。しかし、実行前に、法律違反でないかチェックしましょう。一見して利益が出そうでも、誰も着手しないのは違法なビジネスだからかもしれません。

一方で、違法のおそれがあるからと恐れていては、チャレンジ精神が失われます。「違法の可能性がある」というだけで新規事業をあきらめてはいけません。適法に行う方法を発見すれば競合を出し抜くチャンスでもあります。適法性を確保しながら新規事業を立ち上げるにはリーガルチェックが欠かせません。

新規事業の成功には、必ず「立上げ前」にリーガルチェックし、リスクを軽減する必要があります。新規事業をスタートさせる前に、弁護士に相談ください。

この解説のポイント
  • 新規事業の成功確率を上げ、リスクや損失を軽減するには、リーガルチェックが不可欠
  • 新規事業のリーガルチェックは弁護士に依頼し、違法性、妥当性の両面から行う
  • 制度を活用し、新規事業のビジネスモデルを変更するなどして規制を回避できる

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