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債権回収

「動産執行」で債権回収を図れるの?素朴な疑問点を弁護士が解説!

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債権回収で、どんなに催促をしても、売掛金や貸付金等の未払債務を一向に支払おうとしない取引先も少なくないことでしょう。

未払の続く債務者に対して、動産執行によって債権回収をしようか、とお考えになったことが一度はある、という経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

債務者が企業や法人の場合、事務所やオフィス、倉庫などに、在庫商品や道具、什器や備品など差押えができそうな動産が思い浮かぶときは、「動産執行」を検討してください。

ところで、テレビや映画などで、差押え財産に赤紙が次々と貼られるシーンを見かけたことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

執行官が執行当日、数人で会社にやってきて、差押え財産に赤紙を次々に貼っていく様なイメージがあります。しかし、動産執行は強制執行の中で最も空振りに終わることが多い、とも言われます。

今回は、果たして、動産執行で債権回収を図ることができるのか、という素朴な疑問について、企業法務を得意とする弁護士が解説します。

1. 動産執行とは?

動産執行とは、債権回収の手段のうちでも、強制的に債権を回収するための手法である「強制執行」の1つであり、動産を対象とするものです。

すなわち、動産を対象として差押えを行い、この動産を金銭に換えることによって債権を回収する手段をいいます。

動産執行の方法によって未回収の債権を効率的に回収するために、まずは動産執行とはどのようなものであるか、そのメリット、デメリットなどについて解説します。

1.1. 動産執行の意義と特徴

動産執行とは、債権の回収を図る手段の一つです。具体的には、債務者の動産を差し押さえて、競売にかけて現金化する、というものです。

民法では、動産について「土地およびその定着物以外の物、ならびに無記名債権」と定められています。

例えば、備品や道具、機械、什器だけでなく、宝石、貴金属、家財道具、電化製品、現金なども含まれます。家畜等の動物も含まれます。さらに、株券、社債、約束手形、商品券等も対象となります。

ただし、自動車やバイク、航空機、船舶については特別な扱いがされていますので、今回解説する動産執行とは別の方法で債権回収の対象とする必要があります。

動産執行の特徴は、執行機関が裁判所ではなく、「執行官」が行うという点にあります。執行官自らが債務者の会社所在地へ出向き、動産を差し押さえ、競売にかけるところまでを行うのです。

1.2. 動産執行のメリット

一般的に執行手続が複雑で、執行に必要な費用が高額になる不動産の場合とは異なり、動産執行の場合には執行手続も比較的簡易で、費用も低額なので、申立てを行いやすい、というメリットがあります。

また、執行官が現場に差押えにやってくる、という行為自体の、債務者側に与える心理的圧迫の大きさは図りしれません。

動産執行を受けた企業が未払債務の支払いに応じようというきっかけを与え、任意の支払に応じさせることができることもある、というメリットもあります。

1.3. 動産執行のデメリット

動産執行の場合の最大のデメリットは、執行官が実際に会社のオフィスや事務所の中に入らなければ、いかなる財産があるのかわからない、という点です。

幸運なことに、債務者が高価な動産を所有していれば、一定程度の配当を受けることができます。

しかし、高価な動産を所有していなかった場合、仮に、差押えた動産が落札されたとしても、配当が少額しかない、ということも十分あり得ます。

2. 動産執行で差し押さえられないものとは?

動産執行による債権回収の場合、どのような動産でも差し押さえて金銭化できるかというと、そうではありません。

動産執行で差し押さえられないものは、民事執行法第131条により規定されており、これを「差押え禁止財産」といいます。企業間取引の場合、主に、差押え禁止財産として以下のようなものが挙げられます。

  • 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことの出来ない器具、肥料、労役の用に供する家畜およびその飼料ならびに次の収穫まで農業を続行するために欠くことが出来ない種子その他これに類する農産物
  • 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採補または養殖に欠くことの出来ない漁網その他の漁具、えさ、および稚魚その他これに類する水産物
  • 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的または肉体的な労働により職業または営業に従事する者(前2号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことが出来ない器具その他の物(商品を除く。)
  • 実印その他の印で職業または生活に欠くことのできないもの
  • 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿およびこれらに類する書類
  • 発明または著作に係る物で、まだ公表していないもの
  • 建物その他の工作物について、災害の防止または保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械または器具、避難器具その他の備品

動産執行による債権回収を図ったところ、実際に執行官が立ち入ったら、差押え禁止財産しかなかった、ということのないよう、「差押え禁止財産」について、正しい理解と検討が必要となります。

3. 動産執行前の準備

以上の動産執行についての基礎知識を理解していただいた上で、動産執行による債権回収を試みる場合、入念な準備が必要となります。

動産執行を検討する場合に行っておくべき準備事項について、解説します。

3.1. 債務名義への執行文付与

強制執行をするためには、まず、債務名義を取得することが必要です。

債務名義とは、強制的に債権回収を行うために必要な公的な書類であり、確定判決、執行受諾文言付の公正証書、仮執行宣言付の支払督促などが典型的です。

その上で、債務名義に執行文を付与します。

なお、少額訴訟の判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義において執行文付与は必要ありません。

3.2. 債務名義の送達証明を申請

「債務名義の正本等が債務者へ送達された。」旨を証明する証明書が必要です。公正証書以外の場合には債務名義を作成した裁判所書記官に対し、送達の証明書の発行を行います。

他方、公正証書の場合には、債権者と債務者双方が揃った状態で、公証人から債務者へ謄本を渡すことで送達が完了したことになります。

4. 動産執行の申立と、その後の流れ

いよいよ動産執行の申立てを行うわけですが、動産執行の申立てにあたり、今後の流れを適切に理解しておくようにしましょう。

4.1. 動産執行の申立て

差押える予定の動産の所在地(主に債務者のオフィスや事務所。)を管轄している裁判所の執行官に対し、動産執行の申立てを行います。

申立ての際には、動産執行の「申立書」と下記のような「添付書類」を提出します。

動産執行申立の際の添付書類は、次の通りです。

  • 債務名義の正本
  • 送達証明書
  • 資格証明書
  • 動産が所在する場所の位置図(地図のコピーなど)

なお、申立書には「執行に立会うか」という欄があります。この欄に「有」と記載した場合、執行現場に立ち会うことができますので、御社の事情に合わせて選択することが必要です。

動産執行に弁護士が立ち合った結果、債務者と連絡をすることができ、和解に至るケースもあります。

動産執行の費用は、予納金としてあらかじめ収めます。額は、債権額や裁判所により変わってきます。差押えるものが一切なかった場合でも、執行官費用と交通費を負担することになります。

4.2. 執行日時の決定

申立ての受理後には、執行官との面談が行われます。この面談の場で、動産執行の日時や打ち合わせ、当日の待合わせ場所などを決めます。

4.3. 執行日当日

いよいよ執行日当日、立会いを希望した債権者は、通常は現場で待合わせ、執行官とともに現場に向かいます。

執行官は、建物内に入り、内部の動産のうち「財産価値」があり、「換価できそうなもの」を探し、差押えていきます。

もっとも、債権者は、差押えに立ち会えますが、債務者の会社の玄関から先には執行官しか入れないのが原則ですので覚えておくとよいでしょう。

4.4. 競売と配当

差し押えた動産に関しては、執行後、「競売」といって入札手続きを行い、換金します。

なお、現金の場合は直接支払いを受けることができます。

当該換金額を債権者はもらい回収に充てることになります。

債権者が複数いる場合には、まず債権者間で話し合います。話合いがまとまらない場合は、裁判所が債権額に応じて分配します(これを「配当」といいます。)。

5. 動産執行でネックになること

動産執行による債権回収では、ネックとなる点がいくつかあります。

というのも、動産執行による債権回収の方法は、債権回収の中でも不安定な方法であり、検討の順序としては優先度の低いものであるからです。

5.1. 動産が誰のものか認定できない

いざ、動産執行によって債権回収をしようとする際に問題となるのが、動産の所有者が債務者ではない場合がある、ということです。

例えば、債務者がフランチャイズ契約の一方当事者であり、債務者と、店舗内の動産の所有者が一致しない場合があります。

また、これも企業ではよくみられるケースですが「什器や備品等をリースで借りている。」というケースも少なくありません。

単に、債務者が「自社の所有物ではない。」と主張するだけでは足りませんが、会社の所有でないことを裏付けるものがあれば、差し押さえることはできません。

裏付け証拠の例としては、リース物件のラベルや、契約書の資料等が考えられます。

もっとも、そのような事情がない場合には、債務者の会社内に存在する動産であれば「債務者の所有」と推定される場合が多いと考えられます。

5.2. 換価価値がないことが多い

実務上、会社や企業内で使用されている什器や備品類にはほとんど値が付かないケースがよくあります。

質屋を想像していただくと分かりやすいのですが、購入時は高額であっても、売却時はほとんど値を付けてもらえない、ということも珍しくありません。

具体的には、執行官が評価する目安に金額というのは「購入価格の10分の1以下」なのです。

それだけでなく、手間や執行費用をかけても売却から換価が合理的、と言えるものでなければ差押えの対象外とするのが一般的です。

では、いくらの価値があれば差押えの対象内とされるのでしょうか。ひとつの目安が「5000円以上」での売却が見込まれるということです。

したがって、実際には、会社の所有する骨董品や高額な什器や備品、商品でなければ差押えることは難しい、といえるでしょう。

現金があれば差押えることは可能ですが、執行官は国税局の査察(いわゆる「マルサ」)のように、現金が隠してありそうな場所の捜索を行うことができるわけではありません。

よって、債務者が現金を隠してしまえば、結局差押えはできない、というケースもあり得ます。

6. まとめ

今回は、動産執行について説明しました。

動産執行の最大の特徴は手続自体がもつインパクトが大きいことにあります。といいますのも、債務者の店舗や事務所など、実際に業務が行われている場所へ執行官が強制的に踏み込む、という手続だからです。

仮に差し押えるべきものがなく、結果的には執行不能となった場合でも、その後に和解、債務者からの任意の返済につながる、という場合もあります。

他方で、大した動産や現金が見つからなかった場合には、費用倒れに終わる可能性も高い、というデメリットがあります。

そこで、まずは、御社の債権回収手段として「動産執行」が適切な方法なのか、会社の事情をよく把握している顧問弁護士に相談してみましょう。

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