会社破産

倒産した会社の経営者が自己破産しても、手元に残る「自由財産」とは?

会社の経営が行き詰まり、会社の資金繰りが出来なくなったとき、会社を倒産させるという選択肢をとらざるを得なくなることがあります。

更には、会社経営者(代表者)が会社の「連帯保証人」になっていた場合、会社破産(法人破産)してしまうと連帯保証をしていた債務について自ら支払う義務を負います。

自身の支払い能力を超える多額の債務を負った会社経営者(代表者)の中には、「会社破産(法人破産)後、自分はどうやって生活をしたらよいのか」「少しでも個人資産を残したい」という不安にかられるのではないでしょうか。

しかし、会社(法人)が破産したとしても、会社経営者(法人代表者)の手元に何も残らないわけではありません。一定の財産については再起・再出発のために財産を残すことができるからです。

今回は、「倒産した会社の経営者が自己破産したとしても、手元に残しておくことができる財産」について、会社破産を得意とする弁護士が解説します。

「会社破産と経営者の対応」の法律知識まとめ

破産しても手元に残る「自由財産」とは?

「破産をするとすべての財産を失う」という考えを抱く方が多いのではないでしょうか。

現金・預貯金はもちろん、家具や家電もすべて奪われてしまう、というイメージをもっている方もいます。確かに、映画やドラマでは「破産」の悲惨なシーンが強調されるため、「路頭に迷う」という恐怖感を持つ方が多くても仕方ありません。

しかし、このイメージは、必ずしも正しくはありません。

確かに会社破産(法人破産)・自己破産のときは、破産者の財産の管理処分を破産管財人が行います。価値ある財産はお金に換え、債権者に分配されます。ただ一方で、「破産」には「再出発(リスタート)」の意味合いもあります。生きるための最低限必要な現金・財産は、破産者の手元に残すことを認めています。これを、「自由財産」といいます。

破産しても手元に残る「自由財産」とは、大きく分けて、次の5つです。

  • 99万円以下の現金
  • 差押え禁止財産
    :民事執行法により、差押えをすることが禁止された財産
  • 新得財産
    :破産開始決定後に取得した財産
  • 破産管財人が破産財団から放棄した財産
  • 自由財産の範囲が拡張された財産

以下では、「自由財産」の項目ごとに、その詳細を弁護士が解説します。

99万円以下の現金

「自由財産」となる財産の1つ目は、「99万円以下の現金」です。

破産法では、自己破産をしたとしても、99万円以下の現金を、手元に残しておくことが認められています。

重要なことは、「預貯金は、この金額には含まれない」ということです。つまり、預貯金が99万円以下の場合には、破産申立てをするまえに引き出して手元に置いておかなければ、「自由財産」にはならないということです。

参考

差押えに関するルールを定める民事執行法では、「66万円以下の現金」が「差押え禁止財産」とされています。

後ほど解説するように「差押え禁止財産」は、破産法においても「自由財産」とされていますが、この「66万円以下の現金」については除外されており、破産財団に組み入れられる財産であるかのようにみえます。

しかし一方で、破産法では、生活に必要となる現金について、民事執行法よりも保護の範囲を広げています。つまり、「99万円以下の現金」については、「自由財産」として扱われることとされているのです。

差押えが禁止された財産

「自由財産」となる財産の2つ目は、「差押えが禁止された財産」です。

「差押えが禁止された財産」には、「差押禁止動産」と「差押禁止債権」があります。

差押禁止動産

「差押禁止動産」には多くの項目がありますが、要は「生活必需品」と考えていただくとわかりやすいです。破産をしても生活に必要となる、必要最低限の財産は、差押えされず、破産によってもなくなりません。

差押えについてのルールを定める民事執行法では、人が生活し活動するための財産については、差し押さえることが禁止されています。

具体的には、生活に欠くことが出来ない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具や、一か月の生活に必要な食糧、学習用品、業務に必要な器具などが、これにあたります。「生活必需品」という意味だけでなく、信仰・宗教の自由や教育が目的で、差押禁止動産とされているものもあります。

「差押禁止動産」を列挙した民事執行法131条は、次のとおりです。

民法131条

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

ただし、これらの項目にあてはまるとしても、最低限の生活にはかならずしもいらない高級品やぜいたく品は、個別に判断をすることとなります。

差押禁止債権

生活に必要な最低限の債権についても、差押えが禁止されています。これを「差押禁止債権」といいます。

最低限の生活ができる程度の収入を確保することが目的であるとお考えいただけるとわかりやすいです。

「給与債権」について、原則として4分の1までしか差押えることができません(月額給与が33万円を超える場合には、33万円を超える部分の差押えができます。)。

「差押禁止動産」を列挙した民事執行法151条は、次のとおりです。

民法152条

1. 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
 一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
 二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2. 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3. 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

破産開始決定後に取得した財産

「自由財産」となる財産の3つ目は、「破産開始決定後に新たに取得した財産」です。専門用語で「新得財産」と呼ぶことがあります。

破産法では、破産した債務者であっても再起・再出発をしやすくするため、「破産開始決定」の時点を基準として、これよりも後に債務者が取得した財産については、債務者が自由に扱うことができると定めています。

そのため、破産手続開始決定後に取得した債権や、親族などからもらったお金や財産は、債務の弁済にあてる必要はなく、自分の財産として破産後も自由に利用することができます。

破産管財人が破産財団から放棄した財産

「自由財産」となる財産の4つ目は、「破産管財人が破産財団から放棄した財産」です。

破産管財人が破産者の財産を差し押さえる目的は、決して「罰」や「制裁」ではありません。破産管財人は、破産者の財産を管理し、お金に換えることによって、債権者の配当を増やすことを目的としています。

そのため、財産価値が低すぎたり、競売をするための費用がかかりすぎたりといった理由で、そもそも債権者への配当に充当することが難しい財産については、破産管財人が破産財団から放棄し、「自由財産」とすることができます。

自由財産の範囲の拡張

「自由財産」となる財産の5つ目は、「自由財産の範囲の拡張がなされた財産」です。

ここまで説明してきた、破産後も手元に残しておくことのできる「自由財産」を、「本来的自由財産」といいます。しかし、さまざまな理由で、「本来的自由財産」だけでは、最低限の生活を送ることが難しいケースがあります。

例えば、「幼い子どもや病気の家族を抱えている」「入院している親の介護が必要である」といった事情です。

破産法では、そのような事情を抱えた人のために、自由財産の範囲を拡張することを認めています。要は、自由財産を増やすことができる、ということです。

自由財産の範囲を拡張できるケース

自由財産の範囲の拡張についての運用は、破産を申立てる裁判所ごとに異なります。

「自由財産をどのくらい拡張してもらうことができるか」を判断するためには、裁判所の運用基準にくわしい弁護士に相談することがお勧めです。東京地方裁判所のように、個別の事情によらず、一定の範囲について自由財産の拡張を認める運用をしている裁判所もあります。

参考に、東京地方裁判所破産部における「自由財産の範囲の拡張」の基準は、次のとおりです。

  • 残高が20万円以下の預貯金
  • 見込額が20万円以下の生命封建解約返戻金
  • 売却価格が20万円以下と見込まれる自動車
  • 電話加入権
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 支給の見込み額の8分の1相当額が、20万円以下である退職金債権
  • 支給の見込み額の8分の1相当額が、20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
  • 家財道具

また、これ以外の財産についても、相当と認められるときは自由財産の範囲を拡張してもらうことができます。

自由財産の範囲の拡張のための考慮要素

自由財産の範囲の拡張が認められるかどうかは、次のような事情を総合的に考慮して判断されます。

  • 破産者の生活状況
  • 破産時に破産者が保有していた現金の額
  • 破産者の収入見込み

特に、次のような場合には、自由財産の範囲の拡張が認められやすいとされています。

  • 破産者に扶養すべき家族が収入に比べて多い場合
  • 病気の家族がいる場合
  • 破産時に保有する現金がほとんどない場合

このようなケースにあたるときは、弁護士に相談し、自由財産の範囲の拡張を積極的に求めるのがよいです。

倒産した会社の経営者が再出発する方法

会社破産(法人破産)・自己破産をする会社経営者(代表者)の方としては、不安が一杯なことは十分理解できます。

「人としての尊厳を奪われるのではないか」「選挙権が奪われたり、海外にいけなくなったりするのではないか」「もう会社の経営をすることは二度とできないのではないか」という法律相談を寄せられることがあります。

確かに破産にはデメリットがあります。官報に公告されますし、信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に掲載され約5年から10年の間借入ができなくなりますし、免責決定が出るまでの間は弁護士や警備員、保険募集任などの一定の職業につけなくなります。

しかし一方で、破産の制度は「再起」「再出発」の制度でもあります。

取締役の資格は「委任契約」であり、破産すると一旦は終了しますが、再度取締役に選任されれば、変わらず活動できます。「自由財産」についての知識を十分理解することで、「再起」「再出発」を早めることができます。

参 考
破産した会社経営者は再起できる?再出発して起業する方法まとめ

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