SNSが企業活動に与える影響は年々大きくなっています。
公式アカウントの発信だけでなく、一般ユーザーの投稿がブランドの価値や評判を左右する時代ですが、SNS上の誤解や誤情報、内部告発の書き込みが炎上を引き起こし、企業のイメージや業績に深刻な影響を与えるケースも増えています。炎上マーケティングのように、認知向上を図る施策もありますが、意図しない炎上は、取り返しのつかないダメージとなることもあります。
対策のスタート地点は、炎上前に早期発見することで、そこで注目されるのが「SNS投稿監視サービス」です。X(旧Twitter)やInstagram、匿名掲示板、口コミサイトなどの投稿を常時モニタリングし、ネガティブな書き込みを早期に検知する仕組みで、危機管理の一環として、上場企業だけでなく、中小企業や地方自治体、教育機関などでも導入が進んでいます。
今回は、SNS投稿監視サービスの内容と、会社が炎上を監視する理由や具体的な方法について、弁護士がわかりやすく解説します。
SNS投稿監視サービスとは
SNS投稿監視サービスとは、依頼者に関連するSNSやウェブ上の投稿内容を常時モニタリングし、ネガティブ情報や炎上の兆候を早期発見して通知するサービスです。
インターネットが普及し、情報発信が容易になった現代、企業に対するクレームや不満、誤解、内部告発が一気に拡散され、風評被害に発展するリスクが高まっています。炎上に発展して企業の信用を毀損する最悪の事態を回避するためにも、問題ある投稿をいち早く発見することが、企業経営を守るのに大切な初動対応となります。
SNS監視サービスの対象となるのは、例えば次のプラットフォームです。
- X(旧Twitter)
- Yourube
- TikTok
- 匿名掲示板(5ちゃんねる、爆サイなど)
- 口コミサイト(Google口コミ、食べログなど)
- 転職系サイト(OpenWork、ライトハウスなど)
- その他の口コミ・レビュー・Q&Aサイトなど
これらのメディアを対象に、特定のキーワード(社名、商品名、役員の実名など)を元に投稿を児童で収集・分析し、不適切なものがあった場合には通知する仕組みが一般的です。AIやツールによるもののほか、人の目による監視をするサービスもあります。多数の監視サービスが存在し、それぞれ特徴や強みが異なるので、依頼前によく比較検討してください。
企業がSNS投稿を監視する理由
次に、企業がSNS投稿を監視する理由について解説します。
SNS投稿の監視は、単なる情報収集ではありません。インターネット上の情報が購買の動機となる現代において、企業の評判や信用を守り、経営のリスクを軽減する大切な防衛策です。
炎上リスクが高まっている
インターネットが普及し、「誰しも情報を発信できる時代」になりました。
SNSの発展によって、個人の投稿でも、数万人、数百万人に拡散されることも珍しくはありません。例えば、以下のようなSNSの発信は、炎上の起点となりやすいです。
- 顧客のクレーム投稿が共感を呼んで拡散される。
- 従業員の不適切な行動(バイトテロ)が動画付きで投稿される。
- 過去の公式アカウントの投稿が時流に合わないと批判される。
情報発信が放置されると、拡散されたり、メディア報道やネットニュース、まとめサイトに転載されたりなど、ブランドイメージや株価、採用活動にも影響します。そのため、企業がSNSを監視する最大の目的の一つは、炎上に発展しやすい火種を早期に察知し、対応することです。
「インターネット上の風評被害対策」の解説

ネット上の情報拡散は早い
インターネットが一般に普及して久しく経ちます。もはや個人による情報発信が当たり前となった現代、ネット上の情報の拡散されるスピードは、非常に早いものとなっています。特に、TwitterやFacebook、InstagramをはじめとしたSNSは、情報を拡散させるためのシェア機能が中核となっており、爆発的な炎上の出発点となることも多いです。
また、ネット上の情報は、コピーが容易です。少しでも対処が遅れれば瞬く間に拡散され、手遅れとなりかねません。コピーされた情報は、発信者の特定が難しく、削除や損害賠償請求といった炎上対策が、事実上難しいことも。そのような段階に至る前に対処するために、ネット上の炎上を監視しておく必要があるのです。
意図しない悪評を招く
炎上は、その被害を受けた側でコントロールするのは容易ではありません。悪い口コミは相乗効果で広がっていき、事実に枝葉がついて大きくなっていきます。
炎上を監視せず、放置して拡大していけば、行く末は、意図しない悪評につながっていきます。ネット上で付いたイメージを覆すのは相当困難なことです。責任追及せず、「誹謗中傷してよい企業なのだ」というイメージが付けば、嫌がらせが継続的に行われる危険もあります。
再炎上による二次被害を受ける
炎上を監視せず、気付かないうちに対応が遅れると、更に炎上が加速することも。これが、再炎上による二次被害です。
例えば、社長や社員の不適切な発言によってネット上で炎上を起こしても、ただちに非を認めて謝罪すれば、被害を最小限に抑えられるケースもあります。誠意ある対応をすれば、逆に社会的な評価が高まることもあります。しかし、これらはいずれも、対応が速やかに行われる場合です。後手に回れば、「対応が悪い」という更なる攻撃を受けることとなります。
速やかに対処し炎上リスクを減らすには、原因となるネット上の情報をいち早くキャッチすべきです。したがって、炎上対策の第一歩として、ネット上の情報を監視する必要があるのです。
ネット上の炎上を監視する方法
炎上を監視することの重要性を理解したら、次に、具体的に、炎上を監視する方法を解説します。
監視すべき炎上の原因を特定する
まず、炎上の火種を発見するには、どのような事情が炎上の原因となるのかを知らなければなりません。監視の対象を特定しなければ、効果的なモニタリングができないからです。
炎上の原因となる行為や発言には、例えば次のものがあります。
- 一方的な価値観に基づく情報発信
- 差別的な発言
- 社会の倫理・道徳に反する言動
- 政治・宗教などのセンシティブな情報発信
- 顧客に対する攻撃
- 商品・サービスに対するクレーム
これらの事情は、代表者である社長がする場合もありますが、社員がするケースもあります。なかには、会社に無許可で、秘密裏にされた言動、個人の私生活における言動が炎上の原因となっている例もあります。これらの行為を速やかに察知するにも、ネット上、特にSNS上の情報を監視しなければなりません。
目視で監視する
まず、炎上の原因となるネット上の情報を、目視で監視する方法です。
単純な方法ですが、人の目で愚直に探すのが効果的なケースも多いものです。監視の範囲が限定されていたり、相応の炎上は起こると予想されるサービスを開始したりといった場合、目視による監視が良いでしょう。それほど知名度、企業規模が大きくなければ、目視と手動の監視で、十分に炎上を発見できます。
ただし、ネット上の情報は膨大で、特にSNS上の情報は目では追いきれないこともあります。手間がかかり、監視を担当する社員の人件費も馬鹿になりません。また、監視の対象が広範囲に渡るケースでは、見落としが発生する危険があります。
Googleアラートで監視する
目視による面倒な監視作業を自動化するため、Googleアラートが活用できます。Googleアラートは、設定したキーワードがネット上に書かれたら、通知を送付するサービスです。
Googleアラートで炎上を監視する方法は、次の手順で進めてください。
まず、監視するキーワードを決めます。炎上を発見するのに効果的なキーワードとする必要があるため、慎重に検討してください。設定したキーワードが不適切だと、炎上のきっかけを見逃してしまいます。
炎上を監視するには、例えば次のキーワードを設定します。
- 企業名
- 代表者の指名
- 商品・サービスの名称
- ブランド名
- よく用いられる蔑称
決めたキーワードを入力し、アラートを作成します。完全一致でないと通知されないため、伏せ字や誤字、よく利用される略称があれば、正式名称以外にもキーワード登録して監視してください。
誹謗中傷する人がよく使う蔑称は、必ずキーワード登録しましょう。
Googleアラートでは、ネット上の情報を監視し、通知するところまでを自動化できますが、炎上対策の全てを任せられるわけではありません。したがって、炎上を監視するには、Googleアラートで発見された情報を、どの頻度で、誰がどう対処するのか、社内に体制を整備する必要があります。
専門家にモニタリングしてもらう
社内の人員に余裕がないときや、専門知識が十分ではないときには、専門家に外注する方法も有効です。ネット上の風評対策に注力する弁護士は、削除請求や発信者の特定だけでなく、その前段階の監視からサポートできます。
炎上による損害は甚大で、監視は不可欠なこと。しかし、ずっとパソコンに張り付いてネットを見続けるわけにはいきません。本業がおろそかになっては本末転倒です。
ネットの風評対策を専門とする業者は数多く存在するため、委託先の選定には慎重なリサーチを要します。特に、削除代行を行う業者は、弁護士法に違反している疑いがあるため、注意してください。
監視により炎上の原因を早期発見したらすべきこと
以上のとおり様々な方法で、炎上を監視するのは、早期発見のためです。
ネット上、SNS上の情報をモニタリングすると、企業やサービスに対する様々な情報を取得できるはずです。そのなかには、良い口コミやプラスの情報もあれば、マイナスの悪評もあります。実際の炎上のプロセスは、明確には説明しづらく、「運」による要素も大きいところ。原因解明の正確な解明は困難です。
そのため、風評、誹謗中傷など、炎上のきっかけとなりうる情報を察知し、的確に監視するには、早期発見した際に検討すべきポイントを理解してください。監視によって関連する情報を取得したら、次の手順で対応方針を速やかに決めてください。
- 企業にとってプラスの要素があるか
- 企業にとってマイナスの要素があるか
- 炎上リスクが高いか
- 責任の所在を確認する必要があるか
- 被害者に個別に謝罪する必要があるか
- 公的に謝罪する必要があるか
- 削除、損害賠償請求といった対策が逆に炎上につながらないか
対策の方針を決めるには、ある程度の時間を要します。監視によって早い段階で発見していれば、炎上対策を検討するのに十分な時間的余裕を作り出すことができます。
まとめ

今回は、SNS投稿監視サービスと炎上の監視について解説しました。
SNSは、情報発信や顧客との接点として、企業にとって不可欠なツールとなった一方、炎上が発生すれば信用は失墜し、経済的にも損失が生じるなど、深刻な事態を招いてしまいます。リスクを未然に防ぎ、初動対応を迅速に行うためにも、「SNS投稿監視サービス」は、現代の企業の危機管理における重要なツールとなっています。
SNSの動向を継続的に把握し、炎上に発展するようなネガティブな兆候を早期に察知しておけば、企業のブランド価値を守ることができます。また、法務部門と広報部門が連携し、外部の弁護士の力も借りながら対策を講じることで、より強固なリスクマネジメントを実現できます。
企業の規模や業種を問わず、SNSの監視と適切な体制構築は、これからの時代に不可欠の備えとなるでしょう。