人事労務

外国人を雇用するときの雇用契約書のポイント(書式・記載例)

少子高齢化、労働力人口の減少が進んでいます。この解決策として「外国人労働力の活用」がポイントとなります。

労働力人口の確保のため、多様な労働力の活用が必要となりますが、育児・介護により短時間勤務を望む女性労働者、高齢者、障害者、副業人材などの活用とともに、重要となるのが外国人の活用です。

多様な働き方を認め、多様な個性を認め、できるだけ多くの労働力を活用するためには、その種類に即した「個別対応」が必要となります。この点で、外国人を雇用するときの適切な雇用契約書(労働契約書)の作成が必須となります。

外国人でも日本人でも、入社時に、雇用契約書(労働契約書)と労働条件通知書の作成が必要なことは変わりませんが、外国人を雇用するときの特有の注意点について、弁護士が解説します。

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雇用契約書・労働条件通知書の必要性

会社が労働者を雇用するときには、労働条件について、書面により明示しなければならないこととされています。「どのような条件で働くか」を知らなければ、弱者である労働者が不当に搾取されるおそれがあることが理由です。

明示しなければならない労働条件は、労働基準法などで次のとおり定められています(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条)。

明示すべき労働条件まとめ

  • ① 労働契約の期間に関する事項
  • ② 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  • ③ 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  • ④ 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • ⑤ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  • ⑥ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  • ⑦ 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  • ⑧ 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • ⑨ 安全及び衛生に関する事項
  • ⑩ 職業訓練に関する事項
  • ⑪ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • ⑫ 表彰及び制裁に関する事項
  • ⑬ 休職に関する事項

※ 以上のうち、①~⑤(④のうち昇給に関する事項を除く)については書面の交付により明示する義務があります。

労基法上のこの義務を果たすために、会社は「労働条件通知書兼雇用契約書」という書面を作成し、労働者に署名・押印してもらうことが一般的です。このことは、外国人であっても変わりありません。

労働条件通知書、雇用契約書(労働契約書)の書式・ひな形は、厚生労働省や各都道府県労働局のホームページにも掲載されているので、参考にしてください。

外国人の雇用契約書は、特別な配慮が必要

従業員を雇用するときに締結する「雇用契約書(労働契約書)」「労働条件通知書」に記載しなければならない事項は、外国人労働者でも日本人労働者でも同じです。労働基準法は、人種の区別なく平等に適用されます。

しかし、昨今増加する外国人労働力を活用するために、外国人に対する特別な配慮が必要となる場合があります。

最近、労使間のトラブルが炎上し、労働問題に発展することが少なくありませんが、配慮に欠けた対応をすると、日本人以上にトラブルが拡大して手に負えなくなってしまうのが、外国人労働者です。

外国人労働者の活用方法

「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が、平成31年(2019年)4月1日に施行されました。

外国人労働者は、日本で就労するためには、要件を満たしたビザ(在留資格)が必要となりますが、この法改正によって、「特定技能1号」「特定技能2号」というあらたな在留資格が新設されました。

これらの新しい在留資格を含め、外国人労働者を採用し、雇用する場合には、業種、業態に合わせて、適法に就労可能な資格を持っている人かどうか、会社側(企業側)でチェックが必要です。

日本語が読めない外国人の雇用契約書

日本語が読めない外国人も、日本で就労することがあります。日本語が理解できない外国人労働者に対しては、労働条件通知書、雇用契約書(労働契約書)を外国語に翻訳して示す必要があります。

一般的には、英語に翻訳した労働条件通知書、雇用契約書(労働契約書)を示すことが多いですが、英語が読めない外国人の場合には、母国語での記載をする配慮が必要なこともあります。

また、日本語を話せる外国人の中には、「話せるが、読めない(スピーキングはできるが、リーディングはできない)」という人もいます。流ちょうに日本語を話している外国人の場合でも油断せず、日本語の雇用契約書(労働契約書)を読めるかどうか、確認が必要です。

慣習・慣行を理解してもらう

「言語の壁」だけでなく、日本に初めて来て、日本で初めて働く外国人労働者の場合だと、日本の労働法や裁判例、慣習・慣行を理解していることはまずありません。

日本では、「長期雇用」「年功序列」など、日本特有の労働慣行が多く存在し、外国人の母国にはない考え方やルールがある可能性があります。日本人には当然、当たり前のものとして受け入れられている考え方やルールが、外国人にとっては目新しい新鮮なものという可能性もあります。

これらの労働法に関する基本的な考え方に齟齬があると、勘違い、行き違いが大きなトラブルに発展することもあります。基本的な考え方や解釈を知らなければ、雇用契約書(労働契約書)の内容を読めても、意味を理解してもらえません。

このようなトラブルをできる限り回避するためにも、外国人労働者の入社の際には「当たり前」と考えて日本人には説明しないような当然の前提条件も、丁寧に説明しなければなりません。そのため、入社時の説明には、日本人労働者の入社の場合よりも多くの時間がかかることとなります。

外国人労働者の雇用契約書の注意点

雇用契約書(労働契約書)、労働条件通知書は、会社が労働者に対して、雇入れる際の条件を記載して示すものです。

この書面に、言語や慣習についての配慮が不足しており、認識にズレがあると問題が起こります。特に、外国人労働者の場合には、理解不足によるトラブルの際に感情的になることが多く、ときに手の付けられないほど暴れることすらあります。

日本人なら常識の範囲内での行動をする人が多いでしょうが、「自分が海外で言葉もわからないところで不当な扱いを受けそうだ」というケースを想定していただければ、外国人労働者の危機的状態における心理も、少しは理解いただけるのではないでしょうか。

そこで最後に、外国人労働者に示す雇用契約書(労働契約書)、労働条件通知書の各項目において、会社側(企業側)が注意しておくべきポイントを、弁護士が解説します。

従事すべき業務の内容

「従事すべき業務の内容」に記載されたものに、どのような業務が含まれるのか、もしくは、含まれないのかは、外国人労働者と会社間での認識のズレが大きな問題につながるケースの1つです。

特に、日本的な雇用慣行では、「ゼネラリスト」的な正社員が一般的で、記載されている業務内容でなくても広く柔軟に対応すべき、という考え方がある一方で、海外では「スペシャリスト」的な発想で業務内容を限定する考え方もあります。

このように、日本的な雇用慣行が、全世界的な常識ではないことをきちんと踏まえて、「従事すべき業務の内容」をできる限り具体的に記載し、含まれる業務、含まれない業務を詳細に説明することがトラブル回避につながります。

特に、雇用契約書における「~~等」「その他上記に付随する一切の業務」といった一般条項的な書き方は、外国人労働者との認識のズレを生みやすいため注意が必要です。

残業・労働時間の考え方

一般的に、諸外国に比べて日本の労働時間は長い傾向にあります。逆にいうと、日本人よりも外国人のほうがワークライフバランスを重要視する傾向にあります。

外国人労働者でなくとも、違法な長時間労働、残業代の未払いは許されませんが、残業・労働時間の考え方に関する内外のズレを認識しておきましょう。

労働基準法では、「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働かせると、「1.25倍」の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。「1週1日以上」の法定休日に労働させたい場合には「1.35倍」の割増賃金(残業代)の支払いが義務となります。

そして、外国人労働者の場合には、日本人のような「サービス残業」の精神がない場合も多いことから、業務の特性上、残業がどうしても必要となる場合には、「どれくらいの時間残って働かなければならないのか」「その場合、いくらの賃金が追加でもらえるのか」を説明しなければ争いのもととなります。

休日・休暇

休日・休暇の考え方もまた、国によってさまざまです。この点でも、日本の考え方が当たり前と思わず、丁寧な配慮が望まれます。

特に、土日はともかくも「国民の祝日」については日本特有のものです。どの日、曜日が祝日になり、労働が必要なくなるのかについて、認識のズレなく説明をするためには、「業務カレンダー」を作成し、提示することがお勧めです。

また、年次有給休暇(年休)が労働者の権利として与えられていること、6か月以上働き、8割以上の出勤をした場合に与えられる権利となることといった考え方についても、労働基準法を遵守して説明をしましょう。

解雇についての考え方

「外国人労働力を安くこきつかい、不要になったらクビ(解雇)にする」というブラック企業は、残念ながら後を絶ちません。このような取扱いは、日本人でも外国人でも許されません。

雇用契約書には、解雇事由を記載しなければなりませんが、一般的にこの記載は抽象的なものになることが多いです。しかし、日本になじみの薄い外国人労働者ほど、「どのようなケースで解雇事由にあたり、解雇されてしまうのか」を具体的にイメージすることが困難です。

解雇理由の列挙が長くなる場合には、就業規則を作成し、ここに解雇事由を記載しておくことがお勧めですが、この場合には、外国人労働者に対して就業規則もすべて英訳などして渡す必要があり、余計な手間がかかるおそれもあります。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、少子高齢化、労働力人口の減少への対策として、多様な労働力の活用が叫ばれる中、出入国管理法の改正依頼とくに注目されている外国人労働者の活用について解説しました。

外国人労働者を活用し、トラブルを回避するためにも、外国人の状況を踏まえて適切な配慮をおこなった「雇用契約書(労働契約書)」「労働条件通知書」の作成が必須となります。また、外国人固有の問題として、在留資格、在留期間、就労許可の確認も忘れずおこなってください。

万が一、外国人労働者とのトラブルが拡大し、労働問題を起こしてしまったときは、企業の労働問題を得意とする弁護士に、お早めに法律相談ください。

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