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「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)に注意!送検を避けるには?

「かとく」という言葉が、電通やドン・キホーテなど、有名企業の送検で、ニュースで話題となっています。

「かとく」は、過重労働をなくすため、ブラック企業に対する捜査を徹底するために、悪質な長時間労働を取り締まるためにできた特別な機関です。

「かとく」の捜査を受けた結果、長時間労働の実態が明らかとなってしまえば、会社や社長、役員が送検され、刑事罰を受けるリスクがあることはもちろんのこと、「ブラック企業」として御社の評判を低下させます。

今回は、「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)の実態と、送検を避けるための注意について、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士が解説します。

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「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)とは?

「かとく」とは、「過重労働撲滅特別対策班」の略称です。

悪質な長時間労働をおこなっているブラック企業を取り締まるための行政機関として、東京と大阪に設置されました。「かとく」では、主に次のようなケースが扱われます。

  • 長時間労働などの労働法違反が、特に悪質な企業を対象とするケース
  • 大企業の本社を対象とする監督指導など、大規模で、広域捜査を必要とするケース

2016年4月より、「かとく」の目的の1つである広域調査の調整役として「本省かとく」が設置され、あわせて、全国全ての労働局に、長時間労働の監督指導を専門的に行う「過重労働特別監督監理官」が設置されました。

「かとく」の組織

まず、「かとく」の本部は、厚生労働省にあります。いわゆる「本省かとく」といい、全国の長時間労働への対策について、いわば「司令塔」としての機能を果たします。

この下に、精鋭部隊である、「東京かとく」、「大阪かとく」があります。特に大企業が多く、ブラック企業の長時間労働が蔓延する東京と大阪に実働部隊がいるとお考えください。

さらに、全国47都道府県に設置されている「労働局」に、「かとく監理官」を配置しています。その下で手足となって捜査を進めるのが「労働基準監督署(労基署)」です。

「かとく」では、特に調査困難なケースを迅速に対応するため、「データフォレンジック」という改ざんされたPCデータなどを復元する専門技術を有しており、より調査困難で専門的なケースの捜査に強い組織となっています。

「かとく」の目的

企業のなかで起こる「労働問題」には、「不当解雇」、「パワハラ」、「セクハラ」など、多くの種類がありますが、中でも「長時間労働」は非常に深刻な問題です。

会社経営者にとっては、労働力をタダで使える「サービス残業」が許されるとすれば人件費の節約につながるため、経営者の意識を変えないかぎり「残業未払い」「長時間労働」はなくならないからです。

会社経営者の意識を変革し、違法な長時間労働についての労働トラブルをなくすことが、「かとく」が強い強制力を持つ目的です。

「かとく」と「労働基準監督署(労基署)」の違い

労働問題を取り締まる機関には、「かとく」以外に、労働基準監督署(労基署)という有名な機関があります。

「かとく」も労基署も、労働問題を取り締まり、労働法に違反している会社を摘発、送検する機関であるという点では変わりません。労基署も「家督」も、警察と同様の権限を有し、違法な会社の捜査をしたり、逮捕し、送検したりすることができます。

なぜ労基署に加えて「かとく」が作られたかというと、大企業の本社をターゲットとして、企業単位で効率よく、「長時間労働」の問題をなくすことができるからです。

「かとく」の送検事例

長時間労働を捜査し、ブラック企業を摘発するために作られた「かとく」が送検するのは、特に大手企業の本社です。

これまでに送検された事例には、誰しもが聞いたことがある有名企業が含まれています。次のような有名企業、大手企業が、「かとく(過重労働撲滅特別対策班)」の捜査によって、書類送検されています。

特に、大手広告代理店「電通」が、女性社員の過労自殺をきっかけとして大きなニュースとなったことは、記憶に新しいのではないでしょうか。

ABCマート(2015年7月)

大手靴販売店である「ABCマート」の全国チェーンを展開する「エービーシー・マート」が、「かとく」から東京地検に書類送検されました。

東京都内2店舗で、違法な長時間残業が蔓延しており、月100時間を超える残業が繰り返されていたとの疑いが端緒となりました。

フジオフードシステム(2015年8月)

ドン・キホーテ(2016年1月)

「東京かとく」が、大手ディスカウントショップのドン・キホーテを、労働基準法違反の疑いで、東京地検に書類送検しました。

ドン・キホーテの店舗では、人員不足が続いていることを理由に、違法な長時間労働が常態となり、3か月で415時間もの残業が発覚しました。

サトレストランシステムズ(2016年9月)

サトレストランシステムズが経営する「さん天」、「和食さと」、「すし半」などの店舗で、違法な長時間労働が繰り返し行われていたとして、「かとく」から大阪地検に書類送検されました。

繰り返し監督指導を行っても改善が見られなかったことが、「かとく」が送検に踏み切った理由とされています。

コノミヤ(2016年10月)

大手小売りスーパーの「コノミヤ」とその取締役らが、労働基準法32条(労働時間)違反の疑いで、「かとく」から大阪地検に書類送検されたケースです。

「コノミヤ」では、本社経理の従業員(社員)などに、36協定の限度時間を超えて、最大で月105時間15分の残業をさせていました。

また、残業時間に相当する残業代についても、合計約293万円の未払いが発見されました。

電通(2016年12月)

高橋まつりさんの過労自殺をきっかけに、その当時の上司が、東京地検に書類送検されました。

電通(2017年4月)

電通の東京本社をはじめ、中部、京都、関西の三支社に対して、一斉に強制捜査を実施し、労使協定で定められた上限を超える違法な長時間労働について書類送検がなされました。

【注意】「かとく」の強力な権限

長時間労働、過重労働を撲滅するという、「かとく」の目的を実現するため、「かとく」や監督官には、非常に強い権限が与えられています。

労働法にあきらかに違反しているブラック企業は、ただちに是正が必要ですが、そうでなくても、捜査対象となったり送検されてしまったりしないため、「かとく」の協力な権限に注意が必要です。

立入検査ができる

「かとく」や監督官は、違法な長時間労働、労働者に負担をかける過重労働が疑われる企業の事業所に立ち入って、検査を行うことができます。

労働問題は、違法性がないよう事前予防が一番ですが、万が一、監督官が抜き打ちで訪問してきてしまった場合は、ただちに企業の労働問題を得意とする弁護士にご相談ください。

逮捕、送検できる

「かとく」や、労基署の労働基準監督官は、労働法に違反している会社やその代表者(社長)、役員などを、逮捕し、送検する権限があります。

すなわち、「警察官(司法警察員)」と同等の権限が与えられているのです。

労働法といって甘くみてはならず、労働基準法、労働安全衛生法など、労働者の基本的な権利を守る法律には、「刑事罰」が用意されています。

専門技術を有している

立入検査の権限や、逮捕、送検の権限は、これまでも労基署が遂行してきたものと同様です。

「かとく」では、これに加えて、より専門的な技術を有し、悪質な違法業者を駆逐することを目的としています。

特に、「データフォレンジック」という、PCのデータ消去、改ざんを元通りに復元する技術は重要です。長時間労働を隠蔽するために、タイムカードデータを改ざんしている会社であっても、データフォレンジックの技術によって隠蔽工作が暴かれる可能性があります。

「かとく」に検査、送検されないためには?

さきほど、「かとく」の権限で、事業所への立ち入り検査が可能であると説明しました。

「かとく」が、この立ち入り調査の権限を行使するのは、「かとく」設立当初は、「月100時間を超える残業が疑われる事業場」とされていました。

しかし、長時間労働、過労死、過労自殺などの社会問題化を受け、現在では、「月80時間を超える残業が疑われる事業場」は、立ち入り調査の対象とされています。

すなわち、いわゆる「過労死ライン(=月80時間残業)」が、「かとく」が捜査、送検する1つの基準であるというわけです。

したがって、「かとく」の捜査対象とならず、また送検されないために、「過労死ライン(=月80時間残業)」を超えないよう、残業時間を削減することが、会社側(使用者側)としては急務です。

「かとく」の捜査・調査の内容

「かとく」による立入検査の目的は、違法な長時間労働の是正にあります。そのため、捜査では、「労働時間」、「残業時間」について、特に念入りな調査がなされます。

重点調査される内容の例

  • 36協定が適切に作成され、周知されているか
  • 残業時間が、36協定の限度時間を超えていないか
  • 残業時間に相当する残業代が支払われているか
  • 過労死ライン(月80時間)を超える残業がないか

立入検査で行われた調査の結果、違法な長時間労働が発覚してしまった場合には、その違法性が重大である場合には、送検され、刑事罰を受けるおそれがあります。

近年、意図的に労務管理データを偽造、ねつ造し、違法な長時間労働を隠すケースが増えていますが、「かとく」の目をあざむくことは困難であるといわざるをえません。

むしろ、違法性が重大であるにもかかわらず、証拠隠滅をしてしまえば、発覚した際、特に重い刑事罰となる可能性が高いといえます。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、近時、電通やドン・キホーテなどの送検事例で話題となっている「かとく(過重労働撲滅特別対策班)」について、弁護士が解説しました。

「かとく」の内容、実態を理解するとともに、「かとく」による立ち入り検査、調査、捜査の対象とならないよう、違法な長時間労働を、会社側(使用者側)も積極的に削減しましょう。

会社内の労務管理、過剰労働に不安を感じる会社経営者の方は、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士が、改善のアドバイスをいたします。

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