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退職する社員に取引先の名刺を返却させられる?勝手に使われたら?

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会社を退職する社員がいる場合、健康保険証、離職票など、社員との間でやりとりすべき重要書類は多くありますが、返却物に漏れがあってはいけません。

中でも、「名刺」は、つい適当に扱ってしまいがちですが、会社にとって、経営者にとっては、顧客管理、営業に役立つ、非常に重要なものです。

退職する社員が、取引先の名刺を保管しているとき、会社は、返却を求めることができるのでしょうか。できる場合、どのような方法で、いつ取引先の名刺を返却させればよいのでしょう。

円満退職であればまだしも、問題社員の解雇など、退職トラブルとなっていたときは、名刺の返却がさらに重要性を増します。

今回は、退職した社員から、取引先の名刺を返却させる重要性と方法について、企業の労働問題を得意とする弁護士が解説します。

1. 名刺の「所有権」に基づく返却

名刺には、取引先の方の電話番号やメールなどが書いてあり、顧客開拓に非常に重要な意味をもちます。

この重要な「取引先の名刺」について、「誰のものか?」、つまり、「所有権」は誰が有しているのでしょうか。

一般的に、会社の社員として取引先と名刺交換をした場合には、取引先の名刺の所有権は、その従業員にあるのではなく、会社が有すると考えられます。

したがって、退職する社員に対してはもちろん、在職中の社員であっても、経営者は、社員の保管している取引先の名刺を会社に渡すように求めることができます。

2. 取引先の名刺を返却させないリスク

取引先の名刺の重要性は十分ご理解いただけたでしょうが、そのような重要なものであるからこそ、社員に返却してもらっておかないと、経営者にとって、会社にとって大きなリスクとなりかねません。

取引先の名刺を返却させずに退職されてしまったときの、会社側のリスクについて、弁護士が解説します。

2.1. 個人情報の漏洩

取引先の名刺は、個人情報のかたまりです。個人情報保護法が改正された昨今、個人情報の取り扱い方は、御社の企業イメージに直結します。

名刺の所有権は御社にあるとしても、名刺に記載された個人情報は取引先のものであって、漏洩してしまえば、取引先から訴えられる危険もあります。

取引先の名刺を社員に返してもらわないことによるリスクの1つ目は、この「取引先の個人情報の漏洩」にあります。

2.2. 顧客獲得チャンスの喪失

冒頭で解説しましたとおり、名刺は、顧客拡大の営業ツールです。

取引先と名刺交換した後で、その名刺を会社に返してもらわなければ、顧客獲得チャンスを失うこととなりかねません。これが、取引先の名刺を従業員に返してもらわないことの2つ目のリスクです。

なお、営業メールを送るときでも、名刺交換をしてメールを送ることを伝えてからでなければ、違法な営業方法となってしまう危険があり、その意味でも取引先の名刺は重要です。

2.3. 競業避止義務への違反

退職した社員に、御社と同様の仕事をさせないことを「競業避止義務」といいます。

退職後の競業避止義務を無条件に課すことは違法となる可能性が高いものの、少なくとも、退職時に、取引先の名刺の返却を受けておかなければ、競業することを防止することはできません。

2.4. 退職後の返却は困難

ここまでお読み頂ければ、退職時に、取引先の名刺について返却を受けておくことの重要性は、十分伝わったのではないでしょうか。

そして、退職時に返却を受けておかなければ、退職後に返却を受けることは困難です。

円満に退職した場合であっても前職の会社からの連絡はうっとうしいと感じられるでしょうが、退職時に「解雇」、「残業代」、「パワハラ」などの労働問題で揉めた場合にはなおさらです。

3. 名刺上の情報を利用されることは仕方ない?

取引先の名刺に書かれた情報は、その名刺を作った「取引先」のものです。

とはいえ、退職をした社員も、その名刺を返却したとしても、さらにその名刺上の情報を利用して、営業行為をするおそれがあります。

「退職後の競業避止義務」を、書面で約束している場合には、この義務に違反したものとして、営業活動をした退職社員に対して、損害賠償請求をすることが考えられます。

また、「退職後の競業避止義務」を、明確に約束していなかった場合であっても、どのような行為でも許さなければならないわけではありません。

この場合でも、常識に反するような、不誠実な営業行為を行って、いわゆる「客抜き」をする場合には、損害賠償が認められるケースもあります。

4. 取引先の名刺の返却を求める方法

最後に、実際に退職する社員に対して、会社が、取引先の名刺の返却を求める具体的な方法について、弁護士が解説します。

4.1. 返却物リストを作成する

退職時には、今回解説している「取引先の名刺」だけでなく、返却を求めておくべきものが多くあります。

退職する社員から返却してもらうべき物品とは、例えば次のものです。

 例 
  • 健康保険証(本人のもの、家族のものを含む。)
  • 会社のセキュリティカード
  • 社用携帯、社用PC
  • 作業服、制服

「取引先の名刺」以外にも返却してもらうものがある場合、特に円満退社の場合には、一覧のリストにして、社員の協力を求めるとよいでしょう。

4.2. 返却してもらえないときは書面で要求する

これに対して、社員が、会社の求めに応じて協力的に「取引先の名刺」を返却しないケースでは、対応に注意が必要です。

特に、退職時に労働問題で、労働審判や訴訟などのトラブルになった場合です。

社員が協力的に返却をしない場合には、取引先の名刺の重要性を考えると、書面によって、会社から労働者に対して強く請求をするようにしましょう。

4.3. 返却した以上に所持していないことを証明

取引先の名刺の返却について、労働者との間でトラブルとなった場合、「競業避止義務」についての争いがあると考えられます。

つまり、辞める社員が、辞めた後も同じ仕事をして、顧客を奪いたい、と考えているようなケースです。

隠してコピーをとっていれば、取引先の名刺を利用しても発覚しないおそれもありますが、少しでも従業員にプレッシャーをかけるためにも、「返却したもの以上に所持、保管していない。」ことを確約させましょう。

5. まとめ

今回は、従業員が退職するときに、経営者が気を付けておかなければならない返却物である「取引先の名刺」について、弁護士が解説しました。

なお、御社が与えている名刺が御社の「所有物」であることに争いはなく、御社の名刺の返却を求めておくことも当然です。悪用を防ぐためにも必ず返却を受けましょう。

従業員の退職時には、気を付けるポイントが多く存在しますので、企業の労働問題を得意とする弁護士に、お気軽に法律相談ください。

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