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株主総会の流れは?招集の手続きから議事の進行まで、進め方を解説

株式会社を経営するには、株主総会を開催する必要があります。株主総会は、株主によって組織される、株式会社の意思決定をする重要な会議であり、軽視してはなりません。

正しく株主総会を開くことが株主保護のために大切。そのためには株主総会の流れを理解し、法律を遵守したプロセスを踏む必要があります。株主総会の流れには、招集の手続きから始まり、総会当日の議事の進行まで、進め方のルールがあります。会社法のルールを守らない株主総会の決議は、不存在、無効、取り消しといった瑕疵を帯びるおそれがあります。

意思決定のスピードが重視される場面であっても、正しい方法を理解しなければ、後から決議に瑕疵が生じ、重要な意思決定がなかったことになってしまいます。

今回は、株主総会の流れ、進め方について、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 株主総会は、株式会社の最重要の意思決定機関であり、経営の重要事項を決める権限がある
  • 株主総会の招集手続き当日の議事進行決議とその後の流れをよく理解する
  • 会社法の定める手続きを守らないと、株主総会の決議に瑕疵が生じ、企業経営の支障となる

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目次(クリックで移動)

株主総会とは

株主総会とは、株式会社における最も重要な意思決定をする機関です。

株主総会は、議決権を有する株式を保有する株主によって構成され、企業経営における重要事項を決議します。株式会社では、株主平等の原則のもと、原則として1株につき1つの議決権を行使できます。

役員の選任解任といった人事に関する事項、定款の変更のほか、合併や株式譲渡、事業譲渡といった組織再編についても、株主総会の決議を経て進めなければなりません。

株主総会は、各事業年度に開催される定時株主総会と、必要に応じて招集する臨時株主総会の2つがあります

臨時株主総会は、役員の責任追及やビジネスチャンスの獲得など、定期開催を待っては間に合わないスピーディに解決すべき課題があるとき開催します。また、種類株式を発行する会社では、その株式を有する株主のみが参加する種類株主総会が開催されることもあります。

株主総会を弁護士に依頼するメリットは、次に解説します。

株主総会を開催するまでの流れ

株主総会を開催するまでの流れを解説します。

企業規模が拡大するにつれ、株主は多数となり取締役会が設置されるなど、関係者が増加します。すると、関係者それぞれの意思決定の機会を保証すべく、株主総会の開催までに必要な手続きも複雑化します。

株主総会の招集決定

まず、株主総会の招集を決定する必要があります。招集決定をする権限は、株式会社の機関設計により異なります。

  • 取締役会設置会社の場合
    取締役会の決議による
  • 取締役会非設置会社の場合
    取締役の決定による

招集決定にあたっては次の事項を定めなければなりません(会社法298条1項)。

  • 株主総会の日時
    定時株主総会は、各事業年度の終了から3ヶ月以内の日時が一般的。これは、議決権を行使できる株主を事業年度の最終日を基準日として決するためで、定めた基準日から3ヶ月以内に株主総会を開催する必要があるから。3月決算の会社の開催日が、6月の一定期日に集中するのが通例。
  • 株主総会の場所
    場所について法律上のルールはないが、株主の参加が困難な場所での開催は、招集手続きが著しく不公正であるとして決議の取消事由となるおそれがある。
  • 株主総会の目的事項
    株主総会の目的には、報告事項(年次の事業報告など、会社が株主に報告すべき事項)と決議事項(株主総会において決議剃べき経営における重要事項)とがある。
  • 書面による議決権行使の可否
    株主総会に出席せず、書面による議決権行使を認めるなら、その旨を定め、株主総会参考書類、議決権行使書面を同封する。議決権を有する株主が1000人以上の会社では書面による議決権行使を認めなければならない。
  • オンラインによる議決権行使の可否
    電子投票による議決権行使を認めるとき、その旨を定め、方法などを記載する。ただし、書面による議決権行使とは異なり義務ではない。
  • その他、法務省令で定める事項
    株主総会参考書類の記載事項、書面やオンラインによる議決権行使の期限、代理人による議決権行使の方法、議案の概要などといった様々な内容を株主に通知する必要がある。

招集通知の送付

以上の事項を決定したら、その内容を記載した招集通知を株主に発送します。招集通知を送付すべき期間は、公開会社(譲渡制限付株式を発行しない会社)か、非公開会社(譲渡制限付株式を発行する会社か)によって異なります。

  • 公開会社の場合
    株主総会の2週間前までに送付する必要あり。
  • 非公開会社の場合
    株主総会の1週間前までに送付すればよい。また、取締役会非設置会社は、より短い期間を定款で定めて短縮できる。ただし、書面やオンラインによる議決権行使を認める場合には期間の短縮はできず、公開会社と同じく2週間前までに送付する必要がある。

招集通知の方法は、原則として書面で行う必要があるものの、機関設計や議決権行使の方法によっても異なります。いずれにせよ、招集通知を正しく行ったかどうかが争いになるケースは多く、記録に残して証拠化する必要があります。

  • 取締役会設置会社の場合
    書面による招集通知を要する。
  • 取締役会非設置会社の場合
    必ずしも書面でする義務はなく、電話やメール、口頭でも可能。ただし、書面やオンラインによる議決権行使を認める場合には、書面による招集通知を要する。

※ なお、書面による招集通知を要する場面でも、株主の承諾を得れば、電子メール等の電磁的方法による通知が認められる。

機動性を重視し、最も簡略に招集通知をするなら、取締役会非設置とし、書面やオンラインの議決権行使も認めず、定款で期間を短縮するのがお勧めです。この方法なら、当日に口頭で招集し、株主総会を開催することも可能です。

また、株主全員の同意があれば、招集手続きそのものを省略できます(会社法300条、ただし、書面やオンラインによる議決権行使を認める場合を除く)。

株主総会の省略、簡略化については、次に解説します。

株主総会当日の流れと、議事の進行

次に、株主総会を開催する当日の流れ、議事の進行について解説します。

議長の就任

まず、議長を選任します。株主総会の議長は必須ではないものの、議事進行の円滑化のため選任されるのが通例です。

議長は、株主総会の普通決議で決めることもできますが、定款により社長を議長としている会社が多いです。選任された議長は、株主総会の最初に、開会宣言をし、議事進行に関する説明を行います。議長は、秩序維持権と議場整理権といった権限を与えられ、株主総会の議事進行について広い裁量を持ちます。

不規則発言を制限したり、退場を命じたりすることもできますが、株主の議決権行使の機会を奪うため、正しく権限が行使されなかった場合は決議の取消事由となるおそれがあります。

出席株主数と定足数充足の確認

次に、議決権を行使できる株主の数とその議決権の数、出席した株主の数とその議決権数を報告します。この際に、定足数を充足しているかを確認します。

遠隔地の株主をビデオ会議などで参加させることもでき、その場合、議事録にその参加方法を記載します。

監査報告、事業報告、計算書類の説明

定時株主総会においては、監査約による監査報告や、前記の事業報告、計算書類の説明が行われます。

事業報告、計算書類について、取締役会設置会社では、株主総会の前に監査役の監査、取締役会の承認を受け、招集通知に添付する必要があります(取締役会非設置会社では、当日に直接提出すれば足りる)。

議案の上程と審議、質疑応答

株主総会で決議すべき議案を上程し、その内容を説明します。あわせて、議案の審議を行い、株主からの質疑応答を受け付けます。

株主総会の運営方法には、一括上程方式と個別上程方式があります。迅速化の要請から一括上程方式とする会社が多いです。

  • 一括上程方式
    全議案を初めに一括して上程し、審議、採決を行う。
  • 個別上程方式
    個々の議案ごとに上程し、審議、採決を行う。

株主総会に参加する役員等は、株主から質問を受けたら、必要な説明を行う義務があります。説明は、平均的な株主の理解を前提として、判断が可能な程度にしなければなりません。説明義務が十分でないと、決議の取消事由に該当するおそれがあるため、想定問答を作り、リハーサルをするなど、事前準備を徹底する必要があります。

弁護士に任せるべき株主総会の指導について、次に解説します。

株主総会の決議

最後に、上程された議案について採決を取り、株主総会の決議を行います。決議と、その後の流れは次章で解説します。

総会の審議が終了したら、議長が閉会を宣言します。

株主総会の決議と、その後の流れ

最後に、株主総会の決議と、その後の流れ、事後に必要な手続きなどを解説します。

株主総会の決議の種類

株主総会の決議には、次の3つの種類があります。

  • 普通決議
    発行済株式総数の過半数の議決権を有する株主が出席し、その議決権の過半数の賛成によって行う決議
    (例:決算の承認、役員の選任、役員報酬の決定など)
  • 特別決議
    発行済株式総数の過半数の議決権を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成によって行う決議
    (例:定款変更、営業の譲渡、原資、会社の解散、合併など)
  • 特殊決議
    定足数はないが、決議要件が大幅に厳格化された決議。
    議決権を行使できる株主の半数以上、かつ、株主の議決権の3分の2以上の賛成によって行う(定款で更に要件を厳しくできる)。また、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権について株主ごとに異なる扱いをする定款変更では、更に厳しい要件が課され、総株主の半数以上、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成を要する。

どの決議が必要か、決議事項の重要度によって法律に定められています。

議事録の作成

株主総会が終了したら、議事録を作成します。

議事録の記載事項は法律に定められており、株主総会の日時や場所、議事の経過の要領と結果、出席した役員などの氏名、述べられた意見、議長の氏名、議事録を作成した取締役の氏名などを記載します。議事録に氏名が記載されることによって、取締役には、その決議に対する責任が生じることがあります。

議事録は、本店で10年間、支店で5年間保存し、株主などに閲覧、謄写させなければなりません。

役員の登記

定時株主総会において役員の選任・解任が決議されたときには、登記に反映させるための申請が必要となります。

事業報告、計算書類の備え置き

定時株主総会の終了後は、事業報告、計算書類とその附属明細書を、開催日の1週間前(取締役会設置会社では2週間前)から5年間、会社の本店に備え置かなければなりません。備え置きの期間は、招集通知の期間と異なり、短縮できません。

決算公告

定時株主総会が終了したら、遅滞なく、承認された貸借対照表(大会社では貸借対照表と損益計算書)を公告する必要があります。これを「決算公告」と呼びます。決算公告は、定款に定めた方法に従い、官報への掲載、日刊新聞紙への掲載、電子公告のいずれかの方法によります。

決算公告は全ての株式会社に義務付けられ、怠った取締役等には100万円以下の過料の制裁があります。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、株式会社において必ず行う、株主総会の流れについて解説しました。

株主総会の手続きは、会社法の定めるプロセスで進めなければなりません。手続きに違反があると、決議が、不存在、無効、取り消しといった瑕疵を帯びる危険があります。株主総会の招集の手続きから、総会当日の議事進行、決議後の流れまで、ポイントを押さえて速やかに進めないと、意思決定が遅れ、企業経営の支障となります。

意思決定のスピードを重視するあまり、準備に多くの時間を避けず、株主総会の手続きの流れは軽視されがちです。最低限行うべき手続きを理解し、リスクを軽減してください。

この解説のポイント
  • 株主総会は、株式会社の最重要の意思決定機関であり、経営の重要事項を決める権限がある
  • 株主総会の招集手続き当日の議事進行決議とその後の流れをよく理解する
  • 会社法の定める手続きを守らないと、株主総会の決議に瑕疵が生じ、企業経営の支障となる

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