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事業用の建物賃貸借契約書を作成する際注意すべき8つのポイント

建物賃貸借契約は、企業経営に必須の契約書です。つまり、事業用建物賃貸借契約書です。

リモートワークが浸透したとはいえ、企業の経営には、場所の用意が不可欠。自前の不動産があればよいですが、資産が潤沢な会社ばかりではなく、通常は、オフィスや店舗を借りることで事業をスタートします。また、自社の保有する不動産が多くある会社や、不動産会社では、貸主側として、事業用の建物賃貸借契約書を作成しなければなりません。

借主、貸主のいずれの立場でも、賃貸借の条件は契約書に示されるため、その条項が、自社にとって不利なものとなっていないかどうか、契約書チェックが必要となります。賃貸借契約書は、不動産会社が用意する例も多く、業界団体の雛形も存在するので、「定形文言だ」と甘くみて、契約書チェックをしないまま結ぶ例も多いですが、トラブルのもとです。

今回は、事業用建物賃貸借契約書の作成時における注意点を、企業法務に強い弁護士が解説します。

目次(クリックで移動)

事業用の建物賃貸借契約書とは

事業用建物賃貸借契約書とは、ビジネスにおいて用いられる建物の賃貸借において、作成される契約書のことです。

事業用の建物賃貸借契約書が必要となるのは、例えば次の場面です。

【借主側となるケース】

  • 企業がオフィスを借りる
  • 販売店舗を借りる
  • 飲食店舗を借りる
  • 工場用地を借りる

【貸主側となるケース】

  • 自社物件をテナントに貸す
  • 不動産賃貸業を営む

不動産の賃貸借には、土地の賃貸借もありますが、オフィスや店舗の賃貸といったよくある場面で、どの企業でも密接に関与する可能性のあるのが、建物の賃貸借契約です。

事業用で、建物の賃貸借契約を締結するには、借地借家法、宅地建物取引業法といった専門的な法律への配慮を要します。契約書の文言が長くなるケースも多く、全ての条項をチェックし、リスクを洗い出すには手間もかかります。次のような賃貸に絡む必要書類も数多く、これら添付書類も合わせると、事業用建物賃貸借契約書は相当な大部になります。

  • 対象物件の情報を示す資料
    (登記簿謄本、登記事項証明書など)
  • 重要事項説明書

建物賃貸借に伴う無用なトラブルに巻き込まれないためにも、事業用建物賃貸借契約書にサインする前に、不安や疑問はすべて解消すべき。契約書作成時はもちろん、相手が契約書を提示してきたときにも、リーガルチェックは欠かせません。

事務所を借りるときの契約の流れと注意点は、次に解説しています。

事業用の建物賃貸借契約書のテンプレート

次に、事業用の建物賃貸借契約書のテンプレートを紹介します。

個別の事情によって修正を要しますが、書式・雛形として参考にしてください。

事業用建物賃貸借契約書

XXXX(以下「甲」という。)とYYYY(以下「乙」という。)は、別紙目的物件(以下「本物件」という。)について、以下の通り賃貸借契約を締結した。(※1)

第1条(目的)(※2)
本契約は、飲食店(ファミリーレストラン、終夜営業あり)の事業に供することを目的とする。

第2条(契約期間)
1. 本契約の期間は、2022年11月1日より3年間とし、甲は乙に対して同日までに本物件を引渡す。
2. 本契約は、甲または乙から契約満了日の6か月前までに相手方に対して書面により契約を更新しない旨の通知がないときは、さらに3年間同一の条件で更新するものとし、以後も同様とする。

第3条(賃料及び費用負担)(※3)
1. 乙は、本物件の賃料として月額XX万円(税込)と管理共益費として月額XX万円(税込)の合計XX万円を前月25日までに甲の指定する金融機関口座に振り込む方法により支払う(振込み手数料は乙負担)。
2. 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には協議の上、賃料・共益費を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担、維持管理費の増減により、賃料・共益費が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により、賃料・共益費が不相当となった場合
三 近傍類似の建物の賃料の変動が生じ、賃料が不相当となった場合
3. 1ヶ月に満たない期間の賃料・管理共益費は、1ヶ月を30日として日割り計算する。
4. 甲は、本物件に係る公租公課を負担する。
5. 乙は、水道光熱費、その他専用設備に係る使用料金を負担する。
6. 乙は、第1条記載の営業目的に従い使用することにより、法令上設備新設、改善等が必要となる場合は、これに要する費用を負担する。

第4条(保証金)
1. 乙は、本契約から生じる債務の担保として、12か月分の賃料に相当する保証金を甲に預け入れるものとする。
2. 乙は、本物件を明け渡すまでの間、保証金をもって賃料、共益費その他の債務と相殺することはできない。
3. 甲はこの契約の解除又は終了により、乙が本契約に定める義務を完全に履行したと認めた場合、遅滞なく第1項の保証金より償却費として解約時賃料の3ヶ月分相当額を差し引き、返還するものとする。
4. 甲は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、賃料の滞納その他の本契約から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には当該債務の額を差し引いたその残額を、無利息で、乙に返還しなければならない。
5. 前項の規定により乙の債務額を差し引くときは、甲は、保証金の返還とあわせて債務の額の内訳を明示しなければならない。

第5条(休業補償の特約)(※4)
1. 甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。ただし、乙の故意又は過失により必要となった修繕に要する費用は、乙の負担とする。
2. 前項の規定に基づき甲が修繕を行う場合は、甲は、あらかじめその旨を乙に通知しなければならない。この場合において、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該修繕の実施を拒否することができない。
3. 第1項にかかわらず、次の各号に掲げる修繕は乙が行うものとする。
一 電球、蛍光灯、ヒュ-ズの取替え
二 その他費用が軽微な修繕
4. 本物件内に破損箇所が生じたとき、乙は、甲に速やかに届け出て確認を得るものとし、届出が遅れて甲に損害が生じたときは乙がこれを賠償する。
5. 第1項の規定に基づいて甲が修繕を行う場合であって、その修繕にあたって乙の営業を休止する必要がある場合においては、甲は、営業休止が必要な修繕期間について賃料・共益費の支払を免除する。

第6条(解除)(※5)
1. 甲は、乙が本契約に違反し、相当の期間を定めて当該違反の是正を催告したにもかかわらず、その期間内に是正されないときは本契約を解除することができる。
2. 甲は、乙が次のいずれか一号に該当したときは、何らの催告も要せずして、本契約を解除することができる。
一 賃料又は共益費の支払いを2ヶ月以上怠ったとき
二 その故意又は過失により必要となった修繕に要する費用の負担を怠ったとき
三 本契約の各条項に違反し、その違反が重大なとき
四 支払停止又は支払不能に陥ったとき
五 自ら振り出し又は引き受けた手形若しくは小切手の支払を停止したとき
六 仮差押、仮処分、差押、強制執行若しくは競売の申立て又は公租公課の滞納処分を受けたとき
七 任意整理、特定調停、破産手続開始、特別清算、民事再生手続開始又は会社更生手続開始の申立てを受け又は自ら申し立てたとき
八 本契約における当事者間の信頼関係を著しく害したと認められるとき
九 その他信用状態悪化を疑わせる事情が生じたとき

第7条(中途解約)(※6)
1. 乙は、甲に対して6ヶ月前に解約の申入れを行うことにより、本契約を終了することができる。
2. 前項の規定にかかわらず、乙は解約申入れの日から6ヶ月分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して6ヶ月を経過する日までの間、随時に本契約を終了することができる。

第8条(明渡し及び原状回復)(※7)(※8)
1. 乙は、明渡し日を10日前までに甲に通知した上、本契約が終了する日までに本物件を明け渡さなければならない。
2. 乙は、第6条の規定に基づき本契約が解除された場合にあっては、直ちに本物件を明け渡さなければならない。
3. 乙は、明渡しの際、貸与を受けた本物件の鍵(複製物を含む。) を甲に返還しなければならない。
4. 本契約終了時に本物件内に残置された乙の所有物があり、本物件を維持管理するために緊急やむを得ない事情があるときは、乙がその時点でこれを放棄したものとみなし、甲はこれを必要な範囲で任意に処分し、その処分に要した費用を乙に請求することができる。
5. 本物件の明渡し時において、乙は、本物件内に乙が設置した造作・設備等を撤去し、本物件の変更箇所及び本物件に生じた汚損、損傷箇所をすべて修復して、本物件を引渡し当初の原状に復せしめなければならない。
6. 乙が明渡しを遅延したときは、乙は、甲に対して、賃貸借契約が解除された日又は消滅した日の翌日から明渡し完了の日までの間の賃料の倍額に相当する損害金を支払わなければならない。

……(以下略)……

事業用の建物賃貸借契約書のチェックポイント

次に、事業用の建物賃貸借契約のチェックポイントについて解説します。

対象の物件を特定する

賃貸借契約を適切に結ぶには、その契約の対象となる物件を特定する必要があります。そのため、事業用建物賃貸借契約書には、賃貸借する物件の情報を記載しなければなりません。

まともな業者から借りるなら、まさか別の物件ということはないでしょうが、思い込みは危険。物件の情報に誤記がないか、よく確認しなかったのが原因で、次のトラブルが起こることもあります。

  • 借りた建物のフロアが異なり、目的を達成できなかった
  • 借りた物件の広さが異なり、手狭だった
  • 借りた物件の場所が、思っていたのと違っていた

契約書において、賃貸借の対象となっている土地や建物の表記が、契約しようとしている物件と一致しているか、よく確認してください。物件の特定は、登記事項の記載に従って行うのが通例なので、登記簿を取得して確認します。

事業用の建物賃貸借契約書なら、次の事項を明記するのが実務的です。

  • 物件の所在地
    主に物件の住所のことをいうが、住所表記とは異なることもある。
  • 家屋番号
  • 建物の構造
    鉄骨コンクリート(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)、軽量鉄骨、木造などの種類がある。
  • 床面積
    部屋の広さを示し、賃貸のばあいには、壁芯表記の可能性がある点に注意する。
  • 建物の名称
    ビル名などが記載されるのが一般的。

事業に適した使用目的を定める

賃貸借契約では、その用途を定めるのが一般的です。事業用の建物賃貸借契約書で注意すべきは、その使用目的の定めが、遂行する事業の用途に適しているかどうかという点。事業用の建物を賃貸借するとき、物件の使用目的について「オフィスとしての使用のみ許す」などの記載により、用途を限定して定める貸主もいるからです。

用途が限定される場合、賃借人が、事業用の建物賃貸借契約書とは異なる目的で使用すれば、用法遵守義務違反の責任を負います。その結果、契約を解除されたり、損害賠償を請求されたりといったペナルティを下される可能性があります。予定するビジネスが、その利用目的の範囲内で可能か、事前にチェックしなければなりません。

契約後に事業が頓挫しないよう、次の点を順に検討してください。

  • 事務所としてのみ使用可能か
  • 事務所兼住居(SOHO)か
  • 入退室時間の制限があるか、施錠の有無など
  • 店舗として使用可能か、業態の限定はあるか
  • 顧客の出入りが許されるか
  • 法人登記が可能か
  • 特に配慮を要する用途での使用が可能か
    (臭いの強い飲食店、歯科医、美容室など)

オフィス用途以外、特に飲食店舗など、顧客が頻繁に出入りし、臭いによって周囲に影響を及ぼす可能性のあるとき、賃貸借契約時に、具体的な利用方法を示して交渉しておいたほうがよいでしょう。後からオーナーと揉め、ビジネスを中断させられてしまえば大きな損失となります。

賃料が適正か検討する

事業用の建物賃貸借契約は、居住用の賃貸借よりも、契約期間が長期となる傾向にあります。そのため、賃料が適正でないと損失が拡大します。このリスクを避けるため、将来の事情変更によって賃料の改定が可能な定めをするなら、賃貸人と賃借人で協議し、契約条項に明記する必要があります。

借地借家法は、次の通り、賃料の増減額請求権を定めています。

借地借家法32条(借賃増減請求権)

1. 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2. 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3. 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

借地借家法(e-Gov法令検索)

このような条文に即して、賃料の増減額について定める契約書では、どのような事情が増減額の理由となるか、よくチェックしておいてください。また、賃貸人側では、一定期間内の安定した賃料収入を確保するため、借地借家法のルールを修正し、賃料の据置期間を設定しているケースもあります。

その他に、事業用の建物賃貸借契約では、保証金、権利金といった初期費用も、住居用の賃貸借より増額されているケースが多く、トラブル回避のため、賃貸借契約書の記載を確認してください。

休業補償の特約を確認する

事業用に借りた物件が、工事やメンテナンスで使用不能なとき、休業せざるを得ないケースがあります。老朽化に伴う配管工事、電気設備の点検や災害後のメンテナンスなど。

修繕工事などなら、得られるはずの利益は、特約のない限り補償されないのが原則です。貸主は、建物を使用収益させる義務があり、そのためには修繕を要し、修繕のための休業まで補償されるわけではありません。短期間なら影響も少ないでしょうが、長期に渡るケースや大切なタイミングでの修繕など、補償が全くないと損失は大きいです。

このリスクを回避するため定めるのが、休業補償の特約です。借主にとって有利な内容なので、記載があるかチェックしてください。一方、貸主の本来負うべき補償の責任が、不当に免除されていないかも確認してください。

造作買取・設備の特約を確認する

物件を借りても直ちに事業を始められるわけではなく、必要な設備を整える必要があります。この場合に、貸主から同意を得て設置した造作は、退去時に買い取るよう請求できます(借地借家法33条1項)。

借地借家法33条(造作買取請求権)

1. 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。

2. 前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。

借地借家法(e-Gov法令検索)

事業用の建物賃貸借契約では、例えば次の造作が対象となります。

  • 業務用エアコン
  • 間切の壁、パーテーション
  • 陳列棚、ショーケース
  • カウンター、調理台、食器棚
  • ボイラー設備、ダクト、リフト、エレベーター

しかし、事業用の建物賃貸借契約だと、造作買取請求権を放棄する特約を定めるのが通例です。そのため、事務所の賃貸では、退去時に全ての造作を撤去し、原状回復した上で引き渡すのが原則的な運用です。取り外しの困難な造作をつけると、撤去費用が高額になるため、内装の際に注意を要します。一方、居抜き物件を借りた場合、設備の修繕をどちらが行うか、退去時の扱いなどについて、特約のルールを確認する必要があります。

中途解約と違約金について

契約書を結んで賃貸借を開始しても、思い通りにビジネスが進むケースばかりではなく、中途解約となってしまうこともあります。中途解約となる場合ほどトラブルが多いため、契約書の締結前に、中途解約条項をチェックしておきましょう。

事業用の建物賃貸借契約書では、中途解約について事前の通知を条件とする定めが通例です。このとき、解約申し入れの期限に注意しておきましょう。つまり、賃借人として、賃貸人に対し、いつまでに解約の通知を行えばよいかというルールです。居住用の賃貸では30日前などの例が多いですが、事業用の賃貸借だと6ヶ月〜1年といった長めの期間が設定されます。

また、中途解約の場合に違約金が生じるか、生じる場合は金額も争点となります。自社のビジネスに応じ、どのようなケースで中途解約となり得るか、念入りに想定し、その際にかかる違約金をリスクとして折り込んでおく必要があります。

契約書における中途解約条項、損害賠償条項について、次に解説します。

事業用の賃貸借契契約の解除について

賃貸借契約において、契約の解除に関する条項を定めます。事業用の建物賃貸借契約では、賃貸人側からは無催告で解除できる事由が列挙されているのが通例です。無催告解除は、その名の通り、「何らの催告を要することなく解除できる」と定めることです。よく無催告解除の事由とされるのは、次の例です。

  • 賃借人が賃料その他の支払いを2か月分以上怠ったとき。
  • 賃借人が本契約の各条項に違反したとき。
  • 賃借人が支払停止又は支払不能に陥ったとき。
  • 賃借人が自ら振り出し又は引き受けた手形若しくは小切手の支払を停止したとき。
  • 賃借人が仮差押、仮処分、差押、強制執行若しくは競売の申立て又は公租公課の滞納処分を受けたとき。
  • 賃借人が任意整理、特定調停、破産手続開始、特別清算、民事再生手続開始又は会社更生手続開始の申立てを受け又は自ら申し立てたとき。
  • 本契約における当事者間の信頼関係を著しく害したと認められるとき。
  • その他賃借人がに信用状態悪化を疑わせる事情が生じたとき。

ただし、解除事由に該当するとしても直ちに解除が認められるとは限りません。むしろ裁判では、無催告解除の事由があっても、信頼関係が破壊されていなければ解除を認めない例が多く存在します(これを「信頼関係破壊の法理」と呼びます)。

そもそも賃貸借契約は、賃貸人と賃借人の信頼関係に基づいた継続的契約です。そのため、裁判例でも、当事者間の信頼関係を破壊するような事情のない限り、契約関係の安定を守るために、解除が制限されているのです。

事業用建物の明渡しと原状回復について

事業用建物の利用の終了時まで、気は抜けません。建物の明渡しと原状回復の段階こそ、トラブルがよく起きます。

賃貸借契約では、賃借人が明渡し時の原状回復義務を負うのが通例ですが、事業用の建物賃貸借契約では、住居用にも増して、賃借人が建物に手を加えている可能性が高いもの。そのため、どのような原状回復が必要か、行わなかったときにどう対処するかや、その費用の負担などを事前に合意しておかなければなりません。

原状回復に関するチェックでは、次の視点が必要です。

  • 明渡し日
  • 明渡し日までに原状回復を終えておく必要があるかどうか
  • 原状回復の指定業者があるか
  • 原状回復をすべき「原状」の状態
  • スケルトン返しが必要か
  • 原状回復の費用負担

賃借人として、回復すべき原状が思っていたのと異なり、過大な責任を負わされないよう注意が必要です。一般に、賃借人、賃貸人の負担すべき費用に目安はあるものの、個別の契約によって修正できます。明渡し後に、過剰な原状回復費用を請求されるといった不測の事態を避けるために、事業用賃貸借契約書をチェックしてください。

まとめ

今回は、事業用の建物賃貸借契約書で注意すべきポイントについて解説しました。

賃貸は、不動産業のなかで、売買に比べて軽く見られがちです。また、借りる側においても、不動産会社が提示する契約書は定型的なものと安易に考え、契約書チェックに多くの時間をかけない企業も少なくないです。しかし、店舗ビジネスのように、立地や建物などの不動産に依存するビジネスは多く、失敗した際のリスクは大きいと言わざるを得ません。

借主側、貸主側のいずれが契約書を作成するにせよ、事業用の建物賃貸借契約書が、自社にとって不利な契約内容となっていないかどうか、弁護士にチェックしてもらうのがお勧めです。

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