会社破産

飲食店を閉店する前に経営者が検討すべき新型コロナウイルス対策7つ

新型コロナウイルスによって緊急事態宣言が出され、自粛を要請されています。一番大きな影響を受けるのが、飲食店です。

「飲食店で、新型コロナウイルスに感染することがあるのか」については、考えがわかれるところでしょうが、「3密(密閉・密集・密接)」を避けられない店舗も少なくありません。そして、自粛要請と在宅勤務の推奨により、日中出歩く人が少なくなれば、その分飲食店の客足も減ります。

加えて、東京都では現在、飲食店に対して午後8時から午前5時までの営業をおこなわないよう休業要請が出されています。

しかし、店舗を閉店してしまったり、つぶしてしまったりする前に、検討しておくべき新型コロナウイルス対策が多くあります。

今回は、飲食店ができる新型コロナウイルス対策と、閉店する前に検討しておくべきポイントについて、弁護士が解説します。

「新型コロナウイルスと企業法務」まとめ

飲食店が閉店してしまう理由

飲食店が閉店してしまう理由は、キャッシュ(現金)がなくなることです。運転資金が尽きてしまうと飲食店を閉店せざるを得ません。これは、平常時はもちろん、新型コロナウイルスによる非常事態でますます顕著となっています。

売上がそれなりに確保できていたとしても、手元のキャッシュ(現金)がなくなってしまえば、飲食店を継続していくことはできず、閉店せざるをえなくなってしまいます。

逆に言うと、飲食店が赤字であったとしても、運転資金さえ尽きなければ、店舗の運営を継続することができます。飲食店は「現金商売」といわれることが、まさにこれをあらわしています。

そして、飲食店の手元に残るキャッシュ(現金)を少しでも多く残しておくためには、「入ってくるお金」を増やし、「出ていくお金」を減らす、もしくは、支払い期限を先伸ばしにするということが重要な対策となります。

このために、平常時であっても、次のような対策があり、これは新型コロナウイルスの状況下でも変わりありません。

入金を増やす対策
  • 宣伝広告の工夫をする
  • 商品開発などの強みをつくる
  • 有利な条件での借入をおこなう
  • 助成金・補助金・創業融資を活用する
出金を減らす対策
  • 店舗の内装コストを削減する
  • 保証金などの減額交渉をして物件取得費を下げる
  • 食器・厨房機器などでリースを利用する

しかし、現在の状況は、飲食店としてかき入れ時の夜の営業ができず「営業努力でなんとかなる」という状況ではないため、知識が必要となります。

これらの通常時の努力に加えて、今回は、新型コロナウイルスの影響を受け、通常であれば十分に生き延びられる飲食店も閉店せざるを得ない状況を踏まえ、特別な対策について解説していきます。

「入ってくるお金を増やす」対策

飲食店が、閉店をさけるためには「キャッシュアウト(現金がなくなること)」を防ぐことが最重要と解説しました。

飲食店にのこる資金、すなわち「留保資金」は、「入ってくるお金-出ていくお金」であらわすことができます。一定期間で見た入ってくるお金が、出ていくお金より多ければ、現金(キャッシュ)はなくなりません。

そこで第一に、飲食店経営者が検討しておくべき対策として「入ってくるお金を増やす」対策について解説します。

業務時間を変更し、新たな需要を探す

まず、「入ってくるお金を増やす」対策の1つ目は、「業務時間を変更し、新たな需要を探す」ことです。特に、東京都では午後8時から午前5時までの休業要請が出されており、これにしたがった形で業務時間を変更する必要があります。

これまでランチ営業を行ってこなかったような居酒屋やバーなどでは、業務時間の変更にともなってランチ営業を開始することが考えられます。弁当やテイクアウト、デリバリーにより、新たな需要を探すことも検討してください。

複数の店舗を経営している場合には、そのようなランチ営業の需要の多い地域(オフィス街など)の店舗に社員を集結させ、夜の需要しかなさそうな地域(繁華街など)の店舗を閉鎖するというように、営業を縮小する手もあります。

別の売上をつくる

次に、「入ってくるお金を増やす」対策の2つ目は、「別の売上をつくる」ことです。

「できるだけ店舗での売り上げを上げる」ことだけに執着すると、無理をして安売りをしなければならず、働いても働いても売上があがらず、結局飲食店閉店につながってしまう、という可能性もあります。

一方で、「ラーメン店だが、お客さんの入っていない時間にはマスクを作っている」といった報道が話題となりました。このように、工夫次第で、別の売上をつくることができます。

もちろん、マスク製造は極端な例ですが、「飲食店」の枠を出ずとも通信販売(EC)に注力したり、Ubereatsを利用してテイクアウト・デリバリーをおこなったり、ブログやYoutube動画などのコンテンツ制作に注力したりと、今後の売上向上につながる種まきを、いま時間のあるうちにおこなっておくことは有益です。

大きな利益を生む可能性までは見えなかったとしても、直近の固定費を捻出することができれば、飲食店閉店の事態におちいることは避けられるわけです。

ただし、新しい業種・業態、新しいビジネスに手を出すときは、サービスの適法性の検討が必要となります。特に、資格や免許が必要となるサービスには注意が必要です。特に、これまで出していたメニュー以外のテイクアウト・デリバリーには製造の許可が必要となる場合があります。

新規サービスは適法?新事業の適法性チェックに利用すべき制度2つ

新しいビジネスを思いついたとき、すぐ実行に移す前に、一旦立ち止まって考えてみてください。そのサービスは、法律に違反してはいませんか? 特に、ベンチャー企業の場合、過去に他の会社が取り扱ったことのない、 ...

続きを見る

期限付き酒類販売免許を取得する

店舗営業とは別の売上をつくる1つの方法として、新型コロナウイルス禍の影響により認められることとなった「期限付き酒類販売免許」を取得することを検討しましょう。

東京都では、飲食店の営業が午後8時以降自粛を要請されていますが、午後8時以降にお酒を飲む人ほど、客単価が高く重要な収入源であったはずです。

お酒を販売するためには、酒類販売免許が必要ですが、このたびの緊急事態への対応として、期限付きで、酒類販売免許を取得できるようになりました。すでに仕入れたお酒が店に余っている場合には、在庫のお酒を販売したり、テイクアウトやデリバリーにお酒を追加したりなどして、少しでも売上を増やすことができます。

「出ていくお金を減らす」対策

「入ってくるお金」がどれほど多くても、「出ていくお金」がそれを超えていれば、店舗にある現金(キャッシュ)はなくなり、飲食店閉店につながります。

しかも、この入ってくるお金と出ていくお金を比較するときには、それぞれ「いつ入ってくるのか(いつ出ていくのか)」まで含めた検討が必要です。特に飲食店の場合、あらかじめ売上を見越して在庫を買っておかなければならないなど、出ていくお金のほうが先に出ていく性質が強いです。

そのため、新型コロナウイルスの非常時において飲食店を閉店させてしまわないために、飲食店経営者が考えておくべき「出ていくお金を減らす」対策を解説します。

テナント賃料の交渉

まず、「出ていくお金を減らす」対策の1つ目は、「テナント賃料の交渉」です。

新型コロナウイルスの先行きの見通しが立たず不安が募りますが、このことは大家さんにとっても同じことです。つまり、いま飲食店のテナントに入居してもらっている大家さんにとって、その飲食店がつぶれて家賃が入ってこなくなった場合に、すぐに代わりの店舗が見つかる保証はありません。

むしろ、新型コロナウイルスにより飲食業界全体が冷え切っている現状を考えると、飲食店舗に適した立地のテナントの場合、代わりの飲食店を見つけ、入居してもらえる可能性は、少なくとも当面の間はかなり厳しいといえます。すると、家賃を減額したとしても「きちんと支払ってくれるなら仕方ない」と考えてもらえる可能性があります。

大家さんと交渉すべき点は、「当面の間の賃料の減額」と「支払い猶予」の2点です。

特に、現在敷金や保証金を預け入れしている店舗では、その金額までは支払い猶予をしても、大家さんとしては損はしないはずです。

経費削減・支払い猶予

テナント賃料以外にも、減らせる経費をできる限り減らすようにします。これまであまり気にせず払っていたお金も、細かく計算していきましょう。

特に、宣伝広告費、ポータルサイトや口コミサイトの掲載料などは、現在のように営業時間が短縮されている状況では意味をなしません。

継続的な契約であって、契約書に「途中解約はできない」「違約金が発生する」などの定めがあっても、粘り強く交渉する必要があります。民法の原則によれば、これらの継続的な委任契約については、まだサービス提供やその準備に着手していないかぎり、途中解約は自由であるのが基本です。

また、税金、社会保険料などの支払いについても、猶予を申請することができます。

人件費を削減する

業績悪化や、飲食店の業務時間の変更などにより、これまで雇用していた人数ほどのスタッフが必要なくなることもあります。

このようなとき、人件費の削減策として、あえて休業してもらうことも考えられます。会社の都合によって社員を休業させた場合には、休業手当として平均賃金の6割を支払う必要がありますが、そのまま店舗に出社させてもなにも仕事がない人については、休業したほうが人件費が削減できる可能性があります。

人件費の削減のために休業させる場合には、その休業手当の一部について、雇用調整助成金という助成金を支給してもらうことでまかなうことができます。最大で、休業手当の9/10を、雇用調整助成金による支給でカバーすることができます。

参 考
新型コロナウイルスによる休業でも賃金・休業手当の支払いは必要?

新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出され、業績が悪化している会社が多いかと思います。先行きがみえず不安な中、とくに心配となるのが従業員の賃金についてのことでしょう。 「新型コロナウイルスの影響で社員を ...

続きを見る

参 考
新型コロナウイルスを理由に解雇・雇止めするときの注意点【会社側】

新型コロナウイルスの影響を受けて売り上げが激減し、経営が立ち行かない会社にとって、「人件費の負担」がとても重くのしかかります。このようなとき、社員の解雇・雇止めを検討することとなります。 しかし、新型 ...

続きを見る

政府支援策を利用した借入・給付

現在、新型コロナウイルスの影響が深刻であることから、政府の経済対策の一環として、多くの特例的な借り入れ制度が整備されています。また、あわせて給付がもらえる制度、つまり、返済不要なお金がもらえる制度もあります。

これらを積極的に利用して、飲食店の閉店を回避することができます。新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した飲食店が、特に利用すべき借入・給付は次のとおりです。

  • 持続化給付金
    :前年同月比で売上が50%低下した法人に対して、最大200万円が給付される制度
  • 感染拡大防止協力金(東京都)
    :東京都の休業要請(飲食店の場合には業務時間の短縮要請)にしたがって全面的に協力した事業者に対して、50万円(2店舗以上の場合には100万円)が給付される制度
  • 新型コロナウイルス特別貸付(日本政策金融公庫)
  • セーフティネット保証4号・5号

いずれも、新型コロナウイルス対策のために特別に設置されたものや、もともと存在したけれども今回の非常事態に合わせて特に有利な利用が可能な制度です。ただし、新型コロナウイルスが飲食店にいつまで影響を与え続けるのかは、誰にもわかりません。世間的には収束をしたとしても、飲食店に元通りの客足が戻るには、さらに時間を要します。

そのため、返済が必要な借り入れは、「その借入によって、事業の立て直しが可能なのか」といった観点から、慎重な検討が必要となります。給付・借入については、次の解説で詳しく説明しています。

参 考
新型コロナウイルスの資金繰り対策で使える給付金・貸付・融資まとめ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、売上が激減し、資金繰りが厳しい会社が多いです。政府は多くの新たな貸付制度、給付金制度をもうけ、企業が新型コロナウイルス禍を乗り越える手助けをしてい ...

続きを見る

参 考

飲食店が、新型コロナウイルス禍を乗り切るもっとも重要な貸付は、政府支援策にありますが、それ以外にも、貸付を受けることができる制度は多くあります。

小規模共済の貸付、生命保険の契約者貸付や、定期預金の解約など、「入ってくるお金を増やす」ための最大限の努力が必要となります。

しかし一方で、新型コロナウイルスの騒動に乗じて、悪質な違法業者も増えています。クレジットの現金化、違法金利の闇金での借金、違法な融資コンサルタント、助成金コンサルタントへの依頼などは、甘い誘い文句とは裏腹に大きなリスクがあります。

「企業法務」は、弁護士にお任せください!

今回は、飲食店を経営している経営者の方に向けて、飲食店を閉店する前に検討しておきたい新型コロナウイルス対策について解説しました。

新型コロナウイルス対策として、店舗内、社内から感染者を出さない努力をすることは当然です。しかし、感染しないだけでは、企業経営は回りません。緊急事態宣言が出され、店舗の営業時間の短縮、休業が要請される中でも、飲食店を閉店させずに生き残るため、ぜひ参考にしてください。

なお、新型コロナウイルスを取り巻く状況は日々変わっています。デマや噂に流されず、信用できる情報源から新しい情報を収集する必要があります。飲食店を経営している経営者の方であれば、顧問の弁護士・税理士・社労士といった専門家に最新の情報を聞くことがお勧めです。

「新型コロナウイルスと企業法務」まとめ

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
アバター

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座駅(東京都中央区)徒歩3分の、企業法務・顧問弁護士サービスを得意とする法律事務所です。 会社側の立場で、トラブル解決・リスク対策・予防法務の実績豊富な会社側の弁護士が、即日対応します。 「企業法務弁護士BIZ」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

-会社破産
-,

お問い合わせ


お問い合わせ

© 2020 企業法務・顧問弁護士の法律相談は弁護士法人浅野総合法律事務所【企業法務弁護士BIZ】