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飲食店を閉店する前にすべき立て直しの方法と、閉店する際の手続き

飲食店を、閉店し、廃業せざるを得ないケースはよくあります。飲食店は、人の生活に根付いたビジネスなので、外的な要因の影響を非常に強く受ける業界です。最近では、新型コロナウイルスを理由とした自粛の影響で、外食産業の冷え込みは深刻なダメージとなっており、飲食店の閉店ラッシュの大きなきっかけになったのも記憶に新しいでしょう。

飲食店は、キャッシュフローがとても大切です。毎月の売上から、材料費の原価、賃料、人件費を捻出しなければならず、赤字になってしまうと、潤沢な資本のない限り、閉店を検討せざるを得ません。流行り廃りの激しい飲食業では、突然のブームで集客に成功しても長続きせず、閉店に追い込まれてしまう店舗も多くあります。

しかし、業績が悪化したからといってすぐ閉店、廃業してしまうのでは、初期コストとしてかけた費用が無駄になってしまいます。また、閉店せざるを得ないのでも、再帰を図るためには、少しでもダメージの少ない撤退が大切です。

今回は、飲食店を閉店する前に知るべき、立て直しのポイントについて、法律の観点から、企業法務に強い弁護士が解説します。いざ閉店せざるをえなくなったときに焦らないよう、閉店する際に必要となる法的手続きもあわせて解説します。

この解説のポイント
  • 飲食店経営ではキャッシュフローが重要で、キャッシュアウトすると閉店となる
  • 飲食店を閉店する前に、立て直しの対策を漏れなく行ったかチェックする
  • 飲食店を閉店する方法は、スケジュールを立て、時間に余裕をもって進める

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業法務・顧問弁護士サービスを得意とし、使用者側の人事労務の経験が豊富。

会社側の立場で、トラブル解決・リスク対策のサービスを提供。予防法務を中心に、会社側でスピーディに対応します。

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飲食店を閉店する理由

まず、飲食店を閉店させるべき理由について理解することで、「閉店せざるを得ない状況」がどんなケースなのか、また、自社の店舗がそれにあてはまるのかを知ることができます。

飲食店を閉店させるべき理由は、キャッシュがなくなることです。手持ちの現金がなくなり、運転資金が尽きてしまえば、飲食店を閉店させざるを得ません。売上がどれほど増えても、それに伴って経費も増え、手元のキャッシュが危うくなれば飲食店を続けることはできず、閉店せざるを得なくなります。逆に言えば、キャッシュフローさえうまく回っていれば、人気が低迷して客数が低下したり、社会的な情勢が変わったりしても、店を継続させることができます。

実際のところ、飲食店の倒産件数は増加傾向にあるといってよいでしょう。

引用元:飲食店の倒産動向調査(2020年・帝国データバンク)

まさに、飲食店が「現金商売」と言われる所以です。飲食店を閉店させないためには、手元に残るキャッシュを少しでも多く確保して運営することが大切です。つまり、「入ってくるお金」を増やし、「出ていくお金」を減らす(または、支払期限を先延ばしにする、という単純な計算が、閉店させないための最も重要な対策となります。

飲食店が閉店する理由と、その対策は、平常時はもちろんのこと、閉店の間近に迫った、危機的なタイミングでも同じです。1つ1つの対策を積み重ねても、やはり閉店せざるを得ないときには、無理して生き延びようとするのは逆効果です。高利の融資に手を出したり、個人の資産を売りに出したりすれば、人生を台無しにするおそれもあります。

飲食店の閉店の前にすべき立て直しの対策

閉店せざるをえない状況に陥ったとき、チェックしておくべき立て直しの対策を解説します。

飲食店が、閉店を避けるには、キャッシュフローを何より大切にしなければなりません。飲食店に留保される資金は、単純に「入ってくるお金」から「出ていくお金」を引くことで計算できます。一定期間のうちに入金が出金を上回っていれば、現金がなくなることはなく、閉店を避けることができます。

業態を変更する

まず、現在の飲食店ビジネスでは、売上が維持できないとき、新たな売上を作るために業態を変更する手があります。

現在の業態に固執して安売りをすると、さらに悪化して閉店が早まるおそれがあります。閉店間近だと、大きな費用をかけて内装を変更するなど、大きな転換は難しいでしょう。飲食店が工夫できる業態の変更には、例えば次の方法があります。

  • 業務時間を変更し、新たな需要を探す
    ランチ営業をする
  • 新たな売り方を考える
    通信販売(EC)、テイクアウト、デリバリーの活用、酒類販売免許の取得など
  • 宣伝広告の工夫をする
    ブログ、Youtube動画などコンテンツ制作に注力する

現状、あまり売上がないなら、逆に、来客が少なく、時間には余裕があるといえます。時間のあるうちに、今後の売上向上につながる種まきをすることが、飲食店の閉店を避けるために有益です。大きな利益を産まなくても、直近の固定費を捻出できれば、閉店という最悪の事態は避けられます。

ただし、新しい業種・業態に手を出すとき、サービスの適法性を検討しなければなりません。特に、資格や免許を必要とするビジネスではないか、注意を要します(これまで出していたメニュー以外のテイクアウト、デリバリーには、新たに製造の許可が必要となる場合があります)。

新規サービスの適法性チェックは、次の解説をご覧ください。

テナント賃料の減額を交渉する

出ていくお金を減らす対策として有効なのが、テナント賃料の減額交渉です。立地が大切な飲食店の経営においては、好立地の場所を確保する必要があり、テナント賃料は大きな割合を占めるからです。

先行きが不安なのは、飲食店だけではありません。不動産オーナーにとっても、飲食店から入る賃料は重要なはずです。テナントに入居してもらわなければ、大家業は成り立ちません。

飲食店が閉店し、つぶれてしまい、賃料が入ってこなくなれば、不動産オーナーも困るでしょう。すぐに次の借主が見つかる保障もありません。

むしろ、飲食店が閉店しそうだということは、その立地では高すぎる賃料を設定されていた可能性もあります。閉店し、代わりの飲食店を見つけなければならないよりは、賃料を減額してでも、現在のテナントに入居し続けてもらうほうが、不動産オーナーにとってもメリットは大きいはずです。そのため、賃料の減額交渉(または、支払い猶予)に、応じてもらえる可能性は小さくないといえます。

経費を削減する

テナント賃料のほかにも、減らせる経費は、できるだけ減らすようにしましょう。閉店を検討する状況なら、これまで大して気にせず払っていた費用も、細かくコントロールすべきです。

宣伝広告費、ポータルサイトや口コミサイトの掲載料などは、効果を徹底的に検証し、売上に直結しないものは中止を検討してください。継続的な契約の場合、「途中解約ができない」「違約金が発生する」といった契約内容のこともあります。しかし、民法の原則では、継続的な委任契約も、サービス提供やその準備に着手していない限り、途中解約は自由なため、粘り強く交渉しましょう。

支払いを猶予してもらう

出ていくお金については、その金額とともに、「いつ出ていくのか」も重要です。つまり、支払期限ないし支払いサイトの問題です。支払いが先延ばしできるなら、すぐに閉店せざるをえない危機を免れることができます。

特に、飲食店の場合、あらかじめ売上を見越して在庫を準備しなければなりません。いざ来客があったとき、原材料が不足しているのでは、せっかくの売上のチャンスを逃してしまうからです。

ギリギリの準備では足らず、少し多めに作らざるを得ず、出ていくお金のほうが先に発生する性質があります。

取引先への支払いが猶予してもらえれば、飲食店の閉店を避ける対策になります。また、緊急時には、税金、社会保険料などの支払いの猶予も申請できます。

人件費を削減する

人がいなければ、飲食店を運営できません。しかし、業績が悪化し、閉店せざるを得ない状況では、スタッフが多すぎると人件費がかさみ、閉店が早まるおそれがあります。したがって、人件費を削減することが、立て直しのための対策となります。

最も端的に、人件費をカットする方法は、リストラ、つまり、整理解雇です。ただ、解雇は厳しく制限され、正当な理由がなければ違法です。なので、まずは解雇せずに生き延びる方法はないか、検討する必要があります。

解雇をせずに、人件費を削減する策として、社員に休業してもらう方法があります。会社都合で社員を休業させると、休業手当として平均賃金の6割を払う必要があります。とはいえ、そのまま出社させても業務がないなら、休業させたほうが人件費が節約できます。また、休業手当の一部は、雇用調整助成金によって補うことができます。

倒産せざるを得ないとき、社員への告知については次の解説をご覧ください。

飲食店を閉店する方法

ここまでの対策を講じてもなお、閉店せざるを得ないこともあります。いざ閉店に至るときは、飲食店を閉店するための方法や、手続きの流れをよく理解しておいてください。

ビジネスの撤退時は、特にトラブルが起きやすいタイミングです。これまで隠れていた法的な問題点が、顕在化するおそれがあり、慎重に進めなければなりません。ビジネスを開始するときには、やる気に満ちあふれていたでしょうが、撤退時にも気を抜くことはできません。

閉店までのスケジュールを立てる

まず、飲食店を閉店するまでのスケジュールを立てるようにしてください。

スケジュールがあれば、何から手をつけるべきか困ることもないでしょう。正しい順序で進められる計画かどうか、弁護士など専門家のアドバイスを得るのが有効です。閉店や、その後の廃業までの手続きは、主に次のとおりです。

  1. 金融機関に借入金の相談をする
  2. 賃貸借契約を解約する
  3. 造作の解体、明渡しの準備をする
  4. 社員に解雇の通知をする
  5. リース契約を解約する
  6. お客様へ告知する
  7. 取引先に通知する
  8. 電気・水道・ガスを解約する
  9. 行政機関の届出をする

閉店はすぐにできるわけではなく、事前の準備が不可欠です。やるべきことも多く、スケジュールを立てて計画的に進めなければなりません。

また、閉店、廃業に必要な手続きには、期限があるものもあります。例えば、解雇は30日前に通知するか、不足する日数分の解雇予告手当を払わなければなりません。行政機関の手続きも、閉店より数日前に行うべきものも多くあります。したがって、これらの日数も考慮してスケジュールを立てなければなりません。

契約関係を清算する

飲食店の経営は、すべて契約によって成り立っています。テナントの賃貸借契約、資金の借り入れの契約、取引先との仕入れ契約など、飲食店を終わりにするならば、これらの契約関係をすべて清算しなければなりません。

なかでも、飲食店では、テナントの賃料、人件費が大きな割合を占めます。そのため、まずは賃貸借契約の解約、社員の解雇を優先的に進めなければなりません。

賃貸借契約、労働契約はいずれも、解約までに一定の期間が必要となります。賃貸借契約書を確認し、解約予告期間がどれほど必要か、確認してください(テナントの規模によりますが、通常、3〜6ヶ月が多いです)。

社員を解雇する

次に、スタッフとして働いている社員の解雇です。前述のとおり、解雇は30日前に通知するか、不足する日数分の解雇予告手当を払わなければなりませんから、少なくとも閉店の1ヶ月前までには、社員に解雇を予告しておくのがよいでしょう。ただ、急遽の閉店で、間に合わない場合には、解雇予告手当による一定の出費を覚悟しなければなりません。

閉店のスケジュールに沿って、不要となる社員から順に解雇するのがよいでしょう。

例えば、接客を担当するスタッフは、閉店を決断した直後から徐々に不要となるでしょうが、一方で、経理や財務を担当する社員、管理職などは、閉店の直前まで業務をしてもらう必要があります。

解雇は、労働者に不利益が大きいため、正当な理由のない限り違法とされます。ただ、飲食店を閉店し、廃業して会社が倒産する場合にまで制限されるものではありません。しかし、店舗を閉店するものの、他の店舗で雇用できる可能性が残るとき、異動を提案せずに解雇するのは、違法な不当解雇とされるおそれがあります。

行政機関の届出をする

飲食店は、行政の許認可を得て営業しています。そのため、閉店するときには、行政機関に各種の届出をしなければなりません。閉店するには、廃業届を提出しなければなりません。提出先によって、次のような対応が必要となります。

  • 保健所
    廃業届の提出し、飲食店営業許可書を返納する
    (閉店から10日以内)
  • 警察署
    深夜酒類提供飲食店営業の廃止届を提出し、風俗営業許可証を返納する
    (閉店から10日以内)
  • 消防署
    防火管理者解任届を提出する
  • 税務署
    (個人事業主の場合)廃業届、青色申告の取りやめ届出書を提出する
    (消費税課税事業者の場合)事業廃止届出書を提出する
    (社員を雇用した場合)給与支払事務所等廃止届出を提出する
  • 日本年金機構
    健康保険、厚生年金保険に関する廃止の届出をする
    (閉店から5日以内)
  • 公共職業安定所(ハローワーク)
    雇用保険に関する廃止の届出をする
    (閉店から10日以内)
  • 労働基準監督署
    労災保険に関する廃止の届出をする
    (閉店から50日以内)

飲食店を閉店するときの注意点

最後に、飲食店を閉店するときに注意すべきポイントを解説します。

閉店するための費用を見積もる

飲食店を閉店するのにも、費用がかかります。一般的な飲食店で、閉店にかかる費用は、例えば次のものです。

  • 造作、内装の解体費用
  • 厨房、冷蔵庫など、設備の取り外し費用
  • 原状回復費用
  • 解約予告期間中の賃料
  • 閉店までの光熱費
  • 閉店までのリース料
  • 社員の給料ないし解雇予告手当

店を止めざるを得ない状況では、多くの売上があるとは期待できず、閉店するのに要する費用は、少しでも安いに越したことはありません。まずは費用を見積もり、減額したり無くしたりできる項目がないかどうか、よく検討してください。

居抜きで次のテナントに借りてもらい、設備や内装を譲渡できるなら、明渡しにかかる費用を大きく減らせます。

期間に余裕をもって準備する

飲食店を閉店するときには、期間に余裕をもって準備することが重要です。というのも、飲食店の運営で生じる契約関係は、賃貸借契約、労働契約、取引先との仕入れ契約など、いずれも継続的なものだからです。継続的な契約は、信頼関係の上に成り立っていて、突然に解約することが許されないことがあります。

閉店までの期間に余裕がないと、その分だけ無理がたたり、出費が増えてしまうこともあります。例えば、大至急退去せざるを得ないとすると、工期が短くなり、施工費用が高くつくおそれがあります。閉店せざるを得ない状況まで我慢するのではなく、選択肢を残して早めに対応していくのが大切です。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、飲食店経営者に向けて、飲食店の閉店を考えたときに知っておきたい法律知識を解説しました。飲食店の閉店は、最終手段と思われがちですが、実際には、損失が拡大してしまわないうちに閉店を検討すべきケースも多くあります。

大切なことは、閉店する前に、飲食店で可能な立て直し策を知り、すべての手を尽くすこと。そして、それらの手を尽くしてもなお、業績が改善せず、経営が続けられないときには、ダメージの少ないうちに潔く閉店し、撤退することです。まだ立て直しが可能なのに、閉店するのはもったいないです。設備、内装など、初期にかけた費用も無駄になります。一方で、限界を超えて自転車操業を続けるのもお勧めできません。

一度建てた店に愛着があるのは当然ですが、あきらめきれず、生き残るために無理をすれば、店舗だけでなく、自分の人生も台無しにしてしまいかねません。社員の人生にとっても不幸なこともあります。

飲食店の閉店が頭をよぎったとき、どうすべきか自分一人では判断できない場面もあるでしょう。弁護士なら、立て直しないし閉店に向けた法的なサポートを提供できます。

この解説のポイント
  • 飲食店経営ではキャッシュフローが重要で、キャッシュアウトすると閉店となる
  • 飲食店を閉店する前に、立て直しの対策を漏れなく行ったかチェックする
  • 飲食店を閉店する方法は、スケジュールを立て、時間に余裕をもって進める

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