会社破産

新型コロナウイルスで倒産する会社が検討べき注意点・倒産回避策

新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けて、倒産する会社が増加しています。

東京商工リサーチの統計によれば、緊急事態宣言の発令から一週間たった2020年4月14日時点で「新型コロナ」関連の経営破たんが全国で55件(倒産29件、準備中26件)となっています。

特に、インバウンド需要に頼っていた観光・宿泊業、自粛要請によって需要が激減した飲食業が36.3%と多数を占めています。新型コロナウイルス禍の終息はまだ見えておらず、今後も会社破産・法人破産が増加するおそれがあります。

そこで今回は、新型コロナウイルスの影響で経営状況が悪化した会社が、倒産する前に検討しておくべい注意点について、弁護士が解説します。

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新型コロナウイルスで「倒産するかどうか」を決める判断基準

新型コロナウイルスの影響をまったく受けず、いわば「無風」の会社などほどんどないのではないでしょうか。それほど、国内外の経済に大きな影響を与えています。

しかし、会社の経営者にとって、非常に厳しい事態であることは十分理解できるものの「会社をつぶす」という大きな決断をするには迷いも大きいことでしょう。

「倒産するかどうか」について迷っている状況の方に向けて、「倒産したほうがよいかどうか」という観点から、いくつかの判断基準を弁護士が解説します。

内部留保がいつまでもつか

「倒産すべきかどうか」の検討要素の1つ目は「内部留保がいつまでもつか」です。

インバウンド需要がなくなった宿泊・観光業、自粛要請によって客足が遠のいた飲食業、休業要請の対象となったキャバクラなどにとって、今後当分の間は、売上が見込めないこととなります。そうすると、会社を継続するためには、会社資産である内部留保を使って生き延びるしかなくなります。

「倒産したほうがよいかどうか」を正確に検討するために、事業計画を作成し、内部留保を正確に把握し、現在の固定費を支払いつづけるとどれほどの期間で底を尽きるのか、が判断基準の1つとなります。

内部留保がそれほど長いことはもたない場合には、会社資産が少しでものこっているうちに、これを会社破産・法人破産に必要となる費用にあてて倒産したほうがよいケースもあります。

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固定費を減らすことができるか

「倒産すべきかどうか」の検討要素の2つ目は「固定費を減らすことができるか」です。

宿泊・観光業、飲食業、風俗営業などでは、売上がほとんどないほどまで激減し、固定費だけがかかっている状態です。変動費である宣伝広告費、接待交際費などは、すでに減らしていることでしょう。

そこで、すくなくとも緊急事態宣言が発令されている間、この固定費をどこまで減らせるかどうかが、「倒産すべきかどうか」の判断基準の1つとなります。

上記のような業種、業態で、大きな固定費としてのしかかっているのが、テナントの賃料と人件費です。それぞれ、次のような固定費を減少させる努力を検討してください。

「賃料」の固定費を減少させる方法
  • 賃料の減額を交渉する
  • 賃料の支払猶予を交渉する
  • 敷金の一部を賃料に充当してもらうことを交渉する
「人件費」の固定費を減少させる方法
  • 無駄な残業代を減らす
  • 休業してもらい、雇用調整助成金をもらって休業手当を支払う
  • 給与自体を減額してもらう
  • 人員整理(リストラ・整理解雇)をおこなう

テナントの賃料・人件費などの固定費を減らす方法は、いずれも、法律上の権利として認められたものではありません。しかし、会社が倒産してしまえば、家主も賃料をもらうことができず、従業員も給与をもらうことができなくなります。少なくとも、現在預かっている敷金額までの支払い猶予は応じてもらえる可能性があります。

会社破産・法人破産によってすべて終わりにしてしまう前に、少しでも減額する努力ができないか、それによって延命することができないか、検討してみてください。

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売上があがる見通しがあるか

「倒産すべきかどうか」の検討要素の3つ目は「売上があがる見通しがあるか」です。

平時と同じことをしていては、売上があがる可能性がまったくない業種・業態であっても、別の形で売上をあげている会社があります。飲食店や居酒屋が、ランチのデリバリーをおこなっている例などが典型です。

売上が少しでもあがる見通しがあれば、利益は出なかったとしても、固定費だけは支払続けて、会社破産・法人破産を回避することができます。売上がまったくあがらないことが予想されるのであれば、倒産を検討することになります。

その他に、政府が企業支援策を打ち出しており、平時よりも有利な条件での借入も可能です。しかし、どれほど有利といえど、借入にはリスクがあります。新型コロナウイルスはいつ終わるかわかりません。第二波、第三波がくるかもしれないため、大きなリスクを負うのか、倒産するのかは、判断が必要です。

ビジネスモデルの転換が可能か

最後に、「倒産すべきかどうか」の検討要素の4つ目は「ビジネスモデルの転換が可能か」です。

新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでのビジネスモデルが通用しなくなる業種・業態もあります。

働き方改革では推奨されながらなかなか普及しなかった在宅勤務・リモートワークが、新型コロナウイルスの影響で急速に進んでいます。今後は、感染拡大がおさまったとしても、通勤を必要とする業種は減ることが予想されます。通勤をなくすことが可能なのであれば、そちらのほうが業務効率があがります。

オンライン飲み会が流行し、オンライン学習サイトが充実し、新型コロナウイルスの終息後も、居酒屋、学習塾などが以前ほどの売り上げをあげられないことも予想されます。いったん客足の遠のいたキャバクラが、魅力を取り戻すのにも時間がかかるでしょう。

ビジネスモデルの転換ができず、新型コロナウイルスが終息しても当分の間は売上があがらないことがおそれられる業種・業態では、いったん倒産することも検討すべきケースがあります。

新型コロナウイルスによる倒産を回避する方法

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染は、先行きの見えない状況です。今後は、新型コロナウイルスはインフルエンザのように社会に受容され、根絶されずに残りつづける、という考え方をする人もいます。

そのため、現在の業績悪化を、新型コロナウイルスのせいだけにしていては、倒産を回避することはできません。非常事態であってもできる限り倒産を回避する方法について、弁護士が解説します。

政府支援策を検討する

倒産を回避する方法の1つ目は「政府支援策を検討する」ことです。

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、多くの中小企業、零細企業が倒産の危機に瀕しています。少しでも多くの会社を救い、雇用を守るために、政府が多くの支援策を発表しています。

もともと用意されていた制度でも、特例的に要件が緩和されたり、事後の届出が許されたり、支給率が増額されたりといった救済が用意されているものもあります。これらを検討し、倒産を回避できる場合があります。

代表的な政府支援策の例は、次のとおりです。

  • 雇用調整助成金
    :新型コロナウイルス感染症の影響により1か月の売上が5%以上低下した会社に対して、休業手当の最大9/10を支給する助成金
  • 持続化給付金
    :新型コロナウイルス感染症の影響により1か月の売上が50%以上低下した会社に対して、最大200万円を給付する助成金
  • 感染拡大防止協力金
    :「東京都における緊急事態措置等」により、休止や営業時間短縮の要請に対応した会社に、50万円(2店舗以上ある場合には100万円)が支給される制度
  • 新型コロナウイルス感染症特別貸付
    :日本政策金融公庫が管轄し、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が5%<以上低下した会社に、一般枠と別枠で最大6000万円まで融資をおこなう制度
  • セーフティネット保証4号・5号
    :中小企業庁が管轄し、新型コロナウイルス感染症の影響が生じている幅広い業種につき、一般枠と別枠で借入債務を保証する制度

固定費を削減する

倒産を回避する方法の2つ目が「固定費を削減する」ことです。

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で、在宅勤務が推奨されています。各種クラウドサービス、Webカメラを利用したテレビ会議などにより「やってみたらそれほど不自由はなかった」という会社も多いのではないでしょうか。

IT関連の業種では、すでにリモートワークが導入されていて、ますますオフィスの必要性を感じなくなったという会社もあります。

そのような会社にとって、新型コロナウイルス禍は、固定費のかなりの割合を占めているであろうテナント賃料を大きく減らせるチャンスが到来したことを意味しています。

同様に、リモートワークにより「労働時間」で評価することができず「成果」での評価に移行します。これまで長時間労働で評価されていた社員が、実はそれほどの成果をあげておらず、「賃金に見合ったはたらきをしていなかった」社員が浮き彫りになっています。

これを機に、評価の見直し、労働条件の変更により固定費を削減することも検討できます。なお、賃金減額など、労働者にとって不利益な変更をおこなうときは、リスクもあるため注意が必要です。

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ビジネスモデルを転換する

倒産を回避する方法の3つ目は「ビジネスモデルを転換する」ことです。

新型コロナウイルス禍は、いわば「天災」であり、強制的に、人の生き方、働き方の大幅な変容を迫っています。オンライン飲み会、オンライン学習動画、オンラインデート、さらには、自宅待機でのストレスをまぎらわすエンターテイメントコンテンツなど、新しいチャンスをものにして飛躍をとげている会社もあります。

ビジネスモデルを転換したいけれど、手元に十分な資金がないという会社では、クラウドファンディングの活用によって出資を受け、新しいビジネスをスタートする例もあります。

なお、新規の業種・業態に挑戦するときは、適法性のチェックを忘れずおこなってください。これまでにもあった業種・業態へのシフトチェンジでは生き残れなくても、まったく新しいビジネスモデルを生み出す可能性もあるからです。

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新型コロナウイルスで倒産するタイミングは?

以上の検討結果を踏まえた場合に、「早期に会社破産・法人破産を決断したほうが有利だ」という会社もあります。

例えば、現在おこなっている業種・業態が、新型コロナウイルスが仮に早期に終息したとしても、その後の需要が当面は予想できず、一方で、現在多くの固定費がかかっていて、売上の確保も見込めない、というケースです。

このようなケースで、たとえ政府の支援策があれど、少額の借り入れは「焼石に水」であり、むしろ将来の返済額を増やすというリスクを負います。クラウドファンディングによる個人出資も同様に、将来の予測を踏まえておこなわなければ、リスクを負うことともなりかねません。

倒産をするには、裁判所に支払う予納金などの実費が最低20万円程度、加えて、弁護士に支払い弁護士費用がかかります。

現時点で手持ち資金のない会社を倒産させる場合には、いったん弁護士が債権者に対して受任通知を送って支払を止め、継続的に入ってくる売上を、分割払いで費用にあてる、という方法をとることがあります。しかし、この方法は、事業が継続しており、(減少していたとしても)売上が入ってくる場合にしか利用できません。

会社破産・法人破産は大きな決断ですが、タイミングを見誤ると、倒産すらできず、単なる夜逃げ状態となってしまうおそれもあります。新型コロナウイルス感染者数が毎日発表されていますが、目安にすぎません。一時的な増減に一喜一憂して「倒産するかどうか」という重大な決断をすることのないようにしてください。

「会社破産と経営者の対応」の法律知識まとめ

「企業法務」は、弁護士にお任せください!

今回は、新型コロナウイルスの影響を受けて経営状況が悪化し、倒産を考える会社が検討すべき注意点について、弁護士が解説しました。

未知のウイルスの感染拡大という非常事態で、倒産を検討しているとき、冷静な判断力がはたらいていないおそれがあります。「生き残れるビジネスモデル転換のチャンスがあるのでは」という会社もあれば、逆に「現状を踏まえれば、早めに会社破産・法人破産を決断したほうが有利では」という会社もあります。

今回解説した判断基準を自社の業界にあてはめて、「現時点で倒産すべきかどうか」について、十分に検討してください。

会社破産はもちろん、新しいビジネスを起こす場合にも、ぜひ一度、企業法務に詳しい弁護士のアドバイスをお聞きください。

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