★ お問い合わせはこちら

デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いと、調達時の注意点

資金調達をする方法は様々な種類がありますが、デットファイナンスとエクイティファイナンスの2種類に大きく分類できます。

デットファイナンスとは、借入や社債の発行など、負債の形で調達する方法、エクイティファイナンスとは、株式発行やストックオプションなど、出資の形で調達する方法です(なお、中間的な方法に、新株予約権付社債の発行の方法があります)。

いずれも、必要な資金を調達する方法として有用ですが、デット、エクイティにはそれぞれメリットとデメリットがあります。そのため、自社の需要に合わせた、適切な方法で資金調達しなければ、目的を達成することができません。

今回は、資金調達におけるデットとエクイティの違いについて、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 資金調達でビジネスの目的を達するには、調達方法ごとのメリット・デメリットを理解する
  • デットとエクイティの最大の違いは返済の要否にあるが、いずれも一長一短
  • ビジネスモデル、企業ごとの状況に合わせ、有利な資金調達の方法を選択すべき

\お気軽に問い合わせください/

目次(クリックで移動)

資金調達におけるデットとエクイティとは

資金調達をする方法は、大きく分けて、デットファイナンスとエクイティファイナンスがあります。略して、デットとエクイティと呼ばれます。

デットファイナンスとは

デットファイナンスとは、負債の形による資金調達の方法のこと。「デット(debt)」というのは借金、負債という意味です。代表的なデットファイナンスには次の例があります。

  • 銀行の融資
  • 日本政策金融公庫の融資
  • 自治体からの制度融資
  • 法人向けの金融機関借入(ビジネスローン)
  • 個人投資家からの借入
  • 社債の発行
  • 手形割引
  • 親族からの個人的な借入

エクイティファイナンスとは

エクイティファイナンスとは、出資の形による資金調達の方法のこと。「エクイティ(equity)」というのは株式という意味です。代表的なエクイティファイナンスには次の例があります。

  • 新株の発行
  • 新株予約権の発行(いわゆるストックオプション)
  • VCからの出資
  • エンジェル投資家からの出資

その他の資金調達の方法

資金調達の種類には、デットファイナンス、エクイティファイナンスのいずれにも分類できないものや、複合的な方法もあります。

新株予約権付社債

デットとエクイティの中間的な資金調達に、新株予約権付社債の発行という方法があります。新株予約権付社債は社債の一種で、デットでありながら、一定期間であれば権利行使によって新株の発行というエクイティを受けられる権利の付いた社債です。ただし、権利行使期間や株式数について、一定の制限があります。

デット・エクイティ・スワップ

デット・エクイティ・スワップは、負債(デット)を株式(エクイティ)に変換する資金調達の方法です。具体的には、金銭債権を有する債権者から、その債権を会社に現物出資してもらい、その代わりに株式を交付します。

資産の現金化

会社が保有する資産を売却し、換価することで資金調達する方法もあります。例えば、手形割引、債権のファクタリング、不動産の任意売却などが該当します。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、専用のサイトなどを活用し、リターンを提示するなどして、一般に広く出資を募る方法のことです。その実態は、返済の不要な協賛的な意味合いのものも多いですが、リターンの前払いを意味するケースもあります。また、出資を意味する株式投資型クラウドファンディングもあります。

補助金、助成金

国や自治体の提供する助成金や補助金もまた、広く分類すれば資金調達の一種です。いずれも返済は不要であり利用しやすいものの、要件を満たさなければ受給することができません。

デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い

次に、デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いについて解説します。

返済の要否の違い

最大の違いは、返済の要否の違いです。

借入や社債の発行といったデットファイナンスは、お金を借り入れる方法。そのため、調達した資金は、最終的には返済する必要があります。例えば、借入ならば期限までに返済を要しますし、社債ならば期日までに償還しなければなりません。返済の義務を怠れば、訴訟を提起され、会社の財産を差し押さえられてしまいます。

一方で、株式発行をはじめとしたエクイティファイナンスでは、調達した資金の返還は不要です。

返済の要否が違うため、デットで調達した資金を他人資本、エクイティで調達した資金を自己資本といいます。

リターンの違い

次に、資金を支出する側から見たリターンに違いがあります。デットファイナンスの方がローリスクな分ローリターン、エクイティファイナンスはハイリスクハイリターンと想定されます。

借入や社債の発行など、デットだと返済義務が生じます。返済を怠れば利息が付され、最終的には訴訟できますから、投下資本の回収は比較的容易です。代わりに、利息制限法によって上限が定められており、リターンはさほど高くはありません。

エクイティだと、調達した資金の返還を請求できません。その代わり、配当を得られる可能性があり、かつ、株価上昇による大きなキャピタルゲインを期待できます。

エクイティにおけるキャピタルゲインには上限がありません。IPOやM&Aなどのタイミングを図れば、投下資本を大きく超える多大な利益が得られるケースもあります。

貸借対照表(BS)上の違い

企業の資本・負債の状態を示す会計帳簿を、貸借対照表(BS・バランスシート)と呼びます。貸借対照表において、デットファイナンスとエクイティファイナンスの扱いは異なります。

借入であるデットは、貸借対照表における「負債」の項目を増加させるのに対し、エクイティは「資本」の項目を増加させます。

デットとエクイティのどちらが最適な資金調達方法か

デットファイナンスとエクイティファイナンスとは一長一短であり、ケースに合わせた最適な方法をとる必要があります。

会社が資金調達を検討しているとき、デットとエクイティ、どちらの方法が最適なのかを解説します。

判断基準は資本政策によって異なる

資金調達の方法やタイミングは、企業経営に大きな影響を与える重要な事項。そのため、起業当初から、資本政策をあらかじめ考え、計画的に進める必要があります。思い通りに順調にいくケースばかりではありませんが、資本政策の失敗は株主構成に影響するため、後戻りは困難です。

資本政策は、まず事業計画を立てて、その計画の実現のために、資金をどう調達するか、という順序で検討します。この際に、デットとエクイティのいずれが適切かについても、資本政策に基づいて検討しなければなりません。

資本政策は、起業時、創業株主間契約によって定めます。

詳しくは、次の解説をご覧ください。

デットファイナンスが適切なケース

借入や社債の発行といったデットファイナンスが適切なケースは、例えば次の場合です。

  • 将来、返済資金が準備できる予定がある
  • 財産的な価値のある担保がある
  • 早期に、安定的な売上を見込める
  • 会社の重要事項についての決定権を渡したくない

金融機関や投資家からの借入、社債発行といったデットでは、経営への介入を抑えることのできる反面、返済期限までに元本と利息を返済しなければなりません。

エクイティファイナンスが適切なケース

エクイティファイナンスは、返済が不要な点でメリットを感じるかもしれませんが、実際にはデメリットも多くリスクもあるため、全ての場面で有効なわけではありません。株式を分け与えることで、経営への関与を許し、いわゆる「物言う株主」として障害になってしまう危険もあります。

株式発行などのエクイティファイナンスが適切なケースは、例えば次の場合です。

  • 現預金に余裕がない
  • 価値のある担保がない
  • ビジネスの将来性が高く、成功の可能性が高い
  • リスクを分散したい
  • 早期の黒字化は難しいが、大きな成長性を有している

エクイティでは、投資家目線だと株価上昇によるキャピタルゲインが主な目的となります。将来の株価上昇が期待できるビジネスでないと、エクイティによる資金調達はできません。投資に値すると期待される起業でなければ無意味なのです。また、エクイティによる資金調達を受けると、出資者が業績の向上を求め、議決権を行使するなど、経営に過剰な関与を求められるおそれがあります。

デットファイナンスの注意点

次に、デットファイナンスに特有の注意点について解説します。

借入、社債発行など、デットの方法で資金調達する場合には、自社の信用力をどう高めるか、検討する必要があります。返済が確実に予想できなければ、貸し付けてくれる相手は見つかりません。

その際に、担保を付すかどうかや、その担保の種類など、借入先と協議し、検討しなければなりません。

デットで資金調達する際に、よく利用される担保には、不動産への抵当権設定、連帯保証人があります。珍しい例では、会社の保有する知的財産権に担保を設定する方法もあります。連帯保証を「人的担保」、それ以外を「物的担保」と呼びます。

ただし、ベンチャー企業やスタートアップなど、起業当初の段階では、人的担保以外には適切な担保を準備できないケースも少なくありません。このとき、連帯保証人の責任が重いことに配慮し、慎重に進めなければなりません。

なお、社債に物的担保を付す場合は、担保付社債信託法の規制を受けます。そのため、発行会社と社債権者の間に信託会社を置き、担保の設定にあたり信託契約を締結する必要があります。

エクイティファイナンスの注意点

株式発行など、エクイティファイナンスの注意点について解説します。

エクイティの方法で資金調達をするには、会社法における発行手続きのルールに従う必要があります。新株発行の手続きは複雑であり、発行する株式の種類、割当先(第三者割当、株主割当、公募)などによって細かな定めがあります。

特に、株式は、「議決権」を意味しており、株式を割当てた投資家やVCには、会社の重要事項について決定する権限を与えることとなる点には注意を要します。そのため、株式を付与する際には、必ず投資契約を結び、株主としての権利行使のルールを合意しておく必要があります。

株式発行について、会社法上の手続きは次に解説します。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、会社の資金調達の方法のうち、デットファイナス、エクイティファイナスという大きな2分類について解説しました。それぞれのメリット、デメリットを理解し、資金調達の目的を達成する必要があります。

自己資金のみで実現できるビジネスモデルならよいですが、そのようなスモールビジネスばかりではありません。成功の期待が高まるビジネスならば、多くの融資、出資を得られます。しかし、資金調達をして事業規模を拡大し、大きな成功を得ようとするとしても、その方法が不適切だと、かえって足かせになりかねません。

自社の資金調達の需要やタイミング、企業の状況に合わせた、適切な方法を選択しなければなりません。また、デット、エクイティそれぞれの資金調達に特有の注意点を理解し、慎重に進めるようにしてください。

この解説のポイント
  • 資金調達でビジネスの目的を達するには、調達方法ごとのメリット・デメリットを理解する
  • デットとエクイティの最大の違いは返済の要否にあるが、いずれも一長一短
  • ビジネスモデル、企業ごとの状況に合わせ、有利な資金調達の方法を選択すべき

\お気軽に問い合わせください/

目次(クリックで移動)