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ドメイン譲渡契約書の注意点と、ドメイン移管で注意すべき法的トラブル

インターネットが一般に普及、ネットビジネスが隆盛して久しく経ちます。1社に1つのホームページがあるのは当たり前で、複数のウェブサイトを管理する企業も多い現代、サイト売買も盛んになりました。集客力の高いウェブサイトは売上に直結しますから、それだけで財産的な価値があります。

ウェブサイトの価値は、ドメインの価値ともいえます。ドメインは、そのサイトを特定するためのネット上の住所を意味するもの。価値の高いドメインほど売買の対象となりやすく、高値で取引されます。このようなドメイン売買の取引で締結を要するのが、ドメイン譲渡契約書です。

ドメインの譲渡の際は、移管手続きを要するものの、専門的な手続きなので業者の助けを借りるケースも少なくありません。そのため、ドメイン移管はトラブルのもと。サイトが消えたり、上位表示を失ったりするリスクと隣合わせです。トラブル回避と万一の責任追及のため、法的な注意点を理解し、契約書に反映しなければビジネスの成功はあり得ません。

今回は、ドメイン譲渡契約書の注意点と、ドメイン移管の際のトラブルを避けるための法的な注意点について、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • ドメインの譲渡には、技術上の問題とともに、法的なリスクも多く内在している
  • ドメイン譲渡のリスクを軽減するため、ドメイン譲渡契約書の締結が必須となる
  • ドメイン譲渡契約書では、ドメインの価値が低下した場合の責任追及がポイントとなる

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ドメインの譲渡とは

ドメインの譲渡とは、ドメインを使用する権利を、第三者に対して有償、または無償で譲渡することです。ドメインの移管、ドメインの名義変更と称されることもあります。インターネットが普及し、ビジネス利用が当たり前となった現代、ドメインは売買、取引の対象となっています。

まず、ドメインの譲渡の基礎知識を解説します。

ドメインとは

ドメインは、インターネットに接続しているパソコンの住所のことです。ネット上で、サイトを示す記号であり、全く同一のドメインは1つとして存在しません。

「.com」「.co.jp」「.net」などのドメインは有名ですが、ネット利用者の拡大により、ウェブサイトによる情報発信が一般化。その需要に応え、近年は「.tokyo」「.shop」など新しいドメインが続々登場しました。

ドメインが譲渡の対象となる理由

ドメインは、世界に1つとして同じものがないため、信頼の証となります。独自ドメインでサイトを作ってビジネスを進めれば、期間の経過とともに信頼が蓄積。ドメインについた信用は、ドメインの価値として高く評価されます。そのため、ビジネス上の信頼が十分に付加されたドメインは、売買、譲渡など取引の対象となります。

使用しなくなったドメインがあるとき、捨ててしまうのでなく、そのドメインを活用したい誰かに承継することが検討されます。また、高い価値のあるドメインをどうしても譲り受けたいことも。このようなとき、ドメインの譲渡という契約取引が行われます。

ドメインの譲渡は、民法の典型契約のうち、売買契約もしくは譲渡契約に当たります。

ドメイン譲渡のリスクを減らすため、ドメイン譲渡契約書が必要

譲渡契約は「あげる」「もらう」という口頭の合意だけでも成立します。これは、譲渡の対象が形に見えないドメインでも同じこと。有償でする売買契約も同じく「売る」「買う」という口頭の合意のみで成立します。

しかし、いざトラブルになると、契約の条件を、自分に有利に証明しなければなりません。このとき、契約書を作成しておかないと、こちらにとって有利な証拠が残らなくなってしまいます。トラブルが起こった後になって契約相手の責任を追求しようにも、契約書なしに裁判に勝つことはできません。

ドメインの譲渡は、法的なリスクが顕在化しやすい場面。それは、ドメインの移管が、まだ新しい分野であるとともに、技術的に難しい問題だからです。

必然的に、ミスが起こりやすく、ビジネスでドメインを買ったのに期待した結果が得られないと経済的な損失が生じます。特に、ドメインの価値評価は、明確な基準がなく曖昧で、注意しなければ詐欺的なビジネスに騙される危険もあります。

ドメイン譲渡における法的なトラブルには、次のケースがあります。

  • 代金を支払ったのに、ドメイン移管に必要な情報を教えてもらえない
  • ドメイン譲渡の契約後に、売主の連絡が途絶えた
  • ドメインのパスワードを抜き取られたが、代金を支払ってもらえない
  • ドメイン譲渡の手続きに失敗したが、責任の所在が不明
  • 売買の対象となるドメインの価値が高く偽装されていた

これらリスクは一見して技術上の問題として解決すべきようにも見えます。しかし、技術的な問題があれど、時間を取り戻すことはできません。すると、そのトラブルは結局、金銭解決などの法律による救済を得るしか解決策はありません。

このとき、ドメイン譲渡契約書を適切な内容で作成しておけば、上記の被害を回復することができます。

ドメイン譲渡契約書の具体的な条項(ひな形)

次に、実際にドメイン譲渡をする際に結ぶ、ドメイン譲渡契約書の条項を解説します。

具体的な条項は、下記のひな形を参考に、個別のケースに応じて修正してください。

ドメイン譲渡契約書

株式会社XX(以下「甲」という。)と、株式会社YY(以下「乙」という。)は、甲管理のドメインを乙に譲渡するにあたり、以下のとおり合意を締結した。

第1条(目的)
甲は乙に対し、甲管理のドメイン(「XXX.com」、以下「本ドメイン」という。)を譲渡し、乙はこれを譲り受ける。

第2条(譲渡代金)
1. 乙は甲に対し、本ドメイン譲渡の対価として金XXX円を支払う。
2. 前項の金員は、20XX年X月X日限り、甲の指定する金融機関に振込送金する方法によって支払う(振込手数料は乙負担)。

第3条(譲渡日)
本ドメインの譲渡は、20XX年X月X日を期限とする。ただし、ドメイン移管が期限までに完了するよう甲は責任をもって手続きを進め、乙は必要な協力を行う。

第4条(費用負担)
本ドメインの維持に要する費用は、前項の譲渡日以前に支払期限の到来する費用は甲、譲渡後に支払期限が到来する費用は乙が負担する。また、本ドメインの移管に要する費用は甲の負担とする。

・・・(以下略、一般的な条項は、下記解説を参照)・・・

目的・定義

ドメイン譲渡契約書の冒頭には、目的規定、定義規定を定めます。目的規定では、契約当事者間でドメインを譲渡することを契約の目的とする旨を定めます。契約書のなかで何度も登場する用語は、定義規定でまとめて説明しておきます。

譲渡対象のドメインの特定

ドメイン譲渡契約書において、譲渡対象となるドメインを特定する条項は必須です。譲渡対象が明確でないとトラブルのもとですが、ドメインの文字列は1つとして同じものはないので、そのドメイン名称を記載すれば特定できます。

その他に、移管前のドメイン管理事業者などを記載しておくのがお勧めです。ドメイン譲渡とともに、周辺の事業を一括して譲渡することもあります。その場合、同時に取引の対象とするSNSアカウント、顧客情報、取引先の情報なども特定する必要があります。

譲渡代金

ドメインの譲渡代金を定める条項を記載します。ドメインの取引をビジネスとしてする以上、得られる利益を確定しておくことが大切だからです。

支払期限、支払方法も定めておきましょう。ドメインの移管手続きが段階的に進むときには、その段階ごとに分割支払いと定める方法も有効です。

費用負担

ドメインの移管手続きには、費用を要することがあります。また、ドメインを維持するためには年間の支払いを要するのが通例です。ドメインを譲渡するときに、これらの費用をどちらが負担するか定めるのが大切です。

ドメイン譲渡の手続き中だったとしても、費用の支払いが遅延するとドメインが削除されるおそれがあります。ドメイン削除を回避するため、いつまでの費用を売主が負担するか、契約書に定めます。費用負担者、支払い方法を契約書に定めておけば、いざ未払いとなりリスクが顕在化しても、責任の所在は明確です。

>>ドメイン譲渡に要する費用は後述

譲渡日・譲渡方法

ドメインの譲渡日と、譲渡方法を、ドメイン譲渡契約書に明記します。特に、譲渡方法については、ドメイン管理事業者によって手続きが煩雑なことがあります。両当事者の協力なしには、ドメインの移管が思うように進まない危険があります。

事前に手続きをよく理解し、ドメイン譲渡契約書に、その手順に従って具体的に記載するのがお勧めです。ドメインの売主が義務を果たさず、代金を支払ったにもかかわらず譲渡日よりドメインを利用できない事態は回避しなければなりません。

>>ドメイン譲渡の方法は後述

善管注意義務

ドメイン譲渡契約の完了後、移管手続きには一定の期間がかかります。その間に、ドメインが失効したり、価値が落ちてしまっては、譲渡の目的を果たせなくなります。

善管注意義務は、このような一定の期間中、売主がドメインを正しく管理するよう義務付けるもの。契約書に定め、必ず義務を確認しておきましょう。少なくとも、ドメイン移管までに使用料の支払いを怠り、ドメインを利用できなくなる事態は避けなければなりません。その他、そのドメインで運用するホームページの適正な利用などを定めることもあります。

秘密保持義務

企業間で、ビジネスとしてドメイン譲渡を行うなら、企業秘密や個人情報をやりとりしなければならないケースも多いもの。特に、大きな価値があることを前提として購入する際には、ドメインの価値が本当にあるか確認しなければならず、そのドメイン上のサイトのアクセス情報などを確認する必要があります。

このとき、互いに知らせた秘密が外に漏れないよう、ドメイン譲渡契約書では、秘密保持義務を定めておきましょう。

解除と損害賠償

一般的な他の契約書と同じく、契約違反に対する制裁を定めます。ドメイン譲渡契約の場合には、契約を継続できないような違反がある場合の解除、契約違反によって負った損失についての損害賠償請求などを定めておきます。

誠実協議、合意管轄

最後に、トラブルがあった場合に誠実に協議するという条項、協議で解決しなかった場合の裁判の合意管轄を定めます。

ドメイン譲渡の取引は、ウェブ上で完結するケースがほとんどです。ネットビジネスが全国を対象にされるとき、ドメイン譲渡の当事者が、遠隔地に居住することも少なくありません。このとき、裁判の合意管轄が、自分からして遠方の場所になっていると、裁判による解決に支障が生じ、不利になってしまいます。

ドメイン譲渡契約で注意すべきポイント

次に、ドメイン譲渡契約を円滑に進めるために、注意すべきポイントを解説します。

ドメイン譲渡契約では、契約書を締結し、事前、事後の手続きを正しく行うことでリスクを低減できます。

ドメイン譲渡を行う方法を理解する

取得したいドメインがあっても、既に誰かに使用されてしまっているケースもあります。短くてわかりやすいドメイン、すぐに検索できる人気のドメインなどは、取得済みとなっていることが多いでしょう。自社名や自サービス名称など、どうしても取得したいドメインがあるとき、ドメイン譲渡を検討する場合、次の方法で行われます。

  • ドメイン譲渡の専門サイトで検索する
  • 取得したいドメインの現在の所有者を、Whois情報で調べて連絡する
    ドメインの現所有者は、aguse.jpなどWhois情報を調査するウェブサービスで調査可能で、直接連絡して売買交渉を行う方法がある。ただし、Whois情報が秘匿されている場合には限界がある。

ドメイン譲渡の専門サイトも多くあり、価値の高いドメインは高額で取引されています。

ドメインの所有者情報を変更する必要がある

ドメインの譲渡契約書を締結しただけでドメインを利用できるわけではありません。売主はあくまでドメインを管理しているだけです。譲り受けたドメインを利用するには、ドメインの所有者情報を変更する手続きが必要です。ドメイン譲渡契約書でも、これら手続きを売主に義務付けておかないと、代金を払ったのにドメインを利用できない事態も想定されます。

相手から契約書案を提示された際の契約書チェックでも、この点が明確になっているかどうか、注意が必要です。

ドメイン譲渡契約書を作成する際は、名義変更の具体的な手続きを確認し、その手続きを売主が責任を持って行うと契約で合意しておく必要があります。サーバのマニュアルなどを見て、名義変更に必要となる書類や情報が明らかなら、その提出を義務付けておきましょう。

ドメイン管理事業者が異なる場合

同一のドメイン管理事業者の間でするドメイン譲渡は、ドメイン管理事業者の定めた手続きに従って、必要書類の提出などを進めれば、正しく移管することができます。これに対し、売主、買主のドメイン管理事業者が異なる場合、そもそも「ドメイン譲渡が技術的に可能かどうか」を事前に検討しなければなりません。

ドメインの種類によっては、買主側の指定したドメイン管理事業者が、管理の対象外としているおそれがあります。このとき、せっかくドメイン譲渡契約書を締結しても、利用できないおそれがあります(契約書前の見落としであり、その責任を相手に追及できず、負担が自社に跳ね返ると言わざるを得ません)。利用規約などをチェックし、ドメイン管理事業者が対象とするドメインの種類を確認しましょう。

ドメイン譲渡契約に必要となる費用

ドメイン譲渡契約を締結する際に、譲渡に必要となる費用を事前に調べておきましょう。

ドメイン譲渡契約に必要となる対価は当然ですが、それ以外にも、ドメイン管理事業者に支払う移管の費用などがかかるのが一般的です。かかる費用をリスト化し、ドメイン譲渡契約書においてそれぞれの負担者を明記します。ドメイン契約は、継続的にドメイン費用を支払わなければ、失効するおそれもあります。折角、譲り受けるドメインが、費用の払い忘れで削除されては元も子もありません。

ドメイン譲渡契約書で、ドメイン費用の負担期間を定めておけば、いざどちらかの契約当事者がドメイン費用を支払い忘れた場合にも、責任追及が容易になります。

ドメインの代行契約について

ドメインを自社で取得せず、外部の業者に代行してもらうことがあります。この際、サーバ契約も同時に代行させる会社もあります。ウェブ制作や保守管理を外注するケースはそのような例が多いでしょう。このとき、代行契約書を適切に作成する必要があります。

代行契約したドメインの権利帰属

代行契約とは、あくまでも本人となる会社に代わってドメインを取得し、管理する契約です。取得したドメインの所有権、利用権は本人に帰属することを、必ず約束しておかなければなりません。契約書に明記せず、財産的な価値が生じたころに、代行取得した会社にドメインの権利を主張されては大変です。

悪質な業者には「委託料に未払いがあったときは、ドメインの所有権、利用権を取得する」と定める契約例もありますが、自社サイトを奪われる危険があるため注意しましょう。

免責条項に注意する

IT知識に乏しいと、ドメイン上で運営されるサイトが表示されないなどのトラブルで、誰に責任があるのか判別できないことがあります。このとき、代行業者がどの程度の責任を負うかは、契約書において免責条項を定めておくべきです。

また、ドメインの文字列は、1つとして同じものは取得できません。普遍的なもの、有名なものだと、取得が遅れると希望のドメインを取得できないことがあります。このとき、代行業者による取得の期限を設け、取得が遅れた際の責任についても明確化してください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、ドメイン譲渡契約書と、ドメイン移管の注意点を解説しました。

インターネットが広く普及し、ビジネスにも必須の手段となりました。ITの知識、経験が乏しくても、ウェブサイトの活用を全くないまま利益を上げるのは、業種によっては困難なこともあります。ドメインを扱うには、専門的な手続きを伴うものであり、そのリスクを軽減し、回避するにも契約書を交わさなければなりません。

ドメイン譲渡契約書を適切な内容にするには、法律と契約に関する知識が不可欠です。ドメインの売買をする際、特に売り手側になるのであれば、取引の相手方から契約書の案を示されることもあります。このとき、契約書チェックを慎重に進めないと、思わぬデメリットがあったり、責任追及が十分にできなくなったりする危険もあり、注意を要します。

この解説のポイント
  • ドメインの譲渡には、技術上の問題とともに、法的なリスクも多く内在している
  • ドメイン譲渡のリスクを軽減するため、ドメイン譲渡契約書の締結が必須となる
  • ドメイン譲渡契約書では、ドメインの価値が低下した場合の責任追及がポイントとなる

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