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自由財産とは?自己破産しても残るものについてわかりやすく解説

自己破産すると、原則として全ての財産が換価され、債務の返済に充当されます。

自己破産を考える方の多くが「全ての財産を失ってしまうのか?」と不安を感じることでしょう。しかし実際は、生活に必要な最低限の財産は処分されず、手元に残すことができます。この自己破産しても残せる財産を「自由財産」と呼びます。

自由財産は、当面の生活を維持するために利用することができます。

今回は、自由財産の意味と、どのような財産が自由財産として認められるのかについて、弁護士がわかりやすく解説します。

この解説のポイント
  • 自己破産しても手元に残る「自由財産」は、再出発の糧となる
  • 99万円以下の現金、差押禁止財産、新得財産、破産財団から放棄された財産など
  • 自由財産のみでは生活が困難なときは、範囲の拡張を申し立てることができる

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自由財産とは、自己破産しても残るもの

自由財産とは、破産手続きでも換価されず、配当に充当されない財産のことです。

破産財団の範囲を定める破産法34条は、3項で破産財団に属しない財産(自由財産)を列挙し、4項で自由財産の範囲の拡張について定めます。つまり、破産しても全財産が処分されるわけではなく、生活に必要な最低限のものは手元に残せるのです。

自己破産しても残る「自由財産」は、破産者が「自由」に処分・利用できるものであり、再出発の糧とすることができます。なお、自由財産に対し、逆に、自己破産によって手放すこととなり、失われる財産が「破産財団」です。

破産手続きでは、破産者の所有する財産は原則として「破産財団」に組み入れられ、破産管財人の管理・処分の対象となり、最終的には債権者に公平に配当されます。

一方で、「自由財産」は破産財団に含まれず、破産者本人の手元に残ります。したがって、破産手続きを経ても売却されることはなく、引き続き利用可能です。

このように、財産の種類によって扱いが異なるため、自己破産にあたっては、どの財産がどちらに該当するのかの判断が重要になります。

破産制度の根底には、債務者に「経済的な再出発の機会」を与える目的があります。

自由財産は、その再出発を支える重要な役割を担います。生活に必要な家具や、就労のための道具、一定額の現金などすら失えば、破産者の生活が立ち行かないでしょう。このような最低限の生活基盤を確保するために、自由財産が存在するのです。

裁判所によっては、生活状況を踏まえて自由財産の範囲を拡張する運用がされているケースもあり、柔軟に考えられています。

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自己破産でも残る自由財産の例

次に、どのようなものが自由財産となるのかについて解説します。

自己破産をしても、全ての財産を失うわけではありません。次の4つの財産は、自己破産しても残せる「自由財産」の代表例です。

99万円以下の現金

自由財産の1つ目が、99万円以下の現金です。

破産者の手元にある現金について、原則として合計99万円までが自由財産として残しておけます。重要なポイントは、預貯金が自由財産に含まれない点であり、手元の現金が99万円未満のときは、破産申立前に預貯金を引き出し、手元に置いておく必要があります。

現金の用途に制限はなく、当面の生活費、子供の教育費や急病時の備え、家賃や公共料金の支払いなどに充てることが多いです。

なお、民事執行法は「66万円以下の現金」を差押禁止財産としますが、破産法は、生活に必要な現金の範囲を広げ、「99万円以下の現金」を自由財産として扱います(破産法34条3項1号)。

差押えが禁止された財産

自由財産の2つ目が、差押えが禁止された財産です。

破産法は、差し押さえることができない財産は、破産財団に組み入れられないことを定めます(破産法34条3項2号)。これは、民事執行法に基づき、差押禁止動産と差押禁止債権があります。

差押禁止動産

差押禁止動産は、生活必需品などが含まれます。具体的には、民事執行法131条に定める次のようなものが該当します。

【日常生活における必需品】

  • 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
  • 1ヶ月間の生活に必要な食料、燃料
  • 標準的な世帯の2ヶ月間の必要生活費
  • 業務に必要となる器具、用具

【精神生活に必要な物品】

  • 仏壇、位牌など礼拝、祭祀に関するもの
  • 表彰や勲章など、名誉に関するもの

※ 前述の通り、差押禁止財産のうち、現金は「66万円以下」とされますが、破産法上は「99万円以下」が自由財産となります。

生活必需品とは、例えば、洗濯機・冷蔵庫・電子レンジ・掃除機・テレビ・パソコンなどの家電類、机・椅子・寝具などの家具類があります。

ただし、同じ「家電」や「家具」でも、高額な製品やブランド品など、最低限の生活に必要でない高級品や贅沢品は、自由財産とは認められないおそれがあります。例えば、デザイナーズ家具やアンティーク、50インチを超える高級テレビ、高額なオーディオ機器はどは自由財産とならず、換価(処分)されて配当に充当されるでしょう。

差押禁止債権

差押禁止債権は、最低限の生活に要する収入の確保を目的として、民事執行法で差押が禁止される債権のことです。民事執行法152条は、給与債権のうち4分の3を差押禁止としています。したがって、給与債権は、4分の1までしか差押えできません(なお、月額給与が33万円を超える場合、33万円を超える部分は差押可能)。

確定拠出年金、退職金共済、失業保険、年金や生活保護費、児童手当などの公的給付金の受給権、小規模企業共済、中小企業退職金共済(中退共)なども、差押えできません(ただし、これらの金銭も振り込まれた後は現金99万円以下に含まれる)。

破産手続開始決定後に新たに取得した財産(新得財産)

自由財産の3つ目が「新得財産」です。

新得財産とは、破産手続開始決定後に、新たに取得した財産のことです。自己破産しても再起しやすいよう、開始決定の時点を基準に、それより後に取得した財産は自由に利用できます。これは、破産法34条1項が「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産は、破産財団とする」と定めるからです(開始決定時を基準に財産を固定する考え方を「固定主義」と呼びます)。

例えば、破産手続開始決定後に立ち上げた事業による収入、振り込まれた給料や賞与、退職金、贈与された財産などは、自由財産として手元に残すことができます。

破産財団から放棄された財産

自由財産の4つ目が、破産財団から放棄された財産です。

破産手続きでは、裁判所から選任された破産管財人が破産財団を管理し、換価(処分)して債権者に配当します。管財人の目的は、破産財団を可能な限り増やし、債権者の配当を増やすことです。しかし、次の財産は配当に充当するのが難しく、財団から放棄されることがあります。

  • 財産価値が低すぎる財産
  • 換価処分に過分な費用がかかる財産
    (例:解約費用のかかる少額の預貯金、掛け捨ての生命保険)
  • 買い手がつかないと予想される財産
    (例:売却困難な山林など)
  • 保存に過分な費用がかかる財産

破産管財人及び裁判所の判断によって破産財団から放棄された財産は、自由財産となります。

財産的な価値が低くても、破産者にとっては大切な財産もあります。このようなものについては、申立代理人となった弁護士に依頼し、放棄して自由財産にしてもらえるよう破産管財人と交渉を行うケースもあります。

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自由財産の範囲の拡張

次に、自由財産の範囲の拡張について解説します。

本来の自由財産だけでは最低限の生活を起こるのが難しい場合、自由財産の範囲を拡張できる場合があります。例えば、幼い子を養育している、病気の家族を看護している、介護を要する親がいるといった特別の事情があるケースです。

自由財産の範囲を拡張できるケース

自由財産の範囲の拡張の運用は裁判所によって異なるので、円滑に認めてもらうには、裁判所の基準に精通した弁護士のアドバイスが必要です。

東京地方裁判所では、個別の事情によらず、一定の範囲について自由財産の拡張を認める運用がされています。東京地方裁判所における自由財産の範囲の拡張は、次の通りです。

  • 残高が20万円以下の預貯金
  • 見込額が20万円以下の生命保険の解約返戻金
  • 売却価格が20万円以下と見込まれる自動車
  • 電話加入権
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 支給の見込み額の8分の1相当額が、20万円以下である退職金債権
  • 支給の見込み額の8分の1相当額が、20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
  • 家財道具

また、これ以外の財産についても、相当と認められるときは自由財産の範囲を拡張してもらうことができます。

自由財産の範囲の拡張が認められるかの考慮要素

自由財産の範囲の拡張が認められるかどうかは、次の事情を総合考慮して判断します。

  • 自己破産する者の生活状況
  • 自己破産時に保有していた現金の額
  • 自己破産する者の収入の見込み

破産法34条4項では「破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情」が考慮されることとなっています。次のケースは特に、拡張が認められやすいとされます。

  • 自己破産する者の扶養すべき家族が、収入に比べて多い場合
  • 病気の家族がいる場合
  • 自己破産時に保有する現金がほとんどない場合

自由財産の範囲を拡張する方法

自由財産の範囲の拡張は、破産者の申し立て又は職権によって決定されます(破産法34条4項)。拡張を希望するなら、積極的に申立てをすべきです。

自由財産の範囲を拡張する申立ては、破産手続開始決定の確定日以降1ヶ月を経過する日までにしなければなりませんが、この期限は裁判所の判断で伸長されることがあります。

申し立てがあった場合、裁判所は破産管財人の意見を聞かなければならず(破産法34条5項)、手続きの終了直前だと認められないおそれがあります。東京地方裁判所の例だと、まずは破産管財人と協議をして事実上の了承を得て、裁判所に申し立てを行うというのが実務です。

自由財産についてのよくある質問

最後に、自由財産についてのよくある質問に回答しておきます。

車は自由財産になる?

一定の条件を満たせば、車が自由財産として認められます。例えば、次の事情のある車は、破産手続き後も保有し続けられる可能性があります。

  • ローン返済済みで所有権の留保がない。
  • 評価額が安価である(20万円以下など)。
  • 通勤や通院など、日常生活に不可欠。

ローン返済中の車両は、信販会社に返却することとなります。また、高級車は、自由財産とすることができず、処分して債務の返済に充当されます。

不動産は自由財産になる?

不動産は高額資産となることが多く、自由財産にならないのが原則です。

したがって、破産財団に組み入れられ、自己破産の際に売却され、債権者への配当原資となります。特に、住宅ローンを完済した不動産は市場価値が高いことが多いです。

また、住宅ローン付きの持ち家には抵当権が設定されるため、債権者の担保権行使によって売却されます。

例外的に、資産価値が非常に低く処分コストの方が高くつく物件(例:老朽化した空き家、田舎の山林など)は、財団から放棄されて自由財産となることがあります。

自由財産の範囲を超えたらどうなる?

自由財産の範囲を超える財産があるときは、超過分は破産財団に組み入れられ、換価(処分)の対象となります。例えば、手元の現金が99万円を超える場合、超過部分は自由財産ではなくなり、破産管財人が債権者への配当に充当します。

なお、自由財産の範囲の拡張によって一部を守れる可能性もあるので、破産管財人との交渉を試みるようにしてください。

どうしても失いたくない財産があるときは?

どうしても失いたくない財産がある人は、自己破産でなく、任意整理や個人再生など、他の債務整理の方法で財産を守ることも検討してください。

任意整理なら、裁判所を通さずに債権者と返済条件について交渉するので、財産の処分は伴いません(ただし、基本的には元本は返済する必要があります)。個人再生は、一定の条件を満たせば、住宅ローン付きの持ち家を維持できる手続きで、借金を最大で5分の1程度まで圧縮することができます。

どうしても守りたい財産がある方は、自己破産が最適な選択肢とは限りません。早い段階で弁護士に相談すれば、他の方法を選択する余地もあります。

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同時廃止と管財事件で自由財産の考え方は変わる?

同時廃止と管財事件で、自由財産についての考え方は同じですが、扱いが異なります。

同時廃止とは、破産者に換価可能な財産がほとんどなく、管財人なしで進める簡易な手続きであり、債権者への配当はありません。これに対し、管財事件とは、一定の財産や収入がある場合に、管財人を選任して調査し、自由財産を超えるものについては債権者に配当するという手続きです。

そして、33万円以上の現金があるときは、原則として管財事件とされます。したがって、同時廃止で自由財産が問題になることはありません。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、自己破産しても手元に残る「自由財産」について解説しました。

自己破産しても、全ての財産を失うわけではありません。生活に必要な現金や家具など、当面の生活に必要なものは、自由財産として法的に守られ、破産手続き後も手元に残すことができます。これは、債務者が再出発するための最低限の生活を保障することが目的です。

とはいえ「自由財産に該当するかどうか」の判断は、財産の内容や裁判所の運用によって異なることがあります。「この財産は残せるのだろうか」という不安がある場合、早めに弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けるべきです。

正しい法律知識を得れば、破産しても再出発することができます。

この解説のポイント
  • 自己破産しても手元に残る「自由財産」は、再出発の糧となる
  • 99万円以下の現金、差押禁止財産、新得財産、破産財団から放棄された財産など
  • 自由財産のみでは生活が困難なときは、範囲の拡張を申し立てることができる

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