★ お問い合わせはこちら

黒字倒産はなぜ起こる?黒字倒産の原因と、回避するための対策を解説

黒字倒産という言葉があります。「黒字」と「倒産」は相反するように聞こえますが、決してそうではありません。黒字だと、企業経営が非常にうまく進んでいると思いがちですが、気付かぬうちに倒産間近の状況になる会社もあるのです。実際に、黒字で倒産してしまう会社は少なくありません(反対に、赤字でも倒産しない企業もあります)。

黒字倒産が起こる理由は、キャッシュフローの悪化が原因です。黒字倒産の原因を知れば、回避する対策を立てることもできます。予想外の倒産に陥らないために、慎重に対応しなければなりません。

今回は、黒字倒産がなぜ起こるのか、その原因と回避策を、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 黒字倒産の原因はキャッシュフローの悪化にあるが、気付かないのは経営者の放漫
  • 黒字倒産を回避する対策は、支払いサイトを先延ばしし、確実な入金を早めること
  • 粉飾決算すると、リスクを正しく把握できず、黒字倒産の危険はさらに拡大する

\お気軽に問い合わせください/

目次(クリックで移動)

黒字倒産とは

まず、黒字倒産とは、その名の通り黒字のまま倒産してしまうこと。つまり、会計上は利益が残っており黒字なのに、短期的に運転資金が不足することによって起こされる会社の倒産のことです。

会計で記録される数字は、必ずしも現在会社の手元に残った現預金を意味しません。ビジネスでは、売掛・買掛といった信用取引がよく行われます。全ての入金が前払いだったり、現金と商品を同時に交換するビジネスモデルならば、黒字倒産は起こりづらいですが、そのような場合ばかりではありません。むしろ、企業間の取引は、支払いが数ヶ月先になるなど、長期スパンのことも多々あります。

ビジネスが順調でも、現預金が十分でないと支払いはできません。運転資金が不足した結果、取引先への支払いが滞ったり、金融機関の融資が返済できなくなったりします。黒字倒産のケースを、事例で紹介します。

A社が、B社から1000万円の商品を受注。契約日が2022年5月30日、商品の納入日が翌月15日で、代金の支払いは、他の取引などとまとめて7月末に支払うという契約内容だったとします。

この取引でA社は1000万円の受注を受けたので、1000万円分の商品を用意しなければなりません。原材料費や外注工賃などは、商品納入までに先払いの必要があります。しかし、実際に商品代金が入るのは2ヶ月後、それまでは自社の資金で耐え凌がねばならず、現預金が少ないとキャッシュフローが悪化、黒字倒産になってしまいます。

上の例は、わかりやすく1つの取引だけ取り出して解説しましたが、実際には同一の会社間に複数の取引があったり、複数の当事者が関わったりなどして複雑化。黒字倒産間近であっても気付かない例もしばしばあります。

会社の破産手続きの流れは、次に解説しています。

黒字倒産の原因は、キャッシュフローの悪化にある

前章の例の通り、黒字倒産は、運転資金に余裕のない会社で発生します。そして、黒字倒産が発生しやすいのは、特に大きな受注を受けたタイミングです。将来に大きな売上が期待できるのに、倒産を余儀なくされるのではやりきれません。黒字倒産がなぜ起こるのか、その原因を理解する必要があります。

黒字倒産が起こる原因は、キャッシュフローの悪化です。キャッシュフローとは、現金の流れのことです。会社内に内部留保された現預金のめぐりが悪くなり、先に準備すべき資金が潤沢でないと、黒字倒産に陥りがちです。多くの発注を受けるほど、事前に資金が必要となります。急激に売上が増加するように、好調なときほど注意を要します。

企業間の取引では、商品を販売してもすぐに代金が受け取れるわけではなく、信用取引によって、その着金は後ろ倒しになることがしばしばあります。その間、必要な出費として、材料費や人件費、さらには金融機関への借入の返済などに資金を回さなければなりません。この流れが悪くなれば、黒字倒産してしまいます。

先程の例でいえば、商品を用意するために、先に「キャッシュ(現金)」を支払わなければならず、手元に「キャッシュ(現金)」がなくなります。

その結果、取引先への債務や金融機関への融資の返済などに必要な「キャッシュ(現金)」を準備できなくなってしまい、黒字倒産に至るわけです。このとき、将来の売上は会計上記録されており、黒字にはなっているのです。

黒字倒産を回避するための対策

気付かないうちに黒字倒産しないために、黒字倒産のプロセスを理解した上で、回避に向けた対策をとる必要があります。そのポイントについて解説します。

キャッシュフロー経営を徹底する

キャッシュフロー経営とは、企業経営において、貸借対照表、損益計算書といった帳簿上の数値だけでなく、キャッシュフローに気を配って経営すべきとする考え方です。キャッシュフロー経営を徹底すれば、現預金の不足にいち早く気づくことができ、黒字倒産を避けられます。

会計上の売上や利益のみを重視することなく、企業の存続が大切であることを理解しましょう。

入金サイクルを早める

将来に予定している売上が、早めに入金されるほど、黒字倒産のリスクは減少します。現預金に余裕のない会社でも、入金サイクルが早まれば支払いに窮することはなくなるからです。

入金を少しでも早めるには、少なくとも入金遅延を避けるべきです。支払期限に入金がなければ、すぐに債務者に連絡し、督促しなければなりません。その前提として、入金を頻繁に確認し、債権管理を正確にしましょう。回収不能のリスクある企業とは、取引を中止することも大切です。

取引先に信用不安を感じたときの対策も参考にしてください。

前払い制とする

必ず商品と交換に現金をもらうか、先に現金をもらうようにすれば、黒字倒産のリスクはなくなります。したがって、起業初期など資金力の乏しいうちは、前払い制を採用するなど、回収サイトができる限り短くなるよう交渉すべきです。

回収サイトが長い事業を行うときには、出資や融資を受けるなど、資金に余裕を持たせなければなりません。また、ビジネスモデルを工夫し、前払いで現預金を作れる事業を増やすことも、黒字倒産を回避する対策となります。

支払いを後ろ倒しにする

入金を早めるだけでなく、自社の支払いを後ろ倒しすることも、黒字倒産の危険を軽減することができます。支払いを遅らせることができれば、まとまった入金が来るまで待つことができます。将来の売上が確定的であることを示せば、材料費や外注工賃などの社外に払う金銭は、遅らせられる場合もあります(社内の人件費の遅れ、つまり、給与遅配は違法です)。

売上が立つ可能性が高いなど、自社の信用が高いほど、仕入先もある程度は支払い交渉に応じてくれるでしょう。後払いや分割払い、手形払い、クレジットカード払いなどの方法を受け入れてもらえれば、支払いサイトを先延ばしできます。

成功確度の高いビジネスは、レベニューシェアで初期コストを下げる解決策もあります。

無駄な在庫を減らす

売れそうだと安易に予測して、先に多くの在庫を仕入れると、いざ売上が予想を下回ったときに黒字倒産となってしまいます。無駄な在庫を抱えても、売れなければ意味がなく、過剰在庫は黒字倒産の危険を高めます。在庫は、帳簿上は資産としてプラスに扱われますが、売れるまではお金を生み出しません。

在庫や投資のかからないビジネスを増やすのも良い対策です。オンラインのみで完結するネットビジネスは無在庫ビジネスの典型例。ECサイトの活用や在庫管理の徹底により、無駄な投資を減らすことを心がけましょう。

資金調達する

資金に余力があれば、黒字倒産は回避できます。先に仕入れ代金などが多くかかったとしても、十分な出資ないし融資を受け、資金が潤沢ならば安心です。成功の可能性が高いビジネスであったり、信用が十分に蓄積されていたりすれば、その事業を回すのに必要な資金を調達することができます。将来性を見込まれれば、資金調達は成功です。

資金調達をするには、金融機関からの借入をする融資の方法と、投資家やVCなどから調達する出資の方法があります。出資も融資も受けられず、多額の資金を要する身の丈に合わないビジネスモデルは、そもそも将来性の低さを疑うべきです。

なお、資金調達に成功すれば、赤字でも倒産することはありません。しかし、赤字を垂れ流し続けるといずれ蓄えは尽きます。また、経営手腕に疑念が生じ、資金を引き上げられてしまえば、ビジネスは頓挫します。

資金調達の方法は、次の解説をご覧ください。

粉飾決算は黒字倒産の危険を拡大する

黒字倒産のよくあるケースは、以上の通り、会計帳簿上は黒字なのに、キャッシュフローが悪化した結果、運転資金がなくなり、資金繰りが回らなくなることによって倒産する例です。これに対し、そもそも黒字ではないのに、黒字に見せかけており、その結果、嘘が発覚して倒産するケースもあります。

それが、粉飾決算による黒字だったケースです。粉飾決算とは、会計上の数字を不正に操作して利益を水増しし、実際は赤字経営なのに黒字を装うことです。その目的は、黒字に見せかけて好調をアピールすることで金融機関からの融資、投資家からの出資を受けたり、上場企業の場合には株価を操縦したりといった悪意があります。

粉飾決算は、黒字のふりに過ぎません。実態は赤字なわけですから、経営が悪化すれば倒産します。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、黒字倒産の原因・理由と、回避する対策を解説しました。

順調に業績を上げて、好調に見えても、倒産してしまうケースはあります。資金繰りが厳しくなり、黒字なのに倒産してしまっては悔しい思いをするでしょう。売上が十分あるなら、倒産してしまう理由は、経営の失敗と言わざるを得ません。キャッシュフローを悪化させないよう、気を配る必要があります。

入出金をきちんとチェックし、黒字倒産に陥らないよう日々の管理を怠らないでください。会社の資金繰り、キャッシュフローに不安な会社は、ぜひ一度弁護士に相談ください。

この解説のポイント
  • 黒字倒産の原因はキャッシュフローの悪化にあるが、気付かないのは経営者の放漫
  • 黒字倒産を回避する対策は、支払いサイトを先延ばしし、確実な入金を早めること
  • 粉飾決算すると、リスクを正しく把握できず、黒字倒産の危険はさらに拡大する

\お気軽に問い合わせください/

目次(クリックで移動)