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入金遅延を催促する方法は?入金が遅延する理由と、その対処法を解説

信頼していた取引先でも、突然に入金を遅延されるケースがあります。入金遅延が起きたとき、どう対処するのが望ましいか、判断に迷うでしょう。継続的な取引関係であるほど、少しの遅延はあきらめて待ってしまいがちですが、甘い対応は、大きなビジネスリスクを生みます。

入金遅延は、たとえ数日の遅れでも、見逃してはなりません。単なる支払いの遅れにとどまらず、大きな不利益の前兆と見るべき場合もあります。入金遅延は、将来の倒産の危険を察知するのに良いきっかけだといえます。あなたの会社への入金の遅延は初めてでも、既に他社の支払いは滞り続けている可能性もあるからです。

そのため、小さな入金遅延を許さず、厳しく対処する姿勢を示さなければなりません。期限を過ぎたらすぐに督促するのが重要なポイントで、その際は記録に残せるよう、メールやチャット、内容証明を送って催促しましょう。

今回は、入金遅延の起こる理由と対処法、催促の方法について、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 入金遅延は、人的ミスによっても発生するが、深刻なケースは資金不足によって起こる
  • 入金遅延を未然に防ぐため、与信管理を徹底し、早期発見したら速やかに催促する
  • 入金遅延で、連鎖倒産してしまわないよう、リスクを最小限にする契約交渉が大切

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目次(クリックで移動)

入金遅延とは

入金遅延とは、取引先の支払うべき金銭の入金が遅れることをいいます。無断で、期限までに入金されないケースもあれば、支払猶予を要請されるケースもあります。

ビジネスの取引の多くは、当事者間で、支払期限を定めます。その合意内容は「支払期限」として契約書に記載されますが、残念ながらその期限を守れず、支払いが遅れる場合があります。期限までに支払わなければ、そこに悪意のある場合のみならず、「払いたいが、お金がなくて払えない」という場合も、入金遅延が生じてしまいます。

つまり、入金遅延は、金銭の支払いを要する契約なら、どのような取引でも、いかなる業種・業態でも起こりうるトラブルです。遅延する可能性ある金銭の性質によって、入金遅延には次の種類があります。

入金遅延を甘く見てはいけません。ビジネス上の取引の多くは継続的な取引であり、少額かつ短期間の入金遅延だと、つい見逃してしまいがちです。長年の取引の実績から、過度な信頼を与えてしまったり、今後の契約を切られないようにと遠慮してしまったりといったことで、入金遅延が放置される例もあります。

しかし、信頼関係を基礎とした取引では、小さなミスや遅れが、決定的な信頼関係の破壊に繋がります。入金遅延は、債権回収の初期段階と見るべきで、厳しい対処を要します。支払期限を過ぎたらすぐ督促状を送るなど、将来の債権回収を見据えて動くべきです。すぐ支払いがされ、遅延が解消されればよいですが、入金遅延が繰り返されると、最終的に債権を回収できず、折角の売上をふいにする危険もあります。入金が遅れれば、自社の資金繰りがうまくいかず、キャッシュフローの悪化が倒産につながるおそれもあります。

些少な遅延も見逃さず、法的措置も辞さない厳しい姿勢を見せるのが大切です。

入金遅延の起こる理由

入金遅延が起こるには、理由があります。そして、具体的な対処法は、理由ごとに異なります。

とはいえ、なぜ入金遅延が起こるのかは、相手の社内事情が関わるため、細かな点まで全て知ることはできません。そのため、入金遅延によくある理由とパターンを知り、取引先がなぜ支払いをしないのか(もしくは、できないのか)ある程度予測して対処するのが重要です。

支払期限、金額を誤認した

入金遅延が起こる理由の1つ目が、支払期限や金額についてミスがあるケースです。

たとえ業績が好調で、資金が十分に足りているとしても、支払期限や金額を勘違いしていて支払いをしていなければ、入金遅延が発生します。ビジネス上の取引では、契約書を作成するケースが多いですが、管理が不十分で紛失してしまったかもしれません。まして、簡易な覚書しかなかったり、口頭での約束であったりすると、勘違いによる入金遅延はよく起こります。

事務処理上の手続きミス

入金遅延が起こる理由の2つ目は、事務処理上の手続きミスがあったケースです。

本来、ビジネスにおいてミスはあってはならないことですが、人間がやることなのでミスはつきもので、全くゼロにすることはできません。小さな規模の会社で、経理の管理が不十分だったために入金が遅れた例がある一方、大きな会社でも、決済までのプロセスが複雑で、途中で手続きがストップしてしまっていた例もあります。

このようなミスなら、入金遅延が生じていると、適切な部署に指摘すれば、すぐ修正される場合がほとんどです。

資金ショートが発生した

最後に、最も重大視すべき入金遅延の理由が、資金ショートです。つまり、取引先の手元に、満足に支払うだけの現金が残されていないのが原因です。倒産を予想して速やかに動かなければならない、緊急事態といってもよいでしょう。

資金ショートの原因は、資金の管理の甘さにあります。資金繰りの管理が不十分だと、目先の売上があると安心し、支払いに充当するだけの資金はあると誤認している会社もあります。しかし、実際は仕入れコスト、人件費や税金に至るまで、支払うべき金銭は多く、全て手元に残せるわけではありません。このような理由で入金遅延が生じたら、速やかに資金繰り表を作成するよう、取引先に指導すべきです。

黒字倒産の原因と対策についても参考にしてください。

入金が遅延したら、すぐにすべき催促の方法

次に、入金遅延が発生したらすぐにすべき対応を、順に解説します。

入金遅延があると、得られるはずだった売上を失います。入金遅延を放置し、取引先が倒産して回収不能になれば、最悪は、自社の業績悪化にも直結し、連鎖倒産に追い込まれる危険もあります。

そのため、入金遅延への対処は、速やかに行うべき、緊急性の高い課題です。

入金遅延の理由を確認する

まず、入金遅延の理由を確認するのが大切です。前章で解説した入金遅延の理由ごとに、その緊急性が異なるからです。可能ならば、取引先に直接確認すべきです。緊急性の低い場合や、単なる手続きミスなら、理由を確認すれば、すぐに遅延を解消してもらえます。

しかし、深刻な入金遅延の場合、他社への支払いも滞っている可能性があります。早く催促しなければ、連絡がつかなくなり、逃げられるかもしれません。倒産間際の会社は、債務の支払いに優先順位を付けています。入金遅延のある金銭を回収したいなら、自社の支払いを後回しにさせないよう、理由を厳しく問い質して、心理的負担をかけ続ける必要があります。

支払期限を過ぎたらすぐ催促する

入金遅延への催促は、「入金が遅れたらすぐ」にする必要があります。

単なる入金忘れ、入金漏れなら、催促すればすぐ払ってもらえるでしょうから、催促は早い方が良いのは当然。そうでなく、深刻な入金遅延だったときにも、期限を過ぎてすぐに催促があることで、「催促の厳しい会社」「入金遅延には断固たる対応をする」というイメージを抱かせ、プレッシャーをかけることができます。

入金遅延の催促は、まずはメール、電話など、通常の連絡方法で行います。このとき、債務を特定し、どのように対処すべきかを取引先に理解させることが重要です。盛り込むべき事項について、メールの文例で説明します。

平素より大変お世話になっております。
株式会社XXXX、経理担当のYYYYでございます。

貴社の当社に対する、20XX年XX月XX日付の売買契約書に基づく代金XXX万円について、支払期限が今月XX日に到来しておりますが、未だに支払いが確認できておりません(※1)。つきましては、ご確認の上、今月XX日までに必ず、当社指定の振込口座までお支払いください(※2)

同日までにお振込みいただけない場合には、やむを得ず訴訟等法的手続きに移行せざるを得ません(※3)。なお、入金と入れ違いであった場合には、失礼いたしました。

  • (※1)
    債務を特定する必要があります。債務の内容は、契約書の日付、題名で特定する方法が適切です。
  • (※2)
    入金遅延が生じた後の最終通告の場合、次の手続きに進まざるを得ない期限を改めて明示します。
  • (※3)
    期限までに入金遅延が解消されなかったとき、法的手続きを行うことを示し、プレッシャーをかけます。

メールや電話では催促に応じてもらえないときは、内容証明で督促します。内容証明は、郵便方法の1つで、送付した内容、到着日などを、郵便局が保管して証拠化してくれます。内容証明で、法的手段もやむなしという姿勢を見せ、遅延の深刻さを気付かせるとともに、今後、訴訟で争う際に、督促を行ったことを示し、時効の進行を止める効果があります。

債権回収を催告する内容証明については、次に解説します。

入金遅延のお詫びに誤魔化されない

入金遅延は、そもそもあってはならないことですが、長く取引してきた相手だと、我慢してしまいがちです。そのような信頼関係につけ込む会社もあり、甘く見られると、自社だけ支払いを遅らされてしまっていることもあります。

入金遅延のお詫びメールを送り、支払いを先延ばししようとする会社もありますが、誤魔化されてはいけません。長年の信頼関係があったり、力関係に差があったりすると、厳しい非難は難しいかもしれません。しかし、入金遅延によって自社が被るリスクをよく把握し、取引関係を長く続けるほど、再発防止を徹底しなければなりません。

利息・遅延損害金を請求する

借り入れた金銭を返済する場合、元本に加えて利息を付すことがあります。利息は、元本に対して利率、借り入れた期間を乗じて計算します。契約書に定めがあればその利率に従いますが、次の通り、利息制限法による限界があり、これを越える約定利率について、超過部分は無効となります。

債権額上限利率
100万円以上年利15%
10万円以上100万円未満年利18%
10万円未満年利20%

また、入金遅延が生じたら、遅延損害金を請求できます。遅延損害金の金額は、支払うべき額(元本+利息)に、利率と、遅延した期間を乗じて算出します。利率を契約で定めた場合にはそれに従い、特に約定のない場合は、民事法定利率(年3%)が適用されます。なお、遅延損害金は利息と同時には生じず、支払期限を経過した後は、遅延損害金のみが発生します。

遅延損害金は、支払いが遅延したとき、遅れたことによる損害を賠償するために追加で払う金銭です。そのため、入金遅延が長引くほど増額されるため、早く払うよう催促する際のプレッシャーとして機能します。

裁判に訴える

入金遅延の際の催促は、まずは交渉から始まり、話し合いでの解決を目指します。しかし、交渉が決裂したり、そもそも連絡がとれなかったりする場合には、訴訟も視野に入れた方がよいでしょう。

なお、入金遅延しているのが少額なときや、短期間の遅れであって遅延損害金が少ないときには、弁護士に依頼して訴訟を起こすのは割に合わないおそれもあります。このとき、通常訴訟より簡便な手続き(少額訴訟支払督促民事調停)を活用することで、プレッシャーを強める方法もあります。

債権回収の裁判手続きのポイントは、次の解説をご覧ください。

入金遅延を未然に防ぐための対策

次に、入金遅延を防ぐ対策について解説します。

入金遅延が発生する前に、未然に防げるに越したことはありません。いざ入金遅延が発生してしまうと、取引先だけでなく自社の倒産リスクが高まるなど、不利益は非常に大きいからです。

入金遅延の兆候を早期に発見する

入金遅延によって発生するリスクを考えると、早期発見のため、兆候を把握しておくのが重要です。例えば、入金遅延の兆候には次のものがあります。

  • 大口の顧客を失った
  • 主要な取引先が倒産した
  • 主力とする事業で大きな失敗をした
  • 製品に事故が発生した
  • 社長がサラ金、闇金から借金している
  • 銀行から仮差押えを受ける

このような兆候があるとき、入金遅延がまだ生じていなくても、既に自転車操業の可能性もあります。すぐに、取引先に説明を求め、理由や根拠を、客観的な情報とともに確認する必要があります。

与信管理を徹底する

入金遅延を防止するには、その前提として取引先の情報を十分に把握する必要があります。取引先の経営状態について、情報が不十分だと、起こりうるリスクを予想できないからです。

そもそも、即時払いが原則であり、後払いはむしろ例外です。相手の支払能力を信用して後払いを許すならば、その信用がどれほどあるのか、管理することが大切。これを「与信管理」といいます。与信管理は、取引先から開示された情報をもとに、現状を把握するのが基本となります。

信用力を精査する際、会社案内や事業内容に関するパンフレットといったものから、決算書、上場企業の場合には有価証券報告書やIR情報などを参考にできます。

無理のない契約内容に変更する

入金遅延を防止するために、無理のない契約内容に変更する必要のある場面もあります。

無理な契約条件を押し付けても、約束通りに支払いがなされなければ意味がありません。入金遅延が生じているのに、当初の内容に固執して、取引先が倒産してしまっては回収不能になってしまいます。契約内容を変更し、取引先の業績が回復しさえすれば、遅れていた分もまとめて支払ってもらうことも期待できます。

ただし、契約内容を変更する場合に、相手の言うなりにならないようにしてください。相手の要請に応じて譲歩するなら、自社に有利な条件も盛り込んでおきましょう。損害賠償条項中途解約条項がない場合には、これを機に、契約書に必ず記載するようにしてください。

入金遅延に対応するときの注意点

最後に、入金遅延への対応について、注意すべきポイントを解説します。

リスケジュールに応じるときは慎重に検討する

支払期限に齟齬があったに過ぎない入金遅延のように、近い将来に支払いが見込まれるなら、リスケジュールすべきです。このとき、新たに契約書を締結したり、支払期限の覚書を作成したりなどし、新たな支払期限を証拠化してください。

ただ、入金遅延のあった取引先から、支払いの延期を要請されても、安易に了承するのは避けるべきです。言うがままに延期に応じると、甘く見られ、支払いの優先度を落とされる危険があります。継続的な取引だと、延期を繰り返しているうちに次の支払期限が来て、未払い額が積み上がってしまうこともあります。

入金遅延のあった取引先からのりスケジュールに応じるなら、度重なる遅延を防止すべく、次の対策を講じてください。

  • 再度の入金遅延に対して厳しいペナルティ(違約金、遅延損害金など)をつける
  • 法人代表者を連帯保証人とする
  • 法人所有の不動産に抵当権を設定する

リスケジュールに応じる取引先は重宝されます。長期的に信頼関係を築けると期待して、融通を効かすこともあるでしょうが、結局回収できなければ意味がありません。資金繰りに窮して自分の首を締めないよう注意してください。

担保を取る方法については、次の解説をご覧ください。

ファクタリング、損金処理を活用する

入金遅延への対処法として、ファクタリングや損金処理など、他の方法を活用する手もあります。つまり、債権を無理に回収するのでなく、入金遅延による自社への損失を最小限に抑える対策です。

ファクタリングとは、売掛金などの債権を、支払期限の到来前に買い取ってもらうサービスで、法的には債権の売買契約を意味します。手数料がかかるため満額回収よりは手に入る金額が減るものの、入金遅延のリスクから免れることができます。

期限が到来し、入金遅延が明らかになった後は、ファクタリングを利用できないので注意を要します。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、取引先からの入金に遅延が生じたときの対処法について解説しました。

入金遅延が起こらないよう、防止策を徹底すれば、ある程度は未然に防げます。それでもなおビジネスは思い通りには進まないもので、取引先の支払いが遅れるケースはどうしてもあります。入金遅延が発生したとき、放置し続ければ更に支払いが滞ってしまいます。そのまま対処しないと、最悪は回収し損ねてしまうこともあります。

起きた入金遅延はともかく、今後の遅延は決して許さないという、毅然とした態度で対処してください。入金遅延の中には、将来の倒産を予期できるケースもあります。対処は、可能な限り速やかに行うべきで、支払い期限を過ぎていたら即座に催促しなければなりません。交渉では遅延を解消できそうにないなら、訴訟を利用して回収する方法に進むべきです。

この解説のポイント
  • 入金遅延は、人的ミスによっても発生するが、深刻なケースは資金不足によって起こる
  • 入金遅延を未然に防ぐため、与信管理を徹底し、早期発見したら速やかに催促する
  • 入金遅延で、連鎖倒産してしまわないよう、リスクを最小限にする契約交渉が大切

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