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【会社側】職場における熱中症対策と予防のポイント4つ

熱中症対策をはじめる時期に、早すぎるということはありません。真夏の暑さが到来するよりも前に、早めに熱中症対策を進めておく必要があります。

会社(使用者)は、社員(労働者)を、健康で安全に働かせる職場を作る義務(安全配慮義務、職場環境配慮義務)があり、職場の労働環境を快適に整えておかなければなりません。

この安全配慮義務、職場環境配慮義務を会社が尽くさなかった結果、社員が熱中症で倒れてしまったとなれば、会社の業績に支障が出ることは当然、労災問題となり、安全配慮義務違反の慰謝料を請求されてもしかたありません。

そこで今回は、安全配慮義務、職場環境配慮義務の内容として求められる、職場の熱中症対策と予防について、企業の人事労務を得意とする弁護士が解説します。

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熱中症対策はいつから始める?

厚生労働省では、職場における熱中症予防対策の一層の推進を図るため、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。

厚生労働省のキャンペーンによれば、熱中症予防対策については4月を「準備期間」、5月~9月を「実施期間」としています。

「5月から熱中症対策が必要なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際の統計を見ても、5月に熱中症となってしまう社員(労働者)が多く発生しています。

春先であっても、暑い日の昼間は夏と変わらないほどの温度になることもあります。熱中症予防対策が十分でない職場では、更に高温多湿となってしまっていることも少なくありません。

例えば、2017年5月の全国における熱中症による救急搬送された人数は、総務省の統計によれば3401人となっています。

厚生労働省の発表によれば、2018年に職場で熱中症にかかった人のうち、死者が2人、労災の報告義務のある4日以上の休業者が1150人にのぼったことが判明しています。

屋内の事務作業でも熱中症対策が必要!

「熱中症対策」、「熱中症予防」というと、屋外で作業をする労働者や、外回り営業の方の話、と思う方も多いのではないでしょうか。業種的にも「建設業」、「配送業(運送業)」といった業種の労働者が、熱中症に多くかかるイメージがあります。

しかし、屋内で事務作業に従事するオフィスワーカーであっても、熱中症対策が不要なわけではありません。

実際、総務省の熱中症についての統計で見ても、次のように、発生場所ごとに人数からすると、屋外作業よりも屋内作業の方が、熱中症による救急搬送車の人数は多いようです。

  • 「道路工事現場、工場、作業所など」・・・223人(6.6%)
  • 「住居」・・・983人(28.9%)

東北大震災以降は、節電傾向が続いており、空調を切っていたり、エアコンの温度を高めに設定していたりと、熱中症が起こりやすい環境となってしまっている会社のオフィスも少なくありませんから、注意が必要です。

したがって、室内作業であっても、十分な熱中症予防、熱中症対策が必要となります。特に、次のような状況が続くと、熱中症が発生しやすくなります。

  • 梅雨の中休み、梅雨明けで、突然熱くなった日
  • 熱帯夜が続くとき
  • 屋外の照り返しの強い場所に長くとどまらなければならないとき

職場の熱中症…会社の責任は?

職場での熱中症が発生したとき、会社としては、どのような責任が問われてしまうのかについて、弁護士が解説します。

職場での熱中症について、会社が対策をしなければならないのは、職場環境を大きく変えることは、社員には困難であり、抜本的な熱中症対策は、会社が行わなければならないからです。

会社(使用者)は、社員(労働者)を、健康で安全な環境で働かせなければならない義務(安全配慮義務、職場環境配慮義務)を負っています。

高温多湿な状況がずっと続き、その中で過酷な労働をさせるような状況にあって、熱中症が多発しているようでは、健康で安全な職場とはいいがたいことでしょう。

そのため、熱中症が発生しても仕方ないような職場環境であった場合、会社は、安全配慮義務違反によって、熱中症にり患してしまった労働者から、慰謝料請求、損害賠償請求を受けるおそれがあります。

職場の熱中症予防対策は?

では、職場における熱中症対策を会社が行わなければ、労働者から責任追及を受けるおそれがあることを理解していただいた上で、職場における熱中症予防対策について、弁護士が解説します。

職場において、労働者が熱中症となってしまうことを防ぐためには、熱中症についての正しい知識を身に着け、適切に対応することが必要となります。

まず、会社が労働者に対する安全配慮義務を尽くすためには、労働者の熱中症に早めに気付き、対策することが必要です。

熱中症の初期症状には、次のような症状があります。

  • 目眩(めまい)
  • 立ち眩み(たちくらみ)
  • 頭痛
  • 一時的に意識が遠のく
  • 嘔吐
  • 倦怠感
  • 腹痛

このような症状の労働者を見かけたら、すぐに涼しいところで休ませ、衣服を緩めて風通しを良くして、身体を冷やして水分補給をさせます。

しかし、自力で涼しいところに退避することができない程悪化していたときは、直ちに医療機関への受診が必要です。

熱中症対策の基本としてまずおさえておいていただきたいのは、次の点です。

  • 屋外作業の場合、日陰や涼しいところで休憩を十分にとれるよう配慮すること
  • 屋内作業の場合であっても、窓際の席での日光を防げるよう配慮すること
  • 温度、湿度の設定を、適切にし、過度に暑さを我慢させないこと
  • こまめに水分補給を行うことを推奨すること
  • 熱中症の基礎知識、予防策について、労働者に教育、指導すること

職場の熱中症対策のために、窓ガラスに貼る日光や高温を防ぐシートや、室温の上昇を抑制できるシートなどを活用する手もあります。

これらの対策にもかかわらず熱中症が重症化してしまったときは、救急車を呼ぶと共に、救急車が来るまでの間も一人きりにしないことが重要です。

日常的に労働者の健康を管理し、健康診断等によってリスクの高い疾患にかかっている労働者を発見したときは就業上の配慮を行うといった手立ても重要です。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、5月になり暑い日が増えてきたところで、会社が行っておかなければならない、職場の熱中症対策、熱中症予防について、弁護士が解説しました。

職場で熱中症が多発するようでは、会社としての安全配慮義務違反の責任を問われるおそれがあります。労働者から思わぬ慰謝料請求を受けてしまわないためにも、職場の熱中症対策には、十分な配慮が必要となります。

職場の熱中症対策、労働者からの職場環境を理由とした慰謝料請求にお悩みの会社経営者の方は、企業の人事労務問題を得意とする弁護士へ、お早めに法律相談ください。

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