人事労務

テレワーク導入時の労務管理のポイントまとめ【会社側】

「テレワーク」という言葉が、新聞やテレビのユースなどで話題となっており、大企業を中心に、テレワークが徐々に導入されています。

「テレワーク」は、「在宅ワーク」とも近しい言葉ですが、特に、情報通信技術(ICT)を活用して、遠隔地で労働をすることに着目した造語です。

テレワークを活用することにより、子育てや介護との両立が必要となる労働者を活用し、ワークライフバランスを図るだけでなく、生産性の向上、コスト削減などにもつながります。

そこで今回は、企業の多くの経営課題の解決策となりうる「テレワーク」について、メリット・デメリットや導入時の労務管理のポイントなどを、企業法務に強い弁護士が解説します。

「リモートワーク」の法律知識まとめ

テレワークとは?

「テレワーク」とは、情報通信技術(ICT)を活用して、時間的、場所的な拘束から解放された、柔軟な働き方のことです。

「働き方改革」によって、長時間労働の是正が叫ばれ、あわせて、柔軟な働き方によって、多様な労働力の活用が重要とされています。少子高齢化、生産力人口の低下を理由とする人手不足への対策にも効果的です。

「テレワーク」には、使用者との間で雇用契約(労働契約)を締結する方法以外に、請負契約などにもとづいて働く個人事業主(フリーランス)の場合もあります。

今回は、前者の雇用型テレワークについて解説します。雇用型テレワークは、他の正社員と同様に、労働基準法(労基法)、労働安全衛生法(労安衛法)の適用によって保護されているため、会社として、労務管理に注意が必要となるからです。

【メリット①】生産性の向上

テレワークによって、会社のオフィス内ではなく外で働くことによって、労働者の生産性を向上させることができます。

自宅でまとめて事務作業をこなすことによって、オフィス内の雑音、電話や会議への参加による仕事の中断、他の同僚との雑談などの機会がなくなり、仕事に集中的に取り組むことができるからです。

【メリット②】非常時の事業継続性

台風や大雨、その他の公共交通機関の遅延などによって、始業時刻通りに会社に出社することができないときにも、テレワークを活用することが解決策となります。

また、日頃から、テレワークを活用することによって、万が一の大震災などの際にも、遠隔地から業務を継続することが可能となります。

会社自体が大地震によって倒壊してしまったとしても、クラウド上に保存されたデータ等を利用しながら、業務を継続できます。

【メリット③】人材確保

テレワークを利用することができると、育児や介護など、どうしても自宅で行わなければならない用事のある人も、労働者として抱えることができるようになります。

これまで労働市場に出ることのなかったこれらの層の中には、「出産・育児のために引退せざるをえなかった主婦層」など、時間と場所の拘束から解放されれば、職務遂行能力は極めて高い人材も埋もれています。

また、ワークライフバランスを重視する労働者も、若年層ほど増えているため、優秀な人材を採用するためにも、テレワークを導入していることが会社の売りの1つになります。

【メリット④】コスト削減

テレワークを活用することで、通勤回数が減るため、通勤手当、交通費などの支給額を減らすことができます。

テレワークを活用するためには、仕事上の資料をデータ化することが必要となるため、ペーパレス化が進み、印刷代、コピー機代も減らせます。

更にテレワークが進み、オフィスの必要性が低くなれば、オフィススペースを縮小することも可能で、賃料、光熱費などのコスト削減にもつながります。

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【メリット⑤】長時間労働リスクの低減

テレワークを適法に導入するためには、正しい労働時間の把握と管理が必須となります。

「自宅で労働させていたから、何時間働いていたかはわからない。」、「気づかないうちに長時間労働となっていた。」というのでは、テレワークを有効活用している会社とはいえません。

テレワークを導入する際に、労働時間の把握と管理を徹底することにより、長時間労働を予防することができ、会社が労働者から、労災、安全配慮義務違反などの責任追及を受けることを回避できます。

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テレワークを導入する手順

次に、会社がテレワークを導入するときの手順について、弁護士が解説します。

近年では、違法な長時間労働に対する社会の目はとても厳しく、違法なブラック企業には、刑事罰が科されたり、企業名を公表されたり、過労死・過労自殺が大々的にニュースになるなど、リスクは非常に高いと言わざるを得ません。

テレワークを有効活用することにより、これらの違法状態の回避、ひいては、労働者からの多額の損害賠償請求などの回避につながります。

就業規則を見直す

テレワークを導入するためには、労使間の労働契約(雇用契約)の内容に、テレワークを含める必要があります。

労働契約(雇用契約)の内容は、労働契約書(雇用契約書)で定められているほか、多くの社員に集団的に適用される事項については、就業規則に定めておくことが一般的です。

テレワークを導入するにあたって、就業規則に定めておいたほうがよい事項は、次のとおりです。

  • 会社が労働者に対して、テレワークを命じることができる旨の規定
  • テレワークの労働時間に関する規定
  • テレワークの賃金制度に関する規定
  • テレワークの通信費、通信機器の費用負担に関する規定
  • テレワークの社内教育、研修に関する規定
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テレワークを全社的に導入するためには、労働者側の理解が必要であり、ルール化しただけでは足りず、そのルールを周知し、教育する必要があります。

テレワークの際に必要となる通信費、通信機器を社員に負担させる場合には、その旨を就業規則に定めておかなければなりません。

そのため、テレワークの実施のために、就業規則とは別に「テレワーク規程」など、新たな規程を作成する会社もあります。

注意ポイント

就業規則に定める場合であっても、テレワーク規程を新たに作成する場合であっても、就業規則作成・届出についての労働基準法(労基法)の手続を遵守する必要があります。

つまり、労働者の過半数代表者(もしくは過半数労働組I)の意見を聴取し、労働基準監督署長への届出を行い、事業場に備え置いて労働者に周知しなければなりません。

これらの就業規則の届出義務は、1つの事業場に10人以上の労働者を常時雇用している会社に生じます。

労働条件を明示する

テレワークについての労働条件を、就業規則などにルールとして定めるだけでなく、労働者に対して周知して、理解を求めなければなりません。

テレワークについての規定を作成した後で、新たに入社した社員に対しては、入社時に提示する労働条件通知書、雇用契約書に、テレワークを命じることがある旨の記載をし、あわせて、就業規則などの写しを交付することがお勧めです。

特に、重要な労働条件である、労働時間、賃金などについては、書面を交付する方法によって労働条件を明示しなければならないとされているので、注意が必要です。

労働時間を管理・把握する

テレワークを導入する場合であっても、会社が労働者に対して、働かせた時間を把握し、時間に応じた残業代(割増賃金)を支払う義務があります。

そのため、テレワークであっても、使用者は、労働者の始業時刻・終業時刻を労働日ごとに把握し、記録する必要があります。

労働時間の把握方法として、始業時刻、終業時刻に、テレワークをする労働者が上司に対してメールをし、労働時間を報告する、という方法が考えられます。

しかし、この方法には、上長の監視の目が届かない、テレワーク特有の次の問題点があります。

  • 終業時刻の報告メールをした後、サービス残業を行い長時間労働となる
  • 終業時間と報告をしている時間に、私用を行い、高額の残業代を請求する

始業時刻、終業時刻の報告だけでなく、業務遂行の状況を逐一監視できるよう、テレワーク用のクラウドサービス、業務管理システムなどを利用することを検討する必要があります。

テレワークと「事業場外みなし労働時間制」の関係は?

テレワークについては、労働基準法に定められる特殊な労働時間制を適用することができます。

つまり、通常の労働時間制「1日8時間、1週40時間」だけでなく、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制、事業場外みなし労働時間制などを、テレワークの対象となる労働者にも適用できます。

このうち、テレワークが、会社の事業場の外で行われることから、「事業場外みなし労働時間制」を適用することも少なくありません。

育児、介護との両立、ワークライフバランスなどを目的としてテレワークが導入されることも多いことから、「フレックスタイム制」との両立も効果的です。

事業場外みなし労働時間制とは?

「事業場外みなし労働時間制」とは、労働者が、事業場外で業務に従事した場合に、「労働時間を算定し難いとき」に導入することができる、一定の時間だけ働いたものとみなす制度のことです(労働基準法38条の2)。

「労働時間を算定し難い」といえる必要があり、労働時間を容易に把握できる場合には、この制度を利用することはできません。

そのため、会社側(使用者側)が労働時間の把握義務を怠り、「事業場外みなし労働時間制」を言い訳にして残業代を支払っていなかった場合には、労働者側から高額の残業代請求を受けるリスクがあります。

テレワークは「労働時間を算定し難い」?

以上のとおり、「労働時間を算定し難い」場合でなければ、「事業場外みなし労働時間制」を利用することができないため、そこで、テレワークが、「労働時間を算定し難い」かどうか、が問題となります。

この点は、導入されているテレワークによる働き方の実態に即して考える必要があります。

厚生労働省のガイドラインによれば、テレワークがで、「事業場外みなし労働時間制」が利用できるのは、次の場合であると説明されています。

  • 業務が自宅で行われること
  • パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態となっていないこと
  • 作業が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

つまり、会社(使用者)と、メールやチャットなどの方法で常に連絡がとれる状態であったり、具体的な指示を受けてその通りに業務を進めている場合には、「事業場外みなし労働時間制」を適用することはできません。

このことは、チャットツールやクラウドサービス、スマホやテレビ会議など、在宅勤務を支える多くのサービスが登場した現代においては、「労働時間を算定し難い」テレワークは、限定的に考えざるを得ないことを意味しています。

「事業場外みなし労働時間制」を活用しないテレワークがお勧め

以上のとおり、テレワークで事業場外みなし労働時間制を採用しようとすると、インターネットから切断することを労働者に認めるなど、業務に支障が生じるおそれがあります。

むしろ、テレワークによるメリットを最大限生かすのであれば、安易に事業場外みなし労働時間制を適用するのではなく、しっかりと労働時間を把握、管理することがお勧めです。

そして、そのためには、電子メールやチャットサービスだけでなく、ウェブ会議システム、クラウドサービスなどのICTを活用し、テレワークであってもオフィスにいるのと同等以上の効率を追求できる体制を整備すべきです。

テレワークを活用するポイントは?

テレワークは、生産性向上、コスト削減など、メリットも多い制度ですが、「利用方法がわからず、なかなか導入が進まない」というご相談を多く受けます。

そこで最後に、テレワークを円滑に導入し、活用するための会社側(企業側)のポイントを、弁護士が解説します。

業務内容を整理する

まず、テレワークを導入するためには、テレワークによって任せる仕事の内容を決める必要があります。

例えば工場作業などでは、会社の事業場に出社しなければ仕事をすることができないため、テレワークはできません。

そのため、労働者の行っている業務を「棚卸し」して、どの業務であればテレワークが可能なのかを検討した上で、テレワークに適した仕事をピックアップする必要があります。

テレワークに適した仕事を、他の仕事から切り出すことに成功すれば、その仕事の効率性を、テレワークを利用することによって向上させることができます。

情報漏洩対策

テレワークでは、パソコンなどのIT機器を、会社外に持ち出す必要があります。会社の機密資料なども、データ化してクラウドに保存し、社外で作業することになります。

必然的に、紛失、盗難や、機密情報が漏洩する危険が高まります。

物理的に情報漏洩を防止するためには、データを持ち出させず遠隔ログインのみによってテレワークを行わせる方法や、従業員の使用するノートPCにセキュリティソフトをインストールする方法が考えられます。

合わせて、従業員のセキュリティ知識を向上させ、情報漏洩を未然に防ぐために、テレワーク対象者に対する教育、研修が必要となります。

ICTツールの活用

テレワークでは、従業員同士の物理的な距離が離れていることから、コミュニケーション不足を招きがちです。

業務上のコミュニケーションが不足すると、業務効率が悪くなったり、ミスを未然に防止することができなくなったりといった弊害が生じます。

テレワークを活用しながらも、遠隔地であってもコミュニケーションを円滑にとることのできる方法が、ウェブ会議システム、チャットツールなどに代表されるICTツールの活用です。

企業規模によって、テレワーク導入のためにかけられる費用は異なりますが、クラウドサービスを活用すれば、より安価、低価格に、ICTツールを利用することができます。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、「働き方改革」の重要論点となっている「長時間労働の是正」や、中小企業の経営課題である「人手不足」などの解決策となりうる、「テレワーク」について、弁護士が解説しました。

「テレワーク」を適切に導入し、有効活用するためには、「労働時間」に対する意識をますます強めていかなければなりません。

「テレワーク」を導入しながら、労働時間を適正に把握しないのでは、テレワークの正しい使い方とはいえません。

会社内の労働時間管理、働き方についてご不安のある会社は、ぜひ一度、企業の労働問題に詳しい弁護士にご相談ください。

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