リクナビやマイナビなど、就活情報ポータルサイトが多数開設され、学生の就職活動の場はネットに移行しつつあります。
履歴書やエントリーシ―トの提出までもポータルサイトでまとめて行う学生が増えました。。一方で、学生のレベル低下も叫ばれる現状、会社側の採用活動も、「人材獲得合戦」の様相が色濃くなっています。
他社に負けずに優秀な人材を獲得するためにも、会社側によるネット就活への参入が不可欠になっていますが、ネット就活は、便利な反面、多くの落とし穴もあります。
今回は、ネット就活のメリットと注意点について、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士が解説します。
「人事労務」の関連記事
ネット就活に参入するメリット
はじめに、会社側(使用者側)が、ネット就活に参入するメリットについて、弁護士が解説します。
学生を対象に、より就職活動をスムーズに進めるためのポータルサイト、サービスが多く登場している以上、良い人材を獲得したいのであれば、会社側もこの流れに対応し、ネット就活に参入しなければなりません。
多くの学生に企業アピールできる
最近では、インターンシップへのエントリーも含めてポータルサイトに登録する学生が急増しています。
逆に、会社側にしてみれば、従来の就活本や企業雑誌以上に、インターネット上で露出を増やすことこそが、多くの学生の目に触れるチャンスを増やすことに繋がります。
会社の規模や知名度がネックで十分に採用活動を行うことができなかった会社でも、ポータルサイトを利用することで多くの学生に自社をアピールできるのが、ネット就活最大のメリットです。
地域を問わず求人できる
採用・公報活動の舞台がネット(オンライン)に移ることで、地域を問わず、全国の学生に自社をアピールすることができます。
さらに、インターンシップや個別面談の勧誘にも利用でき、自社の情報を発信するだけではなく、気になる学生とのコネクションを生み出すチャンスも眠っています。
優秀な学生のプロフィールを入手できる
学生の出身大学や資格、課外活動に関する情報は、ポータルサイトへの登録時に入力され、会社側にも提供されます。
従来型の採用活動では、エントリーしてきた学生の履歴書やエントリーシートを見なければ具体的なプロフィールを手に入れることは困難でした。
しかし、ポータルサイトを利用することで、これらのプロフィールデータを簡単に入手することができ、優秀な学生の発見・獲得に大きく役立ちます。
ネット就活での学生選びの注意点
求人活動をするときに、会社側(使用者側)としては、優秀であり、なおかつ御社の風土に合う学生を選ばなければなりません。
この点で、ネット就活の場合には、従来のオフラインの就職活動とは異なる、特別な注意をしなければならないことがあります。ネット就活が逆にデメリットとならないよう注意してください。
本気の志望とは限らない
ポータルサイトを介したネット就活のデメリットの中でも、とりわけ深刻化しているのが、学生の「バックレ」問題です。
全く志望意欲がないのに、「とりあえず沢山の会社にエントリーだけしておく」、という学生が増え、いざ連絡を取ってもつながらない、内定前に連絡が途絶えてしまう、といった「バックレ」事例が多数報告されています。
ネット就活においては、エントリーしているからといって、本気で御社を志望しているとは限らないのです。
なぜ「バックレ」るのか?
「バックレ」のいちばんの原因は、ネット就活によりエントリーのハードルが下がったことにあります。
業界研究や会社の情報検索を自分でしなくても、簡単に会社のことを知ることができるようになった反面、安易にエントリーする学生が増えてしまった、というのが「バックレ」の原因です。
「バックレ」したことをネット掲示板で自慢するような学生も増えており、「バックレ」をする学生側の心理的ハードルが下がっていることも「バックレ」増加の一因になっています。
他社のエントリー状況をチェック!
「バックレ」学生を掴まされると、会社の採用活動にかけられたコストが台無しになります。「内定辞退」にとどまらず、採用活動のあらゆる段階に「バックレ」の危険が潜んでいます。
何十社、何百社もエントリーをするのは、現実的な就活とはいえません。このような学生は多くの場合、「バックレ」をする可能性があります。
最近は、「内定辞退予備軍」を検出して報告してくれるポータルサイトもあるようです。
学生を選ぶ際には、他社へのエントリー数やエントリー先の会社の傾向など、可能な限りの情報をポータルサイトに問い合わせて、「バックレ」の可能性がないかチェックしましょう。
ネット上の印象がすべてではない
エントリーしてくる学生の能力は、SPIや採用試験を通して、ある程度把握することができます。
しかし、書類や面接だけでは、その学生の人柄を十分に知ることは困難です。また、書類や面接から受ける人柄の印象が、その学生の本当の姿とは限りません。
ネット就活が流行であるとはいえ、面接での選考の重要さは変わりません。また、次で解説するとおり、ネット就活の段階でも、SNSの活用なども1つの手です。
ネット就活でのSNS活用法
採用活動の中では見えてこない人柄や、活動実績など、その学生の本来の姿は、ツイッター
やフェイスブック、インスタグラムなどのSNSの投稿をチェックすることで推し量ることができます。
最近はアカウントにロックをかけている学生もいるようですが、逆に「このSNSは見られていないだろう」と油断して、本音を垂れ流しにしているSNSが見つかることもあります。
学生の人柄や実績を考慮する際には、複数のSNSをチェックして、慎重に判断しましょう。
ネット就活の注意点・デメリット
ネット就活をするにあたっては、メリットばかりに目がいって、思わぬ勘違いをしていることもあります。
便利なネット就活ではありますが、できることには限りがあります。会社側でネット就活に参入するにあたっておちいりがちな落とし穴について、弁護士が解説します。
評判はネットに掲載される
ネットには、会社に対する悪評や誹ぼう・中傷の書き込みが溢れています。検索してみると、御社に対するマイナスの書き込みが見つかるかも知れません。
会社に対する悪い評判は、転載を繰り返し、瞬く間に拡散していきます。
特に、就活セクハラ、圧迫面接、求人詐欺等、就活を巡る労働問題が発生してしまうと、会社の悪評がインターネット上に書き込まれることとなります。
「ブラック」な印象はすぐ広まる
会社の対応の悪さや「ブラック」な社員待遇は、ちょっとしたことでもすぐに書き込まれてしまいます。
書き込みの信憑性は問題になりません。マイナスな書き込みほど、あっという間に広まってしまうので注意が必要です。
学生も企業を「選別」する
忘れてはならないのが、御社が学生を選別するように、学生側も御社を選別しているということです。
ネット就活が普及し、会社間の競争が激化する中で、学生には無数の選択肢が与えらます。就活に真剣に取り組んでいる学生ほど、会社の評判を気にして、ネット掲示板をチェックします。
御社にエントリーしてくる学生は、優秀で熱心な学生であればあるほど、御社の評判を確実にチェックしていると考える必要があります。マイナスな書き込みは御社の採用活動の命取りになる可能性があります。
悪評を書き込まれないための風評対策
ネット就活に参入するにあたって、会社側(使用者側)が気を付けなければならないのが、風評被害対策です。
インターネット上の情報拡散は、非常に簡単で、スピードも速いものです。ネット就活に参入するにあたって、オンライン上に情報を書き込むことで、風評被害に遭いやすくなってしまうことも事実です。
法令を守ること
悪評をネットに書き込まれないためには、とにかく法令をきちんと守って、クリーンな企業イメージを保つことが必要です。
労災や不正会計など、法令違反の事実が報道されれば企業イメージは一気に下がり、いわれのない誹謗・中傷が書き込まれてしまうこともあるので、気をつけましょう。
社員にも気を配ること
意外とこわいのが会社内部の人間による書き込みです。違法な残業を強制したり、セクハラやパワハラが横行しているような職場環境を放置すれば、身内に背中を刺されてしまいかねません。
内部からの書き込みは内情に対する不満が強い分、厳しい内容になることも多々あります。
要らぬマイナスイメージを就活学生に持たれないためにも、社員の扱いには十分に気を配りましょう。
不採用者に誠実にすること
就職活動、求人活動において、最も注意が必要なのが、不採用者の取り扱いです。
最近は、面接でぞんざいに扱ったり、不採用の通知を一切しない「サイレントお祈り」をしたことがもとでトラブルになるケースも増えています。
誠実さを欠いた不採用者への対応は、ネットを介して、そのまま会社のイメージとして学生の間に広がってしまいます。
御社に関心を持ってエントリーしてもらった、という気持ちを忘れずに、応募者一人ひとりに誠実に対応するよう、心掛けましょう。
「人事労務」は、弁護士にお任せください!
今回は、ネット就活のメリットと注意点について、弁護士が解説しました。
ネット就活は学生の就活だけではなく、会社側の採用の可能性も広げました。複数のポータルサイトがサービス競争をしているため、ネット就活はどんどん便利になっています。
一方で、ポータルサイトを通して多くの学生の目に触れることは、それだけ御社の評判に学生側が敏感になることでもあります。ネット就活はデメリットとも隣り合わせであることを意識した採用活動を心掛けることが、ネット就活に参入する企業には求められます。
今回の解説をお読みになり、ネット就活への参入や、インターネット上の御社の評判に不安をお持ちの会社経営者の方は、弁護士にお気軽にご相談ください。
「人事労務」の関連記事