テレワークは、「オフィスに出社して勤務する」という従来の勤務形態とはまったく異なる新しい勤務形態です。そのため従来の勤務形態とは、異なる働き方のルールを定める必要があります。
テレワークについての就業規則を定めていない場合には、導入にあたって新たに定めなければなりません。作成しないままテレワークを導入することとなると、テレワークの対象となる労働者と、「個別に」働き方のルールを合意して契約する必要が生じ、とても煩雑です。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、満員電車が「3密(密閉・密着・密接)」にあたることから、テレワークや在宅勤務が対策として推奨されています。その中、テレワークなどを支援する助成金が導入されていますが、これらの助成金も、テレワークの就業規則を定めていることが受給要件とされています。
そこで今回は、テレワーク・在宅勤務の導入にあたって、就業規則を変更すべきポイントについて、企業法務に詳しい弁護士が解説いたします。
「リモートワーク」の法律知識まとめ
テレワーク・在宅勤務とは
テレワークとは、インターネットなどの情報通信技術を活用して、オフィスから離れた自宅などで時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く勤労形態をいいます。
テレワークは、働く場所の区分によって在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務などに分類することができます。
そのなかで、オフィスに出勤せず自宅で仕事をする在宅勤務は、外出を控え、人との接触を減らすという感染症対策にもっとも効果的として、現在注目されています。
テレワーク・在宅勤務のメリット
テレワーク・在宅勤務には、新型コロナウイルスの情勢下における「感染症対策」というメリット以外にも、会社側、労働者側のいずれにとっても、さまざまなメリットがあります。
厚生労働省が実施した「平成28年度テレワークモデル実証事業」によれば、次のようなメリットがあったとの企業に対するアンケート調査結果が出ています。
- 優秀な人材の確保や雇用継続につながった
- 資料の電子化や業務改善の機会となった
- 通勤費やオフィス維持費を削減できた
- 非常時でも事業を継続でき、早期復旧もしやすかった
- 顧客との連携強化、従業員の連携強化になった
- 離職率が改善し、従業員の定着率向上が図れた
- 企業のブランドやイメージを向上させることができた
会社側のメリットに加え、社員に対するアンケートでも、業務に集中できる、自律・自己管理的な働き方ができるようになった、育児との両立等のメリット、生産性・創造性が向上したといった声があげられています。
社員側のメリットは、ひるがえって企業イメージの向上につながることから、テレワーク・在宅勤務の導入は、労使ともにさまざまなメリットがあります。
テレワーク・在宅勤務の導入に、就業規則の変更が必要となる理由
テレワーク・在宅勤務の導入にあたって、就業規則を変更しなければならないことが、導入にあたっての会社側の大きな負担になっています。
しかし、就業規則を十分に整備せずにテレワーク・在宅勤務をすすめてしまうと、制度のデメリットが顕在化し、かえって会社にとってリスクとなりかねません。
テレワーク・在宅勤務の導入にあたって、会社が就業規則を作成・変更すべき理由と注意点について、弁護士が解説します。
【理由①】テレワーク・在宅勤務の統一的なルールが必要
テレワーク・在宅勤務には、メリットも多いですが、次のようなデメリットもあります。
- テレワーク・在宅勤務の労働者を、適切に労務管理することができない
- テレワーク・在宅勤務中のセキュリティを確保できない
- テレワーク・在宅勤務の労働者の適切な人事評価を実施できない
- テレワーク・在宅勤務中の働き方のルールを、社員ごとに個別に定めなければならない
これらのデメリットは、就業規則を定めることで、テレワーク・在宅勤務の対象となる社員全員に対して、統一的に適用できます。したがって、就業規則の作成は、デメリットを減らす最善の手段です。
働き方のルールは、個別の労働契約で定めることも可能ではありますが、特に、テレワーク・在宅勤務を「会社の制度」として全体的におこなう場合、統一的に適用される就業規則で定めるべきです。
【理由②】実労働時間にあわせた労働時間制度が必要
テレワーク・在宅勤務の場合、実際のどれほどの時間だけ労働をしたかが把握しづらい面があります。しかし、必ずしも、オフィス勤務をする場合と同様の労働時間とする必要はありません。
そこで、就業規則を作成・変更することにより、テレワーク・在宅勤務で実際にはたらく時間にあわせて、柔軟な労働時間制度を導入しておくことが必要となります。オフィスにおける勤務時間と異なる労働時間を適用するときは就業規則にあらかじめ定めておく必要があります。
始業・終業時刻を含めた所定労働時間を柔軟に変更できるようにしておくことで、育児や介護などと両立させたいという従業員の要望に応えることもできます。なお、フレックスタイム制を活用することも効果的です。
ただし、「事業場外労働のみなし労働時間制」を利用する方法も考えられるものの、後述するとおり、その適用が認められないおそれがあります。
【理由③】休憩時間の長さ、取り方の変更が必要
テレワーク・在宅勤務の場合、育児・介護との両立、共働き夫婦間の労働時間の調整などの理由で、労働者側から、休憩時間帯の調整の要望が出されることがあります。
このような需要にあわせて、休憩時間の長さやとり方を変更することも、就業規則を作成・変更して定めておく必要があります。
また、休憩時間は、原則として全社員に一斉に付与しなければならないことが労働基準法上のルールとされています。テレワーク・在宅勤務の対象となる労働者について、このルールを変更し、休憩時間を各社員に個別にあたえるためには、労使協定を作成して適用を除外しておく必要があります。
なお、一斉付与の原則が適用されるのは、労働時間が6時間超の場合の45分休憩、8時間超の場合の60分休憩についてであり、それ以外に休憩を付与する場合には、一斉に付与する必要はありません。
【理由④】社員の処遇の変更が必要
テレワーク・在宅勤務では、上司や同僚の目の届くところで業務を行っているわけではありません。そのため、勤務状況を把握することが難しく、人事評価を適切におこない社員の処遇に反映することがとても難しくなります。
特に、これまで「労働時間の長さ」によって社員の貢献を計ってきた会社では、考え方を変える必要があります。
テレワーク・在宅勤務をおこなう従業員の労働意欲を高めるためにも、「時間で評価」する考え方から「成果で評価」する考え方へと、会社も意識変更が大切です。こうした評価の変更に伴い、賃金制度や評価方法を変える場合、就業規則を変更する必要があります。
【理由⑤】助成金取得の要件となる
テレワーク・在宅勤務を導入するためには、会社に一定のコストがかかります。在宅勤務・テレワークのための機器の購入費、通信費の負担のほか、ここで解説しているように就業規則の変更など、制度導入のための費用がかかります。
テレワーク・在宅勤務の導入時に、これらのコストについて助成金を活用することができます。活用できる助成金には、(公財)東京しごと財団の助成する「事業継続緊急対策(テレワーク)事業」(東京都のみ)、「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」があります。
これらの助成金を活用するためには、テレワーク規程が必要となります。国の助成金では、テレワーク規程を作成する費用についても助成の対象とされています。
テレワーク・在宅勤務の導入で、就業規則の変更すべき条項とポイント
テレワーク・在宅勤務を導入するときには、就業規則を作成・変更する必要があることはおわかりいただけたと思います。
では、実際に就業規則やテレワーク規程い定めておくべきことは、どのような事項でしょうか。就業規則に定めるべき事項のうち主なものは次のとおりです。
- 在宅勤務を命じることに関する規定(テレワーク勤務の定義、対象者等)
- 在宅勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
- オフィス勤務の場合と異なる場合の処遇、賃金に関する規定
- 通信費などの負担に関する規定
テレワーク・在宅勤務を導入するときに必要となる条項はかなり多いため、就業規則自体に定めるのではなく、「テレワーク規程」などの別規程を作成することがお勧めです。
この場合は、就業規則に、「従業員のテレワーク勤務に関する事項は、この規則に定めるもののほか、別に定めるところによる」といった委任規定を定める必要があります。
では次に、テレワーク規程に定めておくべき主要な条項について、詳しく解説します。条項例の書式・ひな形もお示ししますので、参考にしてください。
「テレワーク適用対象者」の条項
就業規則・テレワーク規程の最初には、テレワーク・在宅勤務の対象となる労働者について定める必要があります。
条項例としては以下のような記載が考えられます。
在宅勤務の対象者は、就業規則第○条に規定する従業員であって次の各号の全てを満たす者とする。
(1)在宅勤務を希望する者(会社が在宅勤務を命じ、これに応じた者を含む。)
(2)自宅の執務環境、セキュリティ環境、家族の理解のいずれも適正と認められる者
全社員を在宅勤務・テレワークの対象者とすることも考えられますが、一方で、在宅勤務・テレワークを希望されてしまうと会社の業務に支障のある社員もいる可能性があります。
テレワークの適用を「許可制」にしたいときは、許可申請の期限、許可をする人(社長・人事部長など)などを、あわせて規程しておいてください。
テレワークの適用される期間を限定するときや、対象者に制限を加える方法も考えられます。対象者を限定するときの条項例は、例えば次のとおりです。
1. 在宅勤務の対象者は、就業規則第○条に規定する従業員であって次の各号の全てを満たす者のうち、会社が在宅勤務をおこなうことが適切であると認めた者とする。ただし、在宅勤務が可能な期間は、20XX年XX月XX日から20XX年XX月XX日に限定されるものとする。
(1)在宅勤務を希望する者(会社が在宅勤務を命じ、これに応じた者を含む。)
(2)自宅の執務環境、セキュリティ環境、家族の理解のいずれも適正と認められる者
(3)勤続3年以上で、自宅での業務遂行に支障がないと会社が認めた者
2. 在宅勤務を希望する者は、会社の指定する書式にしたがって、在宅勤務開始日の1か月前までに人事部長の許可を得るものとする。
「時間外労働・休日労働」の条項
テレワーク・在宅勤務においても、会社は個々の労働者の労働時間を把握する義務があります。
したがって、始業時間、終業時間、休憩時間を電子メールで報告させたり、会社のサーバーへのアクセスにより記録するなど、労働時間を把握するための手段を講じるべきです。これらの報告方法などについても就業規則に定めておく必要があります。
労働時間を把握した上で、テレワークや在宅勤務であっても、残業代(割増賃金)を支払う必要があります。
在宅勤務を行う者は、労働の開始時と終了時、休憩時間の開始時と終了時に、ぞれぞれ所属長に電子メールを送信することにより、労働時間を報告するものとする。
テレワーク・在宅勤務をおこなう労働者には残業をさせないこととしたり、許可制としたりすることもできます。このような規定をもうけ、適切に運用しておけば、無許可、無届けで在宅で残業をしたと主張されても、残業代(割増賃金)を支払う義務はありません。
在宅勤務者が時間外労働、休日労働及び深夜労働をする場合は、所定の手続を経て所属長の許可を受けなければならない。
参考
テレワーク・在宅勤務の残業代を抑制するための方法として「固定残業代」を導入する方法もあります。
しかし「固定残業代」の制度を有効に導入するためには、残業代の金額、対象となる残業時間を明記する必要があるうえ、実際の残業時間が固定残業代の対象残業時間を上回る場合はその差額を追加で支給しなければなりません。
実際の残業時間が固定残業代を下回る場合でも、固定残業代分は支払わなければならないこと、残業時間の管理は結局必要となることからすると、新たに導入する金銭的なメリットは小さいです。
「事業場外みなし労働時間制」の条項
テレワーク・在宅勤務の場合に、残業時間を抑制するための方法として「事業場外みなし労働時間制」の導入が検討されます。
テレワーク・在宅勤務であっても、通達にかかげられた次の要件を満たす場合には、「事業場外みなし労働時間制」の適用の対象となります。
平成20年7月28日基発第0728001号① 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
② 当該情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
③ 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
ただし、この要件を満たすためには、「情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であること」が必要となります。つまり、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの通信機器から離れたり、通信回線を切断したりすることが認められていない場合には、この要件を満たしません。
テレワーク・在宅勤務において、チャットで仕事の指示を進める場合などのように、常時通信可能な情報通信機器を利用して勤務している場合には、「事業場外みなし労働時間制」を使うことが適切でないケースも多いと考えます。
「通信機器・通信料の負担」の条項
テレワーク・在宅勤務では、情報通信機器、通信費(電話料金、インターネット回線料金)などは、在宅勤務者またはその同居家族が負担している場合があります。
労働基準法89条5号により「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合」は、就業規則に定めなければならないため、これらテレワークなどに必要となる費用負担についての条項が必要となります。条項例は、例えば次のようなものです。
1. 会社が貸与する情報通信機器を利用した場合の通信費は会社負担とする。
2. 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
3. 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他の会社が認めた費用は会社負担とする。
4. その他の費用は在宅勤務者の負担とする。
テレワーク・在宅勤務をおこなうことによって社員の費用負担が増えてしまう場合には、「在宅勤務手当」などの手当を支給する方法も考えられます。
ただし、この場合には、在宅勤務手当も残業代(割増賃金)の算出の際、算定基礎に加えられることとなりますので、割増賃金の算定基礎に関する規定も変更する必要があります。
「テレワーク中の健康管理」の条項
テレワーク・在宅勤務をおこなう社員に対しても、会社はその社員の健康を確保する必要があります。
特に過重労働対策、メンタルヘルス対策をとるほか、自宅の作業環境についても適切な助言、指導を行う必要があります。これらの対策をおこなわなかった場合、「安全配慮義務違反」の責任を追及されるおそれがあります。
テレワーク中の健康管理について、条項例は次のとおりです。
1. 会社は、在宅勤務者の安全衛生の確保及び改善を図るため必要な措置を講ずる。
2. 在宅勤務者は、安全衛生に関する法令等を遵守し、会社と協力して労働災害の防止に努めなければならない。
在宅勤務中であっても、業務を原因として被った負傷、疾病、または死亡については業務災害として労災保険の支給対象となります。テレワーク・在宅勤務中の労災については、次の解説もごらんください。
「情報の取扱い、セキュリティ」の条項
テレワークや在宅勤務では、オフィス外から会社の情報にアクセスする勤労形態です。そのため、会社内部での勤務に比べて情報漏えいのリスクは格段に大きくなります。したがって、「情報の取扱い、セキュリティ」の条項は、オフィス勤務にもまして、より厳しく記載しておく必要があります。
セキュリティ関連については、情報技術の進展にともない必要な条項は日進月歩で変化します。特に、BYOD(私物端末の利用)をおこなう場合には、就業規則、テレワーク規程のほかに、セキュリティガイドライン、BYOD規程などの関連規程もあわせて整備することが重要です。
1. 社員は、セキュリティガイドラインを遵守し、会社の情報漏えいを防止する対策に努めるものとする。
2. 会社は、在宅勤務にあたり、在宅勤務者が所有する情報通信機器を業務に使用させることができる。この場合、当該機器およびその使用の要件については、別途定めるBYOD規程を満たしたものに限る。
あわせて、秘密保持については秘密保持規定を定めたり、秘密保持契約書を交わす方法も検討してください。
参考
秘密保持契約書では、たとえば、在宅勤務で使用している端末には、作業に必要な一時的な保存を除いて会社情報の保存を禁止し、作業終了時や一日の業務終了時には、作業データを削除することを義務づけることが考えられます。
また、USBなどの外部記憶媒体へのコピーや印刷を禁止する措置を明記します。
あわせて、ルールに違反した場合には懲戒処分や損害賠償など、厳しい処分の対象となることを記載しておくべきです。これらの禁止事項について、テレワークや在宅勤務の開始前に対象者に周知し、理解させておくべきでしょう。
「社員への教育・研修」の条項
最後に、テレワークや在宅勤務では、オフィスに出社しないためOJTによる教育が困難です。
そのため、通常の勤務よりも社内教育、研修制度を拡充する必要があります。在宅勤務者等に対して社内教育に関し、特別の定めをする場合にも、そのことを就業規則に定める必要があります。
条項例は、例えば次のとおりです。
1. 会社は、在宅勤務者に対して、必要な教育訓練を行う。
2. 在宅勤務者は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合には、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受けなければならない。
就業規則を変更するときの手続き・方法と、注意点
テレワーク・在宅勤務を導入するときには、会社として就業規則の作成・変更が必要な理由をご理解いただけたでしょうか。
今回解説した条項例を参考として、規則の案を作成していただいたら、次に、就業規則を作成・変更するときの手続きを順に実行する必要があります。そこで最後に、就業規則を作成・変更するときの手続き・方法と、注意点について弁護士が解説します。
従業員の過半数代表者の意見聴取
テレワーク規程を作成したり、テレワーク・在宅勤務に関する就業規則の変更をおこなう場合にも、通常の就業規則の作成・変更と同様、過半数代表者の選定と意見聴取がが必要です。
過半数代表者とは、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」(労働基準法第90条)です。
過半数代表者の選定は、就業規則の作成・変更について、労働者の意見をきちんと聴取し、それを確認することが目的です。
過半数代表者の選定は、民主的な手続きにより社員の意思を反映して決定しなければならず、会社が一方的に決めてはなりません。また、テレワーク規程を作成する際には、従来の過半数代表者を流用するのではなく「テレワーク規程の意見聴取のため」という目的を命じして、選定しなおさなければなりません。
過半数代表者が、実際には、管理監督者であった場合や使用者の意向に沿って選出した者である場合、過半数代表者の選考手続に瑕疵があったとされ就業規則の変更自体が無効となる可能性があります。
労働基準監督署への届出
従業員の過半数代表者を選定したら、その者の意見聴取を行います。意見を聴く必要はありますが、それにしたがわなければならないわけではありません。
意見聴取が済んだら、過半数代表者の意見を記した書面を添付し、管轄の労働基準監督署(労基署)への届出をおこないます。
就業規則の変更やその手続は、労務リスクが高く、弁護士などの専門家へ依頼することをお勧めいたします。
労働条件の不利益変更に注意
労働条件の不利益変更とは、労働条件を労働者に不利益な方向に変更することをいいます。
労働契約法では、労働条件の変更は原則として「合意」によることとされており、労働者の合意なしには、労働条件を不利益に変更することは認められていません。例外的に、労働条件の不利益変更が認められる場合として、次の2つの要件が必要となります。
- 変更後の就業規則を労働者に周知させたこと
- 就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであること
したがって、テレワーク・在宅勤務の導入で、すでに存在する就業規則を変更するときは、規定された労働条件が労働者にとって不利益変更になっていないかどうか、注意が必要です。
なお、テレワーク・在宅勤務で変更される労働条件のなかに、不利益変更がある場合には、上記の事情に照らして合理的といえるかも検討する必要があります。
「企業法務」は、弁護士にお任せください!
今回は、テレワーク・在宅勤務を導入するとき、就業規則を作成・変更する必要性があることと、テレワーク規程などをさk製するときのポイントについて、弁護士が解説しました。
働き方改革・新型コロナウイルスの影響で、急速な勢いでテレワーク・在宅勤務が増加しています。今後は、「全社員がオフィスに出社して働く」ことはむしろ例外となるかもしれません。
会社として適切な労務管理をおこなうため、作成・変更すべき就業規則のポイントを理解し、新しい働き方に順応する必要があります。会社は、社員の働き方のルールを定め、管理しなければなりません。しかし一方で、新しい働き方を導入する際には、労働者の共感を得られるルールをつくり、理解を求めることが必要です。
特に、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応策としての在宅勤務・テレワークの導入では、緊急避難的にほぼ全社的な導入を迫られるため、迅速な対応が必要です。
テレワーク・在宅勤務にまつわる法律問題や、会社としての適切な対応方法にお悩みの際は、企業法務に詳しい弁護士にぜひお早めにご相談ください。
「リモートワーク」の法律知識まとめ