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ウェブ上の情報を「削除請求」依頼する5つのリスクを、弁護士が解説!

インターネット上で、違法な情報発信をされた結果、誹謗中傷、名誉棄損、風評などの被害を受けたとき、一番に考えるべき対処法は、「削除請求」です。

しかし、メリットばかりに見える「削除請求」にも、デメリット、リスクがたくさん潜んでいます。「削除成功率96%!!」などの誇大広告を信じ、高額の報酬を支払うことはオススメできません。

ウェブ上の情報の「削除請求」を弁護士に依頼するときは、注意点とリスクをきちんと理解しましょう。

今回は、「削除請求」を依頼する経営者の方が陥りがちな、弁護士に依頼するときの注意点、リスクを、IT法務を得意とする弁護士が解説します。

目次(クリックで移動)

1. サイト全体を削除できない

ネットトラブルについてご相談いただく方の中には、削除請求をすると、サイト全てを削除することが可能だと考えている方も少なくありません。

しかし、弁護士が、法律にしたがって行う「削除請求」の対象となるのは、権利侵害(違法性)の存在する部分のみです。

例えば、ブログによって御社の悪口、批判、風評が記載されていたケースでは、ブログ全体を削除することはできず、「○月○日の投稿」、「○番目のコメント」を削除できるに過ぎません。

削除請求の対象が一部に限定される理由は、情報発信を行った側にも、表現の自由があるからです。

2. スレッド丸ごと消えるとは限らない

さきほどの解説と同様に、「2ちゃんねる」などの匿名掲示板で誹謗中傷、名誉棄損、風評トラブルにあった場合であっても、そのスレッド丸ごと削除できる場合は、限定的なケースです。

例えば、あるスレッドの中で、事実ではない悪意ある投稿がされていた場合であっても、そのレス番号を特定して削除請求できるに過ぎません。

例外的に、「スレッドタイトル」若しくは「1番目のレス」に、御社の権利侵害となる内容が記載されている場合には、スレッド全体を削除できる可能性があります。

3. 同じ内容のコピーが複数存在する

ネットトラブルに早急に対処すべき理由の1つとして、ネット上の情報はコピーが容易であり、拡散スピードが非常に速いことが挙げられます。

そして、ネット上の情報はコピーが容易であるため、権利侵害の投稿を発見した場合、同じ内容のコピーが複数存在するケースが大半です。

このことを理解しておかなければ、「削除請求」を依頼した後で、「まだ消えていない!」と悩むこととなります。侵害情報のコピーに注意するため、次の点を理解してください。

3.1. URLを必ず特定する

弁護士に「削除請求」をするときには、必ずURLを特定して依頼するようにします。

同じURLのサイトは存在しないため、URLを特定しておけば、後から新しいサイトを発見したときに、サイトの削除に失敗していたのか、それとも同じ内容のコピーなのかを、簡単に判別することができます。

3.2. コピーが消えない原因

URLを特定した上で、同じ内容のコピーがなかなかウェブ上から姿を消さない場合には、次のような原因があることを理解し、対策をしましょう。

削除請求を依頼したにもかかわらず同じ内容のコピーが削除されないリスクを回避するためにも、削除請求を依頼する際には、削除対象をリストにして確認することが重要です。

3.2.1. 使用するパソコンのキャッシュ

ご使用のパソコンのキャッシュが原因で、削除請求を依頼したにもかかわらず、一時的に削除ができていないように見えることがあります。

つまり、以前に一度読み込んだ情報を、素早く見ることができるよう、パソコンには「キャッシュ」という情報が記録されています。

この場合の対処法は、「リロード」することです。つまり、パソコンの「Shift」∔「F5」を押すことで、情報を新しくすることができる場合があります。

3.2.2. 検索サイト(Google)のキャッシュ

2番目の原因は、検索サイト(Google)のキャッシュによるものです。

個別サイトを削除しても、検索結果にすぐには反映されません。というのも、Googleもまた、表示速度を早くするためキャッシュを保存しているからです。

古い情報を検索結果に表示させないために、検索サイトのキャッシュの削除依頼をする方法によって対応可能です。

3.2.3. 見えていなかった他サイトの上昇

URLが異なる他サイトが存在していたが、検索順位が劣後していたため見えていなかったことが原因で、1つ削除しても次のサイトが出現してしまうというケースもあります。

特に、「2ちゃんねる」等の有名サイトの場合、多くのコピーサイト(ミラーサイト)が存在するため、URLが異なる場合には、それぞれ別途に削除請求の手続が必要となります。

ただ、本体のサイトが削除されている場合には、話し合い(任意交渉)による削除請求に応じる管理人も少なくありません。

4. 削除できない可能性がある

残念ながら、どれほどIT法務を熟知した弁護士であっても、削除請求ができないケースが一定数あります。中には、技術的に、物理的に困難なケースもあります。

法的に考えて「権利侵害」がないと判断され、仮処分でも結果として削除できないリスクもあります。

このように「削除できない可能性」が一定程度あることから、「削除請求」の依頼については、「成功報酬制」を採用しているケースも少なくありません。

 参考 

「削除成功の可能性は何%か?」という法律相談を受けることがありますが、そもそも確率でご説明できる性質のものではありません。

ウェブ対策業者の広告などでは「削除成功確率98%!」などと謳っているものもありますが、業者が削除請求を代行すること自体、弁護士法違反の可能性が高いです。

5. 炎上の可能性がある

最後に、「削除請求」のリスクは、法律上のものだけではありません。

法律的には十分な「権利侵害」があり、仮処分で問題なく削除が成功できる場合であっても、「炎上」リスクに注意する必要があります。

発信者によっては、削除請求を送ることによって、更に火をつけてしまうケースも少なくありません。

削除請求をして、発信者の怒りを買ってしまった結果、更なる書込み、風評トラブルを招いてしまう例もあります。

6. まとめ

ウェブ上で名誉棄損、誹謗中傷、風評などのトラブルに見舞われたとき、「削除請求」で解決できるケースも多いですが、弁護士にご依頼いただく時には「リスク説明」をきちんと行います。

「削除請求」には、メリットばかりではなく、デメリットやリスクも当然伴うからです。

インターネット上の悪質な情報発信でお悩みの経営者の方は、IT法務を得意とする弁護士へ、お早目に法律相談ください。

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