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取締役の選任の手続きと、その具体的な方法、注意点について解説

取締役は、企業経営を担う大切なポジションで、役員ともいいます。取締役の選任は、株主総会の決議によって行い、商業登記に表示しなければなりません。取締役の重要性からして、選任の手続きには、法律上の厳格なルールが定められています。

「所有と経営の分離」というルールにより、会社というのは株主が所有するのが原則ですが、その経営は、取締役が株主からの委任を受けて行います。事業を拡大するために、会社にとって重要な人物を取締役に追加し、業務を担当させることは不可欠です。取締役の専任の手続きは、新任の場合はもちろん、再任したり、役員を追加、変更したりするときも必要です。

取締役に選任すれば、専門的な知識を活かし、経営層として活躍をしてもらえます。また、対価として報酬を与えることにより、企業経営に対する責任を生じさせることができます。

今回は、取締役の専任の手続きと、その具体的な方法、注意点などを、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 取締役を選任する手続きは、株主総会決議、就任の承諾、登記申請という流れ
  • 取締役を選任する際、少数派株主の保護などの目的で特殊な選任方法がある
  • 取締役を選任する手続きで、その員数、任期、欠格事由に違反しないよう注意する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業法務・顧問弁護士サービスを得意とし、使用者側の人事労務の経験が豊富。

会社側の立場で、トラブル解決・リスク対策のサービスを提供。予防法務を中心に、会社側でスピーディに対応します。

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取締役を選任する手続きの流れ

株式会社は必ず取締役を選任する必要があります。そして、取締役の人数は、少なくとも取締役会設置会社なら3名、取締役会非設置会社なら1名と会社法に規定されおり、この人数以上を選任しなければなりません。

まず、取締役の選任の手続きについて、具体的な手順を解説します。取締役を選任する手続きには、以下の株主総会による通常の方法と、特殊な選任方法とがあります。

株主総会決議

取締役の選任は、株主総会の決議によって行います。

この際の株主総会における取締役の選任の決議は、普通決議です。つまり、総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の過半数の賛成をもって決議することを要件とします。

この決議要件は、定款に定めることで変更できます。

ただし、選任決議の重要性から、その決議要件の変更は、過半数を上回る割合への引き上げに限られます。また、定足数の変更も、総株主の議決権の3分の1以上の出席を要することが求められます。

就任の承諾

株主総会の決議は、会社の判断として、取締役を選ぶことに過ぎません。そのため、選任決議を行った後、選ばれた人が取締役になることを承諾しなければなりません。このことを「就任の承諾」といいます。就任の承諾のために、就任承諾書を作成し、取締役となる人に押印してもらう手続きを要します。就任承諾書は、会社設立の登記をする際の添付書類として必要です(なお、定款に設立時の取締役の定めがあるときは、就任承諾書は不要です)。

取締役とは、株主から経営を委任されるポジションであり、会社と取締役との関係は委任契約関係。なので、取締役は、会社との間で、委任契約を締結する必要があります。

業務委託契約書の注意点についても参考にしてください。

役員就任登記の申請

以上の手続きによって取締役が就任したら、その旨を法人登記に反映する必要があります。いわゆる「役員就任登記」です。具体的には、本店所在地を管轄する法務局へ、取締役の就任の日から2週間以内に、就任登記の申請を行います。

登記申請では、株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、取締役会議事録などが添付資料となります(代理人による申請の場合、委任状も必要です)。登録免許税として、1万円の収入印紙を貼付します。また、代表取締役の選任の場合には、就任承諾書に実印を押し、取締役となる人の印鑑証明書が必要となります。

なお、商業登記規則の改正により、平成27年2月より取締役の変更登記申請の際は、次の本人確認書類を添付しなければなりません。

  • 住民票の写し
  • 運転免許証の写し
  • 個人番号カードの写し

※ いずれも表面に、原本に相違ない旨を記載し、署名又は記名押印する。

取締役の特殊な選任方法

以上の原則的な選任の手続きに対して、特殊な選任の方法もあります。

特殊な選任方法は、少数派の保護、出資者の利益の確保や緊急時の対応といった目的から設けられたものです。

累積投票

累積投票による取締役の選任は、少数派の株主を保護するため設けられた手続きです。累積投票によれば、多数派でない株主も取締役を選任でき、多数派任せでない、積極的な経営参加を促せます。

原則的な手続きは、複数の取締役を選任する場合も、株式1株につき1議決権とし、1人ずつ順番に決めます。

この方法は、多数派の株主の意見が通りやすくなり、その結果、取締役全員が、多数派の意見の反映された選任となってしまいます。累積投票は、この不都合を回避し、少数派株主にも取締役選任の機会を保障します。

累積投票では、各株主の1株に対し、選任される取締役の数と同数の議決権が与えられ、その議決権の全部を1人に投票しても、分割して投票してもよいこととなっています。これにより、少数派の株主でも、自身の議決権を全て同じ候補者に投票すれば、多数派の株主の選任する取締役より多数の票を得る可能性が生まれることとなります。

なお、定款で、累積投票の制度を採用しないと定めることも可能です。

種類株主総会による選任

種類株主総会は、種類株式を発行する会社で行われる、種類株主のみが参加する株主総会のこと。非公開会社では、定款の定めによって、取締役の選任について内容の異なる種類の株式を発行できます。

これによって、その種類株式を有する株主の議決でのみ、一定の取締役を選任できるようにします。この方法は、種類株式を保有する者だけの意見を反映した役員を選任することが可能となることを意味します。重要な出資者の意見のみを反映した取締役を就任させたいとき、例えば、VCに取締役を1名選任させる権利を与えるケースなどで活用されます。

種類株主総会で選任された取締役を解任できるのも、種類株主総会の決議よってのみとなります。

補欠取締役

株主総会における選任手続きにおいて、通常の取締役とは別に、補欠としての取締役を選任する手続きもあります(会社法329条3項)。法律用語で「補欠取締役」と呼ぶもので、取締役の欠員によって業務に支障が生じるのを防ぐ目的があります。取締役が、辞任や死亡などで欠員となると、企業経営が進まなくなります。役員の員数が不足するとき、欠員のまま新たに選任しないと100万円以下の過料の制裁を下されるおそれもあり(会社法976条22号)、罰則を回避する目的もあります。

補欠取締役の選任の効力は、その決議の後、最初に開催される定時株主総会の開始の時までが原則(会社規則96条3項)、定款で任期を伸長すると定めることもできます。

一時取締役

取締役に欠員がでた後で、一時的にその職務を行う者を選任する手続きもあります(会社法346条2項)。法律用語で「一時取締役」と呼ぶもので、利害関係人の申し立てにより、裁判所が必要と認めるときに選任する手続きです。株主総会ではなく、裁判所が選任するものであり、一時取締役の報酬もまた、裁判所の判断で決定されます(同3項)。

任期満了や辞任によって取締役に欠員が出たら、新たに選任されるまでは退任した取締役が職務を継続します。

しかし、役員は重要なポジションなので、辞めることとなった人にそのまま任せておくのは不都合なケースもあります。解任や死亡によって辞める場合のようなケースでは、一時取締役の選任を裁判所に申し立てるのが適切です。

取締役を選任するときの注意点

最後に、取締役を選任するときに注意しておきたいポイントを解説します。

取締役の員数

旧商法では、株式会社は取締役を3名以上選任しなければならないと定められていました。しかし現在はこのルールは撤廃。取締役設置会社なら3名以上、取締役非設置会社なら1名以上とされています。つまり、取締役非設置会社ならば、取締役は1名のみ(役員は社長のみ)という形でも構いません。

なお、会社法に反しない限り、取締役の員数の上限、下限を定款で定めることも可能です。選任数を変更するときは、員数の制限がないか、定款を確認してください。定款の上限、下限に反する選任だと、あわせて定款変更の手続きを要します。

取締役の任期

取締役の任期は、原則として、選任から2年です(正確には、「2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と会社法に定められています)。任期が到来すると、取締役は退任となり、再任されない限り、取締役としての業務を遂行することはできません。

取締役の任期は、定款または株主総会の決議で変更でき、非公開会社なら最長10年まで延長できます(公開会社は、任期の短縮はできますが、延長はできません)。

取締役の増員では、任期を「既に選任された取締役の残存任期と同一」とし、再任の時期を合わせるケースがよくあります。

取締役の任期を長くすると、頻繁に再任決議をする手間が省けるメリットがある一方、不都合な取締役を任期満了によって退任させることができないデメリットがあります。

社内の活性化と、必要な人員の選任のために、任期を1年に短縮するといったケースもあります。いずれにせよ、会社の目的に合わせた適切な任期を選択しなければなりません。

取締役の欠格事由

一定の事由に該当する者は、取締役の資格を認めらず、取締役に就任できません。このことを、取締役の欠格事由といいます。欠格事由は、会社法に次の通り定められています。

  • 法人(会社法331条1項1号)
    取締役は、自然人でなければならず、法人は就任できません。会社にとって、誰が経営の責任を持つかが重要であり、法人を役員にしてしまうと、責任の所在が不明確になるからです。
  • 一定の罪を犯して刑罰に服する者(同法331条1項3号)
    企業運営に適切でないと考えられる法律に違反し、罰則を受けた者と、その執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者は、取締役になれません。
    (例:会社法、金融商品取引法、民事再生法、破産法、会社更生法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律などへの違反)
  • 禁固刑に処せられた者(同法331条1項4号)
    上記以外の法律に違反し、禁固以上の刑に処せられた者も、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの間(執行猶予中を除く)取締役に就任できません。

令和元年の会社法改正以前は、成年被後見人・被保佐人であることも、取締役の欠格事由でした。しかし、成年後見人制度の利用が阻害されるとの理由から、令和3年3月1日施行より欠格事由ではなくなりました。ただ、欠格ではないものの、成年後見人などを取締役に就任させるには、一定の制限があります(会社法331条の2第1項、2項)。

  • 成年被後見人を取締役にする場合
    成年後見人が被後見人の同意に基づいて就任の承諾をしなければならない。
  • 被保佐人を取締役にする場合
    被保佐人が同意をしなければならない。

そのほか、取締役の欠格事由について、独自に定款で規定することも可能です。例えば、取締役の年齢制限や居住地域による制限などが考えられます。とはいえ、差別に基づく制限など、不合理な理由によるものは無効とされるおそれがあります。裁判例には、取締役を日本人に限定する定款の効力を認めた例(名古屋地裁昭和46年4月30日判決)があります。

ただし、公開会社の取締役の資格を株主に限定する旨の定めを置くことはできません(会社法331条2項)。

取締役の解任時の注意点についても参考にしてください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、取締役を選任する手続きについて、法律知識を解説しました。

取締役をはじめとした役員は、会社にとって非常に重要な役職です。取締役の選任の手続きは、新規の選任はもちろんのこと、退任した取締役の後任を選んだり、経営上の必要から役員を増員したりする際にも、その手順を知る助けになります。

取締役の選任手続きは、決して難しいものではないものの、必要なステップを踏み、スケジュールを理解すべきです。一定の期間を要するので、時間に余裕をもって着手をしないと、円滑な業務遂行の支障となってしまいます。手続きをよく理解せず、思わぬ瑕疵を生じさせては、取締役の選任が無効となるリスクもあります。

万全を期し、経営層を盤石なものとするには、顧問弁護士によるアドバイスが有効です。

この解説のポイント
  • 取締役を選任する手続きは、株主総会決議、就任の承諾、登記申請という流れ
  • 取締役を選任する際、少数派株主の保護などの目的で特殊な選任方法がある
  • 取締役を選任する手続きで、その員数、任期、欠格事由に違反しないよう注意する

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