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働き方改革法は罰則あり?違反には刑事罰(罰金刑・懲役刑)も!

働き方改革法の施行が2019年4月10日(中小企業では2020年4月1日)に迫っています。しかし、「何から対応したらよいかわからない。」、という会社も多いのではないでしょうか。

優先準備をつけてスピーディに対応しなければならない改正法対応において、重要な判断基準が「違反すると罰則(ペナルティ)があるかどうか」です。

つまり、罰則(ペナルティ)のあるものから順に対応していくことがお勧めです。特に、刑事罰(懲役刑・罰金刑)を科されるおそれのあるものは、対応の優先順位が高いです。

罰則のある働き方改革法の条項は、「時間外労働の上限規制」、「年次有給休暇の取得義務化」など、話題となった改正内容が目白押しで、対応にも時間がかかります。

そこで、今回は、働き方改革法によって導入された改正内容のうち、違反すると刑事罰(罰金刑・懲役刑)のある規定について、会社側(企業側)の労働問題に詳しい弁護士が解説します。

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そもそも働き方改革法とは?

2019年4月10日に施行日が迫っている「働き方改革法」ですが、「ニュースや新聞で聞いたことはあるけれど、実際の内容を詳しくは知らない」という会社経営者も多いのではないでしょうか。

しかし、今回の働き方改革では、「時間外労働の上限規制」、「年次有給休暇の取得義務化」など、違反すると罰則のある重要な規定が盛り込まれました。

「刑事罰(罰金刑・懲役刑)が科せられる。」とは、違反について、労働基準監督署(労基署)が監督をし、調査をするということを意味しています。

この度の働き方改革で、注目される軸は、次の3点です。

  • 時間外労働の上限規制
  • 同一労働同一賃金
  • 高度プロフェッショナル制度

長時間労働が社会問題化していたことから、時間外労働の上限について「月45時間、年間360時間」を原則的な上限として、臨時的(突発的、一時的)な特別な事情が予想される場合の、いわゆる「特別条項」についても、厳しい制限をしました。

次に、非正規雇用の増加にともない、正社員と同程度の業務・責任を担う人に対して、同一の労働価値に対しては公平な賃金を与えるべきという「同一労働同一賃金」の義務化が明文化されました。

最後に、年収1075万円以上の一定の高度な仕事をしている業務の方について残業代の支払義務をなくす、「高度プロフェッショナル制度」が導入されました。

なお、同一労働同一賃金、高度プロフェッショナル制度について、違反に対する罰則は規定されていません。

働き方改革で、刑事罰(罰金刑・懲役刑)のある条項は?

以上のように、昨今の長時間労働、非正規雇用の増加などの社会問題を解決すべく制定された働き方改革のうち、しっかりと守らないと罰則(ペナルティ)の対象となってしまう法改正内容について、弁護士が解説します。

特に、刑事罰(罰金刑・懲役刑)となってしまう改正内容に違反しないよう、準備してください。

いずれも、労働基準監督署による調査に入られたり、労働者から労働法違反を争われたりした場合には、「残業代を支払いたくない」などの理由で節約していた費用以上のコストがかかるおそれが高いです。

時間外労働の上限規制

時間外労働の規制は、働き方改革法以前は、「36協定の上限規制」という形で、「月45時間、年360時間」を決められていました。なお、36協定を労使間で締結しなければ残業させることはできません。

しかし臨時的(突発的、一時的)な特別の事情がある場合には、1年のうち6か月を超えない範囲であれば、この「36協定の上限規制」を超えることができる「特別条項」を定めることができることとなってました。

働き方改革法では、この無制限に許容されていたかのような「特別条項」について、次のとおり、制限を加えることとなりました。

  • 原則として「月45時間、年間360時間」
  • 特別条項の場合、1年のうち6か月を超えない範囲であり、
  • かつ

  • 年間の時間外労働時間が月平均60時間(年720時間)とすること
  • 休日労働を含め、月平均時間外労働時間が80時間を超えないこと
  • 休日労働を含め、1か月の時間外労働を100時間未満とすること

そして、この「時間外労働の上限規制」に違反して残業させた会社に対しては、労働基準法違反として「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という、刑事罰による罰則(ペナルティ)が課されることが定められました。

月60時間を超える残業の割増率の猶予廃止

長時間労働の慢性化を回避するために、「1日8時間、1週40時間」の所定労働時間を超える労働(時間外労働)に対して支払われる「1.25倍」の割増賃金(残業代)に加え、「月60時間」を超える時間外労働に対しては、「1.5倍」の割増率となるとされていました。

ただし、この「月60時間を超える残業の割増率(1.5倍)」は、中小企業に対しては適用が猶予されていました。

この度の働き方改革で、中小企業への適用猶予措置が、2023年4月1日で終了することが決定しました。

適用猶予が終了した後、法律に定められた「1.5倍」の割増率による残業代を支払わない場合には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰による罰則(ペナルティ)があります。

フレックスタイム制の清算期間の上限延長

「フレックスタイム制」とは、一定の清算期間の間、1日の労働時間について始業時刻・終業時刻を定めず、残業時間についても清算期間を通じて計算をする労働時間制度のことです。

これまで、フレックスタイム制は、1か月単位での清算とされていましたが、働き方改革法によって、清算期間の上限が3か月に伸長されることとなりました。

改正にともない、1か月を超える清算期間を設定する場合には、労使協定を締結し、届出をすることが義務とされており、この義務に違反した場合には「30万円以下の罰金」という罰則(ペナルティ)があります。

年次有給休暇の取得義務化

「年次有給休暇の取得義務化」は、会社による「時季指定」ともいわれています。

有給休暇(年休)をいつ取得するかは、労働者が決めるのが原則ですが、有給休暇の消化率が低調であることへの対策として、年間10日以上の有給休暇を付与されている労働者に、年間最低5日の有給休暇を取得させなければならないことが、働き方改革法によって決定されました。

そして、この有給休暇の取得義務化に違反し、労働者に有給休暇(年休)を取得させなかった場合には「30万円以下の罰金」という刑事罰(罰金刑)による罰則(ペナルティ)があります。

医師の面接指導

働き方改革によって高度プロフェッショナル制度が導入されるにともない、高度プロフェッショナル制度の対象者が長時間労働によって健康を害さないよう、医師の面接指導の義務化が、働き方改革法によって導入されました。

次の2つの類型の労働者に対して、在社時間などが一定の時間数を超えた場合に、労働者の求めによらずとも、医師の面接指導を受けさせなければならないことが、会社側に義務付けられました。

  • 「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務につく労働者」
  • 「特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者」

当然ながら、医師への面接指導をするかどうかはもちろんのこと、長時間労働による健康被害を回避するために、会社は、労働者の労働時間を把握する義務があります。

医師の面接指導の義務にしたがわなかった会社に対しては、その違反について「50万円以下の罰金」という刑事罰(罰金刑)による罰則(ペナルティ)が科されます。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

働き方改革による改正の多くは、労働者による過重労働と健康被害を防止するためのものです。そのため、違反した場合には、人の健康・生命にかかわる重大なことであり、罰則(ペナルティ)を課せられる改正規定が多く存在します。

労働基準監督署(労基署)から立ち入り調査を受けて、痛くない腹をさぐられないためにも、罰則(ペナルティ)のある働き方改革法の規制をしっかり理解して、優先的に対応していく必要があります。

自社の状況をふまえながら、働き方改革法への対応を進めていきたい会社の経営者、人事労務担当者の方は、会社側の労働問題に詳しい弁護士に、ぜひ法律相談ください。

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