会社破産

会社が破産したときの経営者の個人責任【弁護士解説】

経営が行き詰まり、資金繰りが苦しくなったとき、債務を消滅させて立て直す手段として「会社破産(法人破産)」の方法があります。

会社の代表者(社長など)にとって、一生懸命経営してきた会社(法人)を破産させてしまうのは、まさに「断腸の思い」ですし、従業員に対して責任を感じる方も少なくありません。

一方で、会社破産(法人破産)の決断をしたとしても、「会社が払えなかったお金を自分が支払わなければいけないのではないか」「自分も一緒に破産したほうがよいのか」「今後の生活をどうしたらよいのか」と不安を覚える方も多いかと思います。

今回は、会社破産(法人破産)の際、会社代表者(社長などの経営者)が負う個人責任、「経営者の今後の生活がどうなるのか」といった問題について、企業法務を得意とする弁護士が解説します。

「会社破産と経営者の対応」の法律知識まとめ

会社破産(法人破産)で経営者は責任を負わない【原則】

経営していた会社の業績が悪化し、会社破産(法人破産)せざるをえなくなったとき、「社長も一緒に破産せざるをえなくなった」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

そのため、「会社(法人)が破産をしたら、代表者が会社の負っていた債務(負債)を負わなければならない」「代表者個人も破産しなければならない」と誤解してしまう方もいます。

しかし、株式会社などの「会社」は、法律の専門用語で「法人」といい、経営者個人とは別人格とされています。そのため、会社(法人)が破産しても、経営者個人は債務を引き継がず、会社の負った債務は会社の消滅とともに払わなくてもよくなるのが原則です。会社の経営者はもちろん、その家族も、会社の払いきれない負債の請求を受けることはありません。

一方で、例外的に、社長などの会社経営者が、会社の債務について個人責任を負わなければならないケースがあります。この場合には、会社破産(法人破産)と同時に、代表者個人も破産しなければなりません。

社長などの会社経営者が、法人破産(会社破産)のときに個人的にも責任を負うケースは、具体的には以下の場合です。

  1. 連帯保証人になっているケース
  2. 担保提供をしているケース
  3. 会社破産(法人破産)の原因が「悪質な経営」にあるケース
  4. 破産管財人が否認権を行使したケース
  5. 経営者名義の財産を、事業に利用していたケース

会社破産(法人破産)後も責任が残るケースがある以上、会社経営をしている代表者の方は、無責任な態度ではいけません。

そこで以下で、社長などの会社経営者が、会社破産(法人破産)の際に個人的に責任追及をうけてしまうケースについて、弁護士が順番に解説します。

連帯保証人として責任を負うケース【例外1】

冒頭で解説したとおり、原則としては、会社(法人)と社長などの経営者個人とは、法的に別の「人格」です。つまり、会社代表者(会社経営者)といえども、会社の債務を当然に負うわけではありません。したがって、会社破産(法人破産)しても、代表者(経営者)は責任を負わないのが原則です。

しかし、会社経営者(会社代表者)が、例外的に会社破産(法人破産)のときに個人責任を負うのが、「社長が会社の連帯保証人になっている」ケースです。

「連帯保証人」の責任は非常に重く、この場合には、「経営者個人もまた、会社と同等の責任を負う」こととなります。

連帯保証人の責任の内容

会社(法人)が、銀行などの金融機関から運転資金を借りるときや、リース契約をするときなど、金融機関は社長などの経営者(代表者)に、「連帯保証人」になることを求めることがあります。

連帯保証人は、会社がお金を返せなくなったとき、会社の身代わりとなって債務を返済する義務を負います。会社が破産して消滅しても、連帯保証人の義務はなくなりません。

連帯保証人となる契約を「連帯保証契約」といいます。連帯保証契約は、特定の債務について締結されますので、その契約上の債務を会社が払えなくなったとき、連帯保証人は身代わりとなって返済することとなります。

連帯保証人の重い責任の内容を理解するためには、「期限の利益喪失約款」「検索の抗弁・催告の抗弁」について理解をしておくことをお勧めします。これらの重い責任により、会社(法人)の連帯保証人の責任はとても高額となることが多く、経営者が会社と同時に破産申立てをする理由となっています。

参考

連帯保証人の責任が、(単なる「保証人」と比べても)特に重いことは、次の2つの考え方が理由となっています。

  • 期限の利益喪失約款
    :債務者(会社)が支払不能となったとき、弁済期を待たずに、債務の全額を請求することができるという内容の特約です。
  • 催告の抗弁・検索の抗弁
    :「催告の抗弁」とは、「保証人より先に主債務者に対して請求せよ」と債権者に主張する権利、「検索の抗弁」とは、「主債務者に支払能力がある場合に、保証人より先に主債務者が支払うべき」と債権者に主張する権利です。「連帯保証人」の場合、「催告の抗弁」「検索の抗弁」はいずれも認められていません。

連帯保証人の責任を回避する方法

会社(法人)が債務を負うとき、会社の経営者(社長などの代表者)といえども、必ずしも連帯保証人にならなければいけないわけではありません。

会社(法人)の債務は、事業規模にもよりますが、個人の借金などと比べてもけた違いに高額となることが多く、連帯保証人になるときは特に注意が必要です。

連帯保証人にさえなっていなければ、会社破産(法人破産)の際に、会社の債務の責任を負うことはありません。

担保提供者として責任を負うケース【例外2】

担保提供者とは、所有する不動産(土地・建物など)に対して抵当権を設定している人のことです。担保提供者は、「物上保証人」ともいいます。

会社経営者(代表者)が、個人として不動産を所有している場合には、会社の債務を担保するために、その不動産に対して抵当権を設定していることがあります。この場合には、会社経営者(代表者)は、担保提供者として、会社破産(法人破産)のときに責任を負うこととなります。

担保提供者の責任の内容

会社経営者(代表者)が、自身の所有する不動産に抵当権を設定し、担保提供者となっている場合には、会社破産(法人破産)の際、その不動産の限りにおいて個人責任を負うこととなります。

具体的には、会社がその債務を支払い切れなかったときには、抵当権を実行され、その不動産が競売にかけられ、その売却代金から会社の負債を返済しなければなりません。

逆に言えば、担保提供者の責任は、担保にいれた不動産に限られます。そのため、会社経営者(代表者)が個人資産を担保にしていた場合でも、それ以外の個人資産から会社の債務を支払う責任まではありません。

ただし、担保提供者が、あわせて連帯保証人にもなっていて二重の責任を負担している場合もあります。

担保提供者の責任を回避する方法

会社経営者(代表者)が個人資産を担保に入れていた場合に、会社破産(法人破産)の際にその責任を回避する方法があります。

それは、抵当権付きの会社の債務についてだけは、会社経営者(代表者)の個人資産から支払いを行うことです。抵当権のついていない会社債務についてまで責任を負うことはなく、残りの債務については、会社破産(法人破産)によって消滅します。

担保とした不動産について、一旦任意売却を行った上で、買い取ってもらった不動産会社から借りる「リースバック」という方法も検討できます。

経営破綻の責任を負うケース【例外3】

社長などの会社経営者は、法令・定款と株主総会決議を遵守して、会社のために忠実に職務を遂行する義務を負います。これを法律の専門用語で「善管注意義務」「忠実義務」といいます。

この義務のため、会社破産(法人破産)の理由が「会社経営者による悪質な経営」にある場合には、会社経営者個人が破産の責任を負わなければならないことがあります。

原則として会社(法人)と経営者個人とは別人格とはいえ、経営失敗の原因が悪質な場合には、責任を負わなければならないということです。

経営責任(善管注意義務違反)の内容

会社経営者(会社代表者)の負う「善管注意義務」「忠実義務」の内容として、会社法によって定められた任務遂行を怠り、その結果として会社に損害を負わせた場合、損害賠償責任を負います。会社に損害を負わせる最たる例が会社破産(法人破産)ですから、この責任を負うことがあるわけです。

このことは、会社法423条1項に、次の通り定めがあります。

会社法423条1項

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

合わせて、会社経営者(会社代表者)は、故意または重大な過失により、第三者に損害を負わせた場合、第三者に対しても損害賠償責任を負います。

会社法429条1項

役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、その役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

経営責任(善管注意義務違反)を回避する方法

「任務を怠った場合に損害賠償責任を負う」というと、「経営に失敗して会社を破産させたら、経営者はその責任をとらなければならない」と誤解する方もいます。

しかし、会社経営者(会社代表者)が責任を負うのは、その失敗が悪質なケースに限られるのであり、「経営の失敗」程度であれば責任を負うことはありません。

会社経営者(会社代表者)の経営判断を委縮させないために、「経営判断の原則」というルールがあり、責任を負わなければならないケースは限定されています。

参考

「経営判断の原則」は、経営判断を誤った結果、会社破産(法人破産)となってしまったケースでも、通常の経営判断の範囲である限り経営者の個人責任を追及しないルールです。

会社経営者(会社代表者)が、「経営判断の原則」によっても責任を負うのは、取締役に期待される業務を著しく怠ったケースや、法令違反の行為を行ったケースなどに限られます。

具体的には、経営判断に当然必要となる調査を怠った場合や、会社の利益を犠牲にして私服を肥やし、会社破産(法人破産)に陥ってしまった場合などです。

破産管財人の否認権行使で責任を負うケース【例外4】

「破産管財人」とは、破産手続きの中で、裁判所から選任され、破産する会社(法人)の財産を管理し、債権者に公平に分配することを役割とする弁護士です。

この「破産管財人」が行使する「否認権」は、破産手続開始決定より前になされた不公平な行為について取り消す権利です。つまり、会社財産を減らしたり、特定の債権者にだけ弁済して公平を損なったりする行為について、破産管財人は否認権を行使することができます。

破産手続きを悪用するような悪質なケースでは、否認権が行使された結果、会社経営者(会社代表者)が、会社破産(法人破産)後も個人で責任を負うに等しいようなケースがあります。

破産管財人が、否認権を行使した結果、会社経営者(会社代表者)が責任を負うのは、例えば、「会社経営者(会社代表者)が、自分の親族に対して、会社所有の土地を売却し、売買契約の効力が否定された」というケースです。

いわゆる「財産隠し」が許されることはなく、会社破産(法人破産)の手続きにおいて、破産管財人が否認権を行使し、その財産は会社(法人)に戻さなければならなくなります。

事業に利用した個人資産について責任を負うケース【例外5】

会社の財産である不動産(土地建物など)の登記名義が、便宜上、会社経営者(会社代表者)の個人名義になっているケースがあります。

また、家族経営の小規模事業者・中小企業では、会社経営者(会社代表者)の個人資産を、会社の事業のために利用しているというケースもあります。

このような事業用の土地建物が、実質的には会社の所有物である場合には、会社破産(法人破産)の手続きの中で、会社の資産であるものと扱われ、その結果、会社経営者(会社代表者)が自身の財産で責任をとらされる形となってしまうことがあります。

この事態を回避するためにも、事業用に利用する財産はいずれも、会社所有としておくことがお勧めです。財産の名義を実態にあわせておくことは、会社経営者(会社代表者)が死亡して相続が起こり、事業承継の問題が起こったときにも有益です。

個人責任を負う経営者(代表者)の適切な対応

会社(法人)と経営者個人とは「別人格」であり、原則として「会社破産(法人破産)しても個人責任は問われない」こと、ただし、例外的に、個人責任を問われるケースがあることを解説しました。

そこで、会社経営者(代表者)として会社破産(法人破産)の際にとるべき適切な対応について、弁護士が解説します。

個人責任分を支払う

会社破産(法人破産)の際に会社経営者(代表者)が個人的に責任を負う場合であっても、その責任を十分に果たすことができるのであれば、何の問題もありません。

例えば、会社(法人)の連帯保証人になっていたけれど、連帯保証している債務をすべて個人資産で支払きれるケースです。

この場合には、会社の破産手続きを終了すれば、連帯保証をしていない債務については、これ以上の責任を負う必要はありません。

参 考
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会社と同時に破産する

会社破産(法人破産)の際、会社が負う負債は、個人の借金などとはくらべものにならないほど高額な場合もよくあります。それだけでなく、会社の運転資金として個人でカードローンを借りて充当しているケースもあります。

そのため、会社経営者(代表者)が個人的に責任を負う場合であって、全額返済が困難な場合には、会社と同時に破産手続きを選択することが実務上よくあります。

免責決定を受ければ、会社経営者(代表者)の個人責任、連帯保証人としての責任のいずれも支払義務がなくなります。

この場合、会社破産(法人破産)と経営者個人の破産を並行して進めれば、同じ破産管財人を選任してもらって同時に進めることができ、かかる費用(弁護士費用・裁判所の予納金)も手間も少なく済ませることができます。

参 考
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任意整理する

任意整理は、債権者と交渉をすることにより、債務の負担を減らす方法です。具体的には、債務額自体を減らしたり、将来分の利息を免除させたり、返済計画を後ろ倒しにしたりといった交渉を行います。

利息制限法を超える高利な借金をしてしまっていたときは、既に元本を超えて返済をしすぎている場合には「過払い金の返還請求」、闇金などの不当な高利の場合には「支払い拒否」を行うこともできます。

会社経営がうまくいかず、経営者個人で高利な借金をしてしまった場合、長期間にわたって返済し続けている場合には、支払履歴をとりよせて検討すると、債務を減らすことができる場合があります。

参 考
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個人再生する

個人再生は、裁判所に再生計画を認可してもらうことによって、原則として債務額を5分の1に減額し、3~5年の分割支払いとする方法です。大幅に減額された債務を分割支払いすれば、残りの債務を免除してもらうことができます。

自己破産する場合との大きな違いは、再生計画が認可されれば、所有する住宅を手放さずに債務を整理することができる点にあります。これを、「住宅ローン特別条項」もしくは「住宅資金特別条項」といいます。

会社破産(個人破産)して、個人責任を負う経営者で、住宅をどうしても手放せない方は、個人再生を検討しましょう。

参 考
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「会社破産」は、弁護士にお任せください!

今回は、会社の経営がうまくいかず、破産を検討されている会社経営者(社長など)に向けて、経営者の負う個人責任と今後の生活について、弁護士が解説しました。

会社がうまくいかなくなってしまうことは、誰にも起こり得ることです。このとき、経営者個人が責任を負わないために「連帯保証人にならない」ことが重要です。しかし、個人企業が連帯保証人を付けずに会社運営をすることは、現実的に困難なことも少なくありません。

少しでも、会社経営者個人が責任を負わず、今後の生活を支障なく遅れるよう、会社破産(法人破産)の前に十分な準備・調査をすることが必要です。

法人破産(会社破産)を検討している会社経営者の方は、自身の個人責任の有無もふくめて、企業法務を得意とする弁護士に、お早目にご相談ください。

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