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【書式】仮差押えで迅速に債権回収する全手順を、弁護士が解説!

訴訟で代金を回収する場合、回収できたとしても、時間・費用の面で大きなコストがかかり、結果的に企業にとっては大きな損失となることも少なくありません。

「取引先企業と売買契約を締結したのに、電話で催促しようが、内容証明郵便を送ろうが、一向に代金を支払わない・・・。」というご相談に対し、スピーディに回収するため、財産を把握している場合、仮差押えをオススメします。

支払いに応じない取引先から強制的に債権を回収するには、訴訟を提起し、判決に基づき、強制執行する方法が考えられます。

しかし、裁判には時間がかかります。訴訟提起から強制執行までには、短くても数か月はかかり、多くの費用や手間もかかります。1年以上にわたるケースも珍しくありません。

長期にわたって裁判をやる間に、取引先が財産を処分したり、隠してしまうおそれがあります。そこで、取引先の財産を保全するための制度(民事保全)の一種である仮差押えを利用することが効果的です。

今回は、仮差押えをする場合、企業がおさえておきたいポイントについて、企業法務を得意とする弁護士が解説します。

目次(クリックで移動)

1. 仮差押え手続きとは?

仮差押え手続きとは、金銭債権の執行を保全するために、債務者の財産を「仮に」差し押さえる手続きです。

訴訟を提起して判決を得るまでの間には一定程度の時間がかかります。債務者が争う場合には、1年を超えるケースもあり得ます。

取引相手の財産が減少したり消滅したりすることを避けるため、訴訟提起前に、相手方の財産のうち「債権額に相応する財産」を仮に差し押さえることができる手続きです。

仮差押えに成功すれば、確定判決を得たあと、仮差押えをした財産に対し強制執行することができます。

取引先の財産を凍結し、残しておく、とイメージしていただけると分かりやすいでしょう。仮差押えのメリットは、とにかく本訴訟よりも早く手続きが進むことです。スムーズにいけば1週間程度で実行できます。

更に、これに加えて、仮差押えによって財産が凍結されることによるデメリットを回避するため、訴訟を提起しなくても和解が進む、という付随的効果も期待できます。

2. 仮差押えの対象を選択する

仮差押えの対象には、主に以下の3種類があります。

  • 不動産
  •  土地、建物など。

  • 動産
  •  在庫商品、事業用の機器など。

  • 債権
  •  売掛債権など。

日常的な顧客の財産調査が、万が一の仮差押えの際に効果を発揮します。御社が把握している債務者の財産に合わせて、仮差押えの対象とする財産を選択しましょう。

一般的には、不動産より動産や債権を差し押さえられてしまう方が、取引先の不利益がより大きいため、仮差押え命令の取得が難しい、といわれています。

したがって、不動産があることがわかっている場合には、まずは不動産の仮差押えを検討し、不動産がない場合には、その他の財産の仮差押えを検討します。

3. 仮差押えを申し立てる具体的方法

仮差押えを行う場合には、裁判所に仮差押えの申立てを行い、裁判所による仮差押え決定を得る必要があります。

仮差押えを申し立てるための具体的な方法は、まず仮差押え申立書と必要な疎明資料を、裁判所の担当部に提出し、形式的審査を受けます。

その後、裁判官面接を行い、裁判官により決定された担保金を供託し、仮差押え決定を得るという流れとなります。

迅速に進めなければ、仮差押えの手続き中にも財産が散逸し、隠匿されてしまう危険がありますから、スピードが命であるとこころがけましょう。

まず初めに、提出すべき仮差押え申立書の書式と、必要な疎明資料について解説します。

3.1. 不動産の仮差押え【書式】

既に解説したとおり、まずは不動産の仮差押えが、最も裁判所に認めてもらいやすく、また、保全すべき財産の価値も高いといえます。したがって、まずは不動産仮差押えの申し立てを行います。

不動産仮差押えの申し立てをするため、対象となる不動産の調査が必須となります。

取引先の本店所在地の不動産(土地、建物)、代表者の自宅所在地の不動産(土地、建物)の情報は、会社の商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本などの登記情報を入手することによって調査が可能です。

不動産を仮差押えした場合でも、取引先は命令に反して当該不動産の所有権を第三者へ譲渡し、移転登記することもできます。

しかし、不動産の仮差押え決定を得ておけば、その後の移転登記に関係なく、判決などの債務名義を取得して「不動産強制競売」の申立てできますので、債権回収の強い効力を有するといってよいでしょう。

仮に、不動産が不可分で1個しかない場合に、不動産価額が自社の請求債権額を大きく上回る場合には、他に適当な価額の財産がないか、確認する必要があります。

不動産仮差押命令申立書の書式例をご紹介します。

不動産仮差押命令申立書

                                収 入
                                印 紙

                            平成○年○月○日

 ○○裁判所民事第○部 御中

                 債権者代理人弁護士         印

       当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり
       請求債権の表示 別紙請求債権目録記載のとおり

申立ての趣旨

 債権者の債務者に対する上記請求債権の執行を保全するため、債務者所有の別紙物件目録記載の不動産は、仮に差し押さえる
 との裁判を求める。

申立ての理由

第1 被保全権利
 1 ○○契約の成立
 2 ○○債権の発生と不履行
 3 被保全権利のまとめ

第2 保全の必要性

疎 明 方 法

  甲1号証     ○○契約書
  甲2号証     印鑑証明書
  甲3号証     印鑑証明書
  甲4号証     会社登記事項証明書
  甲5号証     土地登記事項証明書
  甲6号証     建物登記事項証明書

添 付 書 類

  甲号証          各1通
  固定資産評価証明書     1通
  資格証明書         1通
  訴訟委任状         1通

それぞれの項目「被保全権利」「保全の必要性」に記載すべき内容については、後ほど解説します。

3.2. 動産の仮差押え【書式】

債務者が不動産を保有していない場合や、仮差押えの対象にふさわしい不動産を発見できなかった場合、動産の仮差押えが可能かどうかを検討します。

動産の仮差押えをするためには、仮差押えに適した動産を債務者が保有しており、債権者が適切に把握している必要があります。

動産には、取引先の有する在庫の商品はじめ、手形小切手などの有価証券も含まれます。

仮差押えの段階で、具体的にどの動産に対し、仮差押えをするのかは執行官の裁量となっています。とはいうものの、動産仮差押え命令の申立時に動産を特定することは許されています。

動産仮差押命令申立書の書式例をご紹介します。

動産仮差押命令申立書

                                収 入
                                印 紙

                            平成○年○月○日

○○裁判所民事第○部 御中

                 債権者代理人弁護士         印

           当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり
           請求債権の表示 別紙請求債権目録記載のとおり

申立ての趣旨

 債権者の債務者に対する上記請求債権の執行を保全するため、別紙請求債権目録記載の債権額に満つるまで債務者所有の動産は、仮に差し押さえる
 との裁判を求める。

申立ての理由

第1 被保全権利

第2 保全の必要性

疎 明 方 法

  甲1号証       金銭消費貸借契約書
  甲2号証       銀行取引停止処分を受けた旨の証明書
  甲3号証       報告書

添 付 書 類

  甲号証          各1通
  資格証明書         1通
  訴訟委任状         1通

それぞれの項目「被保全権利」「保全の必要性」に記載すべき内容については、後ほど解説します。

3.3. 債権の仮差押え【書式】

不動産も動産も、仮差押えにふさわしい資産が発見できない場合には、債権の仮差押えについても検討をします。

債権には、預貯金債権や売掛債権など様々な債権があります。

特に、預貯金債権は、債務者が会社として経営を継続している場合には、必ず存在しているはずです。

仮差押えが可能な程度に特定して把握しておくためには、日頃からの債務者管理が重要となります。

企業経営に重要な債権であるからこそ、預貯金債権を仮差押えできれば、訴訟を提起することなく和解が可能となるケースも少なくありません。

また、取引先の本店所在地等が、その会社の所有物件でなく不動産仮差押えができなかった場合でも、賃借している場合には、敷金を差入れている場合が多いので、敷金返還請求権を仮差押えできないか、検討しましょう。

相手方の取引先を調査し、第三債務者に対する債権の仮差押えも同時に検討しましょう。

債権仮差押命令申立書の書式例をご紹介します。

債権仮差押命令申立書

                                 収 入
                                 印 紙

                             平成○年○月○日

 ○○裁判所民事第○部 御中

                  債権者代理人弁護士         印

       当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり
       請求債権の表示 別紙請求債権目録記載のとおり

申立ての趣旨

 債権者の債務者に対する上記請求債権の執行を保全するため、債務者の第三債務者に対する別紙仮差押債権目録記載の債権は、仮に差し押さえる
 第三債務者は、債務者に対し、仮差押えに係る債務の支払をしてはならない
 との裁判を求める。

申立ての理由

第1 被保全権利

第2 保全の必要性

疎 明 方 法

  甲1号証の1     ○○契約書
  甲1号証の2     印鑑登録証明書(債務者のもの)

添 付 書 類

  甲号証          各1通
  資格証明書         1通
  訴訟委任状         1通
  陳述催告の申立書      1通

それぞれの項目「被保全権利」「保全の必要性」に記載すべき内容については、後ほど解説します。

4. 申立書の記載事項のポイント

仮差押えの申立てを行う際には、仮差押え申立書の記載が非常に重要です。

仮差押えの手続きでは、1度ないし複数回の裁判官面接が行われる以外は、基本的には書面審査が原則となるからです。

したがって、裁判官から仮差押え決定を勝ち取るためには、仮差押え申立書にどのような記載を行うか、必要な疎明資料を的確に収集出来ているかが、決定的に重要であるといえます。

特に、既に解説した「被保全権利」と「保全の必要性」を記載し、それらを「疎明」すること(裁判所に事実関係が一応確からしいと思わせること)が必要となり、債権回収に関する専門的な知識、経験が必要です。

3.1. 被保全権利

「被保全権利」とは、「自社が取引先に対してどのような債権を有しているのか」、を記載する部分です。

すなわち、仮差押え申立において債権回収を目指す権利の存在と内容を指します。

被保全権利の疎明方法は、原則として「書証」に限られています。被保全権利を疎明する書証としては、例えば、契約書、領収書、商業帳簿、議事録などが挙げられ、メール等も書証に含まれます。

3.2. 保全の必要性

「保全の必要性」とは、「仮差押えをしておくべき緊急の必要性があること」、を記載する部分です。

特に、なぜ強制執行の前に仮差押えをするのか、その理由について説得的に説明することが大切です。

保全の必要性の疎明方法は、取引先の決算書類や、抵当権が複数設定されていることがわかる不動産の登記簿謄本などにより行います。

3.3. 預金債権の特定に関する問題

いざ、相手方の銀行預金債権を仮差押えようとする場合、銀行名・支店名と口座名義まで特定する必要があります。

しかし、銀行名はともかくとして、支店名まで特定するためには、日常的に債権回収に備えて十分な準備をしていない限り至難の業であるといえます。

最高裁の裁判例では、金融機関のすべての店舗を対象として順位付けをする方式による申立ては、差押え債権の「特定」を欠き、不適法と判断されています。

平常時の債権管理において、取引先の金融機関の支店まで注意を払っておきましょう。

弁護士だけが活用できる弁護士法に基づく「弁護士会照会」の方法によって、ある程度特定が可能なケースもありますので、詳しくは債権回収を得意とする弁護士に相談してください。

4. 申立て以降のスケジュール

ここまでは、仮差押えの申し立て時点の注意点と、申立の具体的方法について解説しました。

次に、申立てを行った後、仮差押え決定が得られるまでのスケジュールと、具体的方法について解説します。

4.1. 裁判官面接

裁判官面接は、申立の当日または数日以内、ときわめて短期間の間に行われます。

仮差押えの申立てを行う場合には、裁判官面接に備えて、事前に以下のような準備をしておきましょう。

  • 事実関係の再確認(裁判官からの事実聴取に備えるため)
  • 疎明資料の原本の用意(裁判官に原本を提示する必要があるため)
  • (継続的取引の場合には)債権を特定するための取引一覧表など

裁判官面接での裁判官の質問に対して、その場で適切な回答ができない場合、仮差押えが認められるべきケースであっても、仮差押えの命令を得るのが遅れ、債権回収が決定的に不能となってしまうおそれもあります。

このことからも、裁判官面接のための事前準備が重要なことは、充分ご理解いただけるのではないでしょうか。

4.2. 担保の提供

仮差押命令に先立ち、申立人は「担保金」を納付しなければなりません。具体的には、法務局において供託の手続きを行います。

担保金の額は、事案の内容や被保全権利・差押対象物の種類や価額により異なり、最終的には裁判官の裁量によりますが、債権額の10~35%程度が基準(東京地裁の担保基準)とされます。

担保金には、仮差押えを受けた側の企業の財産的損失をカバーする意味があります。

すなわち、申立の中には、虚偽の申告をしているケースもないわけではありません。

しかし、虚偽の申告によるものであっても、いったん仮差押え命令が出てしまえば、取引先は当該財産を処分できなくなってしまい、損害を受ける可能性が高くなります。

したがって、担保金には損害賠償金にあてるため、という意味があるのです。

5. まとめ

これまで解説してきたとおり、一見すると、仮差押えの申立てに必要なのは、「裁判所の許可」と「担保金」の2点だけのように思われます。

しかし、実際の手続きは、煩雑で対応は簡単ではありません。そして、債権回収の実効性を確保するため、これらの手続きをスピーディに進める必要があります。

裁判所の許可を迅速に得るためには法的知識と経験が必要です。仮差押え命令申立てを検討する際には、顧問弁護士とよく相談しながら進めることをお勧めします。

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