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債権回収

強制的に債権回収する4つの裁判手続の特色を、弁護士が解説。

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取引先に対して売掛金を支払うように散々催促しても「聞く耳をもたない。」という場合、任意での債権回収の手段を尽くしても、これ以上は効果がないおそれがあります。

ズルズルと放置しておくのはお勧めできず、もはや裁判をするしかない段階であるといえるでしょう。

任意の交渉がうまくいかず、にっちもさっちもいかなくなった企業が考えるいわば最後の手段、それが裁判所を介しての債権回収です。

確かに、裁判手続きには時間と手間、そして費用がかかります。

もっとも、裁判手続きの結果、勝訴あるいは自社にとって有利な和解をすることができれば、裁判所の「お墨付き」を得ることになりますので取引先に対する債権回収の強制力はきわめて高いといえます。

今回は、債権回収を裁判手続きの中で行う際にどのような方法があるのか、企業法務を得意とする弁護士が解説します。

1. 裁判手続の前におさえるべきポイント

まず、裁判といえども「万能」ではありません。適切な手続きを選択し、慎重に行わなければ、むしろ裁判を行ったことで債務者に逃げられてしまう、というケースもないわけではありません。

裁判手続きの種類と、その特色を理解し、適切な手続きで、スピーディな債権回収を目指しましょう。

1.1. 取引先(債務者)の資産状況の把握

まず、裁判手続きを行う前の事前準備として、取引先の資産状況や、回収の目的とする債権を明らかにします。

これから説明する裁判上のどの手続きを選択できるかは、債権の種類や額によって異なるからです。

債権について事前に調査・確認し、最も効果的な裁判手続きを決定することが大切になります。

せっかく苦労して裁判手続きの準備をしたのに、そもそも回収できる債権ではなかった、というのでは元も子ももありません。

1.2. 債権回収にかける時間と費用の検討

裁判手続きを経て、確定判決や仮執行宣言付判決、あるいは和解調書などの「債務名義」を取得することに成功しますと、取引先に対し、強い強制力をもつことができます。

しかし、他方で時間や手間はかかりますので、費用対効果を考えて利用する裁判手続きを選択しましょう。

したがって、どの程度の裁判手続きを、どれほどの期間をかけて行うかは、債権額がいくらであるか、回収可能性がどの程度かによってケースバイケースの対応が必要であるといえます。

2. 民事調停手続

裁判所を介した債権回収の方法として、この「民事調停」は最も利用しやすい法的手段といえます。

民事調停とは、民事調停官(裁判官)と2名以上の調停委員によって組織された調停委員会の仲介のもとで、当事者同士の意見をまとめるという柔軟な手続きです。

比較的時間や費用がかからない、証拠が少ない場合にも利用できる、といったメリットがあります。

しかし、他方で、相手側企業が徹底抗戦の構えを示している場合には役に立たず、相手側の出席を強制できないところがデメリットです。

代理人をつけないで行う「本人訴訟」の場合には、調停が不調になるケースが多いのが実情です。

3. 支払督促手続

次に、期間が長くなるなどの理由で訴訟を敬遠する企業の多くが、早期の債権回収のために選択する方法が「支払督促」です。

支払督促とは、簡易裁判所から相手方に対して支払いを促すための手続きで、「仮執行宣言付支払督促」という債務名義を取得することができる手続きです。

支払督促手続きは、取引先が債権自体を争っておらず、単に支払いを怠っている場合に有効な手段です。

支払督促を利用する際の留意点は、次の通りです。

  • 金銭債権のみしか対象とすることができない。
  • 相手方が督促「異議」の申立をすると、訴訟へ移行することになる
  • 相手方の住所が判明している必要がある

支払督促を申し立てる際には、次のような書式によって、必要事項を記載し、裁判所書記官に対して支払督促命令を申し立てることとなります。

請 求 の 趣 旨

1 金             円
2 上記金額            に対する
  □平成   年   月   日
  □支払督促送達の日の翌日
から完済まで年    パーセントの割合による遅延損害金
3 金          円(申立手続費用)

請 求 の 原 因

1 ①契約の日      平成   年   月   日
  ②契約の内容  債権者が、□債務者
□申立外
          に売り渡した下記商品の代金
           (商品)

  ③連帯保証人  □なし  □債務者           □書面による保証
  ④遅延損害金  □定めあり(利率     )  □定めなし

2 代金
  支払済みの額
  残額

4. 訴訟

訴訟は、債権回収の中でも、最も正式な制度であって、時間、費用が最もかかる一方で、徹底抗戦を選択する債務者に対して、最も強制力の強い制度です。

したがって、債務者との争いが激化する場合には、最終手段として訴訟を選択せざるを得ないケースもあります。

なお、支払督促を行わずに訴訟を行う利点は、金銭債権以外の債権であっても請求できることや、住所が不明であっても送達が可能であることといった点が挙げられます。

4.1. 通常訴訟

裁判所を介する手続きによる債権回収において、最も正式かつ確実な方法が「通常訴訟」を提起することです。

ただし、時間や費用もまた、最も多くかかる制度でもあります。

また、債務者となる企業が、徹底的に抗戦する場合には、控訴審を見据えて争わなければなりません。

控訴される場合、第一審で確定判決をもらうことはできず、判決で勝訴した場合には、仮執行宣言付判決といって、仮に執行できるという判決を勝ち取った場合には、これを利用して債権回収を進めます。

「仮執行宣言付判決」も債務名義ではありますが、取引先に対して強制執行をかけていくには「執行文付与の申立」を行わなければなりません。

4.2. 少額訴訟

少額訴訟は訴状を比較的簡単に作成することができ、他の裁判と比べて、裁判費用が安いですし、時間もかかりません。

原則として審理は1回で完了し、約2か月ほどで終わります。その分、1回の期日のための準備は、通常の訴訟にも増して入念に行わなければなりません。

そのため、少額訴訟の場合には、本人で可能なケースも少なくないといえます。

4.2.1. 少額訴訟を提起できる条件

少額訴訟を提起するためには、法律上の要件を満たさなければなりません。

少額訴訟を利用できるための条件は以下のとおりです。

  • 回収する債権の上限が「60万円以下」であること
  • 同一の簡裁での訴訟回数が1年に「10回」を超えていないこと/li>
  • 相手方企業が少額訴訟手続によることに意義を述べないこと

少額訴訟の場合には、1つの簡易裁判所に対して提起することのできる回数が、1年に10回と制限されていることから、訴状に回数の記入が義務付けられています。

また、自社がいくら少額訴訟手続を希望していても、取引先相手側にも少額訴訟手続きによるか通常訴訟手続きによるかの選択権があるため、相手方が同意しない限り少額訴訟手続きを行うことはできません。

少額訴訟における証拠調べの対象は、「即時に」取り調べることができるものに限られていますので、通常訴訟にも増して、第1回期日の準備が重要です。

少額訴訟の目的である簡易で迅速な裁判の実現のためです。

4.2.2. 少額訴訟提起に必要なもの

次に、少額訴訟をするために何が必要となるのか、みていきましょう。

  • 訴状(正本・副本)
  • 債務者となる企業の商業登記簿謄本
  • 証拠資料:即座に取調べできるものに限られる。

では、証拠資料としてどのようなものを出すのがよいのでしょうか。

少額訴訟は原則として1回の口頭弁論で集中的に審理する方法ですので、とにかく自社にとって有利な証拠を集め、選択し、裁判所に取り調べてもらうことが重要です。

具体的には、取引先との間の売買契約書、金銭消費貸借契約書などの各種契約書、請求書、見積書、領収書、やりとりしたメール文が証拠となりえます。

これら手元にある証拠について、何を提出すべきかしっかりと吟味しましょう。内容を詳細に確認せず、やみくもにあるだけ出せばよいというものではありません。

5. まとめ

これまで解説してきましたように、裁判所を介した手続きには様々な種類があります。そして、いずれの手続きにもそれぞれ一長一短があります。

自社と取引先との間の債権の内容や取引事情などを精査しなければ、一概にどれが最も良いとはいえません。さらに、各々の手続きは完全に独立しているわけではありません。

例えば、支払督促手続きの過程において相手方の「異議」があれば訴訟手続きへ移行することになりますし、少額訴訟においても、取引先側が弁論を行うまでに通常訴訟への移行を希望した場合には、通常訴訟へ移行することになります。

御社の債権回収を成功させる最良の方法を選択し、手続きを有利に進めるためには、債権回収を得意とする顧問弁護士に、日常的な法律相談を任せることが有益です。

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