弁護士による企業法務の情報メディア

顧問弁護士の企業法務サポートなら「ビズベン!」

企業法務

社長(経営者)の相続対策が重要!死んだら会社・家族が揉める?

更新日:

オーナー社長として会社を経営される方にとって、重い病気になってしまったり、死んでしまったりしたとき、「会社や家族はどうなってしまうのだろうか」と不安の種が尽きないのではないでしょうか。

社長であり、100%株主でもあるオーナー経営者の場合には、生前からしっかり相続対策をしておかなければ、最悪の場合、会社と家族に争いが起こり、激しい「争続」となってしまいます。

社長(経営者)の相続対策では、特に、結婚、子の誕生、離婚といった人生の節目での検討が、特に重要となります。

そこで今回は、社長(経営者)がお亡くなりになったとき、会社と家族がどのような法律関係となるのかを知り、相続対策に生かして頂く方法を、企業法務を得意とする弁護士が解説します。

「企業法務」の関連記事

社長(経営者)の相続対策が重要な理由

社長のうち、特にオーナー経営者の場合に、なぜ相続対策が重要なのでしょうか。その理由は、相続対策を万全にしておかないと、会社の「所有権」が社外に流出するおそれがあるからです。

株式会社の場合、「所有と経営の分離」の原則があります。これは、会社の所有権は「株主」にあり、会社の経営権は「代表取締役」にあるということです。

オーナー経営者の場合には、「100%株主=社長」であるため「株主」と「社長」の地位はイコールであり、オーナー経営者が存命中は、全て社長の一存によって会社運営をコントロールすることができます。

しかし、社長が死んで相続が起こったとき、全く相続対策をしていなかった場合には、会社の所有権を意味する「株式」は、社長の家族に、法律で定められた割合(法定相続分)に応じて相続され、分割されます。

相続対策をしていなかった場合、社長1人が持っていた株式が、複数名に分割され、争いの種となるだけでなく、会社経営に全く無関係の親族に、会社が所有されてしまうおそれがあるのです。

社長(経営者)の相続対策が必要となる財産

先ほど説明した通り、社長(経営者)の死亡によって相続の対象となる財産は、社長の相続人によって相続され、分割されます。

社長の相続人が、会社経営に興味がなかった場合には、これまでは会社のために利用していた財産を使うことができなくなる危険があります。

社長の妻子などの相続人が、社長が死んでもなお会社経営に協力的であればよいですが、会社に敵対的であったり、会社の財産には興味があるが経営方針が異なったりすると、会社運営の大きな支障となり、存続が困難となることもあります。

そこで次に、社長(経営者)の相続において、生前の相続対策が必要となる財産と、相続対策の方法について、弁護士が解説します。

株式

社長(経営者)が死亡した際に相続の対象となる財産であり、生前の相続対策が最も重要なのが「株式」です。有限会社の場合には「出資持分」と呼びます。

「株式」を有する人を「株主」と呼び、株主が、株主総会における決議で、会社の重要事項を決定する権限を持っています。

つまり、「株式」は、会社の重要事項を決定する「議決権」を意味し、多く保有しているほど、会社に関する決定権を持っているということです。

オーナー社長であれば、これまでは社長(経営者)が会社の所有者でもあったのですが、相続によって「株式」が分割されると、社長(経営者)ではない人が、会社の重要事項を決めることとなります。

相続対策をしないと、会社の重要事項を決めることのできる「株主」は、「前社長の相続人」となってしまうわけです。

社長の個人資産

社長(経営者)の個人資産を、会社の事業のために利用していた場合には、その財産が、相続によって散逸してしまう危険があることに注意が必要です。

社長(経営者)の個人資産を会社の事業の用に供しているケースは、例えば次の場合です。

  • 社長(経営者)の所有する不動産を、会社の事業所として使用している会社のケース
  • 社長(経営者)の所有する自動車を、社用車として使用している会社のケース

「当然、会社所有の財産に違いない。」と思って会社のために利用していた財産が、実は社長(経営者)の個人資産であった場合には、その相続人が、相続後の会社の事業に利用することを許してくれない限り、社長(経営者)の死亡後は利用できない可能性があります。

会社への貸付金(役員貸付)

相続の対象となる財産には、不動産(土地・建物)、動産のように形あるものだけでなく、「債権」のように目に見えないものもあります。

特に、中小企業では、社長(経営者)が、業績が悪化していた頃に会社に対して貸付(役員貸付)を行っていることがよくあります。

社長(経営者)から会社に対する貸し付けを返してもらう権利(貸付金債権)もまた、社長(経営者)がお亡くなりになった際には相続の対象となります。

貸付金債権が相続されると、会社は、社長(経営者)の相続人に対して、法定相続割合に応じて貸付金を返還する義務を負うことになります。

これまで、社長(経営者)自身が貸主であったことから、業績悪化などを理由に返済を先延ばしにしてきたところ、相続が起こったことによって貸主が変わり、即座に返済を求められる危険があります。

会社の負債の連帯保証人

相続の対象となる財産には、「プラスの財産」だけでなく、「マイナスの財産(負債)」も含まれます。

会社(法人)と社長個人とは、法的に別の人格です。そのため、会社の借金はあくまでも会社が返済する義務を負うだけで、社長が返済する義務を負うわけではなく、相続されることもありません。

しかし、特に中小企業のオーナー経営者の場合には、会社(法人)の借金について、社長個人が「連帯保証人」となっていることが多くあります。

「連帯保証人」の地位は、相続されることとなっており、社長(経営者)がお亡くなりになると、その相続人が、法定相続割合に応じて連帯保証債務を返済する義務を負うことになります。

これまでは、会社(法人)が返済しても社長個人が返済しても、「連帯保証人」として最終責任を社長が負うため結局同じだったところ、相続によって、是が非でも会社(法人)がその資産によって債務を返済する必要性に迫られるおそれがあります。

社長(経営者)が生前に行うべき相続対策

社長(経営者)の場合、相続される財産の中に、その経営する会社に関連するものが多く含まれており、生前の相続対策が重要であることをご理解いただけたのではないでしょうか。

次に、社長(経営者)が生前に行っておくべき具体的な相続対策について、弁護士が解説していきます。

会社と社長個人の財産を区分する

オーナー社長の場合には、会社の株式を100%社長が保有していることから、「社長=会社」といってよい状態になっています。

そのため、会社の財産と社長個人の財産の区別が曖昧になっており、社長個人の財産を会社の事業に利用していることが多くあります。「社長個人所有の土地上に、会社所有の社屋が建っている。」、という例も少なくありません。

しかし、社長(経営者)が死亡し、相続によって「社長=会社」と言える状態ではなくなったとき、所有権の帰属が異なることが大問題となることは明らかです。

これまで会社の事業に利用してきた社長個人の財産が、会社経営とは無関係な社長の家族に相続されるからです。

したがって、まず初めに着手すべき相続対策は、会社の財産と、社長個人の財産とを、適切に区別するという財産の整理です。

相続人に説明する

オーナー社長が死亡し相続が起こったときに、特に会社の存続が困難となるケースとは、社長(経営者)の相続人が、会社経営に敵対的であったり、従来の会社方針に反したりする場合です。

会社経営に協力的であり、相続財産の取得後もその財産を会社に利用させ続けてくれる相続人であれば、大きな問題とはならない可能性もあります。

社長(経営者)の相続人は、社長の連帯保証人としての地位を相続しますが、この負担に耐え兼ねて、相続放棄するケースもあります。

会社の経営上、相続が起こった直後に突発的に問題が起こらないよう、あらかじめ、相続人に対して、相続が起こったときに会社との関係でどのような問題が生じるか、詳細に説明しておく必要があります。

そのため、オーナー社長としては、生前の相続対策の一環として、相続人となる妻子などに対して、自分の財産状況、会社経営との関係などの重要な事項について説明してください。

遺言を作成する

遺言書を作成することによって、社長(経営者)が死亡した後の相続についてのルールを、生前にある程度決めておくことができます。

遺言には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、弁護士、公証人といった法律の専門家に任せることができ、死後に無効となりづらい「公正証書遺言」の作成がお勧めです。

遺言により、社長(経営者)の個人資産であるけれど事業に利用している財産や、社長の株式について、相続人ではなく会社自体、もしくは、事業承継する後継者に帰属させるよう定めておきます。

遺言書は、死亡するまで何度でも修正、変更することができるので、会社の状況、家族の状況によって頻繁に修正することができます。

注意ポイント

オーナー社長が遺言書を作成するときには、「遺留分」に注意しなければなりません。

「遺留分」は、法律に定められた最低限相続することを保証された財産の割合のことであり、「遺留分」以下の財産しか相続できなかった相続人は、「遺留分減殺請求権」によって相続財産を取り戻すことができます。

社長(経営者)の財産に占める株式の価値が大きすぎる場合、「遺言」によって、株式を会社もしくは事業承継の後継者に取得させようとしても、「遺留分減殺請求権」を行使され、希望通りの財産配分が実現できないおそれもあります。

後継者に事業承継する

生前から、事業承継の検討を進めておくことによって、よりスムーズに、思い通りの経営権の継承が実現できます。

事業承継には、親族へ承継する「親族内承継」、親族以外の役員や幹部社員へ承継する「社内承継」、第三者へ会社を売却する「M&A(事業売却)」の3種類があります。

生前から検討しておけば、遺言や相続放棄など、死亡によって発動する方法以外にも、生前贈与など、利用できる選択肢が増加します。

後継者が決定していても、後継者にふさわしい能力を備え、社内の信頼を勝ち取るためには一定期間がかかりますので、事業承継への早めの着手が重要です。

相続放棄してもらう

社長(経営者)が会社の債務の「連帯保証人」となっており、会社の経営状態が悪い場合には、相続人に「相続放棄」してもらうのも1つの手です。

社長(経営者)の預貯金や自宅など、個人資産の価値を合計し、連帯保証している会社の債務よりも少ないという場合には、「相続放棄」すべきケースの場合があります。

「相続放棄」は、原則として、相続人が死亡を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。

「相続放棄」はすべての相続を放棄する必要があるため、社長の自宅は相続するが、会社の連帯保証人の地位は相続しない、という選び方はできません。

退職慰労金(死亡退職金)を定める

最後に、社長や、その家族の立場で、社長の死亡した後のことを考える場合には、「退職慰労金(死亡退職金)」が存在するか、という点にも注意しておきましょう。

在職期間中に亡くなった社長に対して退職金を支給する場合には、就業規則や退職金規程であらかじめ定めておくことが必要です。

死亡退職金が存在する場合には、退職金が相続争いの火種とならないよう、社長が死亡した際に誰が退職金を相続するかについても、遺言などで定めておきましょう。

なお、死亡退職金は、相続税の課税対象となるため、相続税申告のときには注意が必要です。

相続の対象とはならない財産

社長(経営者)の死亡によっても、相続の対象とはならない財産もあります。

本来、社長個人は、会社とは別の法人格ですから、たとえ中小企業などのように「会社=社長」といえる状態であったとしても、社長(経営者)の死亡後は引き継がれない財産も存在します。

相続の対象とならない財産は、生前の相続対策をしなくても会社に残るため、少なくとも会社の経営上はあまり問題にはなりませんが、注意しておかなければならないポイントもあります。

社長(代表者)の地位

社長(経営者)が死んで相続が起こっても、社長の妻子などの相続人に、「社長」の地位が移るわけではありません。これは、オーナー経営者、ワンマン社長でも同じです。

代表取締役は、会社から経営を委任されているという関係にあり、「委任契約」は死亡によって解除されます。

したがって、社長が死んだら、これによって会社との間の委任契約はなくなり、代表取締役、社長という地位も消滅します。

注意ポイント

ただし、「株式」が相続の対象となるため、「株式」の全部もしくは大部分を社長が持っており、相続されてしまった場合には、取締役、代表取締役の地位は、会社に残された社員や役員の自由にはならない可能性があります。

というのも、取締役は株主総会で選任されるため、株式の全部もしくは大部分を社長の相続人が持っていれば、次期社長を決めるにあたって、非常に大きな発言力を持つからです。

資本金

資本金は、あくまでも会社に最初に出資した金額を意味するのであって、その金額のすべてが会社の預金口座に残っているわけではありません。

会社の株式を相続できるとなると、会社のすべてが自分のもののように考える方もいますが、資本金の金額がすべて手に入るわけではありません。

会社名義の財産

「会社」と「社長個人」とは法的に別の人格です。そのため、会社名義の財産は、社長の個人資産とは区別されるので、相続の対象とはなりません。

「企業法務」は、弁護士にお任せください!

今回は、オーナー経営者の社長が最も不安を感じることの多い、社長の死後の問題について、弁護士が解説しました。

社長が大半の株式を所有しており、その株式の価値が高い場合(会社の業績が良好な場合)ほど、生前から相続対策を準備しておかなければ、会社経営に大きな支障が生じ、残された「会社」も「家族」も双方が幸せにはなりません。

特に、少子高齢化による「人手不足」と「後継者不足」が社会問題化している昨今では、規模、業種を問わず、「事業承継」が全ての会社の経営課題といっても過言ではありません。

事業承継にお悩みに会社経営者の方は、企業法務を得意とする弁護士に、お早めにご相談ください。

「企業法務」の関連記事

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
アバター

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、東京都中央区、銀座駅から徒歩3分にある、企業法務を得意とする法律事務所です。 「Bizuben!」にて、企業法務に必要な知識・ノウハウの提供をしています。

-企業法務
-, , , , ,

お問い合わせ

Copyright© 顧問弁護士の企業法務サポートなら「ビズベン!」 , 2019 All Rights Reserved.