人事労務

正社員から外注に変更できる?「社員の外注化」の方法と注意点

「働き方改革」において、正社員の多様化が叫ばれています。これにあわせて「正社員の外注化」をおこなう会社が増加しています。

古くは、新卒で入社した会社に長期的に雇用され、定年まで正社員として勤めるのが一般的でしたが、現在はそうではありません。個人の価値観が多様化し、ワークライフバランスを求める人のなかには「正社員であること」を重要視しない人もいます。

会社側もこの状況に対応する必要があり、多様な雇用形態を活用して優秀な人材を雇用し、人手不足を補う必要があります。その一環として、これまで正社員として雇用していた人に、会社側・社員側いずれの事情であっても外注の請負となってもらう方法があります。これを「社員の外注化」といいます。

社員の外注化には「多様な人材の活用」というメリット以外に、会社側にとって「人件費の削減」という大きなメリットもあります。

ただし、労働トラブルの火種ともなりうるため、「社員の外注化」を進めるにあたっては労働法の知識を十分理解する必要があります。今回は、正社員を外注に変更する方法と注意点について、弁護士が解説します。

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正社員から外注に変更する理由・メリット

正社員として雇用している社員を外注契約とすることには、会社側にとって大きなメリットがあります。外注契約をする場合には、正社員であった社員を「個人事業主」として、会社との間で請負契約ないし業務委託契約を締結する形式をとることとなります。

このような正社員の外注化をおこなう大きな理由となる会社側のメリットについて、弁護士が解説します。

優秀な人材の確保

正社員を外注化する理由・メリットの1つ目は、「優秀な人材の確保」です。

育児や介護などの過程の事情を抱えていたり、身体に障害があったりなど、労働者側の都合でどうしてもオフィスへの出勤が難しいとき、リモートワークを認めなければ、その社員はやめてしまいます。同様に、時間的な自由を求める人、ワークライフバランスの充実を求める人、短期間で仕事をやめたい人など、個人の価値観は多様化しています。

正社員を外注化し、個人事業主とすれば、個人の責任は重くなるものの裁量の幅が広くなり、自由度が増します。そのため、上記のような多様な需要にこたえることができ、優秀な人材を多く確保することができるようになります。

多様な働き方の推奨

正社員を外注化する理由・メリットの2つ目は、「多様な働き方の推奨」です。

「長時間はたらいた人が評価される」とい時代は終わりました。どれほど長くはたらいても成果を出さなければ意味がありませんし、無意味は長時間労働はむしろ、残業代の支払い、精神疾患(メンタルヘルス)へのり患、過労死など、会社にリスクを負わせるだけです。

そのため、「働き方改革」を進める会社では、労働時間の長さでなく、成果で評価をする「成果主義」への移行が進んでいます。

社員の「雇用」は、労働法によって「時間での評価」から抜け出すことができません(完全なるフルコミッションは最低賃金法違反となります)。しかし、外注化をすれば、成果のみで評価をすることも可能となります。

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人件費の削減

正社員を外注化する理由・メリットの3つ目は、「人件費の削減」です。

さきほ2つとは打って変わって消極的な理由ですが、会社にとっては人件費の抑制がもっとも重要な理由となっていることも少なくありません。

正社員を外注化することにより、会社がこれまで負担していた社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)、労働保険料(雇用保険料・労災保険料)の支払い義務をなくすことができます。あわせて、正社員であれば支払う必要のある残業代(割増賃金)も、外注化した個人事業主には支払う必要がありません。

労働者保護のための解雇の規制も適用されないため、必要がなくなった場合には契約を解約することもできます。

また、これまで業務がなくても雇用をし続けていた社員がいる場合、業務を依頼しない場合には費用の発生しない外注とすることがコスト削減につながります。

同一労働同一賃金への配慮

正社員を外注化する理由・メリットの4つ目は「同一労働同一賃金」です。

働き方の多様化が推奨されていますが、現実には働き方が大きくことなる社員がいると、社員間で不公平感が生じることがあります。

最近話題になっている「同一労働同一賃金」の考え方でいえば、同じ価値の業務をおこなっている社員に対しては、正社員であるか非正規社員であるかなどの雇用形態の壁をこえて、同一の待遇をしなければならないこととされています。

そのため、働き方の違いによる不公平間を解消し「同一労働同一賃金」を守るためにも、働き方の自由度が高い社員についてはいっそ外注化したほうが、より公平かつ妥当に運用できる場合があります。

参 考
裁判例からみた「同一労働同一賃金」の実務的対応は?【弁護士解説】

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正社員を外注化するときの注意点

正社員を外注化することはメリットばかりではありません。メリットしかないのであれば最初から全員外注にすればよいわけですが、そう簡単ではないことは理解したいてだけるはずです。

安易な正社員の外注化には注意が必要です。違法な取り扱いをした場合には、社員ないし個人事業主側から労働審判や訴訟などをおこされ、削減しようとしていたコスト以上の支払いを余儀なくされてしまうおそれがあります。

社員の同意が必要

社員を外注に変更することは、「社員をいったん退職させて、あらたに外注契約をむすぶ」という意味があります。そのため、対象となる社員の同意が必要です。

社員としての雇用契約関係を清算することになりますから、退職に関する諸手続きが必要となり、退職金規程などがある場合には退職金を支払う必要があります。要は、社員の退職時におこなう手続きを履践する必要があるということです。

社員の同意がとれない場合には、いったん辞めていただくために「解雇」することとなりますが、ご存じのとおり日本では解雇はかなりハードルが高く、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当でない限り「不当解雇」として無効になります。

具体的には、会社都合の解雇(整理解雇)をおこなう場合には、「整理解雇の4要件」を満たすほどの必要性・緊急性が必要となりますし、労働者の能力不足などを理由に解雇する場合には、十分な注意指導が必要となります。

しかし、その後に外注化して、個人事業主として業務委託契約をむすぶことを予定しているのであれば、いずれの理由の解雇も合理性がないと判断される可能性が高いです。

労働条件を整理する

「多様な働き方を推奨する」というメリットを生かしながら、「同一労働同一賃金」のルールを順守することは容易ではありません。

そのため、「正社員の外注化」を適性におこなうためには、労働条件を整理することが重要となります。とくに「正社員の外注化」を検討するときは、正社員、非正規社員(契約社員・パート・アルバイト・派遣社員)のほか外注の個人事業主も含めて、横断的な視点でみて整理することが重要です。

このとき、それぞれの雇用形態ごとに、賃金、労働時間のほか、在宅勤務やリモートワークをおこなうことができるかどうかや、契約終了の条件など、重要な条件を書き並べ、エクセルシートなどで管理することがお勧めです。

また「同一労働同一賃金」の考え方を守るため、条件が異なる点については「なぜ異なるのか」の理由付けが必要です。

実質は「雇用」だと評価されるおそれあり

正社員を外注化することのメリットは大きいことを説明しましたが、そのため、形式的に外注化をして、メリットだけを「タダ取り」しようとする悪質な会社もいます。しかし、「外注」の形式をとったとしても、実態が「雇用」であれば、労働者保護のためのルールが適用されるおそれがあります。

外注の請負であるか、それとも雇用された社員であるかは、実態にしたがって判断されます。総合的に考慮される要素は、次のようなものです。

雇用 請負
個別の業務遂行について指揮命令を行っているか 会社の指揮命令下にある 個別の指揮命令は行わない(発注の際の指示はOK)
業務について諾否の自由があるか 業務命令は拒否できない 仕事を断ることができる
時間的・場所的拘束があるか 働く場所・労働時間は会社の指示に従う 時間、場所を拘束することはできない
事業者性があるか 事業者性はない(業務に必要な備品などは会社が負担する) 事業者性がある(業務に必要なものは事業者が負担する)
支払うお金の種類 給与 報酬

雇用であるか外注・請負であるかの最終判断は、裁判所でおこなうことになります。そのため、証拠が重要となります。

会社の都合で外注扱いをしたとしても、実態が雇用であると判断されると、未払残業代の請求を受けたり、解雇が無効であると判断されたり、業務上のケガや病気について労災、安全配慮義務違反の責任追及を受けたりといった思わぬリスクが降りかかることとなります。

単に、人件費が節約できるからと、これまで社員として働いてきた人を外注扱いすることは危険です。

業務委託契約書の内容が重要

社員を外注化するためには、社員をいったん退職させた後で、その「元社員」との間で外注契約を締結します。「元社員」は独立した個人事業主(いわゆる「フリーランス」)という扱いになります。

外注契約は、民法に定められた契約類型のうち「委任契約」あるいは「請負契約」となります。一般的には「業務委託契約」と呼ばれることもあります。

社員として「雇用」する場合、労働基準法(労基法)をはじめとした細かなルールがありますが、これは労働者保護の必要性があるからです。これに対して、個人事業主との外注契約には、民法における一般的なルール以外に、それほど細かなルールがありません。

そのため、社員を外注化したときは、その「元社員」と会社との契約内容はすべて合意で決める必要がありますから、その契約内容を定めた「業務委託契約書」に適切に定めることがとても重要になります。

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「企業法務」は、弁護士にお任せください!

今回は、社員を外注化する方法と注意点について、弁護士が解説しました。

価値観が多様化し、労働者が求める働き方も多様化しています。「働き方改革」でいわれるまでもなく、人手不足を解消し優秀な人材を確保するためには、雇用の見直しが必要となります。

個人主義が進みつづけ、社員はいなくなりフリーランスの集まりだけになる、という未来を描く人もいます。しかし一方で、現時点では、社員を外注化することにはリスクもあるため、労働法の知識を理解して、実質「雇用」だといわれてリスクを負うことのないように進めなければなりません。

「働き方改革」を進めたい会社や、雇用のあり方について見直したい会社は、ぜひ一度、企業の労働問題(人事労務)に詳しい弁護士にご相談ください。

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