景気の先行きが不透明な中、倒産する会社が増加しています。
中小企業は、資金繰りの悪化や売上減少といった深刻な経営課題に直面しやすいです。月々の支払いに追われ、資金が底を尽きそうになりながら奔走する経営者も少なくないでしょう。
手元資金に限りのある小規模な会社ほど、資金繰りの悪化は倒産に直結します。とはいえ、倒産は突然起こるものではありません。早めに兆候を察知し、対策を講じることで回避できるケースもあります。倒産を回避する方法の中でも即効性が高いのが「資金繰りの改善」です。
今回は、経営状況の悪化した会社が倒産を回避する方法と、中小企業が知っておくべき資金繰りの改善策について、企業法務に強い弁護士が解説します。
- 倒産を回避する方法の中でも、資金繰りを改善するための対処法が重要
- 倒産回避のために、兆候を速やかにつかみ、リスクマネジメントを徹底すべき
- 倒産の回避が難しいと分かったら、速やかに弁護士に相談し、機を逸しない
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会社が倒産する主な原因
はじめに、会社が倒産する原因を知ることが、回避策に繋がります。
中小企業の倒産の要因は一つではなく、複数のリスクが重なった結果として起こっています。特に、次のような事情によって資金繰りが悪化すると、倒産の引き金となります。
- 資金ショート
キャッシュフローが管理できず、期限までに資金を準備できないと、支払いが滞って信用不安を招きます。 - 売掛金の回収遅れや貸し倒れ
売上を計上しても、入金されなければ資金は不足します。得意先への依存度の高い中小企業は、売掛金の回収遅れ、取引先の倒産による貸し倒れが致命的です。 - 過剰な借入返済の負担
金融機関からの融資は経営を支える重要な資金源ですが、過剰な借入はキャッシュフローを悪化させます。 - 経営判断のミス
適切なタイミングで経営判断が下せないと倒産の危険があります。不採算部門や過剰人員を放置していると、経営資源を浪費し、財務状況を悪化させます。 - 外部環境の変化
法改正やコロナ禍、取引先の倒産や需要減、原材料の高騰など、外的な要因が経営を悪化させるケースもあります。
これらの原因に共通するのは、発見と対策の遅れです。
経営の見通しが厳しくなり始めた段階で、現実を直視し、具体的な対策を講じることが、「倒産を回避できるかどうか」の分かれ目となります。
倒産を回避するための具体的な方法
次に、倒産を回避するための具体的な方法を解説します。
倒産の原因が、必ずしも「経営者の努力不足」とは限りませんが、回避できるに越したことはありません。他責思考は止め、倒産回避のために全力を注いでください。
倒産の危機を早期に察知する
まず、倒産を回避するためにも、危機を早めに察知することが重要です。
経営が悪化しているのに「まだ大丈夫」と放置すれば、倒産が近づいてしまいます。売上減少、資金繰りの悪化など、兆しに気付いたら、即座に現状を分析し、対策を講じる判断力を身に着けるべきです。日常的に経営指標をチェックし、小さな異変も見逃さない姿勢が大切です。
資金繰り悪化の兆候を知るには、資金繰り表を作成し、現預金の流れを見える化しましょう。売上予定、入金タイミング、支払いスケジュールを把握すべきです。
また、問題が深刻化する前に、専門家と連携しておいてください。税理士にはキャッシュフロー管理や節税の観点から、弁護士には債務整理の観点からサポートを求めましょう。定期的に相談しておくことが、リスクの低減に役立ちます。
「ベンチャー企業向けの顧問弁護士」の解説

資金繰りを改善する
次に、倒産の主な原因である資金繰りの悪化を防がなければなりません。
資金繰りの悪化は、入金の減少や遅れと、支出の増加が合わさって生じるので、その両面を見直すことが対策になります。
売上アップによる改善
入金を増やすために、売上アップによる改善を試みてください。
倒産の兆しのある段階で新規開拓のコストはかけられないので、既存顧客へのアップセル・クロスセルを優先すべきです。既にニーズを理解した顧客なら、追加契約や定期契約を提案して資金繰りの改善に役立てることができます。
大口の取引先に依存した状態は倒産リスクが高いので、分散のため、少額でも多数の顧客と関係を築き、売上基盤を安定させてください。
支出の最適化
支出を減らすために、最適化の視点が欠かせません。
不要な支出を減らすため、オフィスの縮小や人件費の削減など、固定費を見直しましょう。特に、リモートワークで不要となった広すぎるオフィス、労務管理をしないまま放置された生活残業といった無駄は、速やかに改善すべきです。
宣伝広告費や接待交際費など、売上に連動する支出を減らす際は、「費用対効果」を見て慎重に検討してください。
外部委託や仕入価格も、見直しの余地が大きい項目です。定期的に見積もりを取り直し、競争原理を活かして交渉しましょう。赤字を垂れ流す不採算部門は、撤退基準を設け、冷静に切り捨てる覚悟も大切です。
金融機関との交渉
資金繰りを改善するために、金融機関との交渉も欠かせません。
返済に支障が生じる前に、誠実に事情を説明して、返済期限の延期(リスケジュール)や元本返済の据え置きといった交渉をすることが重要です。早めに説明をすれば、金融機関としても貸し倒れを防ぐための調整をしてくれる可能性があります。
金融機関の信頼を維持するため、業績や将来の見通しを正確に説明しましょう。改善状況を示せば、支援を得やすくなります。
資金調達
資金調達によって資金繰りを改善する方法もあります。金融機関からの追加融資(特に、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付きの融資など、低金利で利用できるもの)、各種の補助金や助成金の活用、ファクタリングやクラウドファンディングなど、多様な方法を検討してください。
状況に合った資金調達を知るために、専門家のサポートも欠かせません。
「黒字倒産の原因と対策」の解説

事業を再編成する
倒産を回避するために、事業を再編成する方法も有効です。
経営資源(人材・資金・時間)は有限なので、収益性の高い事業に集中投資すべきです。健全性を高めれば、倒産リスクを軽減できます。時代の変化に応じてアップデートすべきであり、過去の成功に固執してはいけません。
利益率が高く、安定した売上が見込める事業領域があるなら、そこに経営資源を集中させましょう。例えば、店舗型からオンラインサービスやECサービスなど、収益性の高いビジネスモデルに変更することで飛躍を遂げた企業もあります。魅力的な事業計画なら、出資や融資を活用した資金調達も期待でき、資金繰りの改善にも効果的です。
「いつか黒字になる」「長年続けてきた」という感情は経営判断の妨げになるので、基準を設け、徹底を決めることも重要です。自社のみでは立て直しが難しいときは、事業譲渡やM&Aによって生き残りを図る方法もあります。
「M&Aにおける弁護士の役割」の解説

事業再生を選択する
資金繰りの改善に限界があるなら、事業再生で再スタートするのも現実的な選択肢です。
事業再生は、破産とは異なり、経営を健全化して立て直すためのプロセスであり、法的整理と私的整理に区別されます。
債権者の協力を得られれば、債務の一部免除や返済期限の延長、減額交渉といった合意をして、私的整理の方法で再構築を目指せます。一方、債権者が非協力的なときは、法的手続き(民事再生・特定調停・会社更生など)を利用することとなります。
「債務整理の種類」の解説

倒産を回避できるかの判断基準
次に、倒産を回避できるかどうかの判断基準について解説します。
「倒産が回避できるか」を見極めるには、経営者が現状を客観的に分析し、具体的な判断基準を持つことが重要です。窮地に陥ると冷静に判断できないので、早めに検討しておきましょう。
- 資金繰りが継続的に維持できるか
見通しが明確で資金ショートを避けられるなら、事業の継続が可能です。- 内部留保で直近3か月の支払いが可能か。
- 資金繰り表を週単位・月単位で作成しているか。
- 入金予定と支払予定の差額を予測できているか。
- 収益改善の見通しが立つか
一時的な赤字にすぎず、収益の改善が見込めるなら、倒産は回避できます。- 赤字の原因が一時的な要因か。
- 利益率の高い商品やサービスがあるか。
- 不採算事業の見直しが進んでいるか。
- 金融機関との信頼関係が維持できるか
追加融資や返済猶予などの支援が受けられれば、危機は回避しやすいです。- 定期的に業績報告を行っているか。
- 返済条件の変更(リスケジュール)の提案が受け入れられるか。
- 金融機関に支援を継続する意思があるか。
- 外部の専門家のアドバイスがあるか
適切な第三者の助言を受けることも、現状の打開策を練る参考になります。- 顧問弁護士・顧問税理士と連携できているか。
- 破産・倒産部門に強い弁護士のアドバイスを聞いたか。
- 経営改善計画を策定しているか。
以上はあくまで経営再建の目安に過ぎませんが、内部留保、将来の利益、外部の支援のいずれかにでも希望があれば、立て直せる余地はあります。早めに検討しておけば、改善のために使える時間的余裕も確保できるでしょう。逆に、いずれにも希望がない場合は、倒産を検討する段階に入っていると言わざるを得ません。
倒産を回避できない状況と、次の一手
以上の対策を講じても、倒産を回避できない状況も存在します。
中小企業の経営者は、困難な状況でも「何とかなる」と希望を持つことが大事ですが、再建が困難な現実を直視すべき局面もあります。無理に延命すれば、借入が増え、責任が拡大します。未回収の支払いができなくなると、連鎖倒産によって周囲を巻き込んでしまう事例もあります。
次のような状況が重なっているとき、倒産の回避は難しいでしょう。
- 慢性的な資金ショートに陥っている。
- 取引先への遅滞だけでなく、給与遅配、税金や社会保険料の未払いがある。
- 純資産がマイナスの状態(債務超過)が改善できない。
- 長期間赤字が続いており、将来の黒字転換の見込みがない。
- 取引先の信頼を失い、契約を解消されてしまった。
- 金融機関の信頼を失い、支援を断たれてしまった。
- 手形や小切手の不渡りを出して銀行取引が停止した。
- 経営者に経営継続の意欲がない。
危機的な事態に陥ったときこそ、倒産のタイミングを見誤らないことが大切です。
破産や民事再生などは決して後ろめたいものではなく、法律の認める適切な幕の引き方の一つです。重要なのは「破産=失敗」ではなく、再出発のための戦略的な判断と捉えることです。早い段階で弁護士に相談して被害を最小限に抑えれば、再起のチャンスを確保できます。
「会社破産の費用が払えないとき」の解説

まとめ

今回は、経営状況が悪化した会社が、倒産を回避する方法について解説しました。
経営者である以上、倒産は他人事ではありません。景気の変動や取引先の状況など、自分にはコントロールできない原因によっても起こり得るリスクだからです。一方で、資金繰りを正しく把握し、支出と収入のバランスを見直すことで、倒産リスクは大幅に軽減できます。
資金力の乏しい中小企業が倒産を避けるには、常日頃から専門家のサポートを受けることが重要です。経営改善計画の策定や、補助金や融資の活用、法的手段の検討など、選択肢は多岐にわたります。また、倒産が避けられないなら、タイミングを誤らずに決断しなければなりません。
経営が苦しくなる前に情報を集め、リスクに備えることが企業存続への第一歩です。経営に不安のある方は、ぜひ弁護士に相談してください。
- 倒産を回避する方法の中でも、資金繰りを改善するための対処法が重要
- 倒産回避のために、兆候を速やかにつかみ、リスクマネジメントを徹底すべき
- 倒産の回避が難しいと分かったら、速やかに弁護士に相談し、機を逸しない
\お気軽に問い合わせください/

