株主総会は、株式会社における最高意思決定機関であるがゆえ、その重要性は非常に高いもの。株主総会を滞りなく進めることは株式会社の経営で特に重要で、予想外のリスクは避けねばなりません。
株主総会を弁護士に依頼すれば、事前準備から開催日当日のサポートを任せることができ、大きなメリットがあります。定時株主総会における事業報告、計算書類の承認、役員の選任・解任といった定期的な課題はもちろん、臨時株主総会における緊急対応においても、弁護士のアドバイスを受けて進めるのが有益です。
弁護士の行う株主総会に関するアドバイスを「総会指導」と呼びます。総会指導の経験豊富な弁護士は、想定問答を作成しリハーサルしたり、株主総会当日に代理人として同席したりといった役割を担い、企業をサポートします。
今回は、株主総会を弁護士に依頼するメリットと、総会指導で弁護士ができることを、企業法務に強い弁護士が解説します。
- 株主総会を弁護士に依頼すれば、決議の瑕疵リスクを回避し、円滑に運営できる
- 株主総会で弁護士ができるサポートは、事前準備(想定問答・リハーサルなど)と総会指導
- 株主総会を弁護士に依頼するのにかかる費用(弁護士費用)は30万円〜50万円が相場の目安
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株主総会を弁護士に依頼するメリット
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関であることからその重要性は明らかです。そのため、リスク軽減すべく、株主総会の対応を弁護士に依頼するのには多くのメリットがあります。
総会運営の基本ルールは、会社法に定められるため、法律の専門家である弁護士による総会指導が有益です。企業法務の経験が豊富で、大小様々な規模の会社の株主総会を指導した経験ある弁護士を選ぶのが良いでしょう。
株主総会を円滑に運営できる
株主総会の指導を弁護士に依頼することで、会の運営をスムーズに進められます。
株主総会には様々なやり方があります。議案を一度に上程して審議する「一括上程方式」、質疑応答を限定して短時間で終了する「しゃんしゃん総会」が一般化しましたが、業績や出席する株主の属性、人数など、個別の事案に即し、適切な方法を選択するのには、弁護士による総会指導が役立ちます。
小規模なスタートアップ、ベンチャーでは株主総会は形骸化し、持ち回り決議のみで終了する企業もあります。
ただ、方法と態様によっては、進め方が会社法違反となり、決議の効力を否定されるおそれがあります。VC、個人投資家など、他の株主から、手続きを遵守しなかった責任を追及されるリスクがあります。
決議の瑕疵のリスクを軽減できる
株主総会が会社法に違反していると、決議に瑕疵が生じるリスクがあり、これを軽減するのが弁護士に株主総会を任せるメリットの1つです。
決議に瑕疵があると、折角取得した株主総会決議が、不存在となったり、無効とされたり、取り消されたりするおそれがあります。株主総会に関する会社法のルールをよく理解し、期限などの形式的要件を守るのは当然、株主への説明義務を十分に果たしたり、適切な動議を行ったりと、株主総会の場における微妙な法的判断も重要視すべきです。
【株主総会等の決議の不存在の訴え(会社法830条1項)】
- 決議の瑕疵が著しく、株主総会が開催されたと評価できない場合。
(例:大量の招集通知漏れがある場合、一部の株主のみの集会を株主総会と称する場合など)
【株主総会等の決議の無効の訴え(会社法830条2項)】
- 決議の内容が法令に違反する場合。
(例:欠格事由のある役員の選任、株主平等原則に反する配当、制限違反の自己株式の取得など)
【株主総会等の決議の取消しの訴え(会社法831条)】
- 1号:株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
- 2号:株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
- 3号:株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
決議の瑕疵が、取消訴訟、無効確認訴訟などの裁判手続きに発展すれば、対応には更なる弁護士費用を要し、敗訴すれば株主総会をやり直さなければなりません。
企業の信用低下を避けられる
株主総会は、個々の株主が経営層に直接質問できる公の場です。その分、質問に適切な回答ができないなど対応を誤れば、株主の信頼を失い、ひいては企業の社会的信用が低下します。
弁護士による総会指導には、法令を遵守した株主総会の運営のアドバイスに加え、株主からの印象の良い受け答え、議事進行のアドバイスを得られるメリットがあります。上場企業は特に、果たすべき社会的責任が大きく、株主も多数になることが多いため、株主総会の重要性は増します。
業績不振、不祥事後の株主総会など、謝罪したり、株主の厳しい批判が予想されたりするケースは特に神経を使います。上場企業を中心に、株主総会を「株主とコミュニケーションを図り、レピュテーションを向上させる好機」と捉え、積極活用する考えもあります。
法律知識、ノウハウを獲得できる
総会対応に慣れた担当者がいれば、スケジュール管理や会場設営、各種書類の作成は社内で対応できます。それでもなお、株主総会の対応を弁護士に依頼し、総会指導を受けるメリットは大きいもの。最新の法改正に関する質疑応答、社会問題化したトピックの緊急対応などは、法律の専門家である弁護士の知識、経験を活かして対応する必要があるからです。
動議対応や、執拗に説明を求める問題株主への対応、質疑応答の打ち切りタイミングなど、イレギュラーな場面で法的判断を求められるケースでは、弁護士の法律知識、ノウハウが役立ちます。
株主総会で弁護士ができることと、総会指導の具体的な内容
次に、株主総会において弁護士ができることを具体的に解説します。総会指導を弁護士に依頼すれば、以下の法的なアドバイスを受けられます。
対応の全般について総合的に依頼するのが最善ですが、企業のニーズや状況、予算に応じて、株主総会対応の一部のみを弁護士に依頼することも可能です。
株主総会のスケジュール管理
株主総会は、会社法の定める手続きに従います。このとき、招集を決定する取締役会の時期、招集通知の送付期限、監査報告書の提出時期など、スケジュール管理を徹底して進める必要があります。法律上の期限を過ぎると、決議の瑕疵(不存在、無効、取り消し)となるリスクがあるからです。
例えば、招集通知は、公開会社では株主総会の2週間前、非公開会社では1週間前に株主に送付する義務があります。株主総会の対応を弁護士に依頼することでスケジュール管理を任せ、期限を徒過しないよう手当できます。
株主総会の流れについて、詳しくは次に解説します。
招集通知の作成、送付などの事務手続き
招集通知では、通知文書を作成し、株主総会関連資料、(書面投票を認める場合は)議決権行使書類といった必要書類を添付して行う必要があります。記載すべき事項は法律に定められ、抜けや漏れは許されません。
株主総会の対応を弁護士に依頼すれば、必要資料の作成を初め、事務手続きを一元的に任せられます。いわば、弁護士が事務局の代わりを務めることで、自社に不足するリソースを補えるのです。自社で書類を作成する場合も、弁護士に総会指導を任せ、記載漏れがないか、法律に違反しないか、事前にリーガルチェックを受けられます。
株主総会の省略・簡略化について、次の解説をご覧ください。
株主総会のシナリオ作成
株主総会当日は、議長が、事前に用意したシナリオを読み上げる形で議事進行するのが通例です。
株主総会における議事の進め方にも、会社法の定めるルールがあり、これを遵守した議事進行をするには事前に準備するシナリオが非常に重要です。株主総会を弁護士に依頼すれば、法律を遵守し、必要事項を盛り込んだシナリオを作成し、これに基づいた総会指導を受けられ、円滑に株主総会を進めることができます。
想定問答の作成
株主総会では、株主による質問や発言の機会があります。質疑応答に対応する役員などは、株主に対し、適切な説明をすべき義務があります。経営層の説明が不十分だと、決議の取消事由となり、決議の効力が否定される危険があります。
真摯な対応を求められるので、想定される質問と、それに対する回答をまとめ、想定問答を事前に作成するのが通例です。株主総会の対応を弁護士に任せれば、想定問答を作成し、説明義務違反とならないよう総会指導を受けられます。弁護士なら、前期業績や業界の状況、直近の法改正や他社の総会の動向を参考に、株主の質問を予測できるからです。
株主総会のリハーサルの実施
本番になって予想外のリスクを顕在化させないようリハーサルを実施します。本番さながらの環境で練習し、万全の体制を整えるのも、株主総会を依頼された弁護士のサービスの1つです。
実際の会場を使用してリハーサルし、議事進行の流れや経営層の動き、質疑応答などを合わせ、円滑な進行を図れるよう、改善点のアドバイスを行います。弁護士が「株主役」となって質疑したり、動議を出したりして、想定問答やマニュアルが経営層によく浸透しているかを確認できます。
全体の流れの確認だけでなく、経営層や担当者には基本的な姿勢やルール、振る舞い方をアドバイスします。議長となる社長や役員には特に、議事が荒れたときの対応を指導します。
株主総会への弁護士の同席
株主総会の当日は、弁護士に同席してもらうことができます。
弁護士が同席すれば、質疑応答や動議に速やかに対応し、不測の事態が生じても法律に基づくアドバイスをその場で受けられます。企業の不祥事対応や、役員への責任追及など、大きなトラブルの予想される株主総会では、弁護士が経営層に代わって質疑への回答を行う場合もあります。
株主総会の議事録の作成
株主総会そのものの対応を弁護士に任せれば、議事録の作成についても依頼できます。
株主総会の議事録に記載すべき事項は法律に定められており、不備のないよう作成しなければなりません。また、形式面の不備だけでなく、株主総会で決議し、報告した内容について、議事録に正しく反映されているかもチェックする必要があります。その他、総会指導の経験豊富な弁護士は、公告などの方法についてアドバイスすることも可能です。
株主総会の対応を弁護士に依頼する費用
株主総会を弁護士に依頼するとき、かかる費用の相場は、次の額が目安となります。
費用の種類 | 相場の目安 |
---|---|
相談料 | 1時間1万円 |
手数料 | 【当日の同席を要する場合】 50万円〜 【事前準備のみ任せる場合】 30万円〜 |
日当 | 4万円〜8万円 |
企業間紛争のように経済的利益が生じる場合には、その金額に応じた一定の割合を、着手金・報酬金とするケースもありますが、そのような定め方は、株主総会の対応を依頼するのには向きません。そのため、1回の手続きのサポートを任せるケースでは、かかる業務量や時間に応じた固定の金額を見積もり、手数料として請求するのが通例です。
株主総会と合わせ、日常的な法律相談や、総会指導で明らかになった課題への対処を依頼する場合、顧問弁護士として総合的な法的サポートを受けるのがお勧めです。
まとめ
今回は、株主総会の対応を弁護士に任せるメリットと共に、弁護士が具体的に、総会指導においてどのようなサービスを提供できるか、解説しました。
株主総会の重要性は、大規模な定時株主総会を開催する上場企業、大企業に限った話ではありません。むしろ、中小企業やスタートアップ、ベンチャー企業でこそ、軽視されがちな株主総会におけるリスクを軽減しておく必要があります。株主総会の指導に携わった経験の豊富な弁護士なら、想定されるリスクを予め準備し、アドバイスすることができます。
- 株主総会を弁護士に依頼すれば、決議の瑕疵リスクを回避し、円滑に運営できる
- 株主総会で弁護士ができるサポートは、事前準備(想定問答・リハーサルなど)と総会指導
- 株主総会を弁護士に依頼するのにかかる費用(弁護士費用)は30万円〜50万円が相場の目安
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