契約書

コンサルティング契約書の作成時・締結時の注意点【書式・ひな形】

「コンサルティング契約」は、受託者である「コンサルタント」が、委託者である「顧客(クライアント)」に、専門的知識・ノウハウなどの情報提供、指導助言をする契約です。コンサルティング契約を書面にしたのが「コンサルティング契約書」です。

コンサルティングする専門的知識やノウハウには、税務・法務・人事労務・資金調達・経営など、さまざまなものがあります。特定の案件についてスポット契約をする場合もあれば、継続的なアドバイスをする場合もあります。

そのため、コンサルティング契約書の記載内容は多種多様です。しかし、コンサルティング契約書を作成し、チェックするときに注意すべきポイントは共通しています。

特に重要なことは、コンサルティング契約は、売買契約や請負契約と異なり、対象が「目に見えないサービス」です。そのため「契約内容と、実際のサービス内容がことなる」という問題が生じやすい契約類型です。

今回は、コンサルティング契約のトラブルを未然に防ぐために作成すべき、不備のない「コンサルティング契約書」とするためのポイントを、企業法務を得意とする弁護士が解説します。

「契約書」のお勧め解説

コンサルティング契約書の性質

ひとくちに「コンサルティング契約」といっても、その法的性質は、コンサルティング契約の内容によってさまざまです。

コンサルティング契約自体の法的性質を理解しておくことによって、「コンサルティング契約書」を作成する際に、注意すべき法律上のポイントをすばやくおさえることができます。

一般的に、コンサルティング契約といわれるものには、「委任契約」となるもの、「請負契約」となるものがあります。

「委任契約」となるコンサルティング契約

「コンサルティング契約」を「コンサルタントがクライアントに対して、知識や技能を提供する契約である」というように定義すると、法的な性質は「準委任契約」です。

「委任契約」とは、簡単にいうと「人が行為をすることを頼む契約」です。このうち、「事実行為」の委任を受ける契約のことを「準委任契約」といいます。

「コンサルティング契約」では通常、委託者側のクライアント企業が事業を行っており、受託者側のコンサルタントがその事業の専門家としてアドバイスをします。「経営に必要な知識の提供」という事実行為の「委任」を受けると「準委任契約」の性質をもつわけです。

より一般的な用語では、「業務委託契約」と呼ぶ場合があります。

「請負契約」となるコンサルティング契約

「コンサルティング契約」で依頼される業務の内容によっては、その法的な性質が「請負契約」となる場合があります。

「請負契約」と「委任契約」とで、最も大きく異なる点は、「仕事の完成を目的にしているかどうか」という点です。つまり、「委任契約」はあくまでも「仕事をすることの委任」が内容ですが、「請負契約」は「仕事の完成」が目的となります。

「コンサルティング契約」の業務内容が、コンサルタントによる知識の提供にとどまらず技能や労力の提供であったとき、これにより一定の成果をあげることが前提となっている場合、そのコンサルティング契約は「請負契約」です。

コンサルティング契約が「請負契約」となる場合には、一定の成果の提出をともないます。そして、「請負契約」では、仕事が完成してはじめて報酬が発生します。この場合、特に成果に対する責任の問題について、コンサルティング契約書でしっかりと記載しておかなければトラブルになります。

コンサルティング契約書の作成時の注意点

コンサルティング契約書を作成するとき、チェックしておきたいポイントについて弁護士が解説します。

コンサルティング契約書の題名は、「コンサルティング業務委託契約書」「コンサルティング業務基本契約書」「コンサルティング契約書」など、さまざまですが、基本は同様です。その法的性質が「委任契約」なのか「請負契約」なのか、「コンサルタントがどのような責任を負うのか」といったことも、契約書の題名ではなく、内容で決まります。

コンサルティング契約書に、一般的に定められている条項は、次のとおりです。

  • コンサルティング契約の目的
  • コンサルティング業務の内容・範囲
  • コンサルティング業務の期限
  • コンサルティング報酬・支払方法・支払期限
  • コンサルティング業務にかかる費用負担
  • コンサルティング業務遂行時の貸与品など
  • 知的財産権の帰属
  • 成果物の利用
  • 秘密保持義務・個人情報
  • 責任制限
  • 競業避止義務
  • 再委託
  • 権利義務の譲渡禁止
  • コンサルティング契約の期間
  • コンサルティング契約の解除
  • 損害賠償
  • 反社会的勢力の排除
  • 協議条項・合意管轄

以下では、条項ごとに、書式・ひな形にしたがって、記載例などをあげて、注意すべきポイントを弁護士が解説します。

コンサルティング契約の目的

まず、「第1条 コンサルティング契約の目的」です。契約の目的条項には、「その契約書にかかれている契約が、どのような内容の契約なのか」という「概要」を記載します。

コンサルティング契約書を締結する当事者が記載されますので、どちらの当事者がクライアント(委託者)で、どちらの当事者がコンサルタント(受託者)なのかがわかりやすいように記載してください。

第1条 コンサルティング業務の目的

本契約は、株式会社XXXX(以下「クライアント」という。)と、XXXX株式会社(以下「コンサルタント」という。)との間において締結される、コンサルタントのクライアントに対するコンサルティング業務の委託に関して定める契約書(以下「本契約書」という。)である。

コンサルティング業務の内容・範囲

「第2条 コンサルティング業務の内容・範囲」です。この条項には、「その契約書にかかれているコンサルティングの内容がどのようなものなのか」というサービス範囲を記載します。

「コンサルティング契約」は、「目に見えないサービス」を提供するものであることから、「ある業務が、委託の範囲にふくまれているのか」「報酬の範囲内でやってもらえるのか」があいまいになりやすい特徴があります。

そのため、サービス内容を具体化し、可能な限り特定してコンサルティング契約書に記載することが、のちの紛争を予防することにつながります。

「クライアント(委託者)」側の立場では、できる限り広い範囲のサービスをその報酬内で受けられるよう、包括的な記載をするよう修正を求めることがあります。

第2条 コンサルティング業務の内容・範囲

クライアントは、コンサルタントに対し、以下に定めるコンサルティング業務(以下「本件コンサルティング業務」という。)の提供を委託し、コンサルタントはこれを受託した。
(1) XXに関するコンサルティング業務
(2) その他、これに付随する一切の業務

「コンサルタント(受託者)」側の立場では、あまりに多くの業務を依頼されて「割に合わない仕事」にならないよう、業務範囲を具体的な数字で限定をしたり、可能な限り具体的に特定したりするよう修正します。別料金となるサービスがある場合、そのことも記載しておくとわかりやすいです。

第2条 コンサルティング業務の内容・範囲

1. クライアントは、コンサルタントに対し、以下に定めるコンサルティング業務(以下「本件コンサルティング業務」という。)の提供を委託し、コンサルタントはこれを受託した。
(1) XXに関するコンサルティング業務(○時間程度の業務とします。)
(2) XXに関するコンサルティング業務(訪問○回までとします。)
(3) XXに関するコンサルティング業務

2. 前項に含まれない業務(XXを行う業務、XXを行う業務を含むが、これに限らない。)については、本件コンサルティング業務に含まれず、依頼をする場合には両当事者が協議の上、別途契約書を締結する。

コンサルティング業務の期限

「第3条 コンサルティング業務の期限」は、委託された業務のすすめかたについて、期限が存在する場合にそれを明示する条項です。

これは、一定期間の間アドバイスをしつづける業務よりも、スポット契約によくある条項です。例えば、「業務A→業務B→業務C」と進むコンサルティング業務について、それぞれの中間的な期限を、コンサルティング契約書に定めておくことがあります。

あわせて、期限通りに進まなかったときに柔軟に対応できるよう、「期限の変更」についても記載しておきます。

第3条 コンサルティング業務の期限

1. コンサルタントは、クライアントに対し、本件コンサルティング業務について以下の期限までに行う。
(1) 業務Aについて、20XX年XX月XX日限り
(2) 業務Bについて 20XX年XX月XX日限り
(2) 業務Cについて 20XX年XX月XX日限り

2. 前項の定めにかかわらず、次の各号の一に該当する場合には、コンサルタントとクライアントが協議の上、期限の変更を行うことがある。
(1) クライアントの都合により、前項の期限までに業務を遂行することが困難であることが明らかとなったとき
(2) 本件コンサルティング業務の内容に追加、変更があったとき
(3) 天災地変、その他不可抗力によりコンサルタントの業務遂行が困難となったとき

コンサルティング業務において報告書などの成果物の提出が必要となるものがあるときには、その期限も明らかにしておきます。

第3条 コンサルティング業務の期限

1. コンサルタントは、クライアントに対し、本件コンサルティング業務の報告について、毎月末限り、報告書を提出することによって行うものとする。

2. 前項の定めにかかわらず、クライアントが報告を求めた場合には、コンサルタントはクライアントに対して、遅滞なく報告を行うものとする。

コンサルティング業務の報酬・支払方法・支払期限

「第4条 コンサルティング業務の報酬」は、コンサルティング契約によってコンサルタントが得られる報酬について定める条項です。

支払方法は、コンサルティング契約書の場合には「振込送金」とすることが一般的です。振込手数料をどちらが負担するかも定めておきます。

この条項には、報酬額のほか、支払方法、支払期限も定めておきます。コンサルティング契約書に記載されるよくある支払方法には、「タイムチャージ方式」「定額方式」「プロジェクト方式」などの例があります。

タイムチャージ方式

「タイムチャージ方式」の報酬は、「サービス提供時間×単価」で算出される料金体系です。そのため「サービス提供時間」の定義を、コンサルティング契約書で明確にしておく必要があります。特に、出張などの遠出が予定されるときは、「移動時間が含まれるかどうか」についても記載しましょう。

夜間、土日など、対応時間によって単価がことなるときは、そのことも契約書に記載しておきます。

第4条 コンサルティング業務の報酬

クライアントはコンサルタントに対し、次の単価にサービス提供時間を乗じた金額を、当月分を翌月末日限り、コンサルタントの指定する金融機関口座に振り込む方法により支払う(振込手数料はクライアントの負担とする)。
なお、サービス提供時間とは、本件コンサルティング業務の遂行にかかった時間をいうものとし、出張について両当事者が別途協議をする場合を除いて、移動時間は含まれないものとする。

(1) 平日業務時間内(午前10時~午後10時)
 XXXXX円/時間
(2) 平日夜間(午後10時~午前10時)
 XXXXX円/時間
(3) 休日
 XXXXX円/時間

定額方式

「定額方式」の報酬は、コンサルティング契約を締結していた期間に応じて、一定期間について固定した報酬を支払うという報酬体系です。

例えば、「顧問弁護士契約」もまたコンサルティング契約の一種ですが、月額固定報酬としていることが一般的です。

「定額方式」の場合には、「仕事が増えても、報酬が増えない」という事態に陥ることが想定されるため、「その固定報酬の範囲内で、どの程度のコンサルティングサービスを提供してもらえるか」を明記しておくことが重要です。

例えば、電話やメールによるコンサルティングを行う場合、「回数に制限をつけるかどうか」に注意してください。

第4条 コンサルティング業務の報酬

1. クライアントはコンサルタントに対し、月額XXXXXX円を、当月分を翌月末日限り、コンサルタントの指定する金融機関口座に振り込む方法により支払う(振込手数料はクライアントの負担とする)。

2. 前項の定めにかかわらず、次の各号の一に該当する場合には、コンサルタントは再見積もりを行い、報酬の変更を請求できる。
(1) コンサルティングを内容とする電話が、月XX回を超えたとき
(2) クライアントの都合により、前項の期限までに業務を遂行することが困難であることが明らかとなったとき

プロジェクト方式

「プロジェクト方式」の報酬は、特定のプロジェクトについて、そのプロジェクトの最初から最後までコンサルティングを行うのに必要な総額報酬を決める方法です。

この場合には、特に、コンサルティング契約書においてプロジェクト内容を詳細に特定することが必要となります。

「プロジェクト方式」では、プロジェクトの総費用に対して一定の割合をかけた金額を、コンサルタントの報酬とするケースもあります。また、コンサルタントの報酬のうち一定の割合を成功報酬とする場合は、コンサルティングによるプロジェクトの成功・不成功の基準を明らかにします。

第4条 コンサルティング業務の報酬

1. クライアントはコンサルタントに対し、本件コンサルティング業務の内容であるXXプロジェクトの遂行について、同プロジェクトの総費用のXX%を報酬として支払う。

2. クライアントはコンサルタントに対し、前項の報酬のうちXX%を、20XX年XX月XX日限り、コンサルタントの指定する金融機関口座に振り込む方法により支払う(振込手数料はクライアントの負担とする)。本項の報酬は、コンサルティング業務の結果にかかわらず返金されない。

3. クライアントはコンサルタントに対し、第1項の報酬の残額を、XXプロジェクトの終了時に支払う。支払方法は、前項と同様とする。

コンサルティング業務にかかる費用負担

「第5条 コンサルティング業務にかかる費用負担」では、交通費、宿泊費、通信費、郵送代など、コンサルティング契約を遂行するのにかかる費用を、コンサルタント(受託者)、クライアント(委託者)のどちらが負担するのかを記載します。

実費が少額の場合には、コンサルタントの報酬に含まれるものとしてコンサルタントが負担することもありますが、実費が高額になればなるほど、クライアント負担とするよう協議することが通常です。

この場合、クライアント(委託者)側の負担となる費用の定義を正確に決め、どのまでの範囲について負担をするのかを、コンサルティング契約書に明記しなければなりません。

クライアント(委託者)側として、「思いもよらない課題な実費請求を受けた」というトラブルにならないためには、「委託者側の認める範囲のものに限定する」という条項を定めることもあります。

第5条 コンサルティング業務にかかる費用負担

コンサルタントが本件コンサルティング業務を遂行する際に要する交通費、会議費、飲食費などの経費は、原則としてコンサルタントの負担とする。ただし、クライアントの依頼によってXXXX円以上の費用負担が生じるときは、両当事者間で協議し、都度経費の負担者及び支払い方法を定める。

コンサルティング業務遂行時の貸与品など

コンサルティング業務をスムーズに進めるためには、クライアントからコンサルタントに対して一定の情報を提供しなければならない場合があります。これに加えて、パンフレットなどの動産を貸与することがあります。

さらに、コンサルタント(受託者)がクライアント(委託者)の社内で業務を行うことがある場合に、事務所の鍵・セキュリティカードなどを貸与することがあります。このようなことが想定される場合、コンサルティング契約書にもあらかじめ定めておきましょう。

また、この場合には、貸与品が有償であるか無償であるか、契約終了時の貸与品の処分(返還もしくは廃棄)も定めておきます。

第6条 貸与品

1. クライアントはコンサルタントに対して、コンサルタントの求めに応じて、本件コンサルティング業務の遂行に必要となる自社の資料、情報などを無償で貸与する。

2. コンサルタントは、本件コンサルティング業務の終了時に、前項で貸与をうけた物品については、クライアントの指示にしたがって、ただちに廃棄もしくは返還する。

知的財産権の帰属

コンサルタント(受託者)の固有の知識、技術、ノウハウを保護するための条項が「第7条 知的財産権の帰属」です。

報告書など、コンサルティング業務の遂行にともない当然予想される成果物の著作権はクライアントに帰属するとすることが多く、それ以外のものについてはコンサルタントに帰属するという条項をコンサルティング契約書に記載することがあります。

なお、著作権については、「(著作権法27条及び28条の権利を含む)」と記載しなければ、この2つの権利(「翻訳権・翻案権」「二次的著作物の利用に関する権利」)は移らないこととされていること、「著作者人格権」については権利譲渡や放棄ができないため「著作者人格権を行使しない」と記載しなければならないことに注意が必要です。

第7条 知的財産権の帰属

1. コンサルティング業務の遂行において作成された著作物の著作権(著作権法27条、28条の権利を含む)、発明その他の知的財産権は、すべてクライアントに帰属するものとする。託業務の過程で作成された著作物の

2. コンサルタントは、前項の著作物について、著作者人格権を行使しない。

成果物の利用

コンサルティング業務によって生じる成果物には、コンサルタントの重要なノウハウ、技術が含まれています。そのため、クライアント(委託者)に対して、自社の業務に活用する以外の目的で成果物を利用することを禁止する場合があります。

コンサルタント側からすれば、背信行為ともとれる行為は、コンサルティング契約書で厳しく禁止すべきです。

例えば、クライアント(委託者)がコンサルタント(受託者)に無断で、成果物を公表することを禁止するコンサルティング契約書の例があります。

第8条 成果物の利用

クライアントは、本件コンサルティング業務によって生じる成果物について、自身の業務に活用する以外の目的に使用してはならず、コンサルタントの事前の書面による承諾を得ずに公表してはならない。

一方で、コンサルタント、クライアントのいずれからも、自身の成果を発表することが必要だと考える場合があります。

このような場合には、事前の承諾を条件としたうえで、万が一、成果物の利用によって損害を被る場合には、どの程度の責任を負担するかについても、コンサルティング契約書に定めておくとよいでしょう。

秘密保持義務・個人情報

コンサルティング契約書を締結すると、顧客情報、売上、ノウハウ、製品の製造方法など、さまざまな企業秘密や個人情報を、コンサルタントに対して明らかにすることがあります。そして、企業秘密、個人情報が漏えいしたり、目的外に使用されてしまったりすると、重大な損失を被ることになります。

そのため、コンサルティング契約書には、秘密保持義務に関する条項が記載されることが通常です。

重要な契約の場合には、コンサルティング契約書とは別に、秘密保持契約書(NDA)を締結して万全を期すこともあります。

第9条 秘密保持義務

コンサルタントは、クライアントの秘密情報を適切に管理し、本契約の遂行以外の目的のために使用してはならず、正当な理由なく第三者に漏洩してはならない。

参 考
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コンサルタントの責任制限

コンサルティング業務によって発生した問題や、期待した効果が上がらなかった場合についての受託者であるコンサルタントの責任を明記します。

委任契約の性質を有する一般的なコンサルティング契約の場合は、コンサルタントは、結果についての責任を負わないとされることが一般的です。

したがって、保証をともなうコンサルティング契約の場合は、保証内容(例:返金保証、成功報酬など)を契約書に明記しなければ、保証の有無や保証内容を巡ってトラブルになる可能性があります。

特に、返金保証の場合の返金の条件、成功報酬の場合の成功の基準などを明らかにしておくことは実際に保証する段階になった際に、保証の可否を巡って争いとなる可能性があります。

第10条 コンサルタントの責任制限

本件業務の遂行があくまでもノウハウの提供であって、いかなる結果をも確定的に保証するものではない。また、本契約書に関して、コンサルタントがクライアントに対して責任を負う場合には、その時点までに支払われた報酬額を上限とする。

競業避止義務

クライアント(委託者)にとって、競争相手である同業者にもアドバイスが与えられてしまっては、コンサルティング契約締結の意味がなくなる場合があります。これを気にして、「1業種1社」とするコンサルタントもいます。

クライアント(委託者)の立場としては、コンサルティング業務を遂行する中で得られたノウハウ、経験、実績やデータを競合他社に漏洩されることは避けなければなりません。

コンサルタント(受託者)の立場では、同業種の業務を多く経験することで専門性を高めることができるため、競業避止義務をつけないか、もしくは時間的・場所的な範囲を制限するなどの限定を要望すべきです。

第11条 競業避止義務

コンサルタントは、本件コンサルティング契約の期間中は、クライアントと同一ないし類似の業種を営む事業者(ただし、東京23区内に本店の所在する法人ないし個人事業主に限る。)に対し、本件コンサルティング業務と同一ないし類似のコンサルティング業務を提供してはならない。

再委託

「第12条 再委託」は、コンサルタント(受託者)が、第三者に業務を委託することができるかどうかを定める条項です。

コンサルタント(受託者)側の立場では、専門領域以外の業務を第三者に外注しなければならないことがあります。コンサルタント(受託者)は専門家ですから、その判断のもと、必要のあるときには自由に第三者を利用し、その責任はコンサルタントがとることを定めることがあります。

第12条 再委託

コンサルタントは、コンサルタントの責任において、本件コンサルティング業務の全部または一部を第三者に再委託することができる。この場合、コンサルタントは、再受託者の行為について、一切の責任を負う。

しかし一方で、コンサルティング契約がクライアントとコンサルタントの信頼関係に基づいて成立した場合、クライアント(委託者)側の立場では、「すべての業務をコンサルタントにやってほしい」と要望し、再委託を禁止することがよくあります。

折衷案として、原則的には再委託禁止とし、クライアント(委託者)が事前に承諾することを条件に、再委託ができると定めるコンサルティング契約書が多いです。

この場合、「承諾があったかどうか」という争いが起こらないよう、承諾は「書面によること」を定めた上、再委託者の行為の責任はコンサルタントが負うことも、コンサルティング契約書に定めておきます。 

第12条 再委託

本件コンサルティング業務の再委託は禁止とする。ただし、コンサルタントは、クライアントの事前の書面による承諾がある場合には、本件コンサルティング業務の全部または一部を第三者に再委託することができる。この場合、コンサルタントは、再受託者の行為について、一切の責任を負う。

権利義務の譲渡禁止

コンサルティング契約は、コンサルタントの能力、クライアントの事業などに依存するため、一般的には、その契約上の権利義務が譲渡されることを予定していません。

第13条 権利義務の譲渡禁止

本契約の両当事者は、事前に相手方の書面による承諾を得た場合をのぞき、本契約にもとづく一切の権利義務を、第三者に譲渡してはならない。

コンサルティング契約の期間

コンサルティング契約が「委任契約」の場合には、「仕事の完成」などの終了事由が予定されていないため、契約の期間を、コンサルティング契約書に定めておくことが一般的です。

コンサルタント、クライアントのいずれの立場であっても、契約の長期継続を望むときは、期間満了後も「自動更新」とすることをコンサルティング契約書に定めておくことができます。

第14条 コンサルティング契約の期間

1. 本契約の契約期間は、契約締結日からX年間とする。
2. 前項の契約期間の満了のXか月前までに、コンサルタントまたはクライアントから解約の意思表示がない場合には、本契約は同内容でさらにX年間更新されるものとし、その後も同様とする。

参 考
契約期間の定め方と、契約書の「中途解約条項」

契約書によって定める契約の内容によっては、「契約期間」を定めておいた方が良い場合があります。 「契約期間の定め方をどのようにすべきでしょうか?」といった法律相談に対して、具体的な条項と共に、弁護士が解 ...

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コンサルティング契約の解除

コンサルティング契約において、契約違反があった場合に、契約を解除することができることを定めておきます。

あわせて、相手方が破産したり、支払不能となったりするなど、コンサルティング契約書どおりに債務を履行することが困難である一定の要件がある場合にも、契約を解除できることを定めておきます。

第15条 コンサルティング契約の解除

本契約の両当事者は、相手方において次の各号の一にあてはまる事情があるときは、本契約を解除することができる。

(1) 本契約の条項に違反し、XX日前に催告しても、違反が是正されないとき
(2) 支払停止に陥り、又は、仮差押えを受け、もしくは、破産・民事再生・会社整理・会社更生の手続きを開始したとき
(3) 公租公課の滞納処分を受けたとき
(4) 手形交換所にて取引停止処分を受けたとき

損害賠償

契約上の債務を履行しなかったり、不法な行為によって相手方に損害を与えた場合には、損害賠償を請求することがあります。

損害賠償請求は、契約書に定めなくても民法にしたがって行うことができますが、注意のため、コンサルティング契約書にも念のため定めておくことが一般的です。

第16条 損害賠償

コンサルタントもしくはクライアントが、契約の相手方当事者に損害を与えた場合には、その損害を賠償する。

コンサルタント(受託者)側としては、クライアントの事業規模が大きくなるほど、高額の損害賠償を受けるリスクが高まりますが、アドバイスしかしていない状態で多額の損害賠償請求を受けることのリスクを負いきれない場合があります。

このような場合、コンサルティング契約書において、損害賠償請求の範囲を限定することがあります。損害の限定のしかたには「直接の損害に限る」というように損害の種類を限定する方法や、損害額の上限を設ける方法があります。

第16条 損害賠償

コンサルタントもしくはクライアントが、契約の相手方当事者に損害を与えた場合には、その直接の損害に限り、賠償する。ただし、コンサルタントが賠償する損害額は、コンサルタントの受領した報酬額を上限とする。

参 考
契約書に「損害賠償条項」を記載するとき注意すべきポイント

契約をする場合には、一般的に、一方の当事者が、他方の当事者に対して「債務」を負います。そして、「債務」が履行されなかったときは、「損害賠償」や「契約解除(解約)」などといった責任追及が問題となります。 ...

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反社会的勢力の排除

「反社会的勢力の排除」に関する条項は、一般的に「暴排条項」といわれます。「暴力団排除条例(暴排条例)」により、反社会的勢力と関与してはならないと決まっています。

そのため、契約当事者が反社会的勢力ではないことを、コンサルティング契約書においても表明し、万が一反社会的勢力であった場合には、ただちに契約を解除できることを定めておきます。

参 考
暴力団排除条項は義務?契約書に記載すべき理由と、条項例

暴力団排除条例が施行されてから、暴力団排除、反社会的勢力の排除の動きがますます強化されています。 この流れを受けて、契約書を作るときに、「暴力団排除条項(反社会的勢力排除条項)」が入れられているケース ...

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協議条項・合意管轄

最後に、契約に定めていないことや、契約の解釈について争いとなったときには、円満に協議をすることを定め、あわせて、万が一訴訟になった場合に「どこの裁判所で争うこととするのか」のルールを定めます。

争う裁判所を事前に決めておくことを「合意管轄」といいます。

トラブルを管轄する裁判所は複数存在することがあるため、「その裁判所でしか争いたくない(他の裁判所では争いたくない)」という場合には「専属的合意管轄」と記載をしなければなりません。

第18条 協議条項・合意管轄

1. 本契約に定めのない事項、及び、本契約の解釈に争いの生じたときは、契約の両当事者が円満に協議をして決めるものとする。

2. 本契約に関する一切の紛争は、東京地方裁判所を、第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

コンサルティング契約書の締結時の注意点

コンサルティング契約書の「作成時」の注意点として、文案を作成し、契約の相手方に提案するときに注意すべきポイントを、契約書の各条項ごとに解説してきました。

次に、コンサルティング契約書の「締結時」に注意すべきポイントを、弁護士が解説します。

コンサルティング契約書を締結する理由を理解する

「契約」は、口頭でも成立するものとされており、契約書の存在は必須ではありません。では、「なぜ契約書を締結しなければならないのか」というと、「のちにトラブルとなることを防止するため」という目的があります。

特に、コンサルティングというサービスは目に見えないものであることから、契約書を締結せずに始めてしまうと、業務内容、報酬の支払いの点でトラブルとなりやすいです。

そのため、契約書を事前に作成しないまま進めることは、コンサルタント(受託者)側はもとより、クライアント(委託者)側であっても、お勧めできません。

書式・ひな形は修正が必要

今回、コンサルティング契約書の書式・ひな形を示し、記載例をあげながら解説をしてきました。しかし、これらはあくまでも一般的な例にすぎません。

条項の内容は、個別のケースにあわせて修正する必要があります。

契約書は、トラブル回避のために、契約当事者の一方の視点にたって作成・修正されるものです。そのため、インターネット上にある書式・ひな形を利用することで、相手方にとって有利で自分にとって不利な書式・ひな形を使いまわしていることもあるため、注意が必要です。

印紙代など

コンサルティング契約書を締結するときの注意点の3つ目は「印紙を貼る必要はない」ということです。

「印紙税法」という法律で、一定の「課税文書」については印紙を貼る必要があるものとされていますが、コンサルティング契約書の性質が「委任契約」であれば、印紙税はかかりません。

ただし、コンサルティング契約書の性質が「請負契約」の場合、同じコンサルティング契約書であっても印紙を貼る必要のある場合があります。

「企業法務」は、弁護士にお任せください!

今回は、コンサルティング契約書について、その作成時、締結時に注意しておきたいポイントを解説しました。コンサルティングは知識の提供であり、元手が不要であることから、起業直後の個人事業主やスタートアップ、ベンチャーでもコンサルティング契約書を作成・締結することがよくあります。

しかし、そのような初歩的な契約であるにもかかわらず、「目に見えないサービスを提供する」性質であることから、その成果の決め方、対価の支払方法、責任の所在など、トラブルの火種が多くひそんでいます。

将来の紛争リスクを予防し、安心してコンサルティング契約書を締結するためには、コンサルタント側はもちろん、クライアント側も、コンサルティング契約書のリーガルチェックについて弁護士にご依頼ください。

「契約書」のお勧め解説

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