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建設業法ガイドラインとは?建設業が守るべきルールをわかりやすく解説

建設業を営む建設会社において、最も重要な法律が建設業法です。

建設業法では、建設工事を行う大前提となる「建設業許可」について定め、施工品質の向上を目的とした下請けを使う際のルールを定めています。

しかし、建設業法を読むだけでは、建設会社が守るべきルールを具体的に知ることはできません。法律を更に具体化し、わかりやすく説明しているのが「建設業法令遵守ガイドライン」です。ガイドラインを読めば、どのような取引が違法な下請けとなるのか、わかりやすく理解できます。

今回は、建設業法ガイドラインの定める、重要な11つのルールを、企業法務に強い弁護士が解説します。

建設業法令遵守ガイドライン(国土交通省)

目次(クリックで移動)

見積もり条件の提示

下請会社と請負契約を締結する場合、請負報酬を定める必要があります。

そのために見積もりを依頼するのが通例ですが、建設業法令遵守ガイドラインは、下請けに対する見積もり依頼の際、工事内容や契約条件を具体的に示さなければならないと定めています。

下請会社が適正な請負報酬を算定するには、施工する工事の内容など、条件を知らなければ不可能です。逆に言うと、工事の内容や契約条件を隠して見積もりをさせ、不当に安い報酬で工事させるのを禁止するためとも言えます。

元請会社が、下請会社に示すべき見積もり条件は、例えば次の通りです。

  • 工事の名称
  • 工事の場所
  • 施工の対象
  • 工程及びスケジュール
  • 施工環境

これらの見積もりの条件は、口頭ではなく書面で提示する必要があります。

書面による契約

建設工事の請負契約では、契約内容を記載した書面を作成する必要があります。

書面による契約をしなければならず、口頭のみでの契約は建設業法令遵守ガイドラインで禁じられています。この契約書は、工事の着工前に作成しなければなりません。契約条件の書面化が義務付けられているのは、元請会社と下請会社の間で、事後に契約トラブルが生じるのを防ぐためです。トラブルが起こってからでは、下請会社にとって不利な条件を押し付けられる危険があります。

請負契約書に記載すべき内容は、次の通りです。

  • 工事の内容
  • 請負報酬の金額、支払の方法
  • 着工の時機
  • 完工の時機
  • 第三者に損害を与えた場合の賠償額の負担
  • 完成後の検査の時期

最初の取引時だけでなく、下請会社に追加工事を発注する場合も同じく、契約書を作成する必要があります。この契約書についても、追加工事の着工前に作成しなければなりません。

不当に低い請負代金

元請会社と下請会社の関係では、明確な上下の格差があります。そのため、下請会社に工事を発注する際、元請会社が強い立場を利用し、不当に低い請負代金で発注することは、建設業法令遵守ガイドラインで禁止されています。

下請会社は、拒否しづらい立場にあり、不当に安い報酬を受け入れざるを得ず、強制されるのを防ぐためのルールです。

具体的には、通常必要な原価に満たないほどの請負金額で契約することは許されません(「通常必要な原価」とは、材料費や現場管理費など、工事を行う際に通常必要となる全ての費用を合わせた金額とされます)。

不当に低い報酬だと、受注するほど下請会社の損失が膨らみ、社員に無理をさせて劣悪な環境で労働させるなど、負の連鎖の原因となります。

指値発注

指値発注は、元請会社と下請会社の関係において、請負報酬について十分に協議せず、元請けの指定した報酬額で工事を発注するやり方です。前章の「不当に低い請負代金」と同じく、元請会社の強い立場を利用し、下請会社に不利益な発注を強いることのないよう、建設業法令遵守ガイドラインでルールが定められています。

指値発注をした結果、不当に低い請負代金となる場合、建設業法違反となります。

したがって、元請会社としては、一方的に報酬額を決定するのではなく、下請会社の意見も聴きながら、十分に協議してから報酬額を決めなければなりません。

不当な使用機材等の購入強制

下請会社が元請会社から、建設工事に必要な資材の購入を強制される例があります。

元請会社から調達する方が有利であったり、安価であったりといった理由で、下請け自らの意思で資材購入を行うなら、それでも良いでしょう。しかし、別の業者から購入する方が安価だったり、そもそも不要な資材だったりするのに、元請けの強い立場を利用して購入させるのは、建設業法令遵守ガイドラインで禁止される行為です。

他に安く仕入れられる業者がいるにもかかわらず、優越的な地位を使って購入強制をすれば、下請けの利益を不当に侵害することとなるからです。

やり直し工事

下請会社に責任がないのに、元請会社が工事のやり直しを命じるのは、建設業法令遵守ガイドラインで禁止されています。

責任がないなら、やり直しの手間は不要であり、元請けの優位な地位を利用して無駄な行為を強いることで、下請けの利益が不当に侵害されるおそれがあるからです。

どうしてもやり直し工事をする必要があるなら、一方的に命令するのではなく、責任の所在を明らかにした上で、公平な負担の下にやり直しの協議をすべきです。下請会社に責任がない場合、やり直し工事の費用は元請会社が負担しなければなりません。

なお、契約内容と異なっていたり、工事に欠陥があったりなど、下請会社の責任が明らかな場合のやり直し工事まで禁じられるわけではありません。

損害賠償条項」の解説

赤伝処理

赤伝処理とは、元請会社が下請会社に対して請負報酬を支払うときに、そこから諸費用を差し引く処理のことを指します。赤伝処理そのものは、直ちに建設業法違反ではないものの、報酬の未払いや、それによる建設工事の中断など、紛争の火種となるおそれが大いにあります。

零細企業の中には、支払いスパンを延期されたり、本来着金するはずの売上が得られなかったりすると、自転車操業となり、倒産を余儀なくされる例もあります。元請会社が赤伝処理をする予定なら、あらかじめ協議をし、下請会社と合意をしておくか、最初の契約書に明記しておくべきです。

入金遅延の対応方法」の解説

工期

建設工事では、定めた工期に遅れるなど、当初の予定が変更されることは少なくありません。

しかし、予定外の遅れが生じたとしても、その負担を下請会社に押し付けるのは不当であり、建設業法令遵守ガイドラインでも禁止されます。工期について、元請けの優位な立場を利用して、下請けに不利な工期を押し付けるのは、建設業法に違反するおそれがあります。

また、下請会社に責任のある場合を除いて、工期が変更になって増額した工事費用を、全て負担させることも禁止されています。

支払保留

下請会社が工事を完成させ、完成物を納品したにもかかわらず、元請会社が長期に渡って請負報酬を払わない、いわゆる「支払保留」は、建設業法に違反する可能性の高い行為です。

請負報酬が未払いとなってしまうリスクを回避するため、引き渡しが完了したら、元請けは速やかに請負報酬を支払うよう努めなければなりません。

支払猶予」の解説

長期手形

支払保留と同じ趣旨で、未払いのリスクを回避するため、割引困難な手形を利用して請負報酬を払うのもまた、建設業法令遵守ガイドラインで禁止された行為です。

通常の手形と、割引困難な手形の区別は、振出日から支払期日までの期間が120日を超えるかどうかを一応の目安として判断されます。

帳簿の備付及び保存

建設会社では、営業所ごとに、営業に関する帳簿を備付け、5年間、保存する必要があります。また、発注者と締結した住宅新築を内容とする建設工事については保存期間が10年間となります。

営業所に備え付けられた帳簿に記載すべき事項は、具体的には次の点です。

  • 営業所の代表者の氏名
  • 発注者と元請けの間の請負契約の内容
  • 元請けと下請けの間の請負契約の内容

加えて、締結した契約書面の写しを、帳簿に添付しておきます。

建設業法令遵守ガイドライン(国土交通省)

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