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退職直前・直後のボーナス(賞与)支払う必要ある?減額できる?

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多くの会社では、6月~7月に夏季賞与、11月~年末頃に冬季賞与を支払います。労働者にとっては待ち遠しい季節ですが、会社側、特に、業績のよくない会社にとっては、賞与(ボーナス)の負担が重くのしかかります。

従業員の中には、「賞与(ボーナス)をもらってから辞めよう。」と考え、賞与支給月の末に退職の意思表示をする者もいます。

退職直前、もしくは退職直後の社員(従業員)に対しても、賞与(ボーナス)を支払う必要があるのでしょうか。賞与(ボーナス)を少しでも減額できないものでしょうか。

既に退職後の「元社員」は当然、賞与(ボーナス)支給時点で既に退職を予定している社員に対しても、なるべくなら賞与(ボーナス)を支給したくないのが会社の本音です。

今回は、会社が、退職直前、直後の社員に対して賞与(ボーナス)を支払う必要があるのかについて、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士が解説します。

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退職と、賞与の「支給日在籍要件」の関係

退職を予定している、もしくは、退職した社員と賞与(ボーナス)の関係で、会社側(使用者側)が損しないために理解しておかなければならない最重要の考え方が、「支給日在籍要件」です。

まずは、「支給日在籍要件」の基礎知識と、会社側(使用者側)の適切な対応方法について、弁護士が解説します。

支給日在籍要件とは?

「支給日在籍要件」とは、賞与(ボーナス)の支給日時点で社員として在籍している従業員にしか、賞与(ボーナス)を支払わなくてもよいという会社の取り決めのことです。

「支給日在籍要件」を就業規則、賃金規程、賞与規程などに定めておけば、少なくとも、賞与(ボーナス)を支払う日より前に退職した元社員に対しては、賞与を支払う必要がありません。「支給日在籍要件」は、予め就業規則、賃金規程、賞与規程に定め、労働者に対して周知する必要があります。

会社規程類における「支給日在籍要件」の定め方は、次の通りです。

第○条(賞与の支給日在籍要件)

前条の賞与の支給日に在籍しない労働者には、賞与を支給しない。

しかし、「支給日在籍要件」を定めている会社では、社員は賞与支給日に在籍していなければなりませんから、できるだけ賞与(ボーナス)をもらってから辞めようとします。

その結果、今回解説する「退職予定の社員にも賞与を満額払う必要がある?」という会社側のご相談が生じるわけです。

退職後の元社員には、賞与は不要

以上の通り、賞与(ボーナス)の「支給日在籍要件」を、就業規則、賃金規程、賞与規程などに設けている会社は、賞与(ボーナス)の支給日より前に既に退職している元社員に対して、賞与(ボーナス)を支払う必要はありません。

賞与(ボーナス)には「算定対象期間」が設定されています。例えば、「本年1月~5月の実績を評価し、本年6月に賞与を支払う。」といった形です。

「支給日在籍要件」を定めておけば、「算定対象期間」に継続して勤務していたとしても、賞与(ボーナス)を支給しなくて済みます。

現在、会社規程類に「支給日在籍要件」を定めていない会社は、あらたに「支給日在籍要件」を定めることが就業規則の不利益変更にあたり、「変更の合理性」もしくは「全従業員の同意」が必要となります。

参 考
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退職理由によらない

以上で説明した「支給日在籍要件」を定めた場合に、支給日に在籍しない元社員に対して賞与(ボーナス)を支払わなくてもよいことは、退職の理由によりません。

つまり、自己都合となる退職(辞職など)であろうと、会社都合となる退職(退職勧奨、解雇など)であろうと、いずれにせよ、元社員に対する賞与(ボーナス)が不要となります。

「退職直前、直後の退職とボーナス」という本解説の趣旨からすると、労働者側で退職日を決められる「辞職」「合意退職」に限る話のようにも聞こえますが、それだけでなく「定年退職」など労働者側で退職日を左右できないケースでも、「支給日在籍要件」は有効とされています。

賞与(ボーナス)の前払は不要

「支給日在籍要件」は、会社規程に明示して労働者に明示しなければなりません。労働者への周知を徹底する会社では、賞与(ボーナス)の支給日前に退職する社員から、「賞与の前払」を要求されるおそれがあります。

しかし、「支給日在籍要件」が会社の規程類に適切に定められている場合には、賞与の算定期間のすべてを勤務したとしても、「賞与の前払」に応じる必要はありません。

なお、退職時に未払いとなっている賃金があるときは、退職者の請求から7日以内に支払わなければならないと、労働基準法で決められています。

そのため、「支給日在籍要件」を満たし、賞与(ボーナス)の支払が必要な場合には、万が一支払をしていない場合であっても、請求が合ったら即座に対応する必要があります。

注意ポイント

賞与の前払を拒否したことを発端として、労使トラブルに発展し、残業代請求を初め、労働者側からの要求が強まるおそれがあります。

賞与の前払に応じる必要がないことは当然ですが、退職時のトラブルを避けるためにも、その他の未払い債務が存在しないかどうか、入念に精査してください。

退職予定の社員の賞与を減額できる?

以上の通り、退職後の元社員から賞与(ボーナス)を請求された場合、「支給日在籍要件」を定めておくことで賞与(ボーナス)を支払わないことができると解説しました。

一方で、たとえ「支給日在籍要件」を定めていても、支給日直後に退職を予定している社員(従業員)に対しては、賞与(ボーナス)を支払う必要が出てきます。

そこで次に、会社側(使用者側)の適切な対策として、「直近に退職を予定している社員(従業員)の賞与(ボーナス)を減額できないか。」と考えるのは必然ですが、この点についても弁護士が解説していきます。

退職は止められない

退職を予定する社員が、会社にとって非常に重要な人材であったとしても、退職自体を完全に止めることはできません。

労働者には、憲法上「職業選択の自由」が認められており、その内容として「退職することは労働者の自由」だからです。このことは「退職には会社の承認が必要」と就業規則に定めておいても同じことです。

民法のルールによれば、月給制の社員の場合、労働者が自由に退職できるタイミングは次の通りとされています。当然ながら、労使が合意すれば、この時期でなくても退職できます。

  • 給与計算期間の前半までに退職の意思表示をした場合
    :当月末に退職が可能
  • 給与計算期間の後半に退職の意思表示をした場合
    :翌月末に退職が可能

退職が、この程度の短期間で自由にできてしまうため、賞与(ボーナス)支給まで退職を隠しておき、支給直後に退職の意思表示をすることができてしまいます。

会社側(使用者側)としては、就業規則に、「退職する場合には、○か月前に事前通知が必要」と記載して退職の自由を縛るのではなく、別の対策が必要となるわけです。

賞与を減額するための規程を整備する

「支給日在籍要件」によっても、支給日直後に退職を予定する社員に対する賞与(ボーナス)を拒否することはできず、退職自体を止めることもできないことをご理解ください。

その上で、支給日直後の退職予定があらかじめ判明している社員に対して、賞与(ボーナス)を減額することも可能です。

ただし、一定の条件、基準にしたがって賞与(ボーナス)を減額するためには、あらかじめ、就業規則、賃金規程、賞与規程などに明記し、労働者に対して周知、徹底しておかなければなりません。

なお、現在そのような規定が存在しない場合に、あらためて定めなおすことは、「不利益変更」となるリスクが高いため、減額幅を合理的な範囲にするなど、慎重に進める必要があります。

減額の理由を説明する

退職を予定している従業員に対して、賞与(ボーナス)を減額するという場合には、その理由についても、労働者の納得が得られるようきちんと説明する必要があります。

賞与(ボーナス)は、これまで働いてきたことへの対価の後払いという性質と、今後の期待に対する支払という性質とをあわせもっています。

このうち、後者の「今後の期待に対する支払」という性質は、退職を予定している従業員にはあてはまりませんから、一定程度の減額は、労働者に納得をしてもらうことが可能でしょう。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、「退職後の元社員」、「退職を直近に予定している社員」のそれぞれについて、賞与(ボーナス)を支払う必要があるのかについて、弁護士が解説しました。

退職後の元社員からの賞与(ボーナス)の支払い要求を断るためにも、「支給日在籍要件」をきちんと会社規程に定め、周知しておくことが会社側(使用者側)の適切な対応です。

合わせて、退職予定の社員に対しても、賞与の評価を適切に行い、会社が損をすることのないよう、賞与の評価を賞与規程等で明確化しておくことがお勧めです。

就業規則、賃金規程、賞与規程を初め、会社の規程類にご不安がある会社は、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士に、お気軽に法律相談ください。

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