★ お問い合わせはこちら

会社が破産するデメリットは?リスクを回避して倒産する方法も解説

業績が悪化し、倒産を考えざるを得ないタイミングで頭をよぎるのが「会社を破産させるとデメリットがあるのか」という点。「破産」「倒産」は、悪い想像をする方が多いでしょう。破産する会社の社長は、債権者に怒鳴られたり、必死に謝ったり、夜逃げを余儀なくされたりなどのイメージもあります。悲惨な未来を想定するほどに、デメリットやリスクが気になり、覚悟がつかない方は多くいます。

しかし、これらデメリットの多くは、悪いイメージが誇張されたもの。現実の法人破産では、適切に配慮すればデメリットを減らして、安全に進めることができます。

会社の破産は、法律によって認められた「再出発」の手続きです。破産するためには裁判所の許可が必要であり、まったく悪いことではありません。イメージで破産を不安視し、過度に恐れた結果、そのタイミングを逃すほうがダメージが大きくなってしまうケースもあり、正しい理解が必要です。

今回は、会社が破産するデメリットと、リスクを回避して倒産する方法について、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 破産すると法人が消滅することで、財産や社員などを失うデメリットがある
  • 会社が破産するデメリットを正確に理解し、その影響を限定する努力をする
  • 会社の破産には、負債がなくなるなどメリットも多く、適切なタイミングで活用すべき

\お気軽に問い合わせください/

目次(クリックで移動)

会社が破産するデメリットとは

会社を破産させるのには、当然ながらデメリットがあります。デメリットが強調されたり、なんとなくの悪いイメージで恐れるのはストップすべきですが、存在するデメリットやリスクは、正しく理解しなければなりません。

正確に理解し、正しく恐れることが、会社の破産を有効に活用するポイントです。

法人が消滅する

会社が破産すると、法人は消滅します。法人格がなくなることによって、法人の存在を前提としていた事業は、継続できなくなるデメリットがあります。創業し、経営努力を重ねてきた社長にとって、我が子を失うに等しい痛みだと感じるでしょう。会社がなくなることで、これまで築き上げた信用やブランド力も失われます。

ただし、このデメリットは、早期に対策すれば、回避できます。会社全体としては赤字でも、一部の事業については利益があるなら、その事業のみ切り出して他社に事業譲渡できます。この方法なら、ブランド力について別会社に引き継ぐこともできます。また、法人が消滅した後に、個人事業主としてその事業を続けるのは差し支えありません。

会社の財産が失われる

会社が破産し、法人が消滅すれば、その財産は失われるデメリットがあります。法人破産の手続きのなかでは会社の所有する財産はすべて債務の支払いに充当されます。その種類を問わず、名義が会社なら、清算を余儀なくされます。

  • 会社名義の預貯金
  • 会社名義の不動産(土地・建物など)
  • 会社名義の機械、車両などの動産

法人破産の手続きは、個人の破産とは違い、手元における財産(自由財産)はなく、すべての財産を換価し、債務の弁済に充当しなければなりません。また、代表者が、会社の債務を連帯保証しているときは、連帯保証人の個人の財産も失われてしまいます。

自己破産しても残る自由財産は、次の解説をご覧ください。

社員を解雇しなければならない

会社が破産すると、社員を解雇しなければならないデメリットがあります。社員は、会社との間で労働契約を交わしており、その一方当事者が破産によりいなくなれば、就労することはできません。会社を動かすヒト・モノ・カネは、全て破産によって失われますから、物的資産だけでなく人的資産もまた、流出してしまいます。

なお、例外的に、破産手続きに必要となる範囲で、社員の雇用を継続することができ、管財業務の遂行に必要となる人員は残しておくことができます。それでも、破産手続きの終了時までには、全員解雇しなければなりません。

社員の給与債権は、優先的な会社が許されますが、資産が少ないと、給料の未払いが生じます。倒産による給料の未払いは、未払賃金立替払制度により、一部を国に立替てもらうことができます。

倒産するときの従業員への告知、説明は、次の解説をご覧ください。

取引先の信用を失う

破産すれば、会社としての信用を失うデメリットがあります。突然に破産してしまい、未払の債権や売掛金などが生じてしまえば、これまで継続的に取引していた取引先の信用を失うことは間違いありません。経営者個人も破産すれば、信用情報(いわゆるブラックリスト)に記録され、5〜7年間、新規の融資が受けられなくなり、新たな借入を起こせなくなります。

もっとも、既に債務を支払えないなら、取引先の信用を失うデメリットを過剰に恐れ、無理な延命を試みるのは逆効果です。早く倒産させ、再出発を図るべきなのに、個人のクレジットカードでの借入を法人の資金繰りに回したり、違法業者から借金したり、といった方法は、いざ法人破産しかなくなったとき、さらに大きな迷惑をかけることになります。

今後の再出発で、過去に会社を倒産させてしまった汚名の影響を少しでも小さくするため、破産に至るタイミングを見誤らないよう注意が必要です。

破産した経営者の再起について、次の解説をご覧ください。

経営者の責任を追及される

会社を破産させるデメリットとして、経営者の責任を追及されるおそれがあります。

会社と経営者は、法的には別人格なのが原則ですそのため、会社が破産しても、経営者個人がその責任を負うことはありませんし、個人の財産がなくなることもありません。経営判断の原則により、決定の内容及び過程に不合理な点がなければ、結果的に失敗したとしてもその責任を負わされません。

ただし、多くの中小企業では、代表者個人が、会社の債務の連帯保証人となっています。経営者所有の不動産を、会社に賃貸し、事業用として利用していることもあります。このようなとき、会社の倒産の危機は、代表者個人にも降りかかります。このとき、連帯保証した代表者もまた、任意整理個人破産などを行う必要があります。

なお、経営方針の説明が十分でないと、経営者個人の信用が傷つくこともあります。

会社が破産したときの経営者の個人責任は、次に解説しています。

連帯保証人に迷惑をかける

会社を破産させるデメリットとして、連帯保証人に迷惑をかける点が挙げられます。会社が、債務を払えないと、連帯保証人に請求がいくためです。

会社債務には、代表者以外にも、共同創業者や役員、幹部社員などが連帯保証していることがあります。小規模な会社だと、社長の家族が連帯保証人となっているケースもあります。このようなとき、連帯保証人に連絡がいってしまうことは、とても大きなデメリットとなります。

ただし、連帯保証人への迷惑を恐れるあまり、その債務だけ弁済することはできません。

会社が支払不能となったとき、債権者は平等に扱わねばならず、一部の債権のみ返済する「偏頗弁済」は、後に破産手続きのなかで否認され、返金を要求されてしまうからです。

倒産するための費用がかかる

会社破産の最後のデメリットが、費用がかかることです。債務が払えず苦しい状態の会社でも、無料で破産はできません。むしろ、倒産した会社を消滅させる、法人破産の手続きは、個人の自己破産と比べても多くの手間があり、費用も相当程度かかるのが一般的です。

法人破産にかかる費用には、次のものがあります。

  • 裁判所に支払う予納金
    破産手続きの開始後、管財人に引き継がれる。
    債務額などにより裁判所が判断し、一般には60万円前後とされるが、東京地方裁判所などの一部の裁判所では、弁護士が申立代理人となり事前準備を適切にすることを前提に、少額管財制度を利用すれば最低20万円で収めることができる。
  • 官報公告費
  • 郵券代・印紙代
  • 弁護士費用
    法人破産の弁護士費用は、債務額や予想される業務量に応じて、50万円〜100万円程度が目安となる。

事業がまだ継続しているなら、費用の準備をする余裕があります。具体的には、弁護士が債権者に受任通知を送付することによって一旦債務の支払いを止め、事業継続によって上がる売上を蓄積して破産に要する費用を捻出できます。会社に資産があるなら、適正価格で売却することで、倒産にかかる費用を作ることもできます(ただし、売却額が適正でないと、会社の財産を毀損したとして、管財人による否認権行使の対象となってしまいます)。

倒産する費用がないときに検討すべきことは、次に解説します。

会社が破産のデメリットを回避するための注意点

会社が破産するデメリットを列挙して説明しましたが、いずれのデメリットも、最小限に抑える努力をすることができます。デメリットをできるかぎり回避することで、破産しても再起を図りやすくなります。むしろ、デメリットがあるからといって倒産するのをためらうと、適切なタイミングを逃してしまいます。

法人破産は、法律で認められた制度で、デメリットが多くて進められないのでは意味がありません。できるだけリスク少なく進める方法について解説します。

デメリットの影響を限定する

会社が破産するデメリットを正確に把握すれば、影響が大きくなりすぎないよう限定することができます。会社が消滅しても、失うのは会社所有の資産のみであり、連帯保証していないかぎり個人所有の財産に影響することはありません。

確かに、破産によって信用を失う面はあるものの、業績悪化を放置せず、誠意をもって説明することで信用を維持することも可能です。会社に帰属していたブランド力、雇用していた社員などは、別法人に引き継ぐ努力をすることもできます。大切なのは、対外的にも、社内にも、隠し事をせず、正確な説明を心がけることです。

無理な延命をしない

会社の破産を検討せざるを得ないタイミングになったら、無理な延命は禁物です。多くの経営者は、限界まで我慢をしたり、個人の財産を失ったりしてでも、無理して会社を守ろうとし、破産を遅らせようとします。しかし、無理な延命は、さらに状況を悪化させ、結果的に、多くの人に迷惑をかける事態となります。

最悪は、無理な融資、違法業者のサポートを受けて会社を延命するなど、破産してもなお、あなたの信用を傷つけてしまうことにもつながります。裁判所や弁護士に払う費用もあるため、現預金が底を尽きてしまえば破産すら難しく、夜逃げするしかない状況に追い込まれる危険があります。

弁護士に相談する

最後に、会社が破産するデメリットを回避するため、弁護士に相談ください。

破産のデメリットを正しく認識するには、法律知識を要します。会社や、経営者個人では十分理解できないとき、弁護士のアドバイスによって補うことができます。法人破産は、裁判所で行う手続きであり、そのスケジュールは短くても半年、長いと1年以上かかります。破産管財人となった弁護士や、裁判官との面談を行うなど、適切な対応を要します。これらの場で、十分な資料をもって説明し、質問に的確な回答をすることは、弁護士なしには難しいものです。

会社の破産手続きの流れは、次に解説しています。

会社の破産はメリットも大きい

一方で、会社を破産させるのには、メリットも多くあることを知ってください。デメリットを回避するばかりでなく、メリットをうまく利用すれば、破産を活用して将来の道を開くことができます。弁護士が相談するときに破産を勧めるのは、デメリットに比べ、メリットが大きいケースです。

会社を破産させる一番のメリットは、会社の債務がすべてなくなる点です。会社の法人格が消滅するので、会社が負っていた取引先への支払い、売掛金、顧客への返金などはもちろん、法人税や保険料といった公的な支払いも含めて、すべての債務をゼロにすることができます。

また、速やかに破産申立てをすることは、再帰を図るにも役立ちます。というのも、破産申立てをした後は、それ以降に取得した財産や、申立て以降に設立した別会社の売上などは、破産の影響を受けずに継続することができるからです。資金繰りの流れを読み、適切なタイミングで破産することによって、結果的に少しでも蓄えを残し、事業を継続することにつなげられます。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、会社を破産させるデメリットについて解説しました。一般に、破産のイメージはとても悪く、そのデメリットは過大に評価されがちです。

しかし一方で、会社を倒産させれば、負債を消滅させて、経営者は再起を図ることができます。デメリットもありますが、その分だけメリットも大きい制度なのです。そして、法律に従った正しい手続きで進めれば、そのリスクを最小限にする努力ができます。

デメリットを恐れて倒産のタイミングが遅れると、かえって負債が膨らむなど、迷惑をかける第三者の範囲を拡大させてしまいます。無理して経営を続ければ、個人の資産を毀損する危険もあります。できるかぎりデメリットを回避し、安全に会社を倒産させるには、ぜひ弁護士に相談ください。

この解説のポイント
  • 破産すると法人が消滅することで、財産や社員などを失うデメリットがある
  • 会社が破産するデメリットを正確に理解し、その影響を限定する努力をする
  • 会社の破産には、負債がなくなるなどメリットも多く、適切なタイミングで活用すべき

\お気軽に問い合わせください/

目次(クリックで移動)