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団体交渉の流れ・進め方と、会社側の対応方法の注意点

合同労組やユニオンなどの労働組合から、団体交渉申入書が届いたとき、義務的団交事項についての申入れであれば、会社側(使用者側)はその団体交渉に応じなければなりません。

会社の中には、団体交渉を拒否したり、書面のみのやり取りで時間を掛けずに交渉することを望んだり、弁護士に丸投げしたいという方もいます。しかし、不適切な交渉態様は、団交拒否(不誠実団交)の不当労働行為となり、労働委員会の不当労働行為救済命令を受けることになります。

労働組合法は、団体交渉を正当な理由なく拒むことを禁止しているからです。一方で、団体交渉の流れ、進め方ややり方について、法律は特にルールを設けていません。

そこで今回は、合同労組、ユニオンなどの労働組合からの団体交渉を受けるにあたり、会社側(使用者側)が知っておくべき対応方法の注意点を、弁護士が解説します。

「労働組合対策・団体交渉対応」の法律知識まとめ

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誠実交渉義務

団体交渉は、労使の交渉を通じて、労使間の協調と円満解決を目指すための方法であるため、労働組合に保障された団結権を実効的なものにするために、会社側は、団体交渉に誠実に応じる義務があります。

これを、誠実交渉義務、団体交渉応諾義務といいます。

そのため、労働組合が求めている団体交渉を、正当な理由なく拒否することはできません。

資料開示

誠実交渉義務の内容として、労働組合が要求してくる資料の開示に応じる必要があるのでしょうか。具体的な説明資料を開示しないと、不誠実な交渉といわれてしまうのでしょうか。

会社側(使用者側)の負う誠実交渉義務の一環として、単に団体交渉に応じるだけでなく、誠実に応じなければならず、労働組合の要求に回答するにあたって、説明に資料が必要な場合には、これを開示しないことが不当労働行為となるおそれがあります。

最高裁判例(東北測量事件・最高裁平成6年6月13日判決)でも、賃上げ交渉が問題となったケースで、経営実態に関する具体的資料を開示しない場合には不当労働行為に当たると判断しました。

東北測量事件

組合にとっては、使用者の回答の正当性を判断し、また組合の対案を提出するために、使用者側から右(1)ないし(3)の各店に関する各種の経理資料の提出を受け、これに分析、検討を加えることが通常必要不可欠であって、使用者側がこのような資料の提供を拒否し、客観的根拠のはっきりしない口頭の説明を繰り返すときには、労使間の団体交渉が実質的な進展を見ないことは明らかである。また、使用者においても、右のような回答をしている以上、しんぎそくじょう、自己が保有する(1)ないし(3)の各店に関する経理資料を提出する等して回答の根拠を明確にすることが、当然要請されているものといわなければならない。

ただし、資料の開示が、誠実な交渉のために必要ではあるものの、会社の企業秘密にあたる文書など、要求された書類をすべて開示しなければならないわけではありません。

例えば、上記例において、説明に必要な限りの情報を開示すれば十分であれば、決算書類などを全て開示するのではなく、必要な数値を抜き出した資料を作成し、開示する対策も検討できます。

人事権・経営権に関する事項

団体交渉が必要となる義務的団交事項とは、「組合員である労働者の労働条件やその他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」とされています。

重要な労働条件である、賃金、労働時間、休憩、休日といった内容はすべて、義務的団交事項となります。

これに対して、会社の裁量で決定すべき事項に「人事権・経営権」に関する事項があります。例えば、労働者の採用、配置、異動、評価といったものがこれに当たります。

しかし、人事権、経営権に関する事項について、団体交渉を拒否してよいわけではありません。労働組合の要求を飲まなければならないわけではないものの、団体交渉を行い、誠実に協議する必要があります。

プライバシーに関する事項

団体交渉の中で、交渉の話題となる事項の中には、他の役員や社員のプライバシーに関する事項が含まれる場合があります。

例えば、「私の給与が低いのではないか。他の同期入社の社員の給与を全て開示してほしい。」といった要求がなされるケースです。

しかし、このような要求に会社が応じる必要はありません。プライバシー保護の観点から、逆に、要求された対象の労働者の権利を侵害する可能性があるため、会社が開示を拒否することには正当性があります。

団体交渉前の準備

団体交渉は、合同労組やユニオンなどの労働組合から、突然書面が送られてきたり、突然訪問を受けたりして開始します。

会社側(使用者側)としては、団体交渉前の準備期間が短く、十分な準備ができないことも少なくありませんが、できる限り団体交渉を有利に進めるためにも、事前準備が重要となります。

そこで、団体交渉申入書を労働組合から受領した後に、団体交渉開始までに行っておくべき、会社側(使用者側)の準備について、弁護士が解説します。

団体交渉前の書面交付

合同労組・ユニオンなどの労働組合から団体交渉の申入れがなされるときには、「労働組合加入通知(もしくは労働組合結成通知)」と「団体交渉申入書」という書面の交付によって行われることが一般的です。

これら書面により、ある社員が労働組合に加入したことが判明すれば、原則として、団体交渉に応じる義務があります。組合員名簿などが交付されず、その他に誰が組合員なのかがわからなくても、団体交渉には応じなければなりません。

団体交渉申入書を受領したら、会社側(使用者側)としては速やかに、記載された議題が、交渉に応じるべき「義務的団交事項」であるかを検討します。

義務的団交事項に当たり、団体交渉をすべき場合には、「団体交渉に応じる」旨を記載した回答書を、労働組合に返送します。

労働組合側の主張を明らかにするための質問

労働組合側からのぐたいてきな主張が、団体交渉申入書からだけでは明らかでなかった場合、団体交渉を行う前に、要求事項を具体化するよう求めることができます。

ただし、具体的な回答がなく、「要求事項は団体交渉において明らかにする」との回答が労働組合からなされたとき、義務的団交事項にあたる議題である限り、団体交渉には応じておいた方が良いです。

「要求事項が抽象的かつ曖昧なので、団体交渉には応じない。」と回答することは、誠実交渉義務違反となり、団交拒否(不誠実団交)の不当労働行為となるおそれがあるからです。

会社側(使用者側)としても、団体交渉前に要求事項が具体化されていたほうが、説明・資料開示などの準備を進めることができるため、質問状、照会状といった書面を送付することにより、できる限り事前に明らかにしてもらうよう努めてください。

事前の要求事項の具体化、説明がないことを理由に団体交渉を拒否することが不当労働行為に当たることは、裁判例(大阪赤十字病院事件・大阪高裁平成1年8月18日判決)でも示されています。

大阪赤十字病院事件

組合の団体交渉要求事項について、その趣旨、理由、根拠並びに正当性(均衡の原則、経済原則)等を団体交渉の前提として予め文書で説明しておかなければならないとする根拠はなく、また、その文書による説明がなければ団体交渉をすることができないというものでもない・・・(中略)・・・要求の正当性等を説明した回答書を提出しないことを理由に団体交渉を拒否することはできないというべきであり、したがって、病院の右拒否理由は正当とは認め難いといわなければならない。

予備折衝(事務折衝)

団体交渉を開始する前に、団体交渉の手続的なルールの話し合いに時間がかかったり、労働組合の要求事項が抽象的であったり多岐にわたったりして、争点整理に時間がかかったりするケースがあります。

このような場合に、団体交渉の事前準備を、書面の授受によって行うだけでなく、事前に労使間で協議をすることで、団体交渉を効率的に行うことができます。このような事前の話し合いを「予備折衝(事務折衝)」といいます。

会社側(使用者側)が、団体交渉前に予備折衝(事務折衝)を求めたとしても、団体交渉を拒否しているわけではなく、誠実交渉義務には反しません。

ただし、予備折衝(事務折衝)は団体交渉それ自体ではないため、予備折衝(事務折衝)のみ行って団体交渉を拒絶するという場合には、団交拒否(不誠実団交)の不当労働行為となります。

決めておくべき団体交渉の手続的なルール

会社側として団体交渉に応じることは義務ですが、団体交渉の本題ではなく、手続的なルールについては、労使双方の話し合いによって決めることとされています。

団体交渉の日時、場所、参加者など、団体交渉の手続的なルールについては、会社側も同意しない限り決まりはありませんので、労働組合の言う事に従わなければならないわけではありません。

ただし、団体交渉の手続的なルールについて対立が激しく、会社側が自身の主張に、理由なく固執し、結果として団体交渉が行えない場合には、不当労働行為となる危険もあります。

会社側(使用者側)の適切な対応として、労使間の団体交渉で行われている一般的なルールを理解し、その範囲内で、労働組合と話し合いによって手続的ルールを速やかに決めていきましょう。

団体交渉の日時

団体交渉の日時は、団体交渉申入書によって、労働組合から一方的に指定されるケースが一般的です。労働組合の指定は、差し迫った日時であって、かつ、業務時間中であることが通常です。

しかし、団体交渉の日時は、労使の話し合いで決めることですから、会社側から再調整を依頼することが可能です。

団体交渉の日時があまりに近接していると、資料や主張の準備が間に合いませんし、業務時間中の団体交渉は、本業に支障が生じるおそれがあります。準備を弁護士に任せる場合、弁護士の予定も加味しなければなりません。

そこで、団体交渉の日時を再調整するにあたっては、準備期間を加味したある程度先の日程で、かつ、業務時間外の時間帯を候補日として指定します。

誠実交渉義務を果たしていることを明らかにするため、再調整を依頼するとしても、できるだけ早期開催が実現するよう、代替の候補日を提案してください。

団体交渉の時間帯

団体交渉の時間帯についても、労働組合からの一方的な指定に従う必要はなく、再調整を依頼してください。特に、業務時間中の団体交渉は避けるべきです。

団体交渉に誠実に応じる義務はあるものの、業務時間中に行わなければならない義務まではなく、労働組合側もまた、重要な問題なため、「業務時間外なら、面倒なので交渉しない」ということはありません。

ただし、組合員が参加しづらい時間帯をあえて狙い撃ちし、その時間帯での調整に会社が固執してしまうケースでは、団交拒否(不誠実団交)の不当労働行為となってしまうおそれがあります。

誠実交渉義務違反とならない程度の団体交渉時間は、一般的に「2時間」程度とされることが一般的です。あまりに短時間な団体交渉は、不当労働行為となる可能性が高いです。

団体交渉が白熱し、事前に決めておいた時間より長時間に及ぶ場合には、非効率ですので、一旦中断して次回に持ち越すことが可能です。

団体交渉時間中の賃金支払義務

団体交渉には、会社の社員が、労使紛争の中心人物として参加することが予想されます。

そこで、団体交渉に参加している時間が「労働時間」となり、賃金の支払義務が発生するのかが問題となります。特に、業務時間中の団体交渉を認めてしまった場合、大きな問題となります。

就業時間中の団体交渉の場合に、参加した社員を有給扱いとすることは、「経費援助」の例外として法律上許されています。しかし、このことは、団体交渉の時間中を有給扱いにしなければならないことを意味するのではありません。

したがって、団体交渉を行う時間帯が、就業時間中であっても就業時間外であっても、その時間については無給扱いとすることが可能です。

団体交渉の場所

団体交渉申入れの際、労働組合側が、団体交渉の場所を指定してくることが少なくありません。労働組合からの指定は、「会社会議室」、もしくは、「労働組合の会議室」が多いです。

しかし、団体交渉の場所についても労使双方の合意によって決めることですから、会社としても、別の開催場所を提案して差支えありません。

団体交渉の趣旨が、労使紛争の円満な解決にあることから、いずれかの当事者の管理する場所で行うことは、他方当事者にとって抵抗のあることが多く適切ではありません。また、会社内で行う場合、労働問題が他の社員に波及したり、取引先に迷惑をかけたりするおそれもあります。

団体交渉の開催場所について、法律上の規制はないため、会社外の場所を指定することも可能です。実務上は、貸会議室で行われることが一般的です。

会社側(使用者側)にとって、貸会議室を団体交渉の場所として指定することには、次のメリットがあります。

  • レンタル時間を限定することで、事前に合意した終了時刻を厳守し、効率的な交渉が可能となる。
  • 他の社員、取引先などに、社内の労働問題を知られることがない。
  • 労働組合の暴力的な対応などによる、会社の損失を最小限に抑えることができる。

団体交渉の参加者・人数

団体交渉の交渉担当者は、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者」(労組法6条)とされており、交渉を第三者に委任することができます。これは、会社側(使用者側)も同様です。

労働組合側の出席者として、上部団体など他の労働組合の役員、組合員、弁護士などが参加することがあります。

したがって、団体交渉の参加者もまた、労使それぞれが自分側の参加者を選定することができます。労働組合から「社長は絶対参加するように。」と指定を受けることもありますが、参加させるか否かは、不当労働行為にならない範囲で、会社の自由です。

団体交渉の人数についても、特に法的な規制はありませんが、労働組合側の参加者が多すぎて、交渉が進まない場合には、人数について事前に合意して、同数程度に揃えるよう提案することがあります。

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団体交渉中の注意点

団体交渉中は、特に、会社側(使用者側)の発言、対応が、不当労働行為となりやすいです。また、厳密には不当労働行為に当たらなくても、労働組合側から「不当労働行為だ。」というクレームを受けやすいタイミングでもあります。

そこで、団体交渉中の注意点について、弁護士が解説します。

交渉は粘り強く続ける

団体交渉におけるやり取りでは、労働組合側から、大きな声でなじられたり、怒鳴られたり、会社批判をされることがあります。

しかし、会社側もこれに応じて、荒っぽい発言で返したり、労働組合批判をしたりすれば、不当労働行為の責任を追及されることとなります。

労働組合の発言にひるんだり、交渉の場で、安易な約束をしてしまって言質をとられたりといったことも慎まなければなりません。団体交渉には応じなければならないものの、労働組合の要求を受け入れなければならないわけではありません。

要求を受け入れる必要がないのに、「いつまで団体交渉を継続したらよいのだろう。」、「無駄な時間だ。」という感想をよく聞きますが、交渉は粘り強く継続する必要があります。感情的にならず、落ち着いて話し合うのが基本です。

録音・議事録作成

団体交渉で行われた交渉の経過を記録するために、団体交渉中のやり取りを録音したり、団体交渉の議事録を作成したりすることがあります。

団体交渉の録音、議事録について、作成義務はないものの、後日、不当労働行為救済命令申立てなどがなされ、労使間の対立が激化した場合に備え、証拠を保全しておく必要があります。

労働組合の要求事項を把握し、次回の団体交渉の際に、前回の交渉内容を検討、吟味する目的でも、団体交渉の議事録を作成することには大きな意味があります。

特に、労働組合の交渉担当者の主張が二転三転し、「言った言わない」の水掛け論になる場合には、客観的な証拠資料が重要となります。

注意ポイント

ただし、作成した議事録を労働組合に提出したり、労働組合が作成した議事録に署名押印を求められたりした場合、会社の意図せず、会社が労働組合の主張を認めたことになったり、労働協約の締結を意味することとなったりする可能性があるため、慎重な対応が必要です。

労働協約の締結

団体交渉における話し合いが合意に至ったとき、労使間で「労働協約」を締結することがあります。

労働協約とは、労働組合と会社との間で、労働条件その他の事項について交わす約束のことで、両当事者が署名、押印する書面です。書面のタイトルが「労働協約」となっておらず、「合意書」、「覚書」といった形式であっても、労働組合と会社とが、署名押印した書面は、労働協約の性質を持ちます。

労働協約を締結した場合、ここに定められた労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する就業規則、労働契約(雇用契約)の定めは無効になります。

つまり、労使間のルールの中で、法律を除いては、労働協約が最優先となります。就業規則、労働契約書(雇用契約書)といったその他のルールを定める規程に優先するわけです。

団体交渉の結果を労働協約にまとめるときには、法的に、合意内容を正しく、正確に記載している文面か、確認が必要となります。合わせて、会社側(使用者側)としては、次の条項を記載するよう要求します。

  • 清算条項
    :労使間(会社と労働者、会社と労働組合間)で、労働協約に定めた以外の債権債務関係がないことを確認し、労働問題の最終的な解決を定める条項です。
  • 口外禁止条項(守秘義務条項)
    :労使間で、相互に、労働協約成立に至る過程と内容を、第三者に口外しないことを約束する条項です。

団体交渉を打ち切っても良いケース

既に解説した通り、会社側(使用者側)には、誠実交渉義務、団体交渉応諾義務があり、義務的団交事項について正当な申入れである限り、団体交渉に応じなければなりません。

団体交渉に応じるというのは、単に団体交渉の機会を設ければよいということではなく、誠実に交渉し、労働組合の要求に対して適切な説明などの対応をする必要があることを意味しています。

しかし、一定の状況においては、団体交渉を続けることが望ましくないケースや、団体交渉の趣旨に反するケースがあり、会社側(使用者側)は、団体交渉を打ち切ることができるものとされています。

大衆団交

団体交渉に参加する人数について、法律上の決まりはありません。

しかし、不特定多数の組合員が参加する団体交渉は「大衆団交(大衆交渉)」を呼ばれ、会社側(使用者側)が団体交渉を正当に拒否できる例とされています。

ただし、以前から大衆団交(大衆交渉)が繰り返し行われて、労使間の慣行となっている場合には、会社が一方的に突然取りやめることが、団交拒否(不誠実団交)の不当労働行為となる可能性があります。

暴力的な団体交渉態度

団体交渉中に、労働組合側の参加者が罵詈雑言、野次を飛ばしたり、大声で怒鳴りつけたりすることがあります。

団体交渉は、労使の話し合いによる解決を目指すものであって、威圧、威嚇する場ではありません。発言の自由はお互いに保障されていますが、社会的相当性を超えた暴行、脅迫は許されません。

そのため、労働組合側の団体交渉態度が暴力的であり、社会的相当性を超える場合には、団体交渉を打ち切ることが可能です。

労働組合には、正当な組合活動について刑事免責・民事免責が定められており、刑事上・民事上の一切の責任を負いませんが、これはあくまでも、正当な組合活動の範囲内にとどまる場合に限られます。

また、一度このように暴力的な態度を理由として団体交渉を拒否した場合には、今後の団体交渉についても「暴力行為を行わないことを誓約する」ことを条件に、拒否し続けることが可能な場合があります。

共同の団体交渉

複数の労働組合から、共同して団体交渉を行うことを申し入れられたとき、団体交渉を拒否できる場合があります。これを「共同の団体交渉」といいます。

共同の団体交渉は、複数の労働組合が対立状況にある場合には、意思統一が図れず、共同の団体交渉を行っても、円滑な交渉が困難なケースも多くあります。

団体交渉は、労働組合が団結して会社と交渉するためのものであって、一方当事者である労働組合は、団結していなければならず、内部的な統制力を欠き、統一的団体意思が形成されていない場合、交渉結果の統一は困難だからです。

したがって、複数の労働組合から、共同して団体交渉を申し入れられたとしても、労働組合同士が団結している例外的な場合を除き、共同の団体交渉を拒否する正当な理由があるというべきです。

ただし、それぞれの労働組合から個別に申し入れられた団体交渉を理由なく拒否できるわけではありません。また、少数組合を、過半数組合などに比較して差別的に取り扱うことも許されません。

十分な協議を尽くした後

団体交渉に応じる義務があるといえども、永遠に団体交渉を行い続けなければならないわけではありません。

特に、個別の労働者に関する労使紛争を、団体交渉によって話し合っている場合には、その問題の解決が目的です。その問題を、団体交渉によっては解決できないことが明らかとなった場合には、会社側から団体交渉を打ち切ることが可能な場合があります。

十分な協議を尽くしたけれども、労使いずれも譲歩の余地がなく、これ以上議論を行っても平行線であることが明らかとなった場合です。あくまで「交渉」に応じる必要はありますが、「要求」に応じる必要はありません。

ただし、一旦は団体交渉を打ち切ったとしても、相当期間が経過し、その間の事情の変化によって、改めて議論、交渉が必要となる場合には、再度の団体交渉を受けなければなりません。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、労働組合対応の中でも、最も重要となる団体交渉対策について、会社側(使用者側)の適切な対応を弁護士が解説しました。

特に、合同労組、ユニオンなどの社外の労働組合が申し入れる団体交渉は、会社に対して敵対的であることが多く、「荒れる団体交渉」となるケースがあります。適切な対応方法を知らなければ、労働組合の有利に進めてしまったり、不当労働行為の責任追及を受けてしまったりするおそれがあります。

労働組合対応、団体交渉対策にお悩みの会社は、ぜひ一度、人事労務を得意とする弁護士にご相談ください。

「労働組合対策・団体交渉対応」の法律知識まとめ

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