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「支配介入」の不当労働行為と、会社の適切な対策

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労働組合に対して「支配介入」することは、不当労働行為として労働組合法(労組法)で禁止されています。

団体交渉など、合同労組・ユニオンなどの労働組合に加入した組合員と対峙するとき、会社側(使用者側)の干渉行為が「支配介入」だ、という非難を受けることがあります。

「支配介入」は、労働組合法に違法であることが定められた不当労働行為であり、行ってしまうと、労働委員会で救済命令による不利な判断を受けるほか、その会社の行為自体が無効となったり、損害賠償請求を受けたりするおそれもあります。

そこで今回は、会社側(使用者側)がどのような行為を行うと支配介入の不当労働行為になるのかを理解していただき、会社側(使用者側)の適切な対策を、弁護士が解説します。

まとめ
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労働組合法(労組法)が禁止する支配介入の不当労働行為とは、「労働者が労働組合を結成し、若しくは、運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」(労組法7条3号)をいいます。

労働組合を結成する権利(団結権)が憲法上認められているところ、会社側(使用者側)が、組合の結成や運営に対して不当に干渉し、労働組合の自主性が損なわれる可能性がある場合に、これを禁止するのが支配介入が禁止される趣旨です。

同様に、労働組合の要件として、労働組合法は、会社からの経費援助を禁止し、経済的自立性を保つよう定めています。

そのため、会社側(使用者側)が、労働組合や、労働組合員である労働者に対して、過度な経済的利益を与える行為もまた、支配介入の不当労働行為となる可能性があります。

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支配介入に該当する要件

支配介入の不当労働行為にあたる場合とは、労働組合が、会社側(使用者側)と対等な交渉主体となるために必要となる自主独立性、団結力、組織力を損なう行為を行う場合を指します。

そこで次に、会社側(使用者側)の対策を練っていただくためにも、どのような行為、態様であれば支配介入として問題視されるのかについて、弁護士が解説します。

支配介入の主体

支配介入の不当労働行為が問題となる場面では、問題となる組合差別発言、行動を行ったのが、会社の代表者(社長)ではないケースも少なくありません。

幹部役員、人事権限を持つ部長など、影響力の大きい人が行った発言が、会社が行ったものと同視されて、会社が支配介入の不当労働行為の責任を追及される場合があります。

会社から直接、支配介入を行ってくれるよう指示を受けた社員によるものでなくても、「使用者の意を体して」行われた行為であれば、支配介入の不当労働行為となる可能性が認められています(JR東海事件・最高裁平成18年12月8日判決)。

そして、使用者の意を体しているかどうかを判断するにあたっては、会社内の役職・地位が高ければ高いほど、会社自体の支配介入行為と認められやすくなります。

支配介入の意思

支配介入の不当労働行為に当たるためには、会社側(使用者側)の「不当労働行為意思」が必要です。

つまり、支配介入を行おうとして行ったのでなければ、支配介入の不当労働行為にはならないということです。

ただし、支配介入の不当同労行為意思とは、直接に組合弱体化、具体的判組合行為に向けられた積極的意図である必要はなく、単に、その行為が客観的に組合弱体化、判組合的な結果を生じ、または、生じるおそれの認識、認容があれば足りるものとされています。

支配介入の態様

支配介入の具体的な態様については、労働組合法(労組法)では限定されていません。つまり、組合弱体化に向けた行為、反組合行為であれば、支配介入に当たる可能性があります。

最もわかりやすい支配介入に当たる行為は、労働組合員に対して組合脱退を促すこと、組合を非難する言動を行うことですが、これに限りません。

労働組合や組合員に対して経済的利益のある行為であっても、組合幹部を買収したり接待したり、別組合を結成するための資金援助をしたりする行為は、支配介入の一態様です。いずれも、労働組合の弱体化につながるためです。

以下の行為は、支配介入の態様に当たるだけでなく、不利益取扱の不当労働行為にもあたる可能性があります。

  • 労働組合員の解雇
  • 労働組合員の配点・出向
  • 正当な組合活動に対する懲戒処分その他の不利益な処分
  • 組合差別にあたる賃金差別・仕事差別
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注意ポイント

会社側(使用者側)が、既に労働組合に対して与えていた便宜供与を注意ししたり、以前から締結していた労働協約を更新しなかったり、破棄したりすることが、支配介入の不当労働行為にあたることがあります。

便宜供与は、会社にとって義務ではありませんが、ひとたび与えると、これを中止することが違法として禁止される危険があるのです。

支配介入の結果

支配介入の不当労働行為が成立してしまう場合とは、労働組合の組織運営に、現実的な損害を与えたという結果が必要なわけではありません。

労働組合の自主独立性が阻害される「おそれ」がある行為であれば、支配介入の不当労働行為にあたります。

労働組合を嫌悪して、組合員に対して、合同労組やユニオンなどの労働組合からの脱退を促すことは、支配介入の不当労働行為にあたる可能性があります。

この場合、実際に、その組合員が労働組合を脱退しなかった場合であっても、支配介入の不当労働行為にあたります。

支配介入に当たる具体的なケースと対策

支配介入の不当労働行為に当たる行為の中には、会社側(使用者側)が、組合結成、運営に対して干渉する行為のほか、組合を弱体化させようと意図した行為など、さまざまなものが含まれます。

支配介入がよく問題となり得る会社側(使用者側)の行為と、会社の適切な対応策について、弁護士が解説します。

組合批判の言動

合同労組やユニオンなど、労働組合に対して批判的な発言や行動をしたり、記事やインタビューなどの出版物に反組合的な主張を発表することが、支配介入の不当労働行為に当たる場合があります。

会社もまた憲法上で「表現の自由」、「言論の自由」が保障されていますが、判組合的な言論の発表は、労働組合の自由な活動を阻害するおそれがあるからです。

会社側(使用者側)の言動が、支配介入の不当労働行為に当たるかどうかは、次の点を総合考慮して判断されます。

  • 言論の内容
  • 発表の手段・方法
  • 発表の時期
  • 発表者の地位・役職・身分

以上のことを総合考慮し、「言論が組合員に対して威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼす場合」に、支配介入の不当労働行為となるとするのが、裁判例(プリマハム事件・東京地裁昭和51年5月21日判決)です。

便宜供与の拒否・中止

会社の施設を、労働組合の活動に利用させるかどうかは、会社が自由に決めることができます。これを「施設管理権」といいます。

そのため、「労働組合の集会、団体交渉のために、会社の会議室を利用したい」という「便宜供与」の要望は、会社側(使用者側)としては、拒否して構いません。拒否されたのに勝手に利用している場合、正当な組合活動ともいえません。

ただし、既に組合による施設利用が慣行となっていたり、労働協約などで認められていたりなどの場合、合理的な理由なく一方的に中止することは、支配介入の不当労働行為に当たる場合があります。

会社の施設を利用する便宜供与だけでなく、組合活動を行うための休暇である「組合休暇」、組合活動のみを行うため休職させる「組合専従」などが要求されることもありますが、法律上与えなければならない義務はありません。

組合活動に対する損害賠償請求

憲法上、労働組合には団結権、団体交渉権とともに団体行動権が保障されているため、街宣活動やストライキなど、会社に不利益となる行為を正当に行うことができます。

正当な組合活動の範囲内で行った行為については、会社は、労働組合や組合員に対して、損害賠償請求など民事上の責任を追及することができません。あわせて、刑事責任も免責されています。

そのため、正当な組合活動に対して、損害賠償請求をすることは、労働組合の権利を侵害するため、支配介入の不当労働行為と判断されるおそれがあります。

ただし、他の従業員に暴力をふるう、虚偽の情報により会社の名誉を棄損し、業務を妨害するなど、正当な組合活動の範囲を外れる行為に対しては、損害賠償請求権を行使することができます。

組合活動についてのアンケート

会社側(使用者側)としては、社員が業務時間外で組合活動をやっていると、どのような活動をしているのか、気になることがあるでしょう。ユニオン・合同労組など、労働組合活動についてにアンケートをとることが、支配介入の不当労働行為にあたることがあります。

特に、アンケートの内容が、労働組合の秘密を回答させるような内容であったり、業務命令で行うなどアンケートの実施方法が強制であったりして、労働組合活動に支障をきたしたり、組合弱体化につながる場合、支配介入に当たります。

反組合的な意図をもって組合活動についてのアンケートをしていると疑われかねない状況のときは、アンケート内容に細心の注意が必要です。

ビラ撤去

労働組合といえども、会社内に勝手にビラを貼ることは許されません。会社には「施設管理権」という権利があり、この権利に基づいて、労働組合のビラを撤去できます。

会社に無断でビラを掲示したり、社内でビラを配布したりする行動は、会社の「施設管理権」に反し、正当な組合活動ではなく、中止させても支配介入の不当労働行為とはなりません。

ただし、労働組合が活動するためには、必然的に会社内の施設を使用する必要があり、これを一切許さないのでは、そもそも組合活動ができない場合もあります。

会社側(使用者側)としては、中止を命じるにあたっては、「その組合活動は、正当なものか?」という検討を事前に行わなければなりません。

経費援助

労働組合法7条3号は、会社側(使用者側)が、労働組合に対して経費を援助することを禁じています。

「労働組合にとって経済的メリットがあるならよいのでは?」という疑問もあることでしょうが、経費援助をしてしまうと、労働組合としての自立性が損なわれてしまい、対等に交渉できなくなってしまうからです。

ただし、次の行為は、不当労働行為として禁じられる経費援助には含まれない例外となります。

  • 業務時間中の団体交渉に対して賃金を支払うこと
  • 厚生資金または経済上の災厄を防止し、もしくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附
  • 最低限の広さの組合事務所を与えること

会社側(使用者側)としては、上記行為は許されてはいるものの、一度認めてしまうと、今後は「一方的に中止をすること」が不当労働行為になってしまう危険もあるため、注意しなければなりません。

労働組合が複数存在するときの注意点

会社の社員が所属する労働組合が複数存在する場合には、支配介入の不当労働行為にあたらないよう、注意すべき点があります。

それは、会社側(使用者側)が、一方の組合の肩を持っていると評価されないよう、中立を保持する義務(中立保持義務)があるという点です。

社員の加入する労働組合が複数あるケースとは、労働組合ごとの方針、考え方、活動内容が異なっている場合です。そのため、会社としては、より会社に親和的な労働組合を保護してしまいがちです。

しかし、片方の労働組合にだけ有利な処遇を認める会社の態度は、もう片方の組合の団結権を侵害することとなり、支配介入の不当労働行為として違法になる可能性があります。

以上の通り、社員の所属する労働組合が複数ある場合には、差別的に取り扱うと不当労働行為になります。いずれにせよ、どの労働組合に対しても、労働組合法(労組法)により義務となる以上の便宜供与を与えないよう注意すべきです。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、会社側(使用者側)が労働組合に対して不当な影響を与える行為、すなわち、支配介入の不当労働行為について、弁護士が解説しました。

支配介入は、組合を差別したり、敵視したりする行動がこれにあたるのは当然、一見労働組合にとってメリットがあるような金銭の供与なども、許されない違法行為とされる危険があります。

合同労組・ユニオンなどの労働組合対応にお困りの会社は、ぜひ一度、人事労務に詳しい弁護士に、ご相談ください。

まとめ
労働組合対策・団体交渉対応の弁護士解説まとめ【会社側】

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