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労働組合の会社批判は、違法な名誉棄損?会社の適切な対応は?

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合同労組やユニオンなどの労働組合と団体交渉をすると、団体交渉の席上で組合員から、野次や暴言ではないかと感じるような発言を受けることがあります。

更に、団体交渉での解決ができず、労働組合による街宣活動などが行われた場合、会社の社会的評価や信用が失墜し、「名誉棄損なのではないか?」とお怒りになる会社経営者の方もいます。

しかし、労働組合の活動は、労働組合法(労組法)により保護されており、会社を批判したからといって直ちに、名誉棄損罪などの犯罪が成立するわけではありません。

そこで今回は、会社の経営方針を厳しく批判する労働組合の言動が、どのような場合に名誉棄損に当たるのか、また、これに対する会社の適切な対応について、弁護士が解説します。

まとめ
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労働組合による「会社批判」とは?

合同労組やユニオンなどの労働組合にとって、「会社批判」は、戦略上とても重要な手段の1つです。

会社の法律違反が明白である場合などを除き、団体交渉で争われる個別の労働者に対する、労働組合側が「不当」と主張する行為は、いずれも、会社の経営方針によって起こっているものだからです。

例えば、ある社員を「能力不足」として解雇するかどうか、業績悪化により整理解雇するかどうか、ある社員の賞与査定をどのように評価するか、といった問題は、会社の経営方針に合わせて、会社側(使用者側)が決定しているものです。

これらの会社側(使用者側)の方針に対して批判的な主張を行い、宣伝活動することが、労働組合側の主張の根拠となり、かつ、結束力を高めることにつながります。

会社批判的な言論が、業務時間外に開催された団体交渉など、業務時間外かつ会社の敷地外で行われたとき、会社の施設管理権、業務命令権によって抑制することができないため、「名誉棄損」として違法にはできないのか、というご相談を受けることがあります。

なお、会社批判的な言論が、会社内で、企業の所有・管理する施設を利用して行われる場合に、正当な組合活動に当たらない可能性があることは、下記の解説をご覧ください。

参 考
業務時間中も組合活動をする社員に、懲戒処分を下せますか?

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労働組合に保障された権利

会社側(使用者側)としては、労働組合の交渉の一手段であったとしても、「社員である以上、会社経営への批判的な言動は慎むべきだ。」とお考えかもしれません。

しかし、労働組合には、憲法、労働組合法により、権利保障がされており、交渉の過程で、会社の経営施策を批判したとしても、それが直ちに違法行為となるわけではありません。

そこで、会社の従業員であるにもかかわらず会社を批判する発言、行動が、どこまで許されるのかを知っていただくために、労働組合側、労働者側に保障された権利について、弁護士がご紹介します。

表現の自由

労働組合には、憲法上「表現の自由」が保障されています(憲法21条)。このことは、会社批判の言論であっても同様です。

憲法21条

1. 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

表現の自由は、個人の見解を自由に表明する自由として、憲法上、広く国民全員に保障されています。

この表現の自由は、他の人権との関係で制約を受けることがあり、特に、他人の名誉を棄損する表現は、自由に許されるものではありません。

ただし、労使関係という特殊な関係においては、名誉棄損に当たることが、直ちに違法性に繋がるわけではなく、次に解説する労働三権の保障との関係で考えなければなりません。

労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)

労働三権とは、憲法上、労働者に保障された、労働者としての正当な権利を守るために労働者が行使することのできる権利をいいます。

憲法28条

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

労働三権を十分に保障する目的から、会社への批判的な言動であっても、正当な組合活動として行われる限り、正当性が広く肯定される傾向にあります。

たとえ、会社の労務管理を始めとした経営方針への労働組合による批判が、会社に不利益を与えたり、会社の社会的信用を低下させたりする結果となっても、それだけでは、違法行為とはなりません。

労働組合による「会社批判」が名誉棄損に当たるケース

労働組合に保障された「表現の自由」、「労働三権」をもってしても、労働組合による会社を批判する活動が、無制限に許されるわけではありません。

憲法上の権利保障はとても重要ですが、他人の権利と衝突する場合には、一定の制約を受けることとなっているからです。

労働組合による「会社批判」が、名誉棄損などに該当して許されないケースについて、弁護士が解説します。

過度な名誉棄損表現

労働組合による会社批判が許されるのは、労働三権を守る目的があるからです。したがって、この目的を逸脱した、過度の名誉棄損的な表現は、違法となる可能性があります。

つまり、会社批判について、「目的」と「手段」の点から、制約があるということです。このことは、刑法で、名誉棄損罪の違法性阻却自由を定めた次の条文が参考になります。

刑法230条の2第1項

前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

つまり、「公益の目的」があり、「公共の利害」に関する事実であり、かつ、「事実が真実」である場合には、名誉棄損罪は成立しないということです。

名誉棄損的な表現について民法上の不法行為責任を争った裁判例でも、同様の判断が下されています。

労働組合が行う、会社経営に対する批判的な言論もまた、この基準を参考にして、労働者の経済的地位・労働条件の向上といった目的にしたがって、真実を述べた表現であることが、正当な組合活動の条件です。

注意ポイント

ただし、労働組合において、会社の正確な情報を入手することが困難な場合があり、厳密に「真実性」が要求されると考えるべきではない場合もあります。

事実に関する部分を上記の基準で判断したとしても、批判に関する部分については労働組合の考え方が反映され、過度な表現になっていたとしても、それだけで名誉棄損罪が成立するわけではありません。

取引先に対する会社批判

さきほど示した、名誉棄損罪の違法性阻却事由の要件に照らして、会社の取引先に伝わるように会社批判をする行為は、組合活動の正当性が否定できる可能性があります。

表現活動の態様として、会社への威圧効果、萎縮効果が大きく、妥当でない場合があるためです。

例えば、取引先へのビラ配布行為、出向先企業へのビラ配布行為などの組合活動について、業務への支障が大きすぎることを理由に組合活動の正当性を否定した裁判例があります。(ヤーマン事件・東京地裁昭和60年12月23日判決、真壁組事件・大阪地裁平成8年5月27日判決など)。

社長の自宅前での街宣活動

団体交渉が決裂した結果、労働組合が、街宣活動、抗議行動を行うことがあります。中には、社長や役員など、経営層の自宅付近で街宣活動を行う労働組合もあります。

しかし、会社経営者(社長)といえども、公私を分けるべきであり、仕事とプライベートは別物です。組合活動の正当性が否定される可能性の高い場面といってよいでしょう。

街宣活動が、社長などの自宅にまで及ぶとき、会社側(使用者側)としても、労働組合に対して、損害賠償請求、差止請求を行うことができます。

損害賠償請求を認容した裁判例(黒川乳業事件・大阪地裁昭和61年6月23日判決、あけぼのタクシー事件・福岡地裁昭和62年10月13日)、差止請求を認容した裁判例(全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部事件・大阪地裁平成3年5月9日決定、東京ふじせ企画労組事件・東京地裁平成6年6月6日判決)などが典型例です。

違法な「会社批判」への会社側の対策は?

労働組合が行う会社批判について、直ちに違法行為とはいえないものの、その目的と手段によっては、違法な名誉棄損行為となる可能性があることをご理解いただけたでしょう。

最後に、「労働組合の行う会社批判が、違法なのでは?」と不安に思う会社に向けて、会社側の行うべき適切な対策について、弁護士が解説します。

懲戒処分

組合活動による会社批判が、正当な範囲を超える場合には、許されない会社批判となります。

労働者は、会社の業務に専念し、会社に不利益な活動を行ってはならないのが原則です。

したがって、社員として不適切な行為を行っているときは、就業規則、雇用契約書などの定めに基づいて、懲戒処分に処することを検討してください。

損害賠償請求・差止請求

許されない会社批判によって、会社が名誉を棄損され、損害を被った場合には、労働組合や労働者に対して、損害賠償請求をすることが考えられます。

特に、取引先や関連会社に対する会社批判により、会社が社会的信用を失い、売上が低下した場合には、その売上の低下と組合活動との因果関係を、的確に立証する必要があります。

合わせて、違法な名誉棄損が継続する場合には、差止請求も検討してください。

刑事告訴

組合活動の違法性があまりにも高く、損害が大きい場合には、刑事告訴も検討します。

本来、組合活動は、刑事免責といって、刑事上の責任は回避することができるものですが、さきほど解説したとおり、目的が労働組合に似つかわしくなく、方法・手段が過剰な場合には、刑事罰を科すことが出来る場合もあります。

対象となる犯罪は、名誉棄損罪、業務妨害罪などが考えられます。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、合同労組・ユニオンなどの労働組合から、会社経営を批判されたとき、どのように対応するのが適切かについて、弁護士が解説しました。

正当な組合活動の範囲内であれば、労働組合は民事上の責任、刑事上の責任を免責されており、名誉棄損罪などの罪も成立しません。しかし、労働組合に保障された権利といえども限界があります。

正当な組合活動ではないと認められるような、目的を逸脱し、過剰な手段による会社批判は、違法行為として責任追及が可能な場合もあります。

あまりにも過剰な労働組合活動に悩まされている会社は、ぜひ一度、企業の労働問題に強い弁護士にご相談ください。

まとめ
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